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「新釈・金の斧、銀の斧(GS+有名な童話)」

スケベビッチ・オンナスキー (2006-08-07 00:16)

良い歳をしたの童話シリーズ そのいち

       金の斧 銀の斧

昔々あるところに、具体的に言うと平成7年ごろの東京に、大変に働き者のゴーストスイーパーが住んでおりました。
類稀なる美貌とスタイルを誇る彼女、名前を美神令子といいます。

彼女はお金仕事が大好きでしたので、どんな苦労も助手に押し付けてものともせずに日々仕事に励んでおりました。

助手の名前は横島忠夫。
頑丈さとはしっこさが取り柄の平々煩々な少年でした。誤字ではありません。
彼は美神さんの色香に惑わされて、時給たった300円という信じられない薄給で命すら危ない激務に励んでいたのです。
その労力を他に向ければよっぽどマシな生活ができそうなものですが、それをいってはお終いです。
彼は、激務の代償とでも言わんばかりに、日々雇い主のシャワールームを覗いたり過剰なスキンシップをとろうとします。しますが、その度に絶命寸前の折檻を受けているのです。
それでも彼は不屈の闘志を持って挑みます。いい加減屈した方がいい、と誰もが思いますが。

案外マゾっ気があるのかもしれません。

雇い主の美神さんも、そんな不届き者をなぜか解雇しようともしません。
なぜか。
実は彼女は横島くんのことが好きなのです。
好きで好きでしょうがないのです。
もうむっちゃ好っきゃねん、なのです。
ラヴ、なのです。
でも、彼女はプライドが無駄に高いので、もともと丁稚だった横島くんのことを好きだなんて認められないのです。
自分から好きだと相手に「好きだ」と言うのは何だか負けたような気がする、というのもあります。
単に照れくさいというのもあります。
だから横島くんに対しての態度が乱暴になってしまうのです。
今風に言えば「ツンデレ」というやつです。
二十歳にもなってどうかと思いますが。

だから、今日のように、除霊現場の山奥で
「いっぺん死んで来おおおおぉぉぉい!」
と叫んで神通棍を横島くんに叩きつけるのも、
「すんませぇぇぇんっ」
と横島くんが血塗れになって倒れるのも割と普通のことなのです。

でも、今回は場所が悪かったのです。
山の急斜面で血塗れになった男性が勢いよく倒れるとどうなるか。
皆さんも一度は経験したことがあると思いますが、血塗れで急斜面に倒れこむと、
「うひゃあああぁぁぁ 転がるうううぅぅぅ〜」
のです。
「のっひょぉぉぉぉぉぉぉ〜」
…なんだか楽しそうに見えますが、きっと気のせいです。

「ちょっと横島くん!どこまで転がってくの!」
美神さんも呆れた様子です。

「あー、楽しそうなとこ悪いけど、その先にね」
ため息混じりに美神さん。
「泉があるから、落ちるわよ」

と言った時には、すでに遅し。

ばっしゃぁぁぁん!

と音高く、横島くんは泉に落ちてしまいました。

これは大変、と美神さんはあわてます。
だって、除霊も終わってもはや帰るだけなのです。ずぶ濡れの横島くんを車に乗せたら車が汚れてしまいます。
…ということにしておきましょう。

「ったく、しょうがないわね」
美神さん、不承不承といった風情で横島くんの転げて行った方へ歩き始めます。本当は横島くんが心配なくせに、素直じゃないにも程があります。

少し歩くと、美神さんの目の前に青く光る泉が現れます。
たった今人間が一人落ちたとは思えないほどの静謐さを湛える泉は、神秘的な何かを感じさせ、そのしじまを破ることすら憚られます。
でも、
「横島くーん、はやくあがってらっしゃーい」
美神さんがそんなことを気にするはずがありません。
不躾に呼ばわると、突然水面が泡立ちます。そして水底から不思議な光が溢れ出てくるではありませんか。

しばらくして光がやむと、不思議なことに、水面に一人の女性がたっていました。

「私はこの泉の女神です。この泉に横島さんを落としたのは貴方ですか?」
その女性は慈愛溢れる微笑みをその美しいかんばせに浮かべ、その胸と同様に慎ましやかな口調で言いました。

美神さんは女神様をみて唖然としています。
さすがに畏れ多いと思ったのでしょうか。

それでも気を取り直して口を開きます。

「えーと、何やってるの?


おキヌちゃん。……楽しい?」

…………

「何を言ってるのか分かりませんね。私はこの泉の女神ですわ。そんなおキヌなんて美少女聞いたこともありません」
じつにさらりと切り返す女神様。だけど蟀谷(こめかみ)にでっかいあせがういてます。べたべただなんて言っちゃいけません。

しばらくの見つめ合いの末に、美神さんは女神様の言葉を受け入れることにしました。彼女はおキヌちゃんじゃありません。だって自分の事務所にこんなイタい人がいるわけありません。
「で、女神様。なんの用なの?確かに横島くんおっことしたのは私なんだけど」

すると女神様は満面の笑顔とともに言いました。
「貴方が落としたのはこの
 普通の横島さんですか?
 それとも、この

 スーパーリッチマンで煩悩も薄めな横島さんですか?」

するとどうでしょう、女神様の両脇に横島くんが二人現れたではありませんか。
ところでスーパーリッチマンというのはカッコ悪いですね。

「美神さーん、美神さんが落としたのは俺っスよね?ね?」
左側の横島くんが情けなさそうに言いました。まったくいつもの通りです。

「ふっ、美神さんが落としたのは俺に決まっているだろう?ねぇ美神さん」
右側の横島くんは余裕綽々です。よくみると着ている服もえらく上等ですし、ポケットや懐から貴金属やらが溢れています。まるで怪しげな開運グッズの広告のようです。

美神さんは悩みます。
美神さんは横島くんが大好きですが、同じくらいお金も大好きなのです。

「リッチな横島くんを選べば、横島くんもお金も手に入るわ。でも、なんか元の横島くんとは違わない?
かと言って普通の横島くんは…」
見るからに貧乏そうです。自分のせいですが。
美神さんは深あぁくため息をつきました。

「ヒントその一です。スーパーリ(略)横島さんは、大金持ちで煩悩薄目な以外は完全に元の横島さんとおんなじですよー」
まるでクイズ番組です。
そもそも元のとおんなじとか言ってる時点で偽物確定です。

「あ、ああそうなの?」
ここは考えどころです。古今東西、欲をかいて結局損をしてしまう逸話は枚挙に暇がありません。
うまくいけば横島くんと二人あまあまでリッチでゴージャスな暮らしができるかもしれません。実際には美神さんは恋愛に関してはへたれなのでそうはうまくいかないでしょうが、夢をみるのは自由です。
しかし失敗したら横島くんを失ってしまうかもしれません。
それは最悪のビジョンです。

美神さんは意を決して口を開きます。
「…っ、私が落としたのは、普」
「あ、そうそう、ヒントその二ですよ。
 私は素直なので、貴方が落とした、と言った方を素直にお返ししますよ」
「スーパーリッチマンで煩悩も薄目な横島くんよっ!

絶望に打ちひしがれる普通の横島くん。
女神様は満面の笑顔で、
「貴方は実に(欲望に)正直な人ですね。
 では、貴方の落としたスー(略)島さんです」
ス(略)くんを差し出し、
「では、もうお会いすることもないでしょう。さようなら。お幸せに…」
という言葉とともに(普通の横島くんと一緒に)消えて行きました。

そして美神さんは横島くんとのリッチ&ゴージャスなラブラブライフを夢想してほほが緩むのを止められませんでした。


「俺、事務所を辞めさせてもらいます。長いことお世話になりました」

ス(略)くんは、その翌日、爽やかに去ってゆきました。
お金がある以上、危険なバイトを続ける意味はないし、煩悩も薄いので美神さんの色香に惑わされることもありません。
ある意味当然のことでした。
高級マンションを購入し、安アパートもひき払ったそうです。
「拙者もついていくでござるよっ」
横島くんを師と慕う人狼の少女も去ってゆきました。
下宿していた巫女さんの格好の女子高生もなぜか見かけません。

「あー、まあ、きっと何かいいこともあるわよ」
居候の狐と、
「元気を出してください、オーナー」
事務所に憑いている人工幽霊に慰められる美神さんは、背中を丸めて肩を震わせていたということです。

結局欲をかくと損をする、というお話でした。

めでたしめでたし。


おまけその1。

「俺は、俺は捨てられたんやー!」
「まーまー、横島さん。横島さんはここで私と一緒にくらしていきましょ?」
どことも知れぬ場所で、身も世も無く泣いている横島くんを、優しく慰める女神様。なんだかとってもうれしそうです。
「ここならビンボーも死にそうになることも無いですよ?
それに私でよければ……きゃっはずかしー!」

二人は(すくなくとも女神様は)幸せに暮らしたということです。


おまけその2.

「ふ、ふふ、ふふふふふふふふふ
「ミ、ミカミ?」
「オーナー?」

背中を丸めていた美神さんが突然笑い出したので、狐も幽霊もぎくりとしました。
だってそれは間違いなく
「コロス」
決意を固めた笑いだったのですから。

美神さんはやおら立ち上がると、壁にかけてあった神通棍を掴みます。
机の中の拳銃を引っ張り出し、弾丸を確認します。
ガレージで、車に仕込まれたミサイルをチェックします。

「タマモ、人工幽霊壱号。ちょっと出かけてくるわね?」
微笑む美神さんに、狐も幽霊も何も言えませんでした。だって怖いから。

美神さんは車に乗り込んでドラッグレースも斯くやの勢いで発進します。
クソ女神!ぶっ殺す!
それは逆恨みというかやつ当たりというか。

「待ってなさいよー!」


今度こそ、終わり。


あとがき。
爺さんの話を煮詰めてたら自分が煮詰まってしまい、ふと気がつくとこんなモンかいてました。
だから「そのに」があるかどうかは分かりません。

まあ、ありがちな話ですが。実際ドラえもん読んでて思いついた話だし。
ところでタグを使ってみたんですがどうでしょう?見辛いですかね?

爺さんの話に予想を上回る数のレスがついてて、有難いやら恐れ多いやら。
爺さんの方も続きは書いてます。読んでくださる方がいらっしゃる以上は書きます。いらっしゃらなくても書き続けるつもりですが。
レスへの返答はそちらで書かせて頂きます。

では、読んでいただき有難うございました。
……読んでくれた方、いるのかな…

追記・私は美神さん好きですよ?今回扱い悪いけど。


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