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▽レス始

「プロポーズ(GS)」

紫水晶 (2006-07-08 23:08)

 そわそわと。喫茶店の片隅で、何時にも増して落ち着かない気持ちで、恋人を待っている。待ち合わせの時間に間に合うようにと仕事を急いで片付けているだろう恋人の様子を想像して、口の端に小さな笑みが浮んでしまう。 
 そして、思い出したかのように、鞄の中に入れたジュエリーボックスを確認する。これがなければ今回、恋人を呼び出した意味がなくなってしまうからだ。

 親友とクリスマスにあわせて行った合コンで出逢い、ケーキの世界に迷い込み、雪ダルマとサンタを相手に一緒に戦い、そのまま付き合いだして早六年。あの頃はまさかあんなに長い付き合いになるとは思ってもみなかった。お互いに意地っ張りだから、くだらない事でしょっちゅう喧嘩して、破局の危機を迎えたことも何度もあった。その原因のくだらなさに、親友に呆れられる事もしばしばあった。それでも別れずに今まで付き合っているのだから、相性はいいのだろう。

 先々月、親友の結婚式があった。自分たちと同じく、合コンで出逢い、自分たちと違って破局の危機を迎えることなく付き合っていた二人が結婚に踏み切った理由は子供が出来たからで、新郎の大男は新婦の父に一発殴られたと苦笑いしていた。神族や魔族まで参列する結婚式は世界広しと言えども、自分たちしか経験できないだろうと恋人が笑って言い、それを苦笑交じりに肯定した物だ。
 その後、ウエディング・ブーケを恋人が偶然キャッチし、そのことで一波乱あった時思ったのだ、自分たちも結婚しようと。

 さり気なく指輪のサイズを聞いて、宝石店を渡り歩き、エンゲージリングを買った。店員がちょっと戸惑っていたのがおかしかった。指輪は派手でもない、プラチナのシンプルな物にした。職業柄、激しく動き回るので、どこかに引っ掛けて石を落とす心配もなくていいだろうという判断からである。
 その後指輪を厄珍堂に持って行き、指輪に護符を刻んでもらった。はっきり言って気休めにしかならないが、それでも構わなかった。指輪に護符を刻み終わったと連絡を受けたのが先日、すぐに受け取り、代金を支払い、恋人に連絡し、今日会う事になったのだ。

 物思いに耽っていると、喫茶店の入り口に恋人の姿があった。ぐるりと店内を見回し、自分に気付くと、こちらに向かって歩いてくる。
 注文を取りに来た店員が下がっていったところで、鞄からジュエリーボックスを取り出し差し出す。驚いてこちらを見ている恋人に、
「結婚しましょう、雪之丞。」
弓かおりは満面の笑みを浮かべて言った。


初めまして、紫水晶と申します。初めての投稿なのですが、いかがでしょうか?少しでも楽しんでいただけたなら嬉しいです。


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