――いつもおまえは無邪気に前を歩き、その後ろ姿を私に見せてくれる。
潜伏先の隠れ家にろくな物が無かったという大義名分を掲げて連れ出したデート。
一通り買い物を終え、車?へと向かう道すがら。
無防備に前を歩いていたおまえが、突然私に向けて振り向いた。
「どうしたんスか?幸せそうに笑っちゃって、ルシオラ様」
「えっ?」
どうやら自分でも気付かない内に私は顔が綻んでいたらしい。
「なんでもないわ。ただヨコシマに私特注の首輪でも付けようかなって」
――おまえがドコにも行かないように。
私の冗談ともつかない提案におまえは
「うえ〜、なんか今パピリオが使ってるヤツよりきつそうっスから止めてください」
半歩腰を引き、いつでも逃げ出せるような姿勢で答えたっけ。
「え〜!どうして?アレより高性能なのよ?」
悪乗りしてさらに勧めるご機嫌な私に
「なんつーかこれ以上ご主人様を増やすとヤバい気がする!ち、違うんや!ワイはMやないんや〜!!だからそんな目で見んといて〜!!」
と見守っていたギャラリーの白い目を感じて、少し?いや思いっきり引いていたわね。
あのね、私達に照れた様にオレンジに染まった東京タワーで慰めてくれた後、私の望みが少し変わったのよ。
「私達二人ってホントに子供だから、二人で一緒にそっと育んで生きたいなぁ・・・」
おまえは色々と経験が足りないから、私は精神的な年齢が身体にあってないから。
一緒に笑って、一緒に泣いて、一緒に成長して、そして一緒に大人になる。
――この思い、ちゃんと届いてくれるかな。
「言葉では信じてるって言ってくれるけど・・・」
困った様にしながらも幸せそうな独り言。
でも実は私、少し不安だったのよ?
初めて見たのは逆天号が修理中の為に、電車での移動している時だったと思う。
「ねぇ?ヨコシマ。ねぇってば!」
「・・・えっ?なんか呼びました?」
「もう!しっかりしてよ。電車から降りるわよ」
私が叱ると、可愛い妹達や頭の硬いち○こ口の上司がホントに姉弟みたいだと笑っていた。
こんな風におまえは不安な顔して、度々私が呼んでも気付かない時があった。
――そんな時私は歯痒さに押し潰されそうになった。
魔族、人類の敵、そして短い命。まるで私の全てがおまえに好意を向けるのすら分不相応だと言われているみたいだったから・・・。
私が見られる最後のおまえの後ろ姿を見送った後、走馬灯の様に今までの記憶が流れていたがソレも限界のよう。
――あぁ・・・、ヨコシマの事を私はちゃんと守れたかしら。
ウソついてゴメンね。そうでもしないと優しいおまえは助からない私に霊力を無駄に使っただろうから・・・。
地上の混乱のお陰でいつもより輝くこの満天の星空へと目を向ける事無く瞼が落ちていく。
――少なくとも誰よりもおまえの事を思ってる自信はあるわ。
だから私にはこうするしかなかった。ヨコシマが傷付くのが判っていたけど、死なせたくなかったから・・・。
「一緒にここで夕陽を見たね、ヨコシマ・・・・・・」
もう殆ど何も見えない。代わりに瞼に映る赤い何か。
それは何時か一緒に見た夕陽。
「昼と夜の一瞬のすきま――――」
ああキレイ。なんてキレイ。今まで見た夕陽の中でおまえと見たあの夕陽は一番キレイ・・・。
「短い間しか見れないから・・・・・・・・・きれい・・・・・・」
ポウッ・・・・・・。
後書き
初めまして、以前から他の方のを読まして戴いてですが、トチ狂ったのかスキマスイッチのある曲を聞いていたら思い浮かんだので初投稿してしまいました。
短い上に拙い駄文でしたが読んで下さってありがとうございました。
出来れば感想欲しいなぁ・・・。