このSSを偉大なる絵師たかす様に奉げます
絶対無敵ギャクテンオー
〜宇宙の平和を守る為〜
「遅いな……」
呟いて時計を見る。
時刻は時間を二十分ほど過ぎている。
辺りを見回すが、大勢の人が足早に通り過ぎて行くだけで、待ち合わせしている人物は見当たらない。
「やっぱり場所が拙かったんじゃぁ……」
東京駅八重洲中央口。
日本が世界に誇る巨大都市であり、首都である東京の玄関口である巨大な建物だ。
巨大なので、当然その入り口は複数ある。というか、一杯ある。ありすぎて迷うくらいだ。
こんな所を待ち合わせの指定にした人物に文句も出てくる。しかし、彼は手に握った手紙を見る。
記述は簡潔明瞭。
『○月×日 □■:△△に私の娘と
東京駅八重洲中央口で待ち合わせ
合流後、彼女等の指示に従うべし
アシュタロス』
声に出して読み、その内容にため息がでる。
ため息の内容はそれだけではない。手紙の差出人についてもため息ばかりか、自嘲気味の笑みがこぼれる。
駅の広告板のポスターに目をやる。今、自分の目の前にナニが映っているだろうか。
『君の手で宇宙の平和を守って見ないか?』というポップなゴシック文字。
そしてその下に『宇宙防衛軍 アシュロス』と書いてあるのが見える。
できることなら否定したい。
だが、いつの間にか国連からの承認を取り付け、何故か分らないが本部が日本に置かれ、日本国憲法第九条を「国際組織であり宇宙組織でもあるから」の屁理屈で踏みにじって、富士の裾野にNASAも裸足で逃げ出す程巨大な施設を設置したのが『宇宙防衛軍 アシュロス』だ。
「宇宙の平和を守る為」に組織され、有事の際には武力をもって平和を勝ち取る。想定される敵は「宇宙の平和を乱す悪いやつ」
現在時点に於いて、宇宙で活動している地球外生命体は月神族だけであって、その月神族は中立という立場をとっており、宇宙の平和を乱すような事は無い。
どこかで季節外れのウグイスが鳴いたような気がする。
つまり見事なまでに有言不実行状態。
目的が無いのに組織は存在するという本末転倒も甚だしい状態である。
もう、馬鹿か、阿呆かと、責任者を問い詰めたい所だ。が、その責任者というのが、彼の手で握りつぶされる手紙の差出人なのだ。
思えば出会いからして、いい加減だった。
ある日、彼はGS見習いとして仕事をしていた。
すると……
「いやー、君……いい技を持っているね。 私のところで働かないか?」
「な、なんスかアンタ!? 俺は美人のネーチャン以外のスカウトは受けんぞー!!」
「それならば大丈夫だ。若くて綺麗な娘や、セクシーな部下が沢山居るぞ」
「何ぃ!?」
男は懐から何枚かの写真を取り出す。
「オ? オォォォォォ!!! コレは……いや凄いな……こっちはなんとっ!? …………よろしくお願いしますっ!!」
「ではこの書類に名前とハンコを……拇印でもいいぞ」
というような流れで移籍成立。スカウト成功。自分もいい加減だが、相手はさらに輪をかけていい加減だろう。
(ま……過ぎたことを悔やんでも仕方ないからな)
それよりも待ち合わせの相手である。
スカウトされた時に見た写真の彼女等が彼の娘であることは間違いなさそうだった。
辺りを必死になって見回す。
待ち合わせの場所は、ただでさえ巨大な駅の中である。しかも『八重洲』と名のつく出口だけで三つとかあって、構造は複雑怪奇。
「はぁ…」
今日何度目になるか分らないため息をつく。
(ホントにこんな場所で待ち合わせして会えるんかね?)
時間はそろそろ予定を三十分ほど過ぎた頃合だ。
(もしかして待ち合わせ場所を間違えたか?)
もう一度シワクチャの紙を広げる。
確かに『東京駅八重洲中央口』と書いてある。頭上を見上げるとそこには確かに『八重洲中央口』の文字が見える。
(まさか何かトラブルでもあったのか?)
迷子の可能性はおおいにある。
何しろ首都圏中の路線が一点に集中する巨大なターミナルだ。ホームは沢山あって、無闇な増築で駅舎の構造は幾多の層とブロックに分れている。地図や案内板は存在しているが素人では解読不可能だ。
「迷子の呼び出ししようにも名前しらねーしなー……」
ちなみに顔とスタイル(目測でアタリをつけた3サイズ)は知っている。
だがしかし、そんな呼び出しはしたくない。仮に呼び出したとしても名乗り出にくいだろう。
(アレは俺のモンじゃ! 俺だけが知っていればいいんだ! 他の男にわざわざ知らせる必要は無い!! …まてよ。俺は相手の顔を知っているが相手は俺の顔を知らないかもしれない。 いきなり話しかけて「君と待ち合わせしてたんだ」って名乗ったら寒いナンパじゃねーか…)
自分のナンパ成功率を思い出して落ち込む。
「まま〜。あのお兄ちゃんなんか唸ってるよ」
「だめよ、ああいうのは見ちゃいけません」
親に手を引かれる子供と、子供の手を引いて逃げる親。
「オノレ!」
特に意味も無く怒りがこみ上げる。だが、彼の怒りはすぐさまおさまる。
「あっ……ヨコシマぁっ!」
声を掛けられた事に驚く間も無く、胸に飛び込んできた柔らかい感触に、心臓は早鐘を打つ。
「ずっとずっと探してたのよ……」
(こ、これはぁっ!)
ギュッと抱きつかれて興奮はピークに達し……
(うん、人目につくこんな場所で抱きついてくる女の子っていうのはアレか? 彼女!? すげぇな俺、いつの間にか彼女できちゃったよ。コレも宇宙防衛軍に入った御蔭だな。20年後に子供に結婚した馴れ初めを話す時のネタが決まったな! とにかく凄いぞ宇宙防衛軍――――(以下略)
ちょっと足りない頭が暴走を始める。そして脳内の妄想で決定が下ってしまったが為に、横島の手は自分の腕の中で微笑んでいる存在の腰やら肩やらにまわる。
「あん♪ だめよこんな所で♪」
「なるほど、アシュ様の言ったとおりだね……」
「ルシオラちゃんの胸でコレなら私ならもっと……♪」
「パピリオ、何か言った?」
「べぇーつにぃ……何も言ってないでちゅよ」
「まぁまぁ、ケンカしてる場合じゃないだろう。ヨコシマもその辺にしておきな」
「ふ、フフフフフ……天国や…」
仲が良さそうな3姉妹のやり取りを無視して身体をまさぐる手を止めない横島。というか、エスカレートしている。
「だめよ、ヨコシマ♪ ココから先は夜のお楽しみよ♪
……ってぇ、何時まで体触ってんのよっ!」
比較的丈夫そうだった堪忍袋の緒が遂に切れる。
ピッタリ密着状態から繰り出されるショートアッパーを、桃色頭の横島にかわせる訳も無く、見事K.Oされるに至る。
高く浮き上がり、数回バウンドした後地に這う横島。いまだにピクリとも動かない所を見ると、どうやらルシオラと呼ばれた彼女の腕力はすさまじいものらしい。
「……まぁバカップルのいちゃつきが終わったのはいいとして、ヨコシマが気絶してちゃぁ、話しが進まないんだが……」
「そうだったわね、ベスパ。ヨコシマしっかりして!」
大地の抱擁を受け、年の離れた妹に木の枝でツンツンつつかれている横島の顔を覗き込むルシオラ。
「あーあ、気持ち良さそうに気絶しちゃって……」
白目を剥いて鼻血を出した横島を介抱すべく、横島をベンチに寝かせ腰かけたルシオラは、横島の頭を自らの膝にのせる。
「こんな時に何かあったら対処できないわね」
物音はそう言った瞬間に感じた。音と同時に建物全体が微かに震える。
「な、なんじゃー? 新聞ならいらんぞー!!」
「…まさか?」
「ちっ、思ったより早いね」
「早い、早すぎるでちゅ!」
それまですっかりくつろいでいた三人は険しい表情で窓の向こうを見る。
気絶から回復したばかりで混乱している横島はフトモモの感触に名残を惜しみながら辺りを見回す。
(地震…じゃないよな。何か巨大な物が近づいてきてる?)
出口に駆け寄り、身を乗り出して叫ぶ。
「コラーッ!! 折角の膝枕タイム邪魔しやがっ…………なんじゃありゃぁ!?」
巨大なモニターの光がまぶしく光る一室。
計器を叩く音、何か知らせる為に鳴り響くアラームや点滅を繰り返すランプが止まることは無い。
緊迫した空気が張り詰めていた。
巨大なモニターと手元のモニターを見比べていたオペレーターが切羽詰った声をあげる。
「静岡からの未確認物体、速度落ちません!」
「馬鹿なっ! ミサイルは全弾命中の筈だぞ」
険しい表情で巨大モニターを凝視していた、たぶん偉い人が声を荒げる。
彼の疑問を余所に、無慈悲な報告は続いた。
「迎撃に当たった、ウィザード、ワイバーン両飛行隊共に音信途絶」
「………」
たぶん偉い人はその報告に絶句した。
「パイロットの安否は?」
卓に肘をつき、顔の前で手を組んだ姿勢でモニターを見ていたたぶんもっと偉い人が、よく通る落ち着いた声で報告の続きを促す。
「脱出の確認はしています。が、通信は不可能の状態です」
わずかだが、張り詰めていた空気に安堵の色が浮かぶ。しかしそれも、次の報告によって消し飛ばされる。
「静岡からの未確認物体、間も無く首都圏に侵入!!」
「なんとしても人口密集地にだけは入れるな!」
「しかし、迎撃オプションは既に…米軍からもこの事態は視えているはずだが…」
「関係あるかっ!! スクランブル可能な機体を全て上げろ!!」
指令が下り、再び緊張の時間が始まる。
「第二波攻撃隊、目標に接触します!」
アラームやら人の往来で騒がしいはずの指令室が急に静かになる。
「陸自の戦車部隊、展開を開始!」
「おのれ……只では済むと思うなよ……」
固唾を呑んで見守っていた指令官が忌々しそうに履き捨てた言葉は、そこにいる全員の気持ちを代弁したものだった。
『どうしますか? アシュ様』
「どうするも何も、首都圏に戦力を持たない我々の出番は現時点ではありえんよ。それよりも土偶羅、ギャクテンオーの準備はできているか?」
『何時でも出せます。……しかし、兵鬼一つでなにをなさるおつもりですか?』
「フッ……早速彼に働いてもらおうと思ってね」
指令室の隅で通信鬼に向かって話しかけていた男はそれだけ言うと、また静かにメインモニターに目を戻した。
「第二波攻撃隊、敵に有効なダメージを与えられません!」
「くそっ! フル装備のF-15編隊だぞ! 何故だ!?」
報告を受けるほうの声も、するほうの声も、もはや悲鳴に近かった。
「民間の報道機関より、未確認物体の映像が放映されてます」
「えぇい、報道管制は何をやっている!?」
「…それよりも映像をこちらへ回せ、メインモニターだ」
すぐにメインモニターのレーダー画像がゆらつき、画像が切り替わる。
大きくて丸い体、細長く伸びた腕や脚の先にはドラ○もんを思い起こさせる手足。そしてヤカンの注ぎ口のような鼻とちょんまげと化している取っ手、貼り付けられたような目の焦点はあっていない。
「……ダサい……」
どっかの慌ただしい指令室の人々も、いま身を乗り出して見てる横島も同じ感想に行き着いた。
さっきから断続的に続いてる振動はあのヤカンお化けの歩行によるもののようだ。
(キャラメルのオマケだってもっとマシだぞ……)
あまりに現実味の欠ける光景に、そんなことを思った。
しかし、地響きを立てて町の中を歩き回るヤカンお化けのキュートな丸い足に踏み潰されて車が炎上する。
「って、ボーっとしてる場合じゃねー!! なんだか分らんが逃げるぞ!!」
「ええ」
「ああ」
「はいでちゅ」
パピリオを肩車し、ルシオラとベスパの手を取り、部屋を飛び出る。
『―――レポーターの本梨です。ご覧下さい! なんとこの平和な東京に突如謎の巨大な物体が出現しております。え〜情報によりますと、この巨大な物体は静岡の方向より現れたとの事です。閑静な住宅街は、予想だにしなかった異常事態にパニックに陥っております。しかし、この物体は一体何なんでしょうか? 政府から正式な発表はまだ無く―――』
駅前の道は、避難する人の群れで大変なことになっていた。
警察や消防の関係者が懸命に誘導しようとしているが、群集は完全にコントロールを失った状態で道を埋めている。
あちこちで怒号や悲鳴が聞こえた。
ざわめきに混じって、徐々に近づいてくる振動が更に人の流れを恐慌に陥れる。
振り返ると、例の巨大な物体はかなり近くまで迫っていた。
横島は繋いだ手の温もりと双肩にかかる重さで、三人と逸れていない事を確かめつつ走った。
慌てて走っている間にも自分達ごと人の流れは動き続けている。
後ろから、横から押され、思うように身動きが取れない。
(このまま圧死するかも…)
左からベスパの豊かな胸が、右からはルシオラの柔らかなお腹が。
落ちないように必死でしがみつくパピリオの手足が横島を責める。
(……今ならこのまま死んでもいいかもしれん……)
不意に辺りの圧力が消え、断続的に続いていた地響きも止んだ。
「…止まった?」
静かになった周囲をうかがう。
見上げた巨大ヤカンは動きを止めてるように見えた。
見えない緊張の糸を張り巡らされたように、固唾を呑んで巨大ヤカンを注視する。
緊張の糸が最高潮に達した時、巨大ヤカンの上に奇怪な姿の人物―――遮光器土偶そっくりのヘルメットとぴっちりフィットして中年体型が眼に毒な原色全身タイツ姿の人物が登場し、
「我・々・ハ、宇・宙・人・ダ」
高らかに宣言した。
「……」
「…………」
「………………」
「…ぷ」
何処かの誰かが耐え切れず噴出した瞬間、それまで固唾を呑んで見守っていた周囲が一斉に馬鹿笑いした。
「一体いつの時代の話だそりゃー!」
「あっははははは!あはははは!は、腹がイテェ!!」
「し、しかもなんだあのヘルメットと全身タイツはっ! サ、サイコー!!」
「だ、だれか黄色い救急車呼んでくれ!!」
「それよりもエ○ア51に連絡だろ!!」
指を指したり地面を叩いたり腹を抱えたり、それぞれ様々な方法で、しかし、皆一様に馬鹿笑いをしている。
『―――再び本梨です。皆様信じられますでしょうか!? なんと正体不明の巨大物体は宇宙人のモノによる模様です。しかも正々堂々と宇宙人を名乗って参りました。あまりの馬鹿馬鹿しさに逃げ惑っていた周辺住民は大爆笑しております!
…かく言う私も少々失礼して…
ギャハハハ! あ、あほらしぃっ!!今年一番のジョークだぁっははっは!!
…失礼いたしました―――あっ! 馬鹿笑いしている間に陸上自衛隊の戦車部隊が到着した模様です!』
「いよいよ我々の出番だ!」
「はいっ! お前等の仕事は軍事ではなく災害救助だと罵倒され続けてきた我々の晴れ舞台であります、隊長!」
「そーだっ! PKOですらマトモな火器を与えられなかった我々が、合法的にぶっ放せる最高の機会なんだ!」
「自分はこの日を夢見ておりました!」
「私も!」
「わたしもであります!」
「よ〜し…では早速! 全車照準は巨大物体の頭部っ! 遠慮はいらん、撃ちまくれ!!」
並んだ戦車から轟音が響き渡りたちまちの内に巨大ヤカンは砲弾による煙幕に包まれる。
周囲からは「いいぞ、やれやれ〜」「たまや〜」など呑気な声が上がる。
だが、ルシオラ、ベスパ、パピリオの三人の表情は険しいままだった。
「ダメ……効いて無いわ」
ルシオラの呟きは周囲のヤジに飲み込まれた。
「な、何ぃ!?」
「も、目標に変化無し!」
「着弾は間違いなし……と思われます」
「着弾が間違いないのなら何で傷一つついてないんだ!?」
「……やっぱ宇宙人だからじゃねぇっすかね?」
「うぬぬぬぬ…再度一斉砲撃!!」
轟音が再び轟く。
「フフフ、君達ノ兵器ガ我々ニダメージヲ与エル事ハ、不可能ダ!」
「今度こそ……!?」
煙の向こうには壊れた巨大物体があるはず……その思いもむなしく、巨大物体はもとより宇宙人の姿に変化は無かった。
「無駄ダ。コレ以上敵対スルノナラ排除スル」
全身の力を奪うような間抜けな音と共に謎の光が放たれる。
一瞬の空白を置いて、
「ぎゃぁぁぁ〜」
「のぎょぉぉ〜」
「ひょんげぇ〜」
戦車部隊は爆音と共に壊滅していた。
「ドウダ! 我々ノ科学力ハ君達ヲ遥カニ凌駕シテイルノダ!」
勝ち誇る宇宙人。そして巨大物体が再び動き始める。
「に―――」
「逃げろぉ〜〜!!」
「コッチだ!」
再び動き始めた人ごみの波から脇道に逃れる横島達。
「ヨコシマ! どこか広い所は無い?」
「まっすぐだ! 公園がある! …でも何するつもりだ?」
「忘れたのかい? 私等は『宇宙防衛軍 アシュロス』の隊員なんだよ」
ウィンクで答えるベスパ。横島を掴んだ手に力を込めて更に早く走り出す。
「あ、あんなの相手にできるかー!! ムリだムリムリ!! 絶対にムリ!!」
「アシュ様が言ってたでちゅよ『それでも横島君なら、横島君ならきっと何とかしてくれる』って♪」
「テキトーなこと言うなや、あのクソヤロー!! 死ぬのはいやじゃー!! お家に帰るー!!」
「帰ル? 何処ヘ帰ルンダ?」
突如目の前に現れた宇宙人の集団に、全員が驚きを隠せなかった。
「急に現れるんじゃねー、心臓に悪いだろうがっ!」
(参ったね…ギャクテンオーはまだかい?)
(もうすぐ、すぐそばまで来てるわ。時間を稼げれば……)
腕時計っぽいレーダーを見る。自分達を示す赤いマーカーと、ギャクテンオーの場所を示す黄色いマーカーはまだ離れていた。
「フフフ……命乞イノ相談カ? 素直ニ『魔具羅ユニット』ヲ渡シテクレルノナラ、見逃シテヤロウ」
「胡坐ユニット? 何じゃそりゃ?」
「えっとでちゅねぇ…土偶羅様が宇宙防衛軍に来る時に持ってきた…フギャッ!!」
「余計なこと言うな! バカ!」
ベスパに殴られて、パピリオは目に涙を浮かべて頭を抑えた。
「ヤハリ、土偶羅ガ裏切ッタノカ……魔具羅ユニットガ無クナラナケレバ、宇宙征服計画ガ凍結スル事ハ……」
「あのー…何が何やらさっぱりなんですけど……」
一人事情を飲み込めない横島。
「君ハ知ラナクテモ良イコトダ」
「なんだとー!? 思いっきり人を巻き込んでおいて部外者扱いはねーだろー!?」
その上、適当にあしらわれてしまっては、怒りたくもなろう。
「怒らないでヨコシマ。今から私達がゆっくり説明してあげるから」
「君達ニ、ソンナ余裕ハ無イ。大人シク我々ニ従ッテモラオウ」
不適な事を言って包囲を狭める宇宙人。だが、ルシオラの余裕のある態度に変化は無い。
「いくわよ二人とも! 私達は!!」
「「「絶対無敵よっ!!!」」」
三人が叫ぶとあたり一面に白い光が差す。
「ナ、ナニッ?」
光は更に強くなり、視界は白一色に染まる。
眩しさに目を閉じていた横島は自分の身体が宙に浮くのを感じていた。
目を開ける。
「……ここは何処だ?」
目の前には上空から見た街の光景が広がっていた。
「なんで俺はこんな所に座ってるんだ? さっきまで公園で宇宙人に囲まれていたのに…」
白で統一された不思議なデザインの部屋の中央のシートに深く腰かけ、両手はシートの腕置きの先にあるセンサーらしき物の下で固定されていた。
「驚いた、ヨコシマ? 是が宇宙防衛軍の秘密兵器『絶対無敵 ギャクテンオー』よ!!」
「絶対…無敵、ギャクテンオー?」
突然飛んできたシートのそばに佇むルシオラの声にも、横島の反応は鈍かった。
「まだびっくりしてるんでちゅね。これがそうでちゅよー」
左側のシートからパピリオの明るい声がルシオラの言葉を引き継ぐ。
メインモニターには大きな人型をした巨大ロボットが街の上空に浮かんでいる姿が映っていた。
威風堂々としたそのいでたちに、ただ見とれる横島。
「……で、コレで俺はなにをすればいいんだ?」
「私達は『宇宙防衛軍』 そしていきなりやってきた宇宙人が暴れている。
となると、私達のやることは一つ!」
右側のシートに座るベスパの声はやる気に満ち溢れていた。
「いやまぁ…それはそうなんだろうけど、どーしてそういう風になったのかさっぱりなんだが…教えてくれるって言ってたよな? それに俺、皆の名前も知らないんだけど……」
「簡単に自己紹介しておくわ、私はルシオラ。左のシートに座ってるのがベスパ反対側がパピリオよ。…その他の事については、あいつ等を倒してからゆっくりね」
ルシオラの表情が険しくなる。
「大型物体、現在こちらに向けて接近中でちゅ。小型攻撃機の放出を十数機確認したでちゅ!」
「ちょ、タンマタンマ! どーすりゃいいんだよっ!」
パピリオの報告に冷や汗を撒き散らしつつ取り乱す。
「落ち着いてヨコシマ。ギャクテンオーは貴方と同調してるわ、ヨコシマの思う通り動かすことができるわ!」
「一匹が来るぞ!」
「来るって言われてもなーっっ!」
しかし、叫んだ瞬間、横島の脳裏で何かが弾けるような感覚が走った。
周囲の視界がシートからのものではなく、直接外を見ているような景色に変わる。
そこにはこちらに向けて一直線に突っ込んでくる翼を持った埴輪が見えた。
「避けろ、ヨコシマ!」
ベスパの声に、横島は身を反らせる様な感覚を脳裏に走っている部分に伝える。
気がついた時には、目の前に迫っていた埴輪は自分の後ろの方へ通り抜けていったのを感じた。
「まだ来るよっ!」
「わ、わかってるって!」
次々と迫ってくる翼つき埴輪を何とか避ける。
「後ろから来るでちゅっ!」
「おわぁっ!」
身を捻り、突っ込んでくる埴輪をかわす。
「ヨコシマ、避けているだけじゃだめよ」
「んな事言われたってどーすりゃいいんだよっ!?」
「ギャクテンオーは操縦者の霊能を発動する事ができるわ。普段、貴方が悪霊を相手にしている時みたいに霊力を集めてみて!」
「わ、わかった……」
自分の右腕に霊力を集めようと精神を集中する。すると自分の右腕に―――否、ギャクテンオーの右腕が淡い光に包まれる。
軽く念じて見る。いつも通り、剣の形に変形する栄光の手。
「こ、これで……」
「やっちまいなー!!」
軽く首をめぐらせて周囲の様子を探る。先ほど突っ込んできたのは一旦距離を取っているらしく姿が見えない。
「周りの状況はどんな感じ?」
「……敵機は一旦散開したあと、二群に分かれて突撃体勢を取りつつあるでちゅ」
「よーし…じゃぁ、前のほうの奴から…」
思った瞬間、自分の視界が一気に加速する。その速さに驚く間も無く、最初は点にしか見えなかった埴輪がカメラをズームするように近づいてくる。否、ギャクテンオーが突っ込む。
接触する刹那、
「やれっヨコシマ!」
という声に、下段に構えていた栄光の手を逆袈裟懸けに振り上げた。
後ろで爆音が響く。
「まずは一機ね」
「残りの機体は混乱してるみたいでちゅ」
「よし、この調子で叩みかけなっ!」
「…ちったぁカッコつけさせろよ、余韻に浸るくらいいーじゃねーかっ!?」
「そんなこと言っている場合じゃないわ、何か来るわよ!」
「な、何かって、なんじゃいっ!?」
旋回しながら埴輪の群を見ると、小さな光の球のような物が複数、ギャクテンオーとは全く関係ない方向へ放たれていた。
「別に……こっちに向かってきてない……驚かすなよなぁ」
「…あれ、誘導弾っぽいでちゅよ」
「え゛!?」
パピリオの説明を待っていたかのように光球は急カーブして、ギャクテンオー目がけて急接近する。
「来るでちゅ」
「さ、サイキックソーサー!!」
半ば破れかぶれの状態で横島は右腕を突き出して叫ぶ。
ギャクテンオーの手の先に淡い光の壁が浮かんだ。光の壁が光球を受け止め爆散させる。
「へぇ、やるじゃないか」
肉薄していた誘導弾全てをサイキックソーサーで消し去った。
「敵がこっちに来るでちゅ」
「何ぃ!?」
見るとさっきの攻撃で一旦散開した埴輪が再びフォーメーションを組みなおして向かってきている。
「攻撃が来るわよっ!」
複数の光球が放たれて一気にギャクテンオーへの距離を詰めてくる。
「よっしゃ、もう一回!!」
向かってくる誘導弾は相対的に距離がさほど無い。一直線にギャクテンオーに向かってくる。
(早く…もっと早く!!)
思考して念じるだけでギャクテンオーは加速する。伸ばした手に光が集まり始める。
埴輪はギャクテンオーの動きに対応できず誘導弾を発射したままの状態で、宙に留まっている。
視界に写る光球が目の前一杯に広がる。
―――!!
一瞬で誘導弾と埴輪の群を通り抜けギャクテンオーはそのまま直進した。
「敵機の反応消失でちゅ……後方の敵群は編隊を維持したまま……あっ? 散開するでちゅ」
「的を絞らせないつもりね…」
「第一波、来るよっ!」
最初は点に過ぎなかった埴輪がかなりの加速で近づいてくる。
横島は迎え撃つつもりで栄光の手をかまえる。
「!?」
一瞬背中に冷たい感触が走る。
「危ない!」
咄嗟に身を右に倒す。その刹那、一瞬前までギャクテンオーの身体があった所に奇妙に鮮やかな光が通り抜けていく。
「止まったらいい的よ、ヨコシマ」
「そーは言ってもなー!」
「ボケッとしてるんじゃないよ」
「第二波右上方から、若干遅れて左下方から第三波くるでちゅよ!」
「あぁもう、メンドクサイ!!」
何とか避けた幸運を喜ぶ間も無く次々と埴輪の放つ光がギャクテンオーの側を掠めていく。
次々と放たれる光を必死で避け、横島はギャクテンオーを右へ左へ急機動させる。
「このままじゃ、その内何処かに当たるわよっ!」
「分ってる……けどっ!」
向かってくる埴輪に向かってとりあえず栄光の手を振って見るが、簡単に避けられる。
「こっちから先手取らないとあんな小さい奴に相手には不利だよっ!」
「第一波引き換えしてくるでちゅよ!」
「……あーもー! こーなったらヤケじゃー!!」
ギャクテンオーを上方に向けて加速させる。
風を切って空を駆け上がる。薄い雲を抜けると上下に蒼い空と都市のビル群が広がる。
機動性はともかく、加速性はギャクテンオーの方が上らしく、敵の埴輪はまだ後方にいた。
「敵機は散開したまま追ってくるでちゅ」
声と同時にギャクテンオーをのけぞらせ、振り返る。視界が下方の敵を捉えた。
再び包囲するつもりなのだろう、ほぼ等間隔に分散しているが、高度さのあるフォーメーションが命取りになった。
横島の目の前に一本のルートが浮かぶ。
ギャクテンオーは重力に身を任せ急降下する。
分散しているとはいえ、上方からならば一直線に並んでいるのとそう変わらなかった。
「うぉりゃぁぁぁ!!」
栄光の手を構える。埴輪がグングン迫る。
光が見えた。
「遅い!!」
落下しながら軽く身を捻って射線をずらすと光線は首筋を掠めて後方へ抜ける。
後方の埴輪は前の味方が邪魔して光線を放てない。
前に突き出した栄光の手が埴輪を捉える。横島はギャクテンオーを更に加速させる。
通り抜けた一瞬後に背後の埴輪は一機残らず爆発していた。
「敵機の反応消失でちゅ」
「ヒュゥ♪ やるねぇヨコシマ」
「かっこよかったわよヨコシマ」
「…ふぅ、とりあえず、埴輪は何とかなったな…」
息をついて身体の緊張を解く。
『しかし甘いな、横島君。私が敵の指令ならば、今の隙を見逃さないぞ』
巨大モニターの横にあるスピーカーから聞き覚えのある声がした。どうやら通信が入ったらしい。
「あっ! アシュタロス、てめーっ!! なんで俺がこんな所でこんなことやってるのか説明しろ―――」
轟音と共に機体が激しく揺れる。
「―――イッテェ…舌咬んだ……」
『ふむ……どうやら、今説明している暇は無さそうだな。とりあえずあのデカイのを何とかしたまえ』
「チックショォ〜〜」
横島はすぐさまギャクテンオーの周囲に思考を巡らせる。例の大型物体は若干離れた位置に居た。
「さっきのは、いったい何なのさ!」
「敵の砲撃でちゅ。……たぶん」
視界に映る大型物体には砲塔のような物は一切見当たらない。
「どっから飛んできたんだ?」
「さっきの攻撃は重力波による物だと思うわ」
「獣慮苦派?」
『読んで字のごとくだよ、横島君。局地的に重力の断層を作り出すことによって空間相違を起こし、そのエネルギーで―――』
「何が何やらさっぱりわからん……」
「難しく考えなくていいわ。とにかく、何だかよくわからないけど向こうはヘンな飛び道具持ってるって事よ」
「そ、そんなもんなのか?」
「また来るよっ! ギャクテンオーの装甲だって、あんなの喰らい続けたら持たない!」
「は、ハイーッ!」
返事をしながら横島はギャクテンオーを、動きから予測できる射線の上から外す。
巨大だけあって、相手は機敏な動きができないらしい。
若干の間をおいて近くの空間が大きく震えるように景色をゆがめる。
「有効半径は広く無さそうね、それに速度もそんなに早くはないわ…」
「だったら……蝶の様に舞い! ゴキブリのよーににげまわるっ!」
栄光の手を構え、敵を翻弄するように旋回する。
「そして蜂のように刺して、ゴキブリのよーに逃げるっ!!」
初撃を与えるべく、ギャクテンオーを突撃させる。
『ヒット&アウェイか……悪くない選択肢だ』
ブサイクなデザインの塊へ、右手を大きく振りかぶり、
「おぉぉぉぉっ、沈めぇぇーー!!」
大きな衝撃が走る。
それは突撃していたギャクテンオー全体に向かって。
ギャクテンオーは弾き飛ばされて宙を舞う。
「なんでじゃー!? せっかく格好よく決めようと思ったのにー!」
何か見えない壁のような物にぶつかって、初撃は失敗に終わった。
今の衝撃でギャクテンオーに、それなりのダメージがあったのか、動きが若干鈍くなった気がした。
『ふむ……自衛隊の攻撃が無効だったの理由はコレだな。重力波を攻撃に利用しているから当然かもしれんが……』
「一人で納得してねーで説明しやがれっ!」
ギシギシ音を立てそうな身体を必死に起こしながら、スピーカーの向こうのアシュタロスに文句を言う。
『ギャクテンオーが飛行に向いていない形状なのに、空を飛んでいるのは何故だか考えてみたかね?』
「質問を質問で返すなー! テストじゃ丸をもらえんぞー!!」
『今のバリアに関係しているからこその質問なんだがね……まぁいい。結論から言おう。宇宙人の持つ慣性制御の技術がその答えだ』
「「「…………は?」」」
横島、ベスパ、パピリオの表情が固まる。
「まぁわかりやすく言うと、物理法則を捻じ曲げて運動エネルギーを直接操作してるのよ」
「…運動エネルギーっていうと、アレか? 作用とか反作用だか…」
『その通りだ。それを捻じ曲げて、実際の質量をキャンセルして空を飛んだり戦車砲を跳ね返したりしているわけだ』
「さっき、ギャクテンオーが見えない壁に跳ね返されたのも、おそらくあの大型物体の周囲に張り巡らされている【慣性制御領域】の防御手段に引っかかったからだわ」
「はぁ……」
さっきから二人だけで話しが進んでいるが、それはアシュタロスとルシオラが妙に多弁だという訳ではなく、残りの三人が口を挟む隙と知識が無いからに他ならない。
「でも、さっきの埴輪も使ってるんなら埴輪にもバリアがあったって事じゃねーか?」
『良い所に気がついたね。自衛隊の戦闘機が埴輪にやられた時の記録を見ると、ミサイルなどを完全に防いでいる』
「じゃ、なんでさっき埴輪には効いたのに、今はダメなんだ?」
『霊能…オカルトにまでは気が回っていなかったのだろうな奴等は。物理法則を捻じ曲げられても、霊能力にまではあの慣性制御領域は働かないのだよ。先ほどは、ギャクテンオー自身が慣性制御領域にひっかかった為に失敗に終わったようだね』
「ようわからんが…俺の必殺技は効くってことだな?」
とは言うものの、あの巨大物体に攻撃するにはどうすればいいのかまではわからない。
回避可能とはいえ、強力な攻撃と堅牢な防御を持っている巨大物体。
対抗手段は己の霊能力のみ。
「…とにかくやってみるか……」
回避を続けながら右手に霊力を集め、盾を作り出す。
「どうするのヨコシマ?」
「近づくとヤバそーだからとりあえずな……コレでも喰らえっ!」
気合と共に、右手の盾を巨大物体目がけて投げ飛ばす。
爆音が上がる。
「ヤカンがちょっと焦げたでちゅね」
「あぁ、ほんのちょっぴりだけな」
「言われんでもわかってるワイっ!」
が、直撃したもののダメージは薄かった。ベスパとパピリオの追い討ちにへこむ横島をルシオラは「まぁまぁ落ち着いて」と慰める。
『……ほかに何か特技は無いのかね?』
「さっきから文珠作ろうとしてるんだけどな……上手くいかない」
『ほう! それはそれは。……だがしかし、霊能力とはいえ【文珠という物】を作り出すという特殊なものだ。ギャクテンオーにはできん芸当だよ。次回の出撃までに善処しておこう』
横島の隠し玉、正真正銘の必殺技だ。アシュタロスが驚くものの、今使えないことに対して落胆の色を隠せない様子だ。
横島は下方よりこちらを伺っているであろう巨大物体に目をやる。
栄光の手ではリーチが足りず、反撃を喰らいかねない。ダメージの溜まっているギャクテンオーではあと一撃でも喰らえばおしまいだ。
かといって、サイキックソーサーでは威力が足りない。
「こういう時はアレだ! 主人公の陥った危機的状況を打破する秘密兵器とか、隠し武器とかねーのかっ!?」
敵の重力波を避けつつたずねて見る。
だが現実は非常だった。
『残念ながらギャクテンオーには無い。ギャクテンオーはパイロットの霊能力をトレースして発現することが唯一だからな』
「アホかーっ!? 主人公メカならデフォルトで備わってるもんじゃねーのかー?」
『お約束…という奴だな。あいにく私はそういったものがキライでね…』
「テメーの好き嫌いの所為でこっちはピンチなんやー!! ロボットに乗って死ぬのはパイロットなんだぞー!」
『なんと言われようとも無いものは無い。今は君が霊力を限界以上に引き出すしか方法は無い。さぁ、霊力を高めるのだ!』
「そんなこと言ったって、いくら俺でもこんなピンチの状況で妄想できるかーっ!」
かなり動きの鈍くなったギャクテンオーを懸命に動かして、攻撃を回避しつつ不毛な口論は続く。
「ヨコシマの霊力の源は……煩悩…なのよね……」
「そーだけど、こんな状況じゃぁ…!?」
何かを決意したルシオラが横島の膝の上に座ると「ベスパ、パピリオ暫く操縦頼んだわよ」と言い、その顔をうろたえる横島の顔に近づける。
「ちょっ…何を…?」
喋る事は許されなかった。横島の言葉はルシオラの口によって塞がれる。
突然の展開に驚きを隠せない横島のすぐ目の前にはぬれた瞳のルシオラが。
自分の口内を他人の舌が生き物のように這っていく、そのヌラついた感触に心も身体も煩悩も、そして霊力も高まる。
温かい唾液が流し込まれ、横島の頭は混乱し、身体はその甘美な甘さに痺れる。
伸びた舌が歯や歯茎を舐め、舌を絡め取る。横島の顔に添えられていた手はいつの間にか抱きしめるような形で彼の身体の後ろに回っていた。
二人の口は唾液でびちょびちょになり、溢れてこぼれだしている。
口と口の間に透明の糸が引いた。
「ヨコシマ……私、こんなにドキドキしてる……」
男の手を取り、自分の胸に当てる。確かに心臓は早鐘を打っていた。
だがそれ以上に感じられる、ムニッとした感触に横島の数少ない理性は吹き飛んだ。
―――ギャクテンオーは額に集中させていた霊力を一気に巨大物体にむけて放出した―――
(ハァハァ……ナルニアのお父さんお母さん! 忠夫はこれから男になりますっ!…ってそーいや敵はっ!? なんかギャクテンオーが凄い霊波を出した気はするんだけど……」
「…大丈夫、ギャクテンオーの攻撃で綺麗さっぱり消し飛んだよ、義兄さん」
真っ赤な顔でチラチラと盗み見るよう答えるベスパ。
「ちょっ…義兄さんってなんじゃー!?」
「えー!? セキニン取らないんでちゅか? ルシオラちゃんかわいそうでちゅ…」
「えっ!? あ、いやそーじゃなくてだな…」
『ソレより早く其処から引き上げたまえ義息子よ。自衛隊が出てくると厄介だ』
「おめーに義息子よばわりされたかねー!! つーかこの状況は何なんじゃー!?神様のアホー! 俺が何したっていうんじゃー! まだ何もシてねー!!」
何だか良くわからない内に、大きな流れに巻き込まれている事を感じた横島は、とりあえず神様に罵声を浴びせるのだった。
「ヨコシマ…つづきは後でゆっくりね」
乱れた服をただしつつ、ルシオラはその名を幸せそうに呟いた。
あとがきという名の言い訳
こちらではしがない読者に過ぎない純米酒です。はじめましてナイトトーカーの皆様。
冒頭でも告知したとおり、たかす様描かれた一枚のイラストが元になっております。
しかしながら私はこの手のロボット物には疎く、たかす様に許可をもらって書き始めてもなかなか進まず、気がつけば1年以上たっていました。
この場を借りてたかす様に謝らせもらいます遅くなって本当に申し訳ありませんでした。
03/19 16:57
益田四郎時貞様のご指摘箇所を修正