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「“愛子”の写真(GS)」

いりあす (2006-05-20 05:32)

注:この二次創作はフィクションです。作中に出てくる事柄・事件は、過去に実際に起きた出来事とは直接関係しませんのでご了承下さい。


『“愛子”の写真』Written by いりあす


 その日の夕方、横島・ピート・タイガー・愛子の面々、いわゆる除霊委員は学校内の霊的トラブルの解消にあたっていた。
 学校という場所は若い男女が大勢集まるせいか、彼らがわずかに発する霊気に惹かれて浮遊霊や妖怪が集まりやすい場所である。ましてこの学校については霊能力者が3人に付喪神の一歩手前の妖怪が1人いるせいか、よその学校では七不思議クラスに挙げられる派手な怪異が頻繁に起きる。
 いつの間にか除霊委員なる怪しげな肩書きを押しつけられた4人だが、事件とあればちゃんと対応している。正義感の強いピート、頼まれたら断れないタイガー、学校そのものに住んでいる愛子……横島の場合は、『除霊委員の仕事をきちんとこなせば出席日数不足と相殺する』という学校側の交換条件を呑んだというのが大きいのだが。

 この日の事件は“資料室の古い人体模型と骨格模型が動き回る”というもので、調査の結果行きずりの低級霊が入り込んで動かしているものと判明。その場であっさり除霊された。
 この4人、学校の除霊役としては適材適所と言っていい。学校での霊障や学校に出没する妖怪に造詣が深く、学校妖怪との交渉役としてもうってつけの愛子、精神感応を応用して霊障の元凶を見つけ出すのに長けたタイガー、実際の除霊や浄化、結界の設置はピートと横島がお手のもの。最近では、近くの学校から頼まれる事も少なくなかった。

 さて、除霊を済ませてさて帰ろうかと男子3人が現場を出ようとした時、
「あ…………」
 小さな呟きが背後から聞こえた。3人が振り返った先には、自分自身である机の傍らで、一冊の本を見ている愛子の姿があった。
「愛子さん? 何かあったんですか?」
「え? ううん、何でも………いえ、ちょっと、ね」
「その本がどうかしたんですかいノー?」
 愛子が手に取っているのは、古いアルバムだった。彼女の視線は、あるページに固定されていた。
「この学校の昔の卒業アルバムか何かですか……えっ!?」
「なんジャト!?」
「マジか!?」
 のぞき込んだ3人が固まる。
 古いアルバムの……そのページに並んでいる、セピア色の人物写真のうちの一枚。その中で一回り大きく印刷された写真に写っていたのは…………どこからどう見ても、愛子そのものだった。

「こ、これって、お、お前か!?」
「まさか」
 横島の質問を、愛子は一言で否定した。
「別人にしては、似すぎていませんか? この女の人、愛子さんと何か関係があるんですか?」
「……まあね。関係といえば、深〜い関係かな」
「……って事は……」
 そう言って、横島は愛子をてっぺんからつま先までじっくりと眺め、そして写真をたっぷり凝視した。
「……お前の母ちゃん?」
「バカですか、あなたは!? なんで机に母親がいるなんてステキな結論にたどり着くのよ!? この子はね、初めて私を使ってくれた女の子なの!」
「という事は、愛子サンのその外見は、この写真の女の子をモデルにしたって事カノー?」
「そういう事になるのかな。別に私、意識してこの子に似せた姿になったわけじゃないんだけどね」
「母ちゃんみたいなもんじゃねーか……あじ!?」
 しつこく混ぜっ返そうとして、愛子に手近な棚板で殴られる横島。

「それにしても、昔こんな可愛い子がこの学校にいたとは……くうう! タイムスリップして本物のこの子に会いに行きたいっ!!」
「可愛いだなんて……って、本物のこの子って何よ! 私がニセモノで悪かったわね!」
 今度はスチール製の棚板の角で頭をド突かれる横島。
「それはさて置き、この子ってどんな子だったんだよ!? やっぱり愛子みたいな委員長タイプ? それとも、もっとおとなしくて可愛い子だった? 彼氏なんかいなかったよな? 好きな食べ物は? スリーサイズは? 今いくつ? 俺たちぐらいの年の子供とかいる?」
 タフな横島、今度は愛子のモデルになった写真の少女の事を尋ね始めた。
「この子の事……知りたいの?」
 愛子は、複雑そうな表情で尋ね返した。その複雑さの意味に、横島は全く気づかなかった。
「おうとも! 昔の事とは言え、可愛い女の子の事は何でも知りたがるのが男の常じゃ!!」
「それは横島さんの常であって、男の常とは言い難いのでは……」
「横島サンが男の典型だと主張されるのは、心外ジャノー……」
 力説する横島に、ピートとタイガーは呆れていた。が、別に横島を止める様子はない。
「ピート君もタイガー君も、聞いてみたい? あまり面白い話じゃないけど……」
「…少し、興味はありますね。この写真の女の子が、愛子さんにどんな影響を与えたのか…」
「ま、ワッシも少しはノ」
「はい、満場一致! さあ愛子、キリキリ話せキリキリ!」
「ふう……わかったわよ。本当に面白い話じゃないからね?」
 男達の熱意(うち9割は横島発)に負け、愛子はアルバムを閉じて話し始めた。

「この学校が共学になる前、この場所は高等女学校だったの」
「女学校! 女の園! このむさ苦しい高校がかつては薫り高き女子校だったとはっ!!」
「静かに聞く! この写真の子は、私がまだ新品の机で、もちろん妖怪として自我に目覚めるず―――っと前、私を最初に使ってくれた生徒だった。あれは…そう、昭和15年の春の事だったわ…………」

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 あの頃の義務教育は小学校の6年間だけで、上の学校に進まずに社会に出る人はまだまだ多かったの。特に女の子が女学校に進学する事は少なくて、それなりに社会に出る意欲があったり勉強熱心だったり、家がある程度豊かでないと進学できない時代だった。
 その子は勉強が好きで、いつか社会で普通に働く事を夢見ていたわ。でもそれ以上に、彼女は学校が好きだった。学校に通って、みんなと仲良くなって、友達と一緒に勉強して、将来の夢を語り合う。あの頃は女の人が就ける職業はごく限られていたけれど、それでもあんな仕事をしたいって語り合っていたわ。

 でも、彼女たちにとって、そういう夢は急激に手の届かない存在になってしまったわ。どういう事情かわかるでしょう? ……そうよ、日本はその頃、戦争の真っ最中だったから。
 アメリカとの本格的な戦争が始まって1年経ち、2年経ち……だんだんみんなの顔から笑顔が消えていったわ。表面上は何事もないような報道の陰で、街からは男の人がだんだん減っていった。召集令状を受け取って、戦場に送り出されていったの。物資の配給は少なくなるばかりで、ラジオの放送もだんだん陰気な内容の番組が増えていって……働き手も、食べ物も、着る物も、品物も、娯楽も、笑顔も、明日への希望も……何もかもが足りなくなっていった。

 あの子たちも、やがて勉強や学校生活どころではなくなったわ。人手の足りなくなった工場で働くよう、学校の側から命令されるようになったの。最初の頃はまだ建前上強制的にとは言わなかったけど、ほとんど強制だったわ。断れなかったのかって? 断ったら断ったでひどい目に遭う時代だったのよ、あの頃って。
 友達とも離れ離れになって、あの子は工場で働いていたわ。学校の授業なんて受けてる余裕無かった。来る日も来る日も寝る間も惜しんで仕事、仕事、仕事。国のために全てを捨てて働くという事が、何より大切な事だって社会だったから、口答えや不平不満なんてもっての外。ヘマをすれば体罰は当然だし、ただでさえ少ない食事を抜きなんて目に遭う人、少なくなかったみたい。

 ……で、そうしているうちに戦争はだんだん敗色が濃くなってきて……あの日を迎えたの。
 正確な日付は、実はよく覚えていないのよ。昭和19年の、11月末か12月ぐらいだったわ。

 その夜、私のいた教室に、あの子がこっそり入ってきたの。灯火管制でほとんど明かりのない夜に、半分手探りで1階の窓際にあった自分の机……私のところにやって来て、席に座り込んだわ。あの子、工場から抜け出してきたのよ。
 あの子は、気丈な子だった。人前で涙を見せたり弱音を吐いたりしない女の子だった。でも、あの夜は違ってた。一通の手紙を手にして、私の上ですすり泣いていた。

 あの子には何歳か年上の、幼馴染みの男の子がいたそうなのよね。ちっちゃい頃から一緒で、兄妹みたいに育ったらしいわ。…………そう、恋人と言ってよかったと思う。ちょっと横島くん、そこでなんでダダこねるのよ? 私は女学校の机だったから、当然会った事は無かったけどね。私が知っている限りでは、大学で法律を勉強していたんだって。でも、彼女はその人にもう1年ぐらい会っていない。
 “学徒出陣”って、日本史の授業で聞いた事あるでしょう? 勉強も強制的に中止させられて、兵隊として戦地に行く事になったのよ、その人。それで、任地から届いた手紙を何度も何度も読んで、全部大切にしまっていたらしいけど……とうとう、我慢の限界に達しちゃったのね。
『もう、イヤよ! どうして? どうしてこんな思いをしなくちゃいけないの? みんながこんな辛い目に遭ってまで、戦争って続けなくちゃいけないものなの!?』
 1ヶ月ぐらい前の日付で、何度も何度も読み返したせいでボロボロになった手紙を抱きしめて、あの子は泣いていたわ。
『戦争なんて、もう終わってよ……みんなと一緒に、またここで勉強させてよ……あの人と、一緒に毎日を送らせてよ……』
 人前では絶対言えないような事を言いながら泣いてるうちに、あの子はうたた寝しちゃったわ。そのせいで…街に響くサイレンの音に気づくのが遅れたのよ。

 もの凄い轟音であの子が跳ね起きたとき、窓の外は異様に明るかった。その理由はすぐに分かった……街は燃えていたわ。よりによってその夜、学校のあるこの一角に空襲があったの。
 火はだんだん学校に近づいてきていた。彼女はすぐさまここから出ようとして……自分が今日、何をしたのかを思い出したわ。工場から逃げたなんてバレたら、後でどんな罰を受けるか分かったものじゃない。せめて、自分のした事がウヤムヤになるようにしたいって、そう思っちゃったのね。
 その学校は、この夜に限って守衛も誰もいなかった。だから彼女、学校から貴重品を持ち出せば、脱走した事を責められずに済むかも知れないって思いついた。この頃の学校には必ず“教育勅語”と“御真影”っていうのが必ず置いてあって、下手をすれば人の命より大事に扱われていてね……そういう時代だったのよ。外国生まれのあなたには理解しづらいと思うけど。彼女、それを取りに行ったのよ。この学校では、確かあの頃は学校の一番奥の部屋に収蔵してあったと思う。義務感でやったんじゃない。あくまで、打算だったの。

 どうにかこうにかして二つの品を持ち出して、さあ学校を離れようとしたとき、彼女は手紙を机の上に置きっぱなしにしていた事を思い出した。この二つは大事なもの、でも手紙もやっぱり大事だったのね。火は学校にも燃え移り始めていたけど、あの子は持ち出した貴重品を私の上に置いて、手紙を手探りで探しだした。
 手紙は、私の下に落ちていたわ。私の下に潜り込んで探しているときに、やっと見つけたの。
『見つけた! よかった……』
 そう嬉しそうに叫んで、慌てて立ち上がったものだから、彼女は私を担ぎ上げる形になってしまった。慌てて机を床に降ろそうとしたとき……
 天井を突き破って落ちてきた爆弾が、彼女から見て教室の反対側……廊下のそばで爆発したのよ。

 私は爆風で、上に載っていた二つの品もろとも窓から放り出された。そして、幸運にも消火のために駆けつけてきた近所の人に受け止めてもらったの。私は、ちょっと傷がついたぐらいで済んだ。たまたま吹き飛ばされた先が窓だったのが不幸中の幸いだったわ。


 あの子は……………………助からなかった。


 学校関係者から、あの子の取った行動は絶賛されたわ。命と引き替えに“教育勅語”と“御真影”を燃える学校から持ち出してくれるなんて、なんて献身的な行動なんだ、って。彼女、“銃後の学生の鑑”だなんて言われてたわ。だから、こうやってわざわざ特別に写真が載せられた。
 でも、私は真相を知っている。あの子は、そんなつもりでやったんじゃない。あの子は、ただ自分が絶望のドン底に落ちるのがイヤだっただけ。滅私奉公なんかじゃない、私的な動機だったの。もしあの子が何か言い残す事ができたとしたら、自分はそんな模範的な人間じゃない、自分のためにやっただけなんだって言ったと思う。そして、戦争のために一人ひとりの命や生活が犠牲になっていくのを美化するのは許せないって。
 悔しかったと思うよ。自分が本当にやりたい事をできないまま死んでいったら、そしてその死の意味を曲解されたら悔しいに決まってる。あの子はただ、元の生活に戻りたかっただけ。昔みたいに、友達と楽しく学校で毎日を過ごしたかっただけ。好きな人と幸せになりたかっただけ………………

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「だからなのかな。20年以上経ってから私が妖怪として自我に目覚めたとき、あの子の姿になったのは。多分あの子の気持ちが私に染み付いて、その願望を反映した性格になったんだと思う。楽しく学校生活を、“青春”を送りたい、ってね。みんなは、どう思う? …………って」
 愛子が話し終わったとき、他の3人は泣いていた。タイガーは声を上げて号泣していた。ピートは声を押し殺して、目からひたすら涙を流していた。そして、横島は床に膝を落として、肩を震わせて泣きじゃくっていた。
「横島くん……?」
「ごめん、愛子! ゴメン!!」
 愛子が伸ばした右手を横島は両手で引っつかみ、そのまま自分の額に押し戴いた。
「俺、ひどい事しちまった! お前の辛い過去、興味本位で話させちまった! お前にだって辛い事や悲しい事があるんだって、考えようともしてなかった!! ゴメン、ゴメン! 許してくれなんて言えないけど、俺、悪い事しちまった!! ごめんな、ごめんな……」
 愛子の心の傷に触れてしまった罪悪感。不幸な少女と今の自分のだらしのなさとの落差に対する自己嫌悪。そして、どこかで重なるものを見てしまった、かつて恋した魔族の少女の幸薄い生涯。色々なものが頭の中でグルグルと混ざり合って、横島はひたすら泣いた。

「ありがとう、タイガーくん、ピートくん、それに横島くん。あの子のために泣いてくれて、嬉しいよ」
 そう言って、愛子は横島の目の前に腰を降ろした。
「別に私、横島くんの事を責めるつもりなんて無い。ただ、これだけは分かって欲しいの」
 まだ涙を流し続ける横島の顔の横に両手を添えて、彼の顔を自分に向ける。
「何でもないような日常、退屈な毎日、だらけていられる学校生活。あの暗い時代を過ごした人から見たら、そういう時間が過ごせるって事自体がとても幸せな事なのよ。だから横島くんにもみんなにも、後で“こうしておけばよかった”なんて後悔するような事の無いようにして欲しいの」
「愛子……でも、俺……」
「それと、もう一つ。よしんば自分のした行為を後悔する事になっても、後悔し続ける事で目の前の時間を無為に送って欲しくない。そんな事を続けていたら、後悔する事がまた次の後悔の種になってしまうから。だからね、ほら、もう泣かないで。いつもの様に毎日を楽しく過ごして、明るく笑ってくれればいいのよ」
 涙で曇る視界の真ん中で、黒い髪の少女が笑ってくれている。その笑顔が、ほんの一瞬だけ……あの少女、ルシオラの笑顔に見えた。

「私だって、自分で言ってて実行しきれていないと思うけど。でも私、横島くんに出会ったことでそういう日常を過ごせるようになったから、一日一日を大事にしたいって思ってるのよ。あんまり先の事を考えてないのはまずい事かも知れないけど、目の前の“現在”の積み重ねの先が“未来”だし、過ぎ去った“現在”が“過去”なんだから……今という時間は本当に大切なものだ、って思ってる。だって、過ぎたものは戻ってこないし、先の事はどうなるか分からない事ばかりだけど、“今”は間違いなくここにあるんだから」
「愛子……」
「愛子さん……」
「愛子サン……」
 横島、ピート、それにタイガー。3人は今、目の前にいる机から生まれた少女をとても綺麗だと思った。
 彼女は60年以上になろうかという歳月の間に、どれだけの悲哀を見てきたのだろう。どれだけの死、どれだけの別れ、どれだけの失意を見届けたのだろう。そして、それと並んで見つめ続けた生の歓喜を、どれだけ羨望していたのだろう。
 そんな年月を乗り越えて、彼女は今を精一杯生きている。そんな彼女に、3人は美しさと共に、強さを感じた。目の前の障壁を必ず乗り越えてみせる美神令子、300年間の歳月を孤独の中でじっと耐え続けたおキヌ、闇と死と呪いにまみれながらも明るさを捨てない小笠原エミ、真になすべきと信じた事のためなら自らの心にフタをする事のできる美神美智恵、そして愛する人のために躊躇せず命を投げ出したルシオラ……彼女たちの強さとはまた違う強さを。

「さて、と」
 3人が泣きやんだのを見届けてから、彼女はスカートの埃を払いながら立ち上がった。ちゃっかり、件のアルバムを自分の本体の引き出しの中に放り込んでいる。
「私、これから出かけるから。横島くん達も、今日は家に帰るなり事務所に行くなりしたら?」
「出かける? こんな時間に、ですか? もう日が暮れますよ」
「ふふーん、よかったら聞いてくれる?」 
 今度は、イタズラっぽい笑い方をする愛子。
「実はこの前ね、昔私が机の中で無理矢理作ってた学校のクラスメート達が会いに来てくれたの。横島くんは机の中で会った事あるでしょ? あの人たち、なんと私の学校の同窓会を作ってくれたのよ! それでね、今夜みんなでパーッと晩ご飯でも食べに行こうって約束してたんだ。同窓会ってさ、青春の日々よもう一度!って感じがしていいよね〜」
 目をキラキラさせながらクルクルと踊る愛子。ほんっと〜……に、楽しそうだと3人とも思った。

「私、支度してすぐ出発するから。それじゃね、みんな! また明日、学校で会いましょう」
 いつもの様に机を持ち上げて、3人に背を向けて歩き出す愛子。
「あ、そうだ! 愛子、ちょっといいか?」
「え? 何?」
 資料室の戸口で横島に呼び止められて、愛子は振り返った。
「さっきの話なんだけど、失礼ついででもう一つ聞いていいか?」
「いいけど? どんな話?」
「あの写真の女の子がお前の外見のモデルになった。性格もあの子の背負ったものを反映している。って事はさ……」
 ここまで立ち入った質問をするのはどうかと思ったが、横島は質問を続けた。
「やっぱりお前の名前もあの子から取ったのか? あの子の名前、やっぱり“愛子”って言ったのか?」
「ええ、そうよ」
 そう肯定して、愛子は3人に向き直った。
「あの子の名前は、私と同じ“愛子”よ。フルネームは……」

 少し間を置きながら、彼女は横島の目に視線を合わせる。


“横島 愛子”だったわ。奇遇でしょ?」


 予想外の答えに硬直する横島に軽くウインクして、愛子は今度こそ足取りも軽く廊下を歩き去っていった。


あとがき

 皆様初めまして、GS美神の読者暦はたった1年、二次創作を読む様になってわずか3ヶ月、
 SSをまともに書いたのは今回が初めてのいりあすと申します。 
 とあるサイトで二次創作に対する三次創作を投稿した事はあるんですがw

 そういうわけで、原作を読み返してみると意外と語られていない机少女・愛子の経歴。
 どういう感じの出来事があってああいうキャラになったのか、その設定を考えてみたくなって
 そのうちの一つの可能性を二次創作にしてみました。
 ・・・ちょっと、重すぎる話になったような気がしますが。
 でも正直言って、彼女の机の年期の入り方からして、戦時中の記憶があってもおかしくないかな、と。
 (前述の某サイトに投稿した三次創作に愛子の過去話がありますが、本作とは全く別物です)

 次は、ドタバタのラブコメ短編を書いてみたいな〜と思いつつ失礼します。


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