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「遠野物語(GS)」

犬雀 (2006-02-21 23:39)

『遠野物語』


「令子ちゃーん。助けて欲しいの〜」

美神令子除霊事務所の平穏な昼下がりはこの一言で破られた。
声の主は令子の自称親友である暴走娘、霊力なら超一流、精神力は小学生以下の式神使い六道冥子である。
この少女少女した女性(これでも二十歳超えている)がこんなことを言ってくる時は十中八九碌なことではない。
それは令子の引きつった顔にもよく表れている。
おやつの饅頭を喉に詰めて七転八倒している横島も同様の思いなのだろう。
何しろ彼女には前科がありすぎるのだ。
除霊のつもりが勢い余ってマンションを破壊しただの、ビルを廃墟に変えただのと一つ一つ数え上げたら両手の指でも足りないだろう。
それもひとえに彼女の暴走癖にある。

そしてその最大の被害者は美神令子だったりする。
いい加減にしてくれとは思うが、どこか子供っぽい彼女を嫌うことが出来ない。
所謂、腐れ縁という奴だろう。

だがそれとコレとは別だ。
誰だってすき好んでトラブルに巻き込まれたくは無いのだ。
しかもそれはほとんど確定といっていい未来図だったりする。

露骨に視線をそらす令子には気がつかず冥子は事務所に飛び込んでくるとグシグシと泣き出した。
その様子に令子の顔色がますます青くなる。
これは彼女の必殺技である暴走への点火スイッチが入った証拠だ。
今はいいがもし何かのきっかけで本泣きにレベルアップしたら、彼女のお友達である十二神将が室内を瓦礫に変えるだろう。
それだけはなんとしても避けなくては、調度品は買えばいいが命は一つだ。
こんなところで無駄遣いしていいはずはない。命は大事にすれば一生使えるものだ。
ならばと横島とアイコンタクトする令子。
横島も心得たものでどこからか取り出したペロペロキャンデーをいつでも冥子の口に突っ込めるように身構える。
とりあえず最悪の事態を回避すべく令子はつとめて優しい声を出して冥子の頭を撫でる。
はっきりいって二十歳超えた女性にやる行為とは言いがたいが、彼女には子供をあやすようなやり方の方が効果的なのは今までの臨死体験一歩手前から身についた生活の知恵だった。
少しやるせないがそれも仕方ない。とにかく今は彼女を宥めるのが先決である。

「どうしたのよ。」と問えば冥子はグシグシと洟を啜りながら涙に潤んだ目を向けつつ一通の古風な書状を令子に手渡した。
白い紙に墨の跡も美しい達筆で古風な文字が書いてある。
だがその文字を読むことを令子の脳は拒否した…かったけど無理である。
ここで見なかったことにするのは点火スイッチを再度押すだけの意味しかない。
すでにその顔には諦めの色が滲んでいる。
それでも何とか彼女は必死に声を絞り出した。

「…なにこれ?」

「果たし状なの〜。」

「はあ?」

「またっすか?」

かって鬼道がしたように冥子に挑戦しようと言う命知らずがまだいたらしい。
その根性と耐久力は小学生並みだが破壊力は一軍に匹敵する冥子に挑戦するなど命知らずもいいところだ。

考えても見るがいい。
戦車を自在に操る小学生とまともな勝負になるだろうか?
しかもその戦車は時々操縦者の意思とは無関係に破壊の限りを尽くすのだ。
まっとうな人間なら ─少なくとも命が惜しいなら─ そんなものには近寄りたくないものだろう。

知らない人間とはいえ令子は果たし状の主に同情する。
「ふうん」と漏らした同情の溜め息をどうとったのか冥子はたちまち泣き止んだ。
そういえばグスグス泣きながら何かを言っていた気がするが聞いていなかった。
もしかしたらまた自分は知らないところで地雷を踏んだのか?と横島を見ればおでこを押さえて嘆息する少年が居て…。

「ありがと令子ちゃん〜。令子ちゃんなら協力してくれると思ったの〜。」

「え゛?」

「お手伝いしてくれるんでしょ〜。今「うん」って言ったものね〜。だから令子ちゃんって好き〜。」

聞き違いだと指摘することなど出来るはずもなく、こうして美神令子の退路は断たれたのだった。


やがて果たし状に指定された日がやって来た。
これから命がけの戦いだと言うのに頼りになる友人が居るせいか緊張感の欠片もなくのほほんとしている冥子とは対照的な表情の令子。
その顔色はほっとけば川原で石でも積みそうなぐらいに暗い。

隣に縛られて転がっている横島は最初こそは「巻き添えはいややぁぁぁ!」と泣き叫んだが今は体力を使い果たしたかそれとも諦念したのか、おとなしく目の前の雑草をヨジヨジと登っていくテントウムシに人生について語りかけていた。

三者三様の空気が漂う中、突然あたりに生暖かい風が吹き、獣臭が立ち込める。
霊能者ではなくとも鬼気を感じるほどの霊圧の中、身構える令子とキョトンとしたままの冥子、鳥に狙われた芋虫のように必死に逃げようとする横島たちの目の前で突然地面が爆発するとピンク色の煙が立ち昇った。

「なんなの?!!」

「ふえ〜。綺麗〜。」

煙幕かと神通棍を抜き放つと敵の気配を探るべく精神を一瞬で切り替える…必要はなかった。
なぜならピンクの煙の向こうで煙にむせながらも必死に珍妙なポーズをとっている人影が二人。
ケホケホと咳き込みながらも出来損ないの中国拳法のようなポーズだけは崩したく無いのか必死に踏ん張っている。
人影と横島たちの間を生温かな風が脱力感とともに吹きすぎて煙を散らしていく。

やがてはっきりと見え始めた敵の姿は登場シーンの奇天烈さに合わせたかのような異様なものだった。
いや、異様と言うのは当たらないかも知れない。
原色のライダースーツに似た服装を身につけ、フルフェイスのヘルメットをかぶったその姿は時たま目にする姿である。
具体的には日曜の朝とかデパートの屋上とか。

「戦隊ヒーロー?!」

「いやでも二人しかいないっす!」

確かに見える人影は二つだけである。
戦隊というにはちょいとさみしい。
ここはやはり最低でも四人は必要であろう。出来れば巨大ロボットも。

どうリアクションをすればと困る令子と横島の横では冥子が「かっこいい〜」と呑気なことを言っている。
やはり当事者であるという意識はないらしい。
マイペースにも見える彼女たちに呆れたのか、はたまた煙の中でポーズをとり続けているのに飽きたのか人影はピシリと見事なシンクロでこちらを指差すとヘルメットを脱ぎ捨てた。

ふわりと舞う見事な黒髪が日に映える。

「女?!」

「しかも美人の双子姉妹ですっ!」

いつのまにかイモムシから復帰した横島がキラリと目を光らせる。
美人が現れれば彼にとっては縄抜けなど屁でもないのだろう。
しかも美人の双子姉妹とはそれだけで貴重な存在である。
腰まである濡羽色の髪をたなびかせ、ぱっちりとした目に整った顔立ち。
登場の奇天烈さに呆然とした思考を素に戻してよく見れば、胸の膨らみや腰のくびれなどプロポーションも抜群だ。
そんな水準以上の美女が二人揃っていて大人しく縛られている横島ではありえない。

「「私たちは遠野一族の名を継ぐもの!」」

声までシンクロさせて叫ぶ美人姉妹。
その名に聞き覚えがあった令子の顔が驚きの色に染まった。

「え?遠野一族ってあの鬼使いの?!」

「「私たちを知っているとはあなたも霊能者ね?!」」

「ええ。私は美神令子よ。」

ハッタリ気味に胸をそらす令子。
彼女の記憶によれば相手は平安より伝わる鬼を使役する一族であり、その能力は高く霊能者の歴史に何度も登場した一族である。
そんな一族であれば当然自分の勇名は知っているだろう。
六道の跡取りに世界でも有数のGSである自分が見た目は ─実は傍観していたいのだが─ 加勢しているのだ。
それで彼女たちがビビれば自分の生存確率は高くなる。
戦っても負けるとは思えないが冥子発のスタンピートが発動するのは何とか避けたい。

だけど楽観的な希望と言うのは打ち砕かれるために存在するのである。

「「知らないわ」」

「ちょっとマテやあんたら!!」

「「私たちが知らないってことは大したことないのね。」」

抗議の声を黙殺して顔を合わせて頷く美人姉妹たち。
ウンウンと頷きあいながら口の端に笑みを浮かべているその様は空気が悪い方に変わったことなど微塵も気にしていない様子だった。

ギリギリと歯を噛み締めながら神通棍を握り締める令子の姿は起爆5秒前といった按配である。
このままではなし崩しに戦闘になってしまう。
それは色々と不味い。
冥子がつられて暴走するかもしれないし、何よりこんな美女とまだお近づきになっていないのだと横島は必死に無い頭を振り絞って令子の怒りを抑えるべく会話に割って入った。
その際に無意味に歯を光らせて好青年をアピールすることも忘れない。
もっとも自己陶酔気味の姉妹には何の感慨も与えなかったようだが、横島という男は布石を打つことを惜しむような甘い男ではないのだ。

「美神さん。この命知らずの美人姉妹を知っているんですか?」

「知らないわよっ!でも遠野一族は有名なの。様々な鬼を使役する除霊師の末裔ってね!」

「「そのとおり!」」

再びシンクロすると姉妹は優美な動作で髪を掻きあげるとおのおのが自己紹介を始めた。

「私は遠野やまねこ!」

「私は遠野どんぐり!」

「「二人合わせて遠野美人姉妹『どんぐりとやまねこ』!!」」

「いや…そのまんまじゃない…」

さすがに意表を突かれたのかガックリと肩の力を抜く令子からは先ほど怒気は消えていた。
何となくホッとしながらも横島とて脱力したのは一緒である。
それが思わず声に出たのは仕方ないだろう。

「それにしてもなんでまた女の子にそんな名前を…」

「「お父様が宮沢賢治大先生のフアンなのよ!」」

「だからといってねぇ…」

「「あん?おめだつ宮沢賢治先生ば馬鹿にすってか?!」」

シンクロしつついきり立つ美人姉妹。
どうやら興奮すると方言が出る体質らしい。
どこの出身かは謎である。

「なにそのうそ臭い方言…」

「まあ本人たちが納得しているならいいとは思うすけど…」

「それにしたってなぁ…」と口の中で呟いた言葉が聞こえたのか姉妹は柳眉を逆立てた。

「「んじゃおめえ私らに「雨ニモ負ケズ」とか「注文の多い料理店」って名前になれって言うだか!!」」

「なんでそんな選択肢しかないのよ!!」

「「だってお父様はそれしか読んだことがないって言うし…」」

「それって本当にフアンなの〜?」

「「う゛っ…」」

悪気の無い冥子にのほほんと痛いところを突かれたらしく胸を押さえてよろける姉妹。
何となくだが国語の成績は悪かったっぽい辺りが微妙に横島に親近感を感じさせた。

今度は木枯らしが一同の間を吹きぬける。
冥子だけはいつものようにマイペースで「「やまねこちゃん」と「どんぐり」ちゃんて可愛い〜」と他人事のように微笑んでいる。
実際他人事なんだろうなぁとは思うが、それも姉妹が自失しているからである。
状況はまだどう動くかわからないのだ…と気を引き締めた矢先に鬼気を纏ってユラリとこちらを振り向く姉妹たち。

「「…とにかく私たちの名前はどうでもいいの!大事なのは勝負なのよ!さあ六道冥子、私たちと戦いなさい!」」

「待ちなさい!」

冥子を指差して高らかに宣言する姉妹を皮肉な笑みを浮かべた令子が遮った。
何事と身構える姉妹に令子は傍らに居た横島の襟首を掴むと姉妹の前に引きずり出して見せる。

「あなたたちみたいなペーペーに冥子と戦う資格があると思えないわ。」

「「なんだべ!?」」

ペーペー扱いされて顔を真紅に染め息巻く姉妹に令子は今度は明らかに嘲けりの笑みを浮かべてみせた。
付き合いの長い横島にはわかるがコレは令子のペースである。
彼女はは彼女なりに必死で冥子の暴走を防ごうとしているのだろう。

敵より味方の方が恐ろしいというのは凄く悲しい状況であった。


姉妹たちはしばし顔を見合わせてボソボソと囁きあっていたが、横島を見てもどう判断しても強いとは思えなかったのだろう。
自信満々に頷きあうと「「いいわよ」」とシンクロしつつ手を前に組み合わせて印を結び横島に対峙する。

こうなれば横島に逃げ場は無い。
ここで拒否したら令子の神通棍は先ほど姉妹に与えられた屈辱の分を加えて自分に襲い掛かってくる可能性大である。
ならば姉妹と戦ってどさくさに紛れて乳の一つでも揉んだ方が生き残れる確率は高いしなにより美味しい。

ニヤリと不敵な笑みを浮かべ、心の中ではどんな文珠を使おうか、ここは『縛』で身動きを取れなくしてから揉み倒そうか…などと犯罪者じみたことを考える横島だったが、彼は忘れていた…令子が彼女たちを『鬼使い』と言っていたことを。

「行くわよ。やまねこ!」
「ええ。どんぐり!」

合図と同時に二人は横島の想像を超える速度で後方に飛び、間合いを開けると口の中で真言を唱える。
慌てた横島が文珠を使おうとするが、助平なことを考えていた分だけ一歩遅れた。
そしてその一歩は彼女たちの呪が完成するには充分な時間であった。

まずはやまねこの真言が完成する。
手を地面につけて叫ぶやまねこ。

「出でよ!『その鬼』!」

地中からせりあがるように出てくるのは御伽噺に出てくるような赤い鬼。
耳まで裂けた口に並ぶ牙が黄色く光り、猛牛を思わせる頭の二本の角は岩をも貫きそうである。

「出でよ!『なんの鬼』!」

どんぐりの声とともに地面から現れるのは青い鬼。
山猫の呼び出した「その鬼」と違い一本の角に一つ目。
トラでさえくびり殺しそうな太い腕を組んで一つ目を爛々と輝かせて横島を睨みつける。

その二鬼の迫力にビビったのか横島の肩からがくりと力が抜ける。
だが姉妹の真言はまだ続いていた。
今度は呪を唱えたまま手を繋ぎ、その手を天に高々と掲げる。

「「やって来い来い『きになる鬼』!!」

「おおおおぉぉぉぉぉぉぅぅぅ!!」

天を割り雄叫びとともに地響き上げて地面に降り立つは黒い鬼。
それは前の二鬼より巨大で禍々しい鬼気を振りまいている。

三鬼の迫力に押されたのかユラリとよろめき、俯きながら小刻み肩を震わせる横島を見て勝ち誇った姉妹が三鬼をズズイと前に進めると「「どうだ」」とばかりに胸を張った。

「「さあ。やっておしまい『その鬼』、『なんの鬼』、『きになる鬼』!!」

「見たことも無い鬼ですからぁぁぁぁ!!」

「「あきゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」

絶叫とともに突っ込み混じりに放たれた文珠には『縛』ではなく『爆』の文字が込められていて……三鬼は姉妹もろともあっさりと吹っ飛んだ。


文珠の巻き起こした爆煙が消えてみれば三鬼の姿は無く、そこにはボロボロになったライダースーツの姉妹がピクピクと小刻みに痙攣しながら倒れていた。

「はっ!大丈夫ですか?美人のお姉さんたち!」

残像すら残る速度で突っ走り、倒れる姉妹をそれぞれ両手で抱き起こす横島。
ついつい突っ込みのほうを優先して姉妹を吹っ飛ばしたが、考えてみればこれは願っても無いチャンスだと心の中でほくそえむ。
それにしても両方の腕に美人を一人づつ抱えるとは欲深いものだ。

横島の腕の中で一足先に意識を取り戻したのは多分「やまねこ」だった。

「ううっ…こんな男にあっさり負けるなんて…私がどんぐりより強いって証明できねーべ…」

「へ?」

もしかしたら仲悪い?と首を傾げる横島の反対側の腕でピクリと反応したのはどんぐりだろう。やっぱり見分けはつかないけど。

「なんだべ!やまねこもそったらことば考えていただか!」

「やまねこもってどんぐりもか!」

「んだべさ!」

横島の腕にそれぞれ抱き起こされながら、呆気に取られる令子や冥子の前で姉妹は言い争いを始めた。
つまるところ冥子に挑戦したのは「姉妹のどちらが強い」かと言うことを証明するためだったらしい。
傍から見れば馬鹿馬鹿しい気もするが、子供の頃から同じ顔、同じ修行をしてきた二人にとっては大事なことなのだろう。

自分の腕の中で「私が強い」だの「いーや。私が強い」と始まった争いは、今や「私の方がバストが1センチ多い」だの「私の方がお尻の丸みは美しい」だのと霊能とは関係の無い話になっていた。

さてどう仲裁したものか…それともこのまま言い争いを続けさせた方が「乙女の秘密の情報」を入手できるではないかと鼻の下を伸ばしつつ悩む横島を言い争いに疲れたのか息を荒げて姉妹は見上げる。

「ねえ。やまねこ…」
「ええ…どんぐり…この人に決めてもらいましょう。」

いつの間にか横島が審判役ということに姉妹で纏まったようだ。
こういうところは何だかんだ言っても仲は良いらしい。

「え?俺っすか?」

「「ええ。あんたは私たち姉妹を倒してた男。そのあんたが決めるんだったら文句はないわ…」」

「いや…でも…」

んなこと言われても困る。
こんなもんは悪魔の選択だ。どっちを選んでも遺恨が残る。
だいたい戦いと言っても文珠一発でケリがついたものに「どっちが強い」なんて判定は不可能だろう。
かといって「両方とも強い」とお茶を濁すことを真剣な目で横島の顔を見上げている姉妹が許すとは思えない。

だが今回はヒントがある。
そう…姉妹の名前こそが最大のヒントだった。
横島がいかに学校の成績は良くないとはいえ宮沢賢治ぐらいは読んでいる。
それに思い至ってニッコリと微笑むと微妙に頬を染めた姉妹に向け重々しい口調を無理やり作ってゆっくりと告げた。

「えーとですね…俺が思うに…」

「「はい…」」

「ブスでペチャパイでヘチャムクレなのが一番強いと思います。」

「「え?」」

横島の言葉に姉妹は一瞬絶句したが、横島の言葉の意味を理解したのだろう二人顔を見合わせ大きく頷くと力強く宣言した。

「「つまりあの人が一番強いのね!」」

ピシリと指差した先にはキョトンとした顔の冥子がいて…。

サーッと横島と令子の顔から血の気が引く。
そしてその予感は正しい。
いかにオポンチ能天気娘でも馬鹿ではない。この無謀姉妹が何を言ったかぐらいは理解できるのだ。

「ふ…ふ…ふぇ…」

「あああああああ…冥子落ち着くのよ!」

令子の必死の慰めもすでに手遅れ。
頼みの綱のペロペロキャンディーは横島のポケットの中だ。

「ふえぇぇぇぇぇぇぇん。私はペチャパイじゃないもん!!」

姉妹が踏んだ地雷は思いっきり炸裂してくれましたとさ。


やがて暴走も一段落し、荒野と化した戦いの場に佇む冥子とその周りで倒れる横島たち。

全員が小刻みに痙攣しているということは死んではいないようだ。
遠野姉妹もたいがい丈夫である。
流石に身を起こすことは出来ないようだが、なんとかヨジヨジと死に掛けたサンショウウオのようにお互いすりよると手を握り合った。

「ど、どんぐり…」
「や、やまねこ…」

震える声のまま大きく頷くとまた冥子の方を見て一言。

「「やはり一番強いのは六道冥子ということでファイナルアンサー?」」

ピシリと空気がまた軋む。
横島と令子が痛む首を動かして恐る恐る見た先には予想通りの半べそ顔があって…。

「ふ…ふえ…ふえぇぇぇぇぇぇぇぇん!」

「「ちっとは懲りるってことをしろをぉぉぉぉぉぉ!!」」

「「ふにゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」

令子と横島の叫びは再び巻き起こった爆音にかき消された。


結局、「どんぐり」と「やまねこ」のどっちが強いのか?という問いは退院後に委ねられることになったが、それがいつになるか別な病室に入院している令子や横島にはわからないことなのであった。


おしまい


後書き

ども。犬雀です。
ちょっとリアルが忙しくてネットから遠ざかっておりました。
(決してスキーとかワカサギ釣りにはまったということではないですにょ(汗))
四月まではこのペースが続きそう。
なんとか頑張りますです。


1>tea様
はいです。なんとか暇を見つけて書きますです。
ただ面白いのが書けるかどうかは…(汗)
それはともかく今年も宜しくであります。

2>kurage様
いえいえ。笑っていただけて何よりであります。
今年も宜しくであります。

3>ncro様
ふふふ…そうです。犬はずるいのです(笑)
なにはともあれ今年も宜しくであります。

4>ヴァイゼ様
にゃはは。こちらこそ今年も宜しくであります。(二月の末に言う台詞じゃないという突っ込みはナシの方向で)

5>純米酒様
鉄火巻きは好きです。しかしやはりここは和〇市場の釧〇丼を押したい!
今年も宜しくであります。

6>眞戸澤様
チュチュンがチュン!(あそれ)電線にっ!
む…いつかネタに使おう(笑)
良いヒント感謝であります。
今年も宜しくであります。

7>ATK51様
ふむふむ。それも良いですな…メモメモと(笑)
今年も宜しくであります。

8>十六夜様
うーん。次はシリアスとか思っていたんだけどなぁ…(遠い目)
結局壊れになりました。
今年も宜しくであります。

9>黒川様
府中の海は俺の海〜♪
いや…すみません。ちょぃと疲れてます。
今年も宜しくであります。

10>柳野雫様
こういう一発キャラネタってのは好きなんですが難しいです。
今年もよろしくであります。

11>Yu-san様
うははは。犬の知人にも居ますですよ(笑)
憎めない人ですけどね(笑)
今年も宜しくであります。

12>米田鷹雄様
これだけのサイトの運営と管理、いつもご苦労様です。
及ばずながら声援を贈らせて頂きます。
今年もご厄介になりますです。(平伏)

13>偽バルタン様
ネタが古過ぎましたかと心配しましたが…って犬のネタはもともと古いですから今更ですね。今年も宜しくであります。


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