月の明かりのみが室内を照らしていた。
人里から遙か離れたこの地では、月は都会とは比べられないほど明るい光を放っている。
更に今宵は満月で、快晴。
何も灯していない室内だったが、案外明るかった。
その室内で、男が一人、女が一人。
暗闇の中に浮かび上がるような白い肌は、まだらのように浮かぶ玉の汗が浮かび、よく見ると小刻みに震えている。
苦悶を表すかのような、くぐもった短い唸り声と淫靡な水音が断続的に響いている。
むっとすえた臭いが部屋全体を広がっていた。
「っあ……はっ……うぁ……っくひぃ……」
二人は裸だった。
女物のパジャマと男物の浴衣が、二人の寝ている布団の横に無造作に置かれている。
無論、それには両者の下着も含まれている。
角が覗く赤い髪の女性は仰臥し、恥ずかしげもなく足を大きく開いて、その間には男の頭が埋まっていた。
男は、彼女の太ももから足と足の間の中心まで舌を這わせ、彼女を鳴かせている。
彼女は愉悦の声を、熱く焼けるような吐息と共に漏らす。
白かった肌も、段々と赤みがさしていき、今では手足の指先まで桃色に染まっていた。
「あっ……」
男の舌が女の秘裂に触れると、彼女は大きく体を反らせた。
堰を切ったかのように、女陰から蜜が溢れ、男の舌を刺激する。
「だっ……めぇ……横島さぁ……ん……」
手を口元に寄せ、悦楽に溺れた表情で拒絶の言葉を口にする。
男はそれを聞かず、ゆっくりと舌を女の体内へと侵入させた。
「ああああああ……ッ」
激しくのたうち、男の舌から逃れようとするも、膝の裏をがっちりと掴まれ、組ふされているのでそれも適わない。
そもそも彼女自身が、本当に逃れようとしているわけではない。
常に理性を保つことを求められてきた彼女にとって、このような背徳的な悦楽は無縁の存在であり、未知の感覚に恐怖していたが、同時に彼女は自分を上から支配せんと力で押さえつけてくる情人を受け入れることを強く望んでいたのだ。
彼女はさながら蜘蛛の巣にとらわれたがる蝶々。
男を受け入れれば、もう純潔を保っていた自分には戻れないが、その純潔を男に捧げたい気持ちもあった。
さきほどまでは後者が強かったが、いざ行為を目の前にすると前者が目を覚まし、頭の中で自分を呼び戻そうとしている。
しかし、今まで体験したことのない甘美な痺れが、正常な思考を妨げ、彼女は次第に何も考えられなくなってきた。
男が彼女の処女地を舌で味わうと、ゆっくりと抜き、女陰の周りを味わったのち、そのまま上に上がってきた。
陰核をなぞり、短く整えられた若草の中を通り、下腹を蛇行し、臍のくぼみを蹂躙し、ゆっくりとゆっくりと舌は上がってくる。
男の舌が通った場所は、火がついたように熱くなり、そしてむずがゆさも感じていた。
じわじわとねぶるようにはい上がる舌は双丘にたどり着く。
「だ……だめ……横島さ……」
もはや彼女の制止の言葉は制止の意味を持たず、ただの音になってしまっていた。
男は向かって左の丘のてっぺんまで舌を這わすと、そこに存在していた桜色の突起を舌で弄び、口にくわえた。
右手の人差し指と親指でもう片方の突起をいじくり回す。
「ひゃ……ひっぱっちゃ……いけませ……あっ、ダメ、ダメです、そこは感じすぎちゃうぅーーーッ」
彼女は耐え難い官能の波に責めさいなまれ、呼吸をすることすら滞るほど悶えていた。
目はもはや視界をうつしておらず、かわりに位置的に見えないところにいる一人の男の姿だけを脳へと伝達していた。
感極まって半開きになったままの口からは、だらしがなく涎が垂れ、顔を伝って布団に薄く染みを作っている。
手は、強烈すぎる快楽に耐えるため布団を握りしめていたが、強烈過ぎる快楽故に力がはいらず、ただそこへ置いてあるだけだった。
胸を愛撫され、話にならないほどの時間で絶頂へと導かれ、彼女はぐったりとうなだれた。
凝り固まった筋肉を解すためのマッサージをされたときに感じた気持ちよさの数百倍もの気持ちよさを全身で感じ、喘いでいた。
もはや先ほどまでの葛藤は露と消え、乱暴で無遠慮な一時の高ぶりの心地よい余韻を味わっていた。
男は、彼女の全身の痙攣を確認すると、速やかに口を離し、手を床について体を持ち上げた。
初めて……彼も初めてなのだが、彼女を配慮して、少しの小休止を挟む。
その間にも、最初から痛みを感じるほど勃起していた彼の棒は一向に萎えることはなかった。
彼の欲望とその権化は、はっきり言ってしまうと人外だった。
煩悩魔神と呼ばれるほどの色欲と、それを解消するためにある器官。
内からこみ上げる熱い欲求が、思春期の彼のその部分に影響を与えたのか、はたまたモテ男の父親の、数多の女性達を満足させた一物を受け継いだのか。
一般人の基準を鼻で笑う、長さ、太さ、固さ。 巨根と呼ぶことすら相応しくないと思わせるほどのモノだった。
それを、性的な面で見るとまだまだ幼い彼女の秘裂にそっと押しつけた。
割れ目に沿うようにずっずっと上下にスライドさせ、そこからあふれ出る蜜が彼のモノを濡らす。
灼けた鉄棒のように熱がこめられたそれを押しつけられ、彼女は悲鳴を上げた。
まさに圧倒的。
月明かりがあると言えど、今は夜。
そのいきりたった彼の肉棒を彼女はまだ一度もはっきり見たことがなかった。
更に彼女には性体験が一切無かったこともあり、それがリーサルウェポンだということを見抜けなかったのだ。
男は乱暴に肉棒を秘裂にマーキングするようにこすりつける。
押し殺した嗚咽が、響き、彼女はまた新しい段階の官能の扉を開き始めていた。
「――入れますよ」
男が睦言以外の言葉を発した。
通常時では野暮なことと処理される言葉であるが、彼の持つ神剣とそれを受ける彼女の鞘の絶望的なまでのサイズの違いを考えれば、しごくまっとうな言葉だった。
閨のパートナーの返答を待たず、彼は自分の手で彼女の秘裂を陰唇を開いて、猛る肉の槍を彼女の中に突き込ませんと位置を定めた。
彼女は息を止め、ぼんやりと霞んだ頭で無理だとわかっていても、その衝撃に耐えようと歯を食いしばった。
その一瞬で、今までの経路を事細かに彼女は思いだしていた。
「いやじゃあああああああああああああ!!! もう修行はイヤイヤイヤぁあああああああ! おうち帰してぇぇぇぇぇぇぇ!!」
「ほら、横島さん! そんなことしていたら、いつまで経っても私に惚れられるような男になれませんよ!」
彼女……世界有数の霊山『妙神山』の修行場の管理人である小竜姫は、駄々をこねつつ鬼門にかじりついている男を引っぺがした。
それでも尚地面のとっかかりを探し、指をひっかけ、抵抗する男――横島忠夫を、小竜姫はためらいなく引きずっていく。
世界でトップレベルの霊能力者の修行場とされる妙神山で、横島は修行『させられていた』。
泣いて喚いて、帰らせてくれ、と駄々をこねても、小竜姫はそれを許さない。
なぜ横島が、この妙神山で小竜姫に修行を強要されているのか。
それは数ヶ月前、横島に三つの願いを聞き届けるという神族の命によって小竜姫が横島の宅に赴き、そこで横島が望んだ最後の願いが原因だった。
その内容は「俺に惚れろ」
小竜姫は困り果てた。
その前に出した二つの願いは即物的で、彼女の独断と偏見と権限で却下することができたが、この願いは却下することはできなかった。
彼女が横島にそのような感情を抱いていれば問題はなかったのだが、小竜姫が横島に抱いていたものはただの友愛以外は何もなかった。
そもそも、彼女には恋愛経験というものがなく『惚れる』という感情がどういうものか、おぼろげにしか理解していなかったので、損得を考えずにその願いを叶えようにも叶えられない面もあった。
横島の願いを叶えるという神族の意向に背くわけにもいかず、かと言って自分の身を犠牲にするのも考え物で、小竜姫は必死に考えた。
横島の願いの内容は「俺に惚れろ」
実にシンプルでわかりやすい……が、行間に不足分を埋めれば、解釈の方法はいくらでもある内容だった。
そこで、小竜姫は「俺に惚れろ」という願いに自分なりの条件を課した。
それは「横島を私に惚れさせるぐらい立派な男にし、そこで惚れる」ということ。
そうすれば確かに「俺に惚れろ」という願いは完遂され、また自分に相応しい男になれば私にも損はない、と考えたのだ。
無茶苦茶な論法だが、命令を下されたときのルールに反してはいない。
そこまで考えた小竜姫は即日横島を拉致。
妙神山に連れ込み、毎日毎日自分に相応しい男にするための修行を強要した。
現在のように「こんなん詐欺やッ! 助けておかあちゃーーーん!!」と嫌がっても、願い事を叶えるため、という大義名分が存在しているため、良心は痛まない。
小竜姫は女性神と言えど、武神の一柱である。
その武神のしごきは、さるお方の息子である天竜童子に「小竜姫のお仕置きは過酷すぎるのじゃ」と恐怖されるほど。
また武神であるが故に、横島に優美さや知識などよりも力をつけるような修行を求めた。
更に、一度人間を極限まで強くしてみたい、と小竜姫は常々思っており、まさに渡りに船。
これで明日からウハウハだぁ~、と浮かれていた横島にはまったく見当違いの結末だった。
「ひぃぃぃ、もう、もう勘弁してくださいぃ~」
「ダメですよ、横島さん。 そんなんじゃいつまで経っても願い事は叶いませんよ」
修行用に設けられた異空間の中で、横島は小竜姫に慈悲を請う。
が、それもいつも通りあっさりと却下され、小竜姫は横島に飛びかかっていった。
徒手での格闘の修行で、小竜姫が基本を無理矢理横島に教えつけた後の実践練習だった。
小竜姫の拳が唸り、横島の顔面目掛け放たれる。
どひぃぃ、と間抜けな声を上げ、間一髪のところで攻撃を避ける。
が、小竜姫が次に繰り出した攻撃は回避することができず、脇腹に蹴りを打ち込まれ、砂塵を巻き上げ、横島は派手に転げた。
「い、いややぁあ! こんなんもういややぁああああ! 人権蹂躙やぁぁぁ、嘘つき神様やぁあああ!!」
「誰が嘘つきですかッ!」
泥だらけの胴着の横島が、もうもうと上がる砂煙の中から這い出てくると、その場でまた号泣しはじめた。
幾多の修羅場をくぐり抜け、年の割にはかなりの人生経験を積んでいる横島とて、流石に惚れろといって地獄のような修行を科せられるとは思っていなかった。
強くなりたい、なんてかけらも求めていない人間が、強くなることを強要されるのは苦痛以外の何物でもない。
「だって……だって俺に惚れるってゆーたやん! なんで俺がこないな目にあわなあかんのやっ」
えぐえぐと目をこすり、ボロボロの恰好で自分の不満を訴える横島。
だが、それを小竜姫は仁王立ちして見下ろしていた。
「だから説明したじゃないですか。 横島さんが私が惚れるに相応しい男になってから惚れますと」
「い、いくらなんでも、こんなハードな修行なんて聞いてないっすよ! というか、俺、こんな修行しなきゃいけないなんて思わなかったっす!」
「じゃあなんですか? 横島さんは、何の苦労もせず、ただ「惚れろ」と一言言うだけで私に惚れられたかったんですか?
それだったらそう仰ってくださればよかったのに」
「え!? マジで!! やたーッ! じゃ、じゃ、こんな修行は終わりで、
小竜姫様は俺にベタぼれになるとゆーハッピーエンドなんですか!?」
思っても見なかった返答に、横島は泣いたカラスがなんとやら。
立ち上がり、うれしさを全身でアピールする。
それを見る小竜姫の顔は、実に素晴らしい笑顔で、尚かつ目に怒りの炎が灯っていた。
「そんな軟弱な考えをまだ持っていたんですか」
黒いオーラを身に纏い、優しい声で、軽いモノなら吹き飛びそうなほどの威圧感を放ちつつ、笑顔で言った。
小躍りしている横島もようやく失言をしてしまったことに気が付き、萎縮する。
しかし、時は既に遅かった。
「……あ、そういえばそろそろ駅前留学の時間ッした。 じゃ、そういうことで俺は帰らせてもらいまッス」
姿勢を正し、一度礼をした後、振り返らずに異世界の出口へと全速力で走る横島。
だが、あと数センチというところで、出口は跡形もなくかき消えてしまった。
虚空を掻いた手の行き場所に困り、その場で立った横島がたらーと汗を浮かばせて、ゆっくりと振り返る。
「い、いやあああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」
そんなことをし続けて、一年が経った。
最初は死ぬほど嫌がった修行も、今では死ぬほどじゃないけど、この世で三番目くらいにイヤなものになり、小竜姫から現在も強要されている。
日記帳を書くとしたら「朝起きて修行、夜寝る」くらいしか書くべきことのない日常を続けていれば、イヤイヤながらやっていたとは言え流石に強くなった。
勿論、竜神である小竜姫とは比べものにはならないが。
毎日毎日ボロ雑巾になっていた横島も、今ではちょっとぼろい雑巾程度にとどまり、その成長の度合いを見せている。
「行きますよッ」
「い、いややあ! もう、もう来んといてーッ!」
小竜姫の目にも止まらぬ攻撃をかわす、かわす、かわす、かわす、時々当たる。
ろくに修行をしようとしない横島は、回避と逃走のスキルと再生力だけはめきめきと成長し、今では小竜姫も本気で打ち合わねば攻撃を当てられないほどに。
横島は逃げてばっかりなので、それほど霊力も体術も強くならなかった。
そのうち、真面目に修行に打ち込んでくれると一年間と数ヶ月逃げっぱなしの横島に対して小言を言うだけにすましていたが、そろそろ小竜姫も我慢の限界に達しようとしていた。
「もう、あなたは強くなろうとか、そういう風に考えられないんですかッ!」
「はい」
「即答しないでくださいッ!」
小竜姫が容赦なく拳を横島の顔面に命中させる。
ぷげらびゃ、という奇妙な鳴き声を上げ、横島は数十メートルもの距離を転がった。
一年前とほとんど変わらぬ、地面を転がっていく横島のみっともない姿を見て、小竜姫は溜息をついた。
「……仕方ありませんね……ではこういうことにしましょう。
もし、横島さんが私に一撃でも攻撃を当てられたら、一晩私の体を自由にしていいです」
「なにぃぃぃぃぃぃ!!!」
砂にまみれて、ちなみに血にもまみれて、肉塊一歩手前までになってしまった横島が立ち上がる。
相変わらず再生能力だけは不死身人間クラスで、しゅうしゅうとケガが治ってきている。
「それは本当ですかッ! 約束を違えませんかッ! もう二度と嘘つきませんかーーーっ!!」
「ええ、本当です。 私を自由にしたいのなら真面目に修行をすることですね」
小竜姫は、それにはあと数年かかると考えていた。
横島はまだまだ未熟で、攻撃も単調。
ひょんなときに目を見張る瞬発力を見せたりするが、それも自分がまっすぐ見つめて対処すれば余裕でかわせるものだった。
だが、横島は煩悩が高まれば高まるほど、頭がさえ渡ることを失念していた。
小竜姫が構える前に、横島は小竜姫目掛け走りだした。
「くらえぇぇぇぇぇ!!!!! ヨコシマウルトラスーパーサイキックバーニングキーーーーック!」
横島は蹴りを……出さずに拳を固め、小竜姫に向かって放った。
小竜姫は余裕で避ける。
が。
「なんの、喰らえッ!」
握った拳を開き、横島の手の中に隠されていた砂が小竜姫の目を目掛けて投げつけられた。
「なっ!?」
流石にこれは予期できなかったのか、小竜姫は目つぶし攻撃を直に受けてしまう。
しかし、小竜姫も竜神であり、目つぶしごときでひるみはしない。
用心に用心を重ね、バックステップで間合いを取る。
「……卑怯な……」
小竜姫は呟いた。
が、自分もまた自分の力を過信して、油断していたのもまた事実であった。
本当に気を緩めていなかったなら、目つぶしにすぐに反応できたはず。
間合いをとろうとしても、横島の気配はしつこく追いかけてきた。
視界が確保できない状況だったが、まだ小竜姫は横島に一撃を受けることはない、と思っていた。
武人たるもの、目つぶしをされたぐらいで素人に引けはとられてはいけなかいのだ。
小竜姫は視覚以外の全ての感覚をとぎすまし、横島の気配を読む。
横島の動きは、これまでずっと攻撃の修行をさぼってきたツケとして圧倒的な修練不足。
動きはごく単調で、小竜姫にとってとても読みやすいものだった。
一回吹き飛ばしてから、体勢を整えよう、と、タイミングを計り、横島の気配の先へと拳を突き出した。
絶対のタイミングだと思って放った小竜姫の拳は、虚しく空を切っていた。
その直後、額に鋭い痛みが走る。
「……おっしゃああああああああああああ!!!
やった、ワイはついにやったんやあああああああああああああああ!!!」
あまり考えたくない事態が起こっている予感がし、小竜姫はすぐさま目をこすって、視界を邪魔する砂を取り除いた。
すると、手を自分の額に近づけたまま、咆哮している横島の姿がまず見えた。
小竜姫が、額に走った痛みが横島の放ったデコピンが原因だったということを気付くのに、丸々三十秒要した。
「ダメですッ! 今のは無効! 無効です!」
「ダメなんてことはないでしょう。 今のちゃんと入りましたよ? 攻撃が」
にやにやと笑みを浮かべながら、してやったりといった表情の横島。
小竜姫は焦って声をあげるが、横島は取り合わない。
「だ、ダメなものはダメなんです、無効って言ったら無効なんです!」
「あのですね。 小竜姫様。 今のは明らかに当たりましたよ。 さらにもう一発や二発くらいはデコピンできたんじゃないかなあ」
「め、めつぶしをしたじゃないですか! そんなの認められませんッ」
「ふっ、実戦でめつぶしがないとは限りませんよ、小竜姫様! 俺にしてた修行っていうのはそんな甘っちょろいもんだったんですか!
あらゆる事態を想定した修行を、『あの』小竜姫様が認めていないとは……。
ぼかぁ、ぼかぁもう、武神の誇りは一体どこへ行ったのかと悲しくなってきましたよ」
「な、今までずっと逃げてばっかでさぼっていたじゃないですか!」
「ああ……あの音に聞こえた神剣の使い手、小竜姫様が言い訳をするだなんて……。 軽蔑しちゃうなぁ、ボク」
「ぐっ……」
心にもないことをいけしゃあしゃあと言う横島に、内心苦々しく思う小竜姫。
だが例え目つぶしをされたとは言え、一撃を当てられてしまったことは揺るぎのない事実であり、強く言い返せなかった。
「いいですか、小竜姫様。 別に俺はヤリたいからこんなことを言っているんじゃーないです。
ただ、ね。 小竜姫様がいざ実戦で、相手に目つぶしを受けて、大けがしたり、
ひょっとしたら死んじゃうかもしれない、とそういう風な事態を心配してですね。
言いたくないけど、心を鬼にして……」
「じゃ、じゃあ、さっきの約束は無しでいいんですね。 ヤリたいから言っているんじゃないんですから」
「いや、それとこれとはまた別問題っすよ」
段々と追いつめられていく小竜姫。
まさか、あの、必中を狙った渾身の一撃をかわされるとは思わなかった。
小竜姫も貞操がかかっているので一瞬真剣になり、本気の本気で攻撃を繰り出したのだ。
それをかわす……偶然などではありえない、偶然で避けられるような攻撃はしなかったのだ。
この一年の修行で回避だけはうまくなったと思っていたが、まさかここまでよけるとは、小竜姫は想定していなかった。
小竜姫は自分の迂闊さを心底呪った。
「……しょうが、ありま……せんね……。 では……今夜、私の部屋に……」
「なんのボクは今ここででもーーーッ!」
胴着を脱いでパンツ一丁になった横島を地面にたたき落とした後、小竜姫はよろよろとした足取りで異世界の出口を開き、そこから出て行った。
目の前が真っ白になった。
口を閉じていない風船のように、肺の中にある空気が全て排出され、全部の内臓に強烈な圧迫感が襲いかかる。
その後、来る、激痛。
身を引き裂かれるような、そんな痛み。
今まで生きてきた中で最も強く、最も心に響いた痛みだった。
唇を固く結び、悲鳴を出さなかったのが、小竜姫の唯一見せたプライドだった。
一気に杭を打ち込んだ横島は、抜くときは恐ろしくゆっくり、慎重だった。
血に濡れた肉棒が、全て小竜姫の中から引き抜かれると、横島ゆっくりと仰向けの小竜姫の体に手を通した。
小竜姫の背中に存在している逆鱗に触れないように、うまく手を回すと、そのまま小竜姫の体を抱きしめた。
「……なんか、順番が色々変わりましたが、好きっすよ、小竜姫様」
昼間のおふざけをしているときからは考えられないほど真剣な声で横島は囁いた。
横島は小竜姫の流した涙を舐め、そっと閉じた唇に口づけをする。
しばらく、そのままの体勢で、横島は小竜姫の体の感触を楽しんでいた。
いつもの力がこれで出せるとは思えないほど、小竜姫の体は華奢で、とても柔らかかった。
その肌は無駄な脂肪は一寸もなく、綺麗なピンク色に染まっている。
胸だって、巨乳とは間違っても言えないが、片手で掴むのには余るほどある。
小竜姫とて鬼ではない。
日頃修行のやる気のなさを愚痴りながらも、横島の世話をかいがいしく焼いていた。
そういうことをしなくてもどうにかなってしまうのが横島。
スパルタ修行をさせられても、横島は小竜姫のことが嫌いにならなかった。
むしろ一年も同居生活を続けていて、ちゃんと彼女を女として意識していた。
「ひょっとして、怒ってます?」
ただ横島の心配は小竜姫の気持ちであった。
俺に惚れろ、なんて言ってみたものの、実際に彼女の気持ちがどうなっているのか横島にはわからない。
小竜姫は自分のことを一生懸命強くしようとしてくれているのに、それに一向に応えようとしない態度を取ったり、みじめな姿を見せたりして、愛想を尽かされていないか、というのが不安で不安で仕方がなかった。
もっとも、彼女に嫌われたくない、と思っていながら、色欲がそれを勝り、今夜の逢瀬を横島は小竜姫に強く求めた。
それでもなお小竜姫に嫌われるのは本意ではなかった。
色欲はあるが嫌われたくない、嫌われたくないが色欲はある。
結構わがままな思考を持っているが、そういう人物が横島なのである。
「別に怒ってなんていませんけど」
小竜姫は素っ気なく言った。
少し鼻にかかった声だった。
小竜姫は横島から顔をそらし、人差し指で布団をかりかりとこすっている。
「あ、あの……ここ、治すっすね」
淡い緑色の光が辺りを優しく照らし、横島の手の中に収束する。
そこには、翡翠色の透き通った球体が一つ、現れていた。
球体の中には『癒』の文字が浮かんでいる。
横島はそっとそれを血が滲んだ秘部に押し当てた。
「あっ……」
ほんの少しの刺激でも引き裂かれた処女膜が痛むのか、小竜姫は少し顔を歪めた。
だが、横島の持つ球体が再び淡い光を発して霧散すると、秘部から漏れる血が止まり、小竜姫の痛みが全て消え去った。
しばし考えた後、横島はもう一度例の球体を出現させ、とある文字を込めて、再び同じ事を繰り返した。
「小竜姫様。 今、『淫』の文珠を使いましたよ」
「なっ! なんでそんなことをするんですかッ!」
「あ、いや……その……やっぱり俺ばっか気持ち良くなるのってあかんかなー、って思いまして。
い、イヤならいいっすよ。 文珠を解除しますから、遠慮無く言ってください」
横島は人差し指と人差し指をちょんちょんとつつきながら言った。
「あ、当たり前じゃないですか! そ、そ、そ、そんな破廉恥な……」
小竜姫は躊躇うことなく言い切った。
上半身を起こし、横島の首を掴んでぶんぶん上下に振る。
顔を赤く染めて、とんでもない、とんでもない、と連呼して。
突然、電撃のように悦楽が小竜姫の体に走った。
横島をふりまわしているときに、横島の手が偶然、小竜姫の秘部にあたり、そこを刺激したのだ。
「ひぐぅ……」
たったそれだけで腰砕け状態に陥り、へなへなと前のめりに崩れる。
重力に従って、横島の左腕にすがりつくように体重を任せた。
「ん?」
ふと、横島は考えた。
今の今までずっと小竜姫にしごかれてきた。
それも、ほとんど理不尽な理由で。
確かに何も苦労せずに人の心を手に入れようだなんて虫の良すぎる話だった。
だが、クーリングオフ制度を使うと叫んでも、小竜姫は適応外です、と言って受け付けようとしない。
小竜姫は小竜姫で、どう見ても痛めつけるのを楽しんでいるように修行を行っている。
ここに来てから、毎日毎日やることと言えば、ゴキブリのように逃げて、それでも追いつかれて思いっきり殴られることくらい。
かかってきなさい、とも言われているが、あの小竜姫相手に戦おうとしても、逃げるときよりも遙かにぼこぼこにされてしまうのは目に見えている。
下手をしたら死んじゃうかもしれない。
ほとんどいじめのような毎日を、ただひたすら我慢して過ごしていた。
そして今、目の前の小竜姫は、ほんの微かな刺激だけで全身の力が抜けるような状態。
今も小竜姫は、はにゃはにゃ、とかわいらしい喘ぎ声を上げてふらふらしている。
いうなればそこらへんにいるようなかわいらしい女の子とそんなにかわらない。
いや、これほど美人はあまりいないし、情欲にまみれて身動きがとれなくなるよな子はそこらへんにはいない。
それらは、横島にもとても簡単に下克上が達成できることを示していた。
ちなみに、横島は『淫』の文珠は使っていない。
横島も流石に『淫』の文珠はヤバイと思ったので普通の『治』の文珠を使い、あたかも『淫』の文珠を使ったかのように見せかけただけだったのだ。
こういう思いこみをさせるだけでも感じるときがある、と横島は昔読んだエロ本から知識を得ていたのだ。
そもそも媚薬などは、こういう思いこみを利用するものが多いらしい。
『淫』の文珠を使わなかったのに、小竜姫はへなへなのくたくたになっている。
それは何故か。
横島は考えた。
仮説1、プラシーボ効果、つまり当初の目論見どおり『思いこみ』というやつだろうか。
仮説2、『治癒』の文珠で血流がよくなりすぎ、感じすぎているのだろうか。
「よ、よこしまさぁん……早く……この疼きを……」
しかし、プラシーボ効果と言うのにはいささか強すぎる反応を示している。
よって仮説1は特捜リサーチ200Xばりのスピードで却下。
治癒の文珠も代謝を活発させて自然な回復力によって怪我の治癒をするタイプではないため、仮説2も却下。
両者とも考えづらい、と横島は足りない頭で必死に推理した。
「横島さぁ……お、ねが……」
潤んだ瞳で小竜姫が横島にすがりついてくる。
体の奥底からわき上がる官能が、じっとその場で我慢していることを妨げるのか、すりすりと体をこすり合わせてくる。
甘い香りのする熱い吐息が横島の顔をふきかかり、鼻腔を刺激する。
横島はふと閃いた。
もしかして……素?
「……横島さ……」
「ああーーーもうめんどくせーーーー!!! がおーーーーーーー!!」
元来小難しいことを考えるのは横島には向いていない。
こうしてがっつりと体で動くのが、横島の主義だった。
「ひゃ……ら、らめれすぅ……」
小竜姫の脇を掴み、ぐいっと大きく引き寄せた。
横島はその場であぐらをかき、小竜姫を座った状態でだっこするように受け止める。
小竜姫は思うように体に力が入らず、微かに手足を振って横島から離れようとしたが、抵抗にすらならなかった。
「や、やめてくださいぃ」
舌足らずな口調で横島を拒絶しようとするが、体は横島を求めているのか、横島の脇に手を通し、背中に手を伸ばして掴んでいる。
自ら密着するような形になり、下半身をすりつけるように動かしている。
言葉と体が全く反対のベクトルに進んでいる。
まるで口だけが別の生き物であるかのように。
とりあえず、横島は今も尚形にならない抵抗をし続けている小竜姫の口を塞いだ。
「んむっ! むぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」
両手で頭をがっちりと固定し、逃げられないようにしてから、口を付ける。
不意打ちで驚き、反応できていないうちに舌を唇の隙間に滑り込ませる。
いきなり歯の間に舌を入れない。
まず小竜姫の歯と歯茎の間を沿うようにゆっくりと舐めた。
時間をかけ……のべ五分間それを続けていった。
ただでさえ発情状態であった小竜姫に、横島のその攻撃は酷なものだった。
口の中も性感帯なのだ。
キスをしているという羞恥心も相まって小竜姫の顔はどんどん赤く染まっていく。
顎に力が入らなくなってきたのか、食いしばった歯が開く。
横島はすかさずその隙間に舌を入れ込んだ。
小竜姫の舌をめざとく見つけると、横島は熱心に絡ませた。
今まで性体験のなかった横島だが、キスをしたことならある。
知識だけ偏っていた相手だった分、キスの経験を積みたいと言われ、さりげなく夕日の東京タワーでキスレッスンというのに付き合わされていたのだ。
結局、その相手とは最後の経験はおあずけされたまま別れることになってしまったのだが、そのときの経験が今生きた。
横島は小竜姫の口内を蹂躙し尽くすと、ゆっくりと舌を抜いた。
唾液が小竜姫と横島の舌との間に銀色の橋をつくり、淫靡に落ちていった。
キスが終わると小竜姫はくたりと首を倒した。
息が荒く、薄目を開けて横島の顔を見ている。
何を考えているのかは、横島にはわからなかった。
横島はゆっくりと小竜姫の腰を掴んだ。
少し小竜姫の体を持ち上げ、片手を体と体の隙間にいれる。
小竜姫が短く何かをうめいたが、もはや言葉になっていなかった。
片手ということで少し手間どったが、小竜姫をおさえている手を引き寄せれば、再び小竜姫の体に肉棒が打ち込まれるようにセッティングを施した。
「――入れますよ」
小竜姫は、今度は何の光景を見たのか。
瞳に光が映り、すぐに全てを飲み込んでしまいそうな黒い闇が取って代わった広がった。
「あ゛あ゛ああああああああああ」
獣のような、おおよそ理性などかけらも感じさせないうなった声が、部屋の中にじんじんと響いた。
小竜姫はかなりの力で横島を抱きしめ、横島の背骨がきしむ音を鳴らす。
常人であれば、耐えきれないほどの力。
一年以上、小竜姫と修行を行い、耐久力を高めた横島であったから、それに耐え切れた。
小竜姫は更に背中を限界まで反らし、顔が天を仰ぐように向けられる。
目からは涙が吹き出し、口からは舌が突き出され、大量の涎があふれ出た。
横島も、小竜姫の背中に――逆鱗に触れぬように――手を回し、力の限り抱きしめた。
十分もの間、その状態は続いた。
小竜姫の喉は枯れ果てたのか、それとも落ち着いたのか、うめき声は途絶え、抱きしめていた手は今では力なく、ただ繋がっているだけに。
横島がまず先にアクションを起こした。
小竜姫の臀部を掴み、それを持ち上げる。
「ひ、あああああああああ!」
横島の肉棒のとっかかりが、小竜姫の膣壁をひっかく。
過剰に分泌された小竜姫の蜜が掻き出され、粘液同士のふれあう音が漏れる。
小竜姫の手に再び力がこもり、横島を強く締め上げる。
そして、横島は小竜姫を引き寄せる。
小竜姫の頭の中で幾多もの雷光が走る。
子宮口小突かれ、内臓を圧迫され、膣壁を抉られる。
それに対して自分はあがらうことはできない。
相手は人間。
一年間修行をしてきて、ずっと逃げてばっかりいた人間。
武神と一人の人間の力の差はかなり大きい。
力量だけで語るなら、比べるまでもないほど。
だが、今では立場は逆転している。
ただの人間に、今自分は好き放題にされている。
さながら大海に浮かぶ一枚の木の葉のように、なすがままにされ、抵抗しようとしてもそれをあざ笑っているかのように扱われている。
自分は彼に支配されているのだ。
そう思うと、彼女の膣と子宮が熱を持って収縮をする。
何故かはわからない。
心の奥底に、かゆいような痛いような疼きが生まれ、決して消えるようなことはなかった。
横島は自分と比べて力があるわけではない、確かに変にフェミニストな面も持っているが人柄だって決して褒められるようなものじゃない。
ハンサムなわけでも、学力があるわけでもない。
強いて言えば、霊能力が高く、文珠の精製という特殊な能力は持っているが、だからと言ってそれで彼の欠点を無視し、彼の全てを認められるような上等なものではなかった。
だが、それと同時に彼に感じる不思議な魅力を認めている面が小竜姫の心の中に存在していた。
小竜姫は、嫌いや好き、とはまた違う、彼女にはまだ感じたことのない、言葉で形容することができない感情を彼に対して抱いていた。
そして、その感情は彼の欠点すらも自分の中で取り込み、長所として見てしまうほどの色眼鏡となっていた。
横島によって、体をほんの少し持ち上げられて、引き離されて、そして引き寄せられるだけで、そのたびに思考が消失させられる。
頭の中に生まれる一瞬の空白が、耐え難く拒絶しがたい幸福感と同時にさらなる幸福感への飢餓感を産みだす。
「小竜姫様の中……すっげぇ気持ちいいっすよ」
その呟きを小竜姫は聞いた。
脳が他の情報処理に追われすぎており、言葉の意味はわからなかったが、未だ熱の伝わっていない小竜姫の心に響き渡り、それを突き崩した。
そのときが、横島の三つ目の願いがかなった瞬間だった。
いや、以前からその願いはかなっていた。
だが、小竜姫の意識上にその気持ちが盛り上がり、更にそれを自覚するに至った瞬間だったのだ。
小竜姫の心理では、「私は横島さんに嫌われている」というものがあった。
毎日毎日、本人が望まぬ理由で修行を強要し、痛めつけていることの負い目は、ちょっとやそっとのことでは崩れなかった。
真剣に「好き」と言われても、その負い目は揺るがなかった。
しかし、小竜姫の理性が剥がれた状態で投げかけられた、彼女を受け入れる言葉――それが卑猥なものであっても――がいとも簡単にそれを打ち壊してしまった。
もう横島は自分で手を動かす必要はなくなっていた。
あれほど受け身に徹していた小竜姫が、今では横島よりも相手を貪欲に求めている。
「ひっ……よ……ひぐっ……こしま……さん……」
「ああ、小竜姫様。 いいっすよ、小竜姫様!」
今の小竜姫は恥も外見もない。
ただ、横島のみを求めることと横島に求められることにより与えられる愉悦に鳴いていた。
そしてそれは横島も同じである。
横島はあぐらをかいていた足をほどき、小竜姫をそのまま前に押し倒した。
正常位で横島は、一年間逃走で鍛えてきた足腰を使い、存分に小竜姫を責め立てる。
「ああ……よこしま……さん、来て、来てぇぇぇぇぇぇぇぇl」
小竜姫の胎内に、横島の精液が発射された。
膣のキツイ締め付けがあって尚、横島の肉棒が射精の反動で小刻みに震えている。
煩悩魔神と呼ばれる横島の精液は、二つ名に恥じぬくらいの、量と濃さがあった。
熱い液体を子宮に注がれた小竜姫もまた、自分が初めて他人の色に染められたことを実感し、高みへと登った。
あまりの量の多さに、精液が逆流する。
横島の肉棒は一回の射精では全く萎えず、むしろさっきより膨張しているかのように屹立していた。
一方小竜姫は、既に何回かオルガズムに達しており、疲れ切っていた。
……流石の武神とて、煩悩魔神を相手に閨に勝つことはできなかった。
全身が敏感になっているという小竜姫側の事情を無視したまま、横島は休憩を挟まずに再び腰を振りたくった。
「あ……ひゃめ……うごかさ……やぁぁぁぁぁぁん」
二人の愛の営みは、結局、朝になるまで休みなく行われたのだった。
「あのー……小竜姫様、怒ってます?」
朝の日差しが障子越しに入ってくる時分。
横島は小竜姫に言った。
夜の行為の跡として、布団には尋常ではない量の白濁液が染みついていた。
強烈な栗の花のにおいが部屋中に満たされ、なれていないものには吐き気すら催させるほどだった。
小竜姫は横島とは正反対の方向を向き、シーツにくるまって丸くなっている。
横島は流石にやりすぎたか、と思い、さっきから気遣って声をかけているのだが、全て無視されている。
「あ、あの……俺、飯作ってきますね。 パピリオのヤツも腹減らして起きてくる時間ですから」
居心地の悪さに耐えきれず、横島は遁走した。
下着と浴衣をひっつかみ、朝の寒い空気の中へと手早く出て行った。
小竜姫の寝室と縁側を繋ぐ障子を閉め、横島は、小竜姫も初めてだったのに暴走していじめすぎた、と自己嫌悪に陥った。
自分の馬鹿さ加減に嫌気がさし、一つ大きな溜息をついて、前日に用意しておいた音消し用の文珠を回収する。
なるべく音を立てないように廊下を走り、いつもは小竜姫が担当している朝食作りの代わりを務めるために台所へと向かった。
小竜姫は、横島が完全に立ち去ったことを気配で確認すると、ひょいと首をすくめてシーツの中に頭を潜り込ませた。
激しく愛し合った跡の、自らの胎内に残る横島の子だねのぬくもりを感じながら、質素剛健な彼女には珍しく『朝寝』というものに身を任せたのだった。
後書き
念のために言っておきますが、これは18歳未満の方は読んではいけないブツです。
ま、注釈もつけてありますし、そのようなことをする人はいないと思いますが、一応。
もし18歳未満のお子様なのにこれを読んでしまった人がいたら、ただちに戻って、全部忘れなさい(笑)
めっ、ですよ、めっ。
それはそうとして。
エロくしようと思いましたが、あんまりエロくなりませんでした。
……力量不足と申しましょうか、自分にはこれが精一杯っすね。
なんとか人目にさらしても恥ずかしくないと思えるほどがんばりましたけど、エロくないですね、うん。
今作は、作者zokutoが数日前に書いた「竜の手」の続編『っぽい』ものです。
本来ならば続編投稿したかったのですが、間抜けなことに前作を投稿するときにパスワードを間違えてしまったようでして、できませんでした。
まあ、そちらを読まなくても理解できるように極力努力しましたので、多分問題はないと思いますけど。
どっちかというと、竜の手とはまた別の独立したお話にしたく、竜の手とは直接関係したものではないですし、飽くまで続編『っぽい』ものですので。
続きは気分が乗れば書きます。 乗らなきゃエロなんて書くこたぁできません。
では。