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「貧乏神は果たして己自身は貧乏なのだろうか(命題)(GS)」

滑稽 (2006-07-23 01:46)

そのオファーが来た…というより、その決定が彼女の元に舞い込んだのは、そういう意味では突然だった。

「あら、アンタが一人で来るなんて珍しいわね、福の神」
「いや、今日はちょっとおまえさんに用があってなー」
「あら、私に福でも授けてくれるつもり?」
「んー、福っちゃ福やろかね」

美神事務所にその神―所長にしてみれば喉から手が出るほど欲しい福の神―がやってきたのだ。
珍しく、一人で。

「なあに?小鳩ちゃんから私に乗り換えるとか?それとも、知り合いの福の神を紹介してくれるとか?」

銭がかかると途端に愛想のよくなる彼女。

「いんや。アンタが死んだ後、アンタの霊格が神に昇華することが決定した、って話をしにきたんよ」
「…なーんだ」

嬉しくない訳ではないのだが、彼女にしてみれば今即物的に手に入る福でないなら、あまり興味がないのも事実。
一気にぐたっとする美神だが、所員二人は笑顔でそれを祝福する。

「へえ、凄いっスね美神さん」
「そうですよー!私なんて三百年かけても山の神になれなかったのに!」

少々ピントのずれているおキヌの発言にも苦笑で返し、抑揚の減った口調で問う。

「あーそー。そりゃありがとー。で?何の神様になれるの?」

彼女はこのとき気付くべきだったのだ。
神への昇華、が決定したのなら、目の前の福の神よりももっと身近な小竜姫辺りがそれを教えに来るのが普通なのだ、という事に。
何故、この福の神がわざわざ小鳩から離れてここへ来たのか、という事に。

「えーとやな。九割九分九厘九毛九糸の確率で貧乏神になるんが決定したんやね」
「…え?」
「……はい?」
「………福の神、の間違いじゃねえんか?貧」
「貧乏神やでー。ちなみに残りの一糸の確率でも、福の神になれる訳やないでなー」
「な…な…」

絶句する一同。
一人平然としていた元貧乏神がしっかりと耳栓をし、そっぽを向き、更に両手で耳を押さえた直後。

「なんでえええええええええええええええええええ!?」

音の波動が事務所の窓を叩き割った。


「…説明してちょーだい」

現世利益最優先、を標榜する彼女ではあるが、幾らなんでも死後の在り様が貧乏神である、という話は捨て置けない。

「えーとやな。銭儲けへの飽くなき執着心、及び銭の放出への病的なまでの嫌悪、社会法理に対する特に金銭面での不協力度。経費対所得のあんまりって言えばあんまりな差異、ああ、後は低所得層からの即物的な呪いが外的要因としては挙げられるわなー」

…散々である。

「あ、ちなみにアンタは貧乏神の憑依を霊力で払いのけとるから、その分の霊的な負債が死後の貧乏神化に拍車をかけとるんやねぇ」
「うわあ…」
「それ…救いがないですねえ」
「何でええ…」
「そりゃあ、アンタの行いやでー。もしアンタがちゃーんと税金収めとったら、どれだけの生活に苦しむ人たちが救われたんやろうかねー」
「ぐっ…!くくくっ…!」

冷静かつ的確な一言に、だが美神の忍耐も限界を超えた。

「却下よ却下却下却下あああああああああああああ!何で!?何で私が貧乏神なんかにならなきゃなんないのよっ!?全面的に根本からのやり直しを要求するわっ!」
「まあ、そうだよなあ…。貧、実際その話って、やり直しできないのか?」
「一応、話し合いの場は関係各所を五つくらい経由するねん。そりゃそやろ?人を神に格上げするんや、それくらいの手間はかけるわい」
「…で?」
「関係各所が満場一致。過去八百年はなかった快挙なんやで?」
「だからって貧乏神になることのどーこーが、嬉しいっていうのよ!?」
「そやけどなあ、一応既に神として祀られる名前もきまっとるんやで?『銭日照大美神(ぜにひでらすおおみかみ)』言うてな?あの由緒正しい女神さまの名前を捩ったという霊験あらたかな―」
「単なるパチモンじゃないのよおおおっ!?」
「何言うねん!その名前からも判るようにやな、ワイら貧乏神の歴史に名を残す伝説の貧乏神になる、って満場一致で確信がっ!」
「や、貧、一応お前今福の神だろ…」
「あのー…横島さん、多分突っ込むところ、そこじゃないんだと思うんですけど…」

確かにそこではない。なので、という訳ではないのだろうが、今度はおキヌが美神に声をかけた。

「でもほら美神さん。別に貧乏神になるからって、美神さんが直接貧乏になるわけじゃないんですし」
「そうっスよ!ポジティブに考えましょう、ポジティブに!」
「だって、それって私が貧乏に括られるって訳でしょう!?貧乏にっ!?」
「あー…」

だが薄給で扱き使われるハングリー精神満載の所員は、不屈だった。

「な、ならほら!貧みたいに憑いた相手に試練をやらせて、福の神になれば…!」
「それです!それですよ横島さん!」
「そりゃ、横島君みたいに成功すればの話でしょうが!」
「そやな。それにこのねーちゃんの気性からすると、いらついて答えを先に言っちゃいそうやないか?」
「「…ああ!」」
「ちょっと!?」
「「…あ」」

…だが、じゃあどうしろというのだろうか。
と、頭を悩ます横島の脳裏に、一つ閃くものがあった。

「で、貧。残りの一糸…一糸って何%なんか判らんのやけど、そっちにいける可能性って、どういうのがあるんだ?」
「それよっ!横島君!」

今度こそやっと元気を取り戻す美神。

「えーとやね。…『銭よりも大事なものを見つける事』…やね。ちなみに、それに即応した神へと変貌するから、何になるかはまだ判らんわ」
「銭よりも大事なもの…ねえ。そりゃ美神さんにとっては見つけにくいだろうなあ…」
「…むー」

何故か不機嫌そうなおキヌを他所に、考え込む横島。

「…」

そしてその時、美神は美神で頭脳をフル回転させていた。

(大事なもの…大事なもの…お金…じゃ駄目よね。お金じゃなくて…
(横島君…?駄目、駄目よっ!そんな、あいつから言わせなくちゃ…ってそれどころでもないのよ!
(ああ、でも意地より大事…意地…っぱりは私の美徳よね、美徳。
(だけど、大事なものさえあればいいんだったら…横島君を横に置いておけば大丈夫なんだし…あーうー…
(横島君<意地だけど、お金+横島君になると…んー
(やっぱり、お金+横島君>意地よね…!

がっ、と突然目を見開いた美神は、突如横島の方へ視線を向けた。
「横島君っ!」
「は、はいっ!?」
「あのね、私ね…!」


…この後、とりあえず色々あったのだが。
……彼女が生涯を終えたのち、どういう神に昇華したのか。
………
作者には怖くて書けない。


終わりです


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ども、お初です。滑稽というモノ書きです。
なんとなく電波に苛まれて、一本書いてみてしまいました。や、単純に「銭日照大美神」という言葉を連想してしまっただけなんですけれども…。
ちなみに、銭日照…は憑いた人間の富を吸い込んで自分の見た目だけゴージャスになるというタイプの貧乏神です。酷いデスネ!
公式の設定と違うー、とか、色々ご指摘ご不満のほどはございましょうが、御笑読いただけましたら幸いです。
それでは。


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