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▽レス始

「狐雨。(GS)」

翔 (2006-01-22 01:42/2006-01-23 18:36)

「あー腹減ったー」
 万年床に寝転がり、薄汚れたのを通り越して、汚くなった天井の染みを見つめる。今日も今日とて貧乏日暮らし。時給こそなんとか上がったものの、それに伴い出費も増加する一方。
 奢ったり、強制的にデートに連れて行かされたりと、出費はかさむばかり。幾らお金があっても留まるところを知らない。
 そして、その結果として今この部屋には食料がないのだ。
 つまるところ、以前と生活水準はたいして変わっていなかった。


  狐雨。


「あー、腹減った……」
 もはや、口癖と化しそうなくらい吐いたせりふを再び繰り返す。ごろりと寝返りを打つと、カップ麺の容器に足がぶつかった。なんとなく気に入らなかったので、蹴飛ばした。容器ゴミ箱にすら当たらなかった。先ほどから振り出した雨にすら、気が付いているのか怪しかった。

「あー………」
 寝返りを打つ気力もなくなってきた。こんな時はアレだ。他人を頼るしかない。普段、貧乏人からあれだけたかってるんだから、それくらいいいだろう? と自分自身を慰めるも、それでは腹は膨れない。
「誰か来ねぇかな……」
 食料を持って。そう思う。むしろ今日は、本人は居なくてもいいから出前だけでも、と思う。もちろん支払いはあちらさん持ちで。普段、あれほど奢ってるのだからそれ位あってもいいはずだ。思考がループする。
 最近はおキヌちゃんまで来てくれない。おキヌちゃんの手料理が恋しい。…というか、飯が恋しい。というのが本音。人間、食欲は強いものなのです。


 横島の思考がループを繰り返していたちょうどその頃、古びた外付け階段を駆け上がる足跡一つ。階段の一番上までリズムよく登りきり、そこで幸福のおまじないをひとつ。そしてそのまま目的地に駆け込む。目指すは時間の有効活用。

「こーんにちはっと。ヨコシマ生きてるー?」
 何時ものナインテールを解き、髪を下ろしている。微妙にウエーブしているような、縮れている様な髪型が、何時もの印象よりも彼女を大人びて見せていた。
 せんべい布団に伸びていた青年は、勢いよく起き上がり、彼女を抱きしめる。否、彼女が持っていたバックを抱きしめた。それはもう、逢いたくて逢いたくて、それでも逢えなかった恋人に逢えた時の様に。
 そうして、野獣は解き放たれた。


「く、食いモンの匂いーっ! これは稲荷寿司っ! いっただきまーーーすっ!」
 一瞬、抱きしめられると思ったら、その相手は既に別のものに夢中。ばくばくばくばくばく。幾らなんでも、これいい気はしない。せっかく着たのに。例えそれが、青年に食べさせるためにだけに作ったものだったとしても、だ。
 これではリスクに釣り合わない。抜け駆けは禁止、それが不文律。破ったから、一気に均衡が崩れるその一瞬しかないのに。知らず知らずのうちに、彼女の頬がぷくぅ〜っと膨れた。
 そこで、憂さ晴らしを兼ねて、床に座りリスのように頬張る青年を彼女は後ろから締め上げる事にした。うらうらうらうら。
「ヨォコォシ〜マ〜。幾らなんでも、それはちょ〜っと酷くない? 折角ワタシが作ってきてあげたのに。というか、ワタシが来てあげたのに」
 後ろから抱きつき、胸を背中に押し付ける事も忘れない。ぐいぐいぐいぐい。最近、そこそこ大きくなってきたソレを押し付ける。ふにふにふにふに。


 しかし、人間限界までいくと自身の生存本能の方が強いのか、まったく持って動じない。悔しいのだろう、微妙に眉の角度がつりあがっている。彼女は思う、むぅ、おかしい。アイツの事だから慌てるだとか色々あるだろうに、と。
 しかし、そんな事に気が付く青年ではなかった。
「ああ、ありがとなぁ。おかげで生き返ったよぅ」
 頬にご飯粒やゴマを付けたまま、微笑う青年。これを見ると、もうなんでも良くなってくる。この笑顔だけでいいや、と思ってしまいそうになる。そんな感情に押し流されそうになる心を彼女は繋ぎとめた。
 今日はこれだけでは満足しない。今日はいつも以上に厳しく攻めるそう決めてきているのだから。普段どおりの攻め方じゃ、この堅城は落とせないから。
 そして、次の機会があるとは限らないのだから。今この時間すら危ういというのに。
「ねぇ、ヨコシマ。御礼ちょうだい」
 青年の正面に回りこみ、瞳を見つめて一言。
「ん? 俺に出来るものならなー」
 そして、彼女は青年の唇を奪った。
 そのころには雨は上がり、窓の外には虹が掛かっていた。


 三時間後、妙な匂いがちこめる部屋にて――。


「どーしてこーなってるのか、もちろん説明してくれるわね?」
 抜け駆けがばれたその後の一騒動は、また別の話。


 あとがき。
 人間やれば、一時間とちょっとでも何とかなるものなのですね(謎
 はい、こんばんわー。上のぼやきは綺麗にスルーしてくださいませw(ぉ 全ては電波が、そう電波が悪いのですっ(責任転嫁w


△記事頭

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