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▽レス始

「白面金毛九尾(GS+???)」

テイル (2006-07-03 03:08/2006-07-04 08:58)

 白面金毛九尾。
 人々の憎悪、憤怒、怨恨、絶望。様々な負の感情を核としてその存在を確定させた、生まれながらにして邪悪な存在。
 その性は凶暴にして残酷。人々の苦しみ、嘆き、悲哀や恐怖など負の感情を糧とし、故に人々を苦しめることこそが存在の意味ですらある。
 古くは中国、インドを幾度か地獄へと叩き落とし、その際の死者は数え切れない。
 苦しんで苦しんで、悲しんで悲しんで、絶望の中どれだけの人間が死んだのか。そんなことを白面の者は気にしない。ただ愉悦を持って、笑うだけだ。
 大陸で悪逆の限りを尽くした白面の者は、ある時日本に向かう船に乗り込んだ。
 はるばる海を渡って日本へと訪れんとするその目的は、語る必要もない。その存在の意味を考えたなら、自ずとわかる。
 日本へと渡った白面の者はその身を美しい女へと変え、やがては鳥羽上皇に寵愛され、政治の中枢へとその身を食い込ませた。
 それはいつものやり方だった。時の世の権力者に取り入りその身と心を堕落させ、人間の手で人間の世を乱させるのだ。自らの手を汚さず、堕落させた人間の権力者に全てを行わせるのだ。
 国が滅ぶ時、時の権力者の傍らに佇む絶世の美女。だから白面の者はこうも呼ばれる。……傾国の美女、と。
 しかし日本において、事はそうは運ばなかった。朝廷に使える陰陽師やこの国の化け物によって白面の者は傷を負わされ、目的を果たすこともできずに敗走したのだ。
 やがて追いつめられた白面の者は、自らを封印することによりその身の安全を守ろうとした。
 やがては復活し、今度こそこの国の人間どもを地獄へたたき落とす為に。
 そしてその妖狐は目論見通りに復活し、今、自分の目の前にいる……。


 妖狐は今、少女の姿をしていた。
 年の頃は十五か十六。自分よりも年上だ。初めてあった時は自分と同じぐらいの年に化けていたが、今は化けていない。
 妖狐はとても嬉しそうな顔をしながら、きつねうどんをすすっていた。思わず見ほれそうになるほど、綺麗で魅力的な笑顔だ。
 それは別に、自分だけが感じていることではないと思う。街を歩けば誰もが振り返るだろうと、素直に思えるほどの美少女なのだ。伊達に傾国の美女と言われていたわけではないのだろう。
 ふと、自分の丼からお揚げを箸でつまみ、彼女の丼に入れてやった。目の前にあった丼の中身はきつねそばだが、そばだろうがうどんだろうがお揚げに違いはあるまい。
 妖狐は驚いたように自分を見て、「いいの?」と聞いてきた。
 無言で頷くと、彼女は弾けんばかりの笑顔で礼を言い、即座にかぶりつく。
 狐がお揚げを好きだというのは迷信だと思っていたが、この姿を見る限り本当のようだ。
 目の前で嬉しそうにお揚げをかじる美少女をじっと見た。
 傾国の美女。生まれながらにして邪悪な存在。そう彼女は呼ばれ、認知されている。……とてもそうは見えないのに、だ。
 しかもその為に彼女は、生まれたばかりの時にGSに追われ死にかけたことがあるそうだ。槍に追い回されるよりはマシとはいえ、恐かっただろうし痛かっただろう。彼女は敵じゃないのに……。
 二枚のお揚げが入ったきつねうどんを平らげ、妖狐は、タマモは満足げな溜息を吐いた。
「おいしかったぁ」
 この姿のどこに脅威を覚えるというのだろうか。そりゃ、白面の者といわれれば恐怖もわくけれど、タマモは違う。あの本に書かれていたような、恐い存在じゃない。
 少なくとも、誰が敵になったって、自分だけは味方でいてみせる。
 固い誓いと共にじっとタマモを見ていると、タマモは持って来た鞄から数冊の本を取り出した。漫画だ。
「これ、本当なら別れる時に渡した方が良いと思うんだけど、忘れそうだから今返しておくわね。ありがとう。おもしろかったわ。敵と設定されている奴が少々不愉快だったけど」
「………」
 無言で受け取り、リュックに入れる。
 そして言った。
「タマモ……僕は、ずっと味方だからね」
 タマモはきょとんとした表情を浮かべると、次の瞬間には吹き出したように笑う。
「私は、その本に書かれているような存在じゃないわ。日本の要の柱に封印されていたわけでもないし、人間達の怨嗟や恐怖の声を聞いてパワーアップだってしない。せいぜい気分が悪くなるだけ。昔から伝承されている内容だって違うし」
「でもさぁ、大体、こんな感じで思われてんでしょ?」
「まあね。だから殺されかけたわけだし……。でも、わかってくれる人達もいるわよ。私のことを仲間だという奴。兄弟という奴だっている。……君のように、友達だっていってくれる人もね」
 柔らかな笑みを浮かべながらウインク。自分の顔が思わず赤くなるのが感じられた。
 自分のその様子に気づいたのだろう。くすくす笑いながら、タマモは立ち上がる。
 テーブルに並ぶ二つの丼を片手で一つずつ持つと、タマモは食器返却口へと歩いた。食券制の店で、食器の片づけもセルフなのだ。
「さて、行こうか。まだまだ乗り物乗り足りないし、今日中に制覇するわよ! ほら真友くん、行こう!」
 返却口に丼を置き、タマモが振り返った。
 その顔は輝いていて、とても綺麗で、思わず眩しそうに目を細めてしまった。
 自分はなんの力もないただの人間だ。まだ子供で、財力も権力も、体力だってそんなにない。どこをどう比べたって、タマモに勝る部分は一つとしてない。
 それでも。……それでも、自分は誓いを守る。何が起きても、絶対に、自分はタマモの味方だ。最後の最後まで味方でいる。
 それが、なんの力もない友達の出来る、最良のことだと思うから。
 そして、そうしたいと望む自分もいるから……。
「ほらぁ、早く!」
「……うん!」
 タマモの催促に子供らしく大きな声で応え、走り出す。
 九つに束ねられた金髪を見ながら、はしゃいだようにさっさと歩き出す背中を追って。


 タマモ、もう一度改めて誓うよ。言葉には出さないけど。
 君に何が起きても、君が何をしても……。僕だけは最後の最後まで君の味方だよ。
 種族が違っても、性別が違っても……僕たちはいつまでも友達なんだから。
 心が通じ合ったとお互いに認める、掛け替えのない友達なんだから……。


 あとがき
 自分は今まで、金毛白面九尾とか、金毛九尾白面だとか思ってました。

 ちなみに漫画は、槍持つ少年とか、虎に似た雷獣とか、やたらと強い法力僧の親父さんとかが出てくる漫画です。
 ぶっちゃけ、うしとらです。

 文中の九尾については、結構ごちゃになってます。
 子供らしい……だろうか?


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