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「トリビアを聞きながら(GS)」

犬雀 (2006-08-31 23:41)

『トリビアを聞きながら』


忙しい時の合間にフッと現れたエアポケットのような空白の時間というものは誰にも覚えがあるだろう。
それは業界一忙しいと言われているここ美神令子除霊事務所においても例外ではなかった。

夕食も終わってまったりとした時間を過ごす事務所の女性たち。
すでに入浴も終わっているのかパジャマ姿のシロタマはソファーに座ってテレビのニュースを見ている。
その向かいには化粧も落し、Tシャツに短パンといういつになくラフな姿の令子。
そしてそれぞれの前に冷たいミルクの入ったカップを置くおキヌもパジャマ姿だった。
メンバー唯一の男で丁稚でもある横島忠夫は今日はバイトもないということで来ていない。
今頃は安アパートで一人さみしくカップ麺でも啜っていることだろう。

幻想を砕くようで申し訳ないが、男の目の無い女所帯なんてラフなものである。
かといって四六時中、気を張っていては身が持たないのだから悪いことではない。
要は今、事務所の女性陣はとてもリラックスしているということだった。

時間そろそろ九時。
良い子は寝てもいい時間だが夜がメインのこの事務所ではまだ宵の口。
普段ならこんな日はそれぞれが部屋に戻って好きなことをやったりするのだが、今日だけは違った。
なにしろ今日は水曜日。
シロとタマモが楽しみにしているバラエティ番組の放送日である。

『トリビアの温泉』というその番組は、世間で言えば「しょーもなー。」で済むような情報を大げさに検証して伝える番組である。
しかし時にはとてもコアな情報が含まれていて、あまりテレビに興味の無い令子も出演者が押す「ほーボタン」よろしく「ほー。」と頷くこともあった。

「今日は負けないでござるよ!」

「ふふん…先週の「キタキツネは物語らない」は「64ほー」だったわね。」

「くっ…しかしその前の「狼の少年はケンとは言わない」は「70ほー」だったでござる!」

どうやらこの二人、トリビアの評価で争っていたらしい。
馬鹿馬鹿しいやら微笑ましいやらで苦笑する令子の隣に家事の済んだおキヌが座った途端、タイミングよく番組が始まった。

テーマソングが終わると画面にオープニング・タイトルが現れる。
そして眼鏡の司会者が登場するとペコリと頭を下げた。

『えー。「トリビアの温泉」、今日はオカルト特集です』

「へぇ…オカルトにもトリビアってあるんだ?」

冷たいミルクで唇を湿らせながら令子が首を傾げるが、考えてみれば除霊の現場なんてものは素人にとってはトリビアの宝庫かも知れないと苦笑した。
だったら私も応募すればよかったと考えたのは秘密である。
オカルト特集という言葉に反応したのか、好奇心が誰よりも強いタマモが「テレビを見るときは画面から離れて見てね」のテロップを無視して牛乳片手にテレビの前に陣取った。

皆の目が好奇をたたえて画面に釘づけとなり、効くんだか効かないんだかよくわからない美容食品のCMが終わると今日、最初のトリビアがいきなり圧倒的な破壊力をもって炸裂した。


『ゴースト・スイーパーの中には……エッチな刺激を霊力に変える霊能者が…いる。』


ぷぴゅる×3

三方向から弧を描いて飛んだ牛乳が狙い違わずテレビの前でポカンと口を開けていたタマモの後頭部を直撃した。

「きゃあぁぁぁぁぁぁぁ!!な、なんてことすんのよ!!」

「「「静かに!!」」」

「はい…」

ギンと睨みつけられてご自慢のナインテールからポタポタと牛乳を垂らしつつ萎れるタマモの前でテレビの中の出演者たちが一斉に「ほーボタン」を押し捲っていた。

「いきなり「80ほー」…でござるか…」

「あの…美神さん…これって…」

「ま、まだわからないけど…誰かこの番組に情報を送った?」

ブンブンと首を振る三人に嘘の匂いはない。もっとも一人は微妙に牛乳臭いが。
だとすれば該当者は本人か?とも思ったが、考えてみればどんなに横島が馬鹿でも自分の恥をわざわざ全国レベルで晒したいとは思わないだろう。
混乱する令子たちをあざ笑うかのようにトリビアは次のステップへと進んでいった。

『本当かどうか聞いてみた…』

そして画面が入れ替わり、ある人物を映し出す。

ぷひゅる×3

「ぎゃああああ! またかけたぁ!!」

テレビの前で頭を押さえてのた打ち回るタマモのことなどさらりと無視して、三人は画面を見詰めたままポカンと口を開けている。
そこには見慣れた一人の美女が写っていて、横に表示されたテロップには『オカルトGメン日本支部 美神美智恵さん』と書かれていた。


『はい…。エッチな刺激を霊力の源にするGSは確かにいます。』


画面の中の美智恵さんはカメラ目線で笑顔のままはっきりきっぱりと宣言する。
その態度は実に堂々としていて視聴者に深い信頼感を与えることは間違いない。

「ああああ…ま、ま、ま、ママってばいったいなにを…」

そういえばここ数日、美智恵の挙動が不審だったことを思い出して令子は震える手で携帯を操作する。
数度の呼び出し音の後、美智恵のやたらと棒読みの声が携帯から響いてきた。

「あ、ママ!」

『ただいま美神美智恵は留守にしております。御用の方はメッセージをお願いします…』

「ち、留守電か…」

『なお、もしあなたが令子なら……おかけになった電話番号は現在使われておりません…』

「嘘つけえぇぇぇ!!」

と携帯に突っ込んでみても当然返事なんか無い。
単にメッセージ音がツーツーと無機質に鳴るだけだ。
思わず床に叩きつけようかとも思ったが、それは単に自分の携帯が壊れるだけだと気がついてかわりにギリリと歯を咬み鳴らした。

「あ、美神さん。続きが始まりますよ!」

おキヌの声に画面に目を戻せば司会者と出演者のやりとりからVTRへと変わるところ。
とにかく説明は後でキッチリと受けることにして今はテレビに注目する。
もしかしたら万が一という可能性で奇跡的にも横島以外に煩悩を力の源にしている霊能者が居るかもしれないではないか。


『…実際に試してみた…』


「試すっ?!」

『なお本人のプライバシーを考慮して画面は処理してある…』

あまり感情を感じさせないナレーターの声に誘われるように画面に登場したのは、なんとなく見慣れた体つきの古びたGジャンの少年。
勿論、令子やおキヌ、それにシロタマにとって顔面にモザイクが張られていても見間違うはずは無い。
どうやら奇跡は起きなかったらしい。


『実験の精度を高めるために本人には単なるインタビューと告げている。』


「実験ってどうするんでござろうか?」

「さあ?」とおキヌも令子も首を傾げるその姿に答えるわけではなかったろうが、ナレーターは実験の方法とやらを説明しだした。


『今回は今、人気絶頂の巨乳グラビア・アイドル 瀬尾ゆみちゃんがインタビューと称して彼に接近し、少しずつアピールをすることで霊力がどう変化するかをスタッフが測定することにした…』


ゴクリと唾を飲み込む事務所のメンバーの前で白衣姿のスタッフが隣に待機しているとも知らず、横島はホテルのスイートルームと思しき部屋の一室で所在なさげに立ち尽くしている。
しばらく閉じ込められた猫のように辺りをキョロキョロと見回していた横島の動きがピタリと止まった。

白衣姿のスタッフの声が緊張を滲ませる。

「現在の霊力値測定しました。この霊力値を基準に増加分を計測します。」

そんなこととはつゆ知らず横島はベッドの脇に置かれたテーブルへとゆっくり近づいていった。
隠しカメラが切り替わり別なアングルから捕らえられたテーブルの上にあるものを映し出す。
これ見よがしに置かれていたのは一冊の水着アイドルグラビア写真集。
幼い顔立ちとはアンバランスな豊満な肢体を持った水着アイドルのそれを見て横島の喉がゴクリと鳴った。

「霊力値120%まで上昇しました。」
「計測を続けてください。」

頷きあう白衣の男たちの姿にかぶさるようにナレーターが淡々と告げる。


『確かに上昇した…』


「あんの馬鹿あぁぁぁぁ!」
「あはは…よ、横島さん…」
「先生えぇぇぇぇ…」
「ううっ…髪の毛がビチャビチャ…」

それぞれが思い思いの感想を述べる中で実験は次の段階に入ったらしい。
白衣姿の男たちに緊張が走る。

「では…瀬尾ゆみちゃん入ってください。」


合図を受け「お待たせしましたー。」と明るい声とともに部屋に入ってきたのは紛れもなく写真集のアイドルその人。
しかも体にぴっちりと張りつく某外国産ビールのPR衣装を着込んでいる。
普通の常識を持つ人間ならインタビューなのにマイクも持たず、こんな奇抜な格好で登場した美人に対して違和感を感じるだろうが煩悩に目がくらんだ横島は気がつかないらしい。
シパッと立ち上がると手にした写真集もそのままに卑屈なまでにペコペコと頭を下げた。

「あー。緊張しないでいいですよー。」

「は、はいっ!」

「えーと。初めましてー。瀬尾ゆみでーす。」

ペコリと頭を下げるアイドルのグランドキャニオン並みに圧倒的な胸の谷間が横島の目を射抜く。
もしかしたら令子さえ上回るであろう乙女の深遠に横島の煩悩が大人しくしているはずはない。

「初めまして(ピーーーー)です! 素敵なおっぱいのお姉さん!」

「もー酷いなー。そんなに年変わらないですよー。」

「そうなんすか?」

こうしておそらくは最悪に近いファーストコンタクトにも関わらず、見た目はしごくほのぼのとした空気の中で偽りのインタビューは開始された。


「アイツのセクハラ発言をあっさり流した?!」
「やりますね…あの人…」
「先生はあの手のおっぱいが好きなんでござろうか?」
「ううっ…なんかパリパリしてきた…」

テレビ画面に向かってそれぞれの感想を漏らす女性陣。
しかし録画された番組はCMを挟みつつとどこおりなく進行する。
いつの間にか巨乳アイドルは横島の前のイスに腰掛けると、これ見よがしに足と胸を組みながらマイクがわりなのかボールペンを差し出した。

「えーと。それじゃあインタビューを始めまーす。」

「どっからでもカモーン!」

「あははー。元気いいですねー。」

演技なのか地なのか巨乳アイドルは楽しそうに笑う。
笑ってみればそのセクシーな肢体とはアンバランスな童顔が強調され、確かに彼女は横島と同じような年かも知れないと思わせ彼女の魅力が一層引き立つような気がした。

しかしこれはあくまでも実験。
トリビアの一部。
ナレーターが淡々としたまま次の台詞を吐く。


『もっと刺激してみた…』


白衣の男たちが手にしたマイクでアイドルに次の指令を送る。

(もっと刺激してみてください…)

横島には気づかれないように頷くとアイドルはゆっくりと席を立って横島の横へと回りこむ。

「うーん。ちょっと聞き取りにくいなー。近くよってもいい?」

「はい! 是非!」

近くどころかピッタリと身を寄せられ、あまつさえかなり露骨に乳を押し付けられて限界レベルまで高まる煩悩。
世間体を気にする普通の男ならここで顔が赤くなってもなんとか平静を装うところだが、横島にはそんな気の効いた機能は装備されていない。
だから思ったことは正直に口から出る。

「ぬはあぁぁぁぁぁ! なんて柔らかい乳なんだあぁぁぁ! これぞまさに極上一番絞り!」

「はえ?……………あははははははははは。やっぱ君って面白いねー!」

「任せてください! 俺は「GS界の道化師」の異名を持つ男っすから!」

あまりに間の抜けたリアクションと反応にアイドルも戸惑ったのか、一瞬だけキョトンとしたがすぐに笑い出し、インタビューはさらに和気藹々とした空気の中で進んでいった。
何度となく晒される横島の醜態も笑って応えるアイドルはもしかしたら大器の器なのかも知れない。
笑い転げる彼女の表情はとても演技には見えない。
もし演技なら女優の素質もあるだろう。
ごく自然に横島がセクハラし、それにアイドルが笑って応じる様子は普通のインタビュー番組として見ても中々面白い見世物に仕上がっていた。

もっともそれを見せられている身内としては恥の上塗りでしかないのであるが。

「だあぁぁぁ! 事務所の恥さらしめがぁぁ!」
「むーーーーー。むーーーー。横島さーーーん!」
「拙者もガンバレばあのぐらい育つでござろうか?」
「あうううう…臭いよう…目に沁みるよう…」


そんなこんなしているうちにますます親密度が上がったか、二人は仲良く肩なんか組みながら談笑してる。
無論、アイドルも仕事なのだ。
談笑の合間にも胸やミニスカから覗く太股を強調し横島の煩悩を刺激することは忘れていない。
セクシーな攻撃に高まる煩悩を計測中の白衣の男が珍しく感情を露に叫ぶ。

「上昇率400%に達しました!」
「計器振り切れます!これ以上持ちません!」

そして画面は唐突に切り替わり、相変わらず感情の抑制されたナレーターの声が実験の終了を告げた。


『実験終了……エッチな刺激を霊力に変える霊能者は確かに実在した…』


途端に一斉に押される「ほー」ボタン。
電光掲示板の数字が目まぐるしく点滅し、ついに全ての数字が出揃うと華やかなファンファーレがなる。
司会者も一瞬だけ驚きの表情を浮かべたが、そこはそれさすがプロ。
すぐに満面の笑顔を浮かべて両手を掲げた。

「おめでとうございます! 「満ほー」が出ました! 投稿者の『神父と吸血鬼』さんにはスポンサーよりインスタント・ラーメン一年分が送られます!!」

「あいつらかぁぁぁぁ!!」
「そこまで困っていたんですね…」
「やはり牛乳をもっと飲んだ方がいいでござろうか…」
「ぐす…シャワーしてくる…」

そんなこんなでこのトリビアは終了し、横島にも種明かしがされる。
最初はキョトンとしていたものの真実を告げられ、実験動物扱いされたことが判明したにも関わらず横島は怒ろうとはしなかった。
むしろ嬉々としてスタッフと談笑なんかしていたりするがそれも当然、何しろ彼の横には「ごめんねー」と謝りながらその腕をメロンのような胸に押し付けているアイドル=ゆみちゃんが立っていたのだから。
こんな状況でプライドを優先するような半端な助平などではない。

「あんの助平は! GSとしてのプライドっちゅうもんがないの!!」

出演者も令子と似たようなことを考えたらしい。
「よく怒らなかったねー」なんて司会者に聞いている。
それに対する司会者の返答は実に簡単だった。

「それがですねー。ゆみちゃんどうやら彼を気に入ったようでして…」

「ほー」とすでに満点にもかかわらずスタジオに響き渡る「ほー」ボタンの音。
令子とおキヌもこの展開は予測してなかったのか、あたふたとリモコンをとるとテレビのボリュームをあげた。

「それでなんだか意気投合しちゃったらしいですよー。」

「なんですってえぇぇぇ!!」
「それで横島さんこのところ妙に機嫌が良かったんですかぁぁぁ!!」

「では次のトリビア…」と司会者が言い切る前に令子の手の中でギチギチと異音を立てているリモコンが自己保存の本能を発揮したのでもないだろうがプツッと音を立ててテレビが沈黙した。
子供が見たら泣きそうな笑顔を浮かべつつ令子がジャケットを手にとる。


「いくわよおキヌちゃん…」
「はい! すぐに着替えてきます!」

こうして令子とおキヌはブラのカタログをあさり始めたシロと、シャワー中のタマモを留守番にして格納してあったカオス=フライヤーに乗り込むと横島のアパートへと向かったのだった。


疾風迅雷の如く横島のアパートに着いて見れば窓にはまだ電気がついている。
ならばここは一発奇襲に限ると令子とおキヌは安普請のドアを蹴破ると中へ飛び込んだ。
部屋の中は相変わらず雑然としていたが、最近は生活にも余裕が出たのか家電品も増え、それなりに生活臭を漂わせたアパートの六畳間でパンツにランニング姿の横島が二人の剣幕に唖然とした表情を浮かべていた。

「ど、どうしたんすか二人とも!?」

「あんた、私に黙ってテレビに出たでしょ!」

「な、なぜそれを!?」

「今、見たわよテレビで!!」

「しまったあぁぁぁ! 放映されるっての忘れていたあぁぁぁ!!」

「どこまでアホか貴様わあぁぁぁ!!」

とりあえず鉄拳制裁一発。
だがこれはあくまでも事務所の評判に関わる制裁だ。
決して私情などではない。
業界トップのGSである自分の元にこんな色物のGSがいるなんて恥ずかしいにもほどがある。
しかもセクハラ場面まで放送されたとなれば情状酌量の余地無し! うん。完璧。と自己完結しているもんだから制裁の威力は格段にあがっている。
何しろ普段なら吹き飛ぶはずの横島がそのまま前のめりに倒れるぐらいの本気の一撃だ。
拳の衝撃は内部に蓄積されたらしい。
クマでも悶絶しそうな脾腹への痛打を受けたにもかかわらずまだ動こうともがく横島もさすがにタフである。

「ぐ…だ、だって…隊長の紹介で…美神さんには内緒って…」

「ママがそんなことしてなんのメリットがあるって言うのよ!」

「…韓流スター…のコンサートの…特別席のチケット…とか言ってましたけど…」

「…それでママったらこのところ妙に機嫌が良かったのねえぇぇぇ!!」

「ぐえぇぇぇぇぇぇ!」

横島の背骨の上に乗せた足に体重を預けながら令子が連絡のつかない母に対して怒りの咆哮をあげる。
いつもは止めに入るおキヌも今回は令子と同感なのか少し困った顔で笑うだけ。
このままではチャーハンの中のエビよりも丸まってしまうと横島が必死にもがいた時、まるで三人をあざ笑うかのように横島の携帯が鳴った。
器用にも踏まれたまま携帯を耳に当てる横島の顔が驚きの表情を浮かべ、次にその鼻の下が倍ぐらいに伸びた。

(やっほー。横島クーン。テレビ見たー?)

「え?…あ…瀬尾さんですか?」

(そだよー。お久しぶりー。もー。なんで電話くれないのさー。)

「え? 電話しても良かったんすか?」

(ショックー! ゆみは嫌いな人にテル番なんか教えないよー。)

「す、すんません…」

(あははー。いいよー。んでさー。今度なんだけどーゆみの友達たちがキミに会いたいって言ってるんだー。会えないかなー。みんなおっぱい大きいよー。)

「命に代えましても!」

(あはははー。キミのそういう正直なところが好きさー。他の人はさー。セクハラだか何だかで格好つけちゃってさー。見たいのに見てませんなんて顔してるのさー。その点、キミは裏表が無いからいいよねー)

「はっはっはっ。俺の霊力の源は煩悩っすから!」

(そうだったねー。んじゃまたねー。今度はキミから電話くれると嬉しいなー。)

「任せてください!」

踏まれたまま器用にぺこぺこと頭を下げつつ電話を切ってから横島は気がついた。
自分は今、死地に捕らわれていたのだということを。
しかもどうも今の通話の内容はダダ漏れだったらしい。
恐る恐る見上げてみれば天使の笑みを浮かべた令子が神通棍を構えている。

「え…美神さん…」

「ん? なあに?」

「いや…お仕置きされる理由がわからんのですけど…」

「えー。しないわよー。お仕置きなんてー。あんたのプライベートまで口出す気はないわー。」

と口では言いながら令子の右手は神通棍を握ったまま、そして霊気を漲らせつつ左手を差し出した。

「へ?」

「んー。私も芸能人に興味あるしー。ちょっと携帯貸しなさい。」

笑顔であるが命令形。
逆らえば命がピンチ。
だが折角の巨乳美女とお近づきになれるチャンスがこの機械には詰まっている。
渡すわけにはいきませんと目で訴えつつイヤイヤと首を振れば、笑顔のままコメカミを引きつらせる令子の手の神通棍が霊気を漲らせてジャキンと伸びた。
逆らえばそこにあるのは「死」の一文字と目が語っている。

「へ、変なことはしないでくださいよ…」

「するわけないじゃない…えいっ! あー。しまったー。うっかり手が滑って携帯がラーメンの残り汁の中に落ちてしまったわどうしましょう。」

「今、あんた「えいっ!」とか言ったやろうがぁぁぁ!!」

哀れお宝番号を記録した携帯は食べ残したカップ麺の汁の中で瀕死の状態になっている。
救出に行こうにも背中に乗せられたままの令子の足の下でジタバタともがくしかない横島の前に一人の天使が舞い降りた。
天使は穏やかな笑顔を浮かべ、ラーメン汁をたっぷり吸った携帯を助け出すと手にした雑巾で優しく拭う。

「大丈夫ですよ。横島さん。」

「おキヌちゃん…」

「今の携帯は防水とかもちゃんとしてますから、ちょっと水に浸かったくらいじゃ壊れませんよ…」

しかし携帯会社もラーメンの汁までフォローしてないのではと横島が口に出す前におキヌはニッコリと笑って見せた。

「乾かせば大丈夫ですよ…………というわけで電子レンジへゴー!!」

「ノオォォォォォォ!!」

必死に一歩伸ばした手は届かず、ついに横島の携帯はマイクロ波の集中砲火の前にその生涯を終えたのであった。


さてその頃、託児所にひのめちゃんを預けた美智恵さんは、都内某所で「ゴ様LOVE♪」と書かれた鉢巻ハッピ姿で元気にペンライトを振っていたそうな。


おしまい


後書き
ども。犬雀です。
えー。今回はまた馬鹿なお話を一つ。
犬は好きなんですよ。雑学番組って(笑)
ではでは

1>いしゅたる様
犬のネタは古いですからー。昔のアニメとかはネタの宝庫だったりして(笑)

2>スケベノビッチ・オンナスキー様
はい。気が向いたら書いて見ますです(笑)

3>十六夜様
HPはねー。うーん。やはり共有パソだと問題が多いです(汗)

4>零式様
続編ですかー。ネタが溜まれば書くかもです(笑)

5>zero様
成長りんぐぅですか。それも面白いかもですねー(笑)
巨大化りんぐぅはチラッと書いてたりしますが…

6>k82様
スパロボは好きです(笑)

7>Ques様
どうやったんでしょうねー?(笑)

8>武者丸様
りんぐぅも喜んでいるでしょう(笑)

9>TA phoenix様
道民の犬はタマネギと牛乳とお魚が大好きなのです(笑)

10>柳野雫様
アイドルに試練はつきものなのです(笑)

11>にく様
第二第三のりんぐぅ…今、犬の脳内で「人蚊少女」という謎の生物が蠢いてます(笑)


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