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▽レス始

「雨上がり(GS)」

ろろた (2006-07-08 17:49/2006-07-08 17:59)

雨がシトシトと振り続ける。今は梅雨。雨が降るのは仕方がない季節と言えた。

そんな中、店の軒先に2人の少年少女が居た。雨宿りをしているのだ。

自転車のハンドルを持ち、何とはなしに雨を見ているのは高校生ぐらいの少年。Tシャツにジーンズ、頭にはバンダナを巻いている。外見は平々凡々で、可もなく不可もない。

少女、前髪は炎の様に赤く、長い後ろ髪は白金みたいに輝いていた。何とも変わった配色ではあるが、染めている不自然さは全くなかった。外見年齢は中学生程で、空を見上げている瞳は早くやまないかと願っていた。快活さが売りの様だ。


「ジメジメしているな」

ウンザリといった感じで、少年、横島忠夫はうめいた。
この季節は不快感だけがやたらと高い。鬱陶しくて仕方がない。

「そうでござるな。拙者の髪は、湿気でべとついているでござるよ」

犬塚シロの言った通り、長い髪は体にへばりついている。雨に少しだけ打たれたのも原因だが。

彼らはいつも通りサンポをしていた。ロープを括りつけた自転車に、シロが引っ張って行くという世界中で彼らしかやっていないサンポだ。そうしたら、途中で雨に降られ、酒屋の軒先で雨宿りをする事になった。

向こうには田んぼが見え、更に先には山々が見えた。どうもまた東京都を走り抜け、他県まで来てしまった。
こうまで長距離を走破―ただ自転車に乗っているだけに見えるが、車と変わらぬ速度で走るので、返って疲れてしまう。横島は心身的にも辛い筈なのだが、どうしても付き合ってしまう。目下の愛弟子にはとことん甘いなと思い、チラリと隣りのシロを見た。

悲鳴が喉まで出掛かった。何故なら、彼女は彼と同様に雨に濡れ、ノースリーブのシャツが透け、ブラジャーが見えていたのだ。
あえて分類すると、肩紐なしの真っ白なスポーツブラ。何とも彼女らしい下着であった。

ついつい見続けてしまう。常日頃、ロリコンではないと、横島は言ってはいるが、彼女の肢体は中々に素晴らしいものと言えた。
胸はまだまだ発展途上のそれだが、今の時期でしか発せられない魅力を見事に表現していた。

「先生?」

「お、おう。何だ!?」

いきなり話し掛けられ、心臓が止まるかと思った。わざとらしく咳をし、視点を胸から、顔に移す。

「黙って、拙者を見ていた様でござるが、どうしたのでござるか?」

何の邪気もない顔だったので、横島の内に罪悪感が芽生える。いくら煩悩溢れる男とはいえ、さすがに弟子に欲情するのは情けないの一言。さて、どう誤魔化すか? いきなりの難題が突き当たってしまった。適当な誤魔化しだと、シロに感づかれる可能性がある。まだ子供とはいえ、人狼の少女。勘がやたらと鋭い時があるのだ。

「……ほら、お前雨で濡れているだろ。風邪を引くかもしれないなあ、と思ったんだ」

横島は内心、ガッツポーズを取る。我ながらうまい嘘を吐けた。

「心配後無用。今日は気温が高いので、体を冷やす事はないでござるよ」

自らの胸を叩いて、シロは元気だとアピールした。
横島の虚言に引っ掛かったが、同時に悪い事をしたと悔やんだ。純粋な子に嘘を吐くのは、さすがに寝覚めが悪い。シロは騙されたと、これっぽっちも思っていないだろうが。

「梅雨が終わったら、海にでも行かないか?」

そう思ったら、自然と口に出た。

「海? いいでござるな。先生と行けるなら、嬉しいでござる」

ニッコリとシロが笑うと、横島もつられて笑った。

「さすがに遠いところまではいけないけどな」

「いいでござるよ。拙者は先生と一緒だけで、楽しいでござるよ」

「そっか」

横島は自然な動作で、シロに頭に手を置いた。彼女はスンナリと彼を受け入れ、尻尾をパタパタと揺らして喜びを表した。
彼女の体にこうやって振れていいのは、今のところ横島だけである。その事を彼は知らない。

撫でるが、やはり水分を多く含んでいた。このままでは風邪を引くかもしれない。シロは引かないと言い切ったが、それでも万が一がある。

「待ってろ。店の人からタオルを借りてくる。やっぱ拭いた方がいいだろ」

自転車のスタンドを下ろし、横島は店の戸に手を触れた。

「え、でも……」

「風邪引いたら、海行けないだろうが。まさか、約束を破るつもりか?」

悪戯っぽく、横島が微笑むと、シロはブンブンと首を横に振って否定だと示した。

「じゃ、待ってろよ。すぐ持ってくるから」

横島は店に入って行った。


「あ……」

シロが見上げると、雲の隙間から日が差し込んできた。いつの間にか、雨は止んでいた。彼女は目を細め、空を見る。横島と海に行けるところを想像し、今年の夏が暑くなると確信した。
心を熱くする素晴らしい夏はすぐそこだ。


あとがき
梅雨真っ盛りです。とは言っても、私が住む地方ではあんまり降っていない気がします。中途半端に曇りが多いんですよねえ。
梅雨入り前の方が降っていたような。


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