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▽レス始

「バーチャデート(GS)」

おやぢ (2005-12-24 23:20/2005-12-24 23:22)

窓辺に向かい、物思いに耽る・・・・なんてアンニュイ・・・・


ではなく、なにやらブツブツと呟いている。

ひょっとして、いつもの発作なのか???

不審に思った令子は、天井に目をやった。

「人工幽霊・・・アレ、どうしちゃったの?」

アレとは、アレでありナニではない。
すでに自分の所有物(モノ)・・・いや、生殺与奪の権利も自分にあると公言してままならない
丁稚の奇妙な行動に、令子は人工幽霊壱号に尋ねた。

『数日前からあぁなんです、美神オーナー。話しかけてもまともに答えてはくれません。』

令子と人工幽霊の会話にも、横島はまったく気が付いていないようにブツブツと呟いている。


「くそ・・・クリスマスだかなんだか知らねぇが、イチャイチャしやがってコンチキショー。
どうせなら殺すか?そ〜だ・・・つまんねぇ日は抹殺しちまえばいいんだ・・・ウケケケケケ〜〜〜〜」


と、いうようなセリフを口走っているところを思わず想像する。
バンダナにダイナマイトを挟み、両手に霊波刀。魔界正規軍のライフルを片手にクリスマスで賑わう繁華街を
血と炎の海へと変えていく横島・・・・・・・


『美神オーナー・・・それはあまりにも横島さんに失礼なのでは・・・・』

「わ、わかってるわよ!いちおう最悪のパターンをシュミレートしただけよ。」

令子は慌てて否定するが、その声にも横島はまったく反応しない。
あまりにも不自然な横島の態度に業を煮やしたのか、令子はイスから立ち上がると横島のいる窓辺へと歩んだ。

「・・・・・・・・ど〜っすかなぁ・・・・・・・やっぱ無理かな〜〜〜〜・・・・・・・・・・でもなぁ〜〜〜〜〜〜〜〜
はぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 なんかきっかけがないとなぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜
失敗はできんしなぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 ど〜〜〜しよっかなぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」

うだうだと似たような事を呟いている。
令子は思わずコメカミに血管が浮き出てしまった。

う、うっとうしぃーーーーーーーーーーー!!!!

右の拳を振り上げ、後頭部に狙いを定めた。


「・・・・デートで失敗したくねぇもんなぁ・・・・・・」


叩き下ろされる拳がピタリと止まる。
それと同時に、横島が不意に振り向いた。

「なにやってんスか?」

「え?いや・・・その・・・・・」

令子は振り上げた拳のやり場に困り、しどろもどろになった・・・・かと思われたが、
その拳は再び強く握り締められた。

「うっとーしーのよ!アンターーーーーーーーーっ!!!」

黄金の右が振り下ろされ、事務所の結界が大きく揺れた。


「で、なに。デートに失敗したくないからってそんなに悩んでたわけ?」

イスにふんぞり返るようにして、令子は話を切り出した。
横島は僅かに顔を顰めて、マズいという表情を作り出す。
それを令子が見逃すワケはないのだが、“いちおう”見なかったフリをした。
見なかったフリをしているのだが、同じく表情に出ているようだ。
顔は笑っているが、コメカミと額にぶっとい血管がかなり浮き出ている。
横島はチラリと令子の方を見ると、すぐに目線を逸らし天井を眺めた。

「まぁ・・・そんなとこっスね。」

横島がサラリとそういうと、令子はものすごく深い溜息をついた。

「ったく・・・男らしくないわね。いつものアンタさらけださない限り、そうそう嫌われるワケないわよ。」

いつものとは“セクハラ”を挿した言葉を横島に投げつける。
とりあえずそれは理解できたのか、横島は頭をクシャっと掻いた。

「どーでしょーかねぇ・・・そこらへんはあんまし自信ないんスよね。相手は“いつもの”俺も知ってるみたいっスから。」

はぐらかしているのか、それとも素の答えなのか、いつもと少しだけ違う横島に令子はムっときた。

「で!アンタはなにがしたいの?」

かなり語気が荒くなっている。
横島はそれに気付かないフリをして、少しだけ口の端を緩めた。

「いや何がってワケじゃないんスよ。どうすれば喜んでもらえるかなって・・・」

屈託の無い顔で笑いかけると、令子は胸が痛んだ。

この男はこういう表情もできるんだ、でもそれは自分に向けられたものではない。
自分の知らない・・・いや知ってるかもしれない誰かに・・・

そう思うだけで、胸が痛む。
それどころか涙腺させも緩くなってしまう。
でも、それは自分のせい・・・素直になれない自分のせい・・・
この性格を恨む事はないけど、少しだけ悲しくなった。

「美神さん?」

不意に名前を呼ばれ、ハっとなる。

「そ、それで、いつデートするのよ。」

手を目の前で交差させ慌てて、言葉を紡いだ。

「いや、まだ決まってないんスよ。ここ数日は時間が空いてそうなんスけど、最近忙しかったから。」

「ちょっと、決まってない事でそんなに悩んでたの?ばっかみたい・・・・」

「まぁそう言われちゃ仕方ないんスけどね。」

横島はそういって笑ったが、その笑いは微妙に引き攣っていた。

「けどまぁ・・・クリスマスは何の予定も入ってなかったみたいっスから、その日に誘うかなっと・・・」

カレンダーに目をやると、今日は23日である。

「今からじゃクリスマスには間に合わないわよ・・・どうせ高いだけだし・・・」

「たまには一般人に紛れてお祭り気分ってのも、悪くないっスよ。」

横島がそういうと、令子はカレンダーを見ながらなにやら考えている。

「あの・・・美神さん??」

呼びかけると、三白眼でギロリと睨まれる。
思わず顔面をガードしてしまう。
ほとんど条件反射の域になってしまっている。

「横島君!!」

「は、はい。」

「出掛けるわよ!!!」

「はい?」

「私を“彼女”だと思って、デートしなさい!!特訓よ!!!!!」

「はい!!???」

妙に目が燃えている令子に、対して横島は完全に腰が引けていた。


クリスマスのイルミネーションに飾られた街を歩く。
いつもより少しだけ、着飾った令子。
横島はいつものGパンにGジャンである。

「まぁ〜ったく・・・アンタほんとそれしか持ってないんじゃないの?」

令子は呆れたような口調でそういった。

「いや・・・雇用者が雇用者なもんで・・・」

「給料上げたでしょ・・・この前・・・・」

鋭い視線を横島に向ける。
この人通りの多さでは、さすがの令子もシバき倒す事は控えたようである。

「このクリスマスで使おうと思いましてね、食費もちょっと切り詰めました。」

そういって照れ臭そうに笑った。
その顔を見て、令子は苦笑するしかなかった。
周りを見渡すと、メンズブティックが目に入る。

「ちょっと来なさい。」

横島の腕を引っ張ると、ブティックにズカズカと入っていく。
その姿は彼氏と彼女がデートをしているというより、主人と飼い犬であったとブティックの店員は証言していた。

「既製品だけど・・・まぁいいか♪」

横島の趣味というより、令子の趣味により着替えさせられる。

「み、美神さん・・・俺、金無いっスよ・・・」

「あんた来年社会人でしょ!ウチに就職決まってるんだからアンタが恥かくと、このあ・た・しが恥かくの!
スーツくらい買ってあげるわよ!!!!!」

これまた三白眼で睨みつけられる。
結局、このブティックで横島は爪先から頭の天辺まで“改造”させられてしまう。


ブティックの外にでると、横島は令子に礼を言おうとするが令子はきょろきょろと辺りを見回している。

「美神さん?」

「あ、あった!」

再び横島の腕を掴み、今度は宝石店に入る。

「な、なんスか?」

「え〜っとね・・・・あった、これこれ!!」

ショーケースの中にある時計を指差して、店員を呼びつける。

「これって・・・」

令子が指差していた時計に目を向ける。


ROL○X DA○TONA

定価 弐百ん拾万園也


横島は大きく口を開けたまま固まってしまった。

「こっちの黒の方がいいんだけど、それだとスーツには合わないしなぁ〜・・・白の方がやっぱりいいわね♪」

固まったままの横島を置き去りにして、令子は店員と話をしている。

「え?それはちょっと・・・」

「私がいいんだっていってるんだから、いいの!出来るの?出来ないの?」

「わ、わかりました・・・」

店員はそういうと、時計を持って奥へと下がっていった。
ようやく横島の石化がとれる。

「み、み、み、み、み・・・みかみかみかみかみか・・・」

「なにそれ?暗号?」

「いや、じゃなくて!!!」

横島はかなり取乱した様子で、店員の方を指差した。

「あぁ時計?いいでしょ、あれ。スーツにも合うしラフな格好にも合うわよ。」

「そう・・・やっぱクロノグラフはいい・・・ってちがーーーーーーう!!!」

「なによ・・・恥かしいわね。大声だして。」

「いや、あれ値段!!!」

気持ちは判る。
でも言葉は判らない。

「あぁ気にする事ないわよ、1日早いけどクリスマスプレゼントよ。ありがたく頂戴しなさい。」

「それはどうも、ありがたく・・・・・・って・・・・・・うそーーー!!!???」

今までの金欲魔神がウソのように横島に投資しているのが、どうも横島には信じられないようである。

「あんまりいいたくないけどね・・・あれでも安いのよ。」

意外な言葉に横島は口をあんぐり開けた。

「今年の皆のプレゼント・・・おキヌちゃんにはネックレス、白にはイアリング、タマモにはブレスレット・・・・
皆、精霊石なのよね・・・・あんた、精霊石の値段覚えているでしょ?」

確か令子が身につけていた精霊石のネックレスは5億くらいしたはずである。
横島は過去の出来事を振り返った。

「アンタは、精霊石なんて必要ないでしょ?それ以上に万能な文珠あるんだし・・・」

まぁ確かに金額だけで考えれば、事務所の女性たちへのプレゼントに比べたら微々たるものである。
そう思うと自分の給料ってなんだろう・・・・少しだけ悲しくなった横島であった。

店員が奥からまだでてこないので、二人で店の中を見てまわる。
令子の足がふと止まった。
横島は令子の視線を追うと、カラットは大きくはないがピンクダイアがあしらってあるリングであった。
いつもの令子の雰囲気とは少し違う、かわいらしいデザインのリングに令子は目を奪われていた。

「意外っスね。」

「なにがよ・・・」

「いや、美神さんだったらもっとデカい指輪を好むのかな〜っと。」

「アンタね・・・宝石は宝石、指輪は指輪よ。ファッションじゃなくて誰か好きな人に貰える方が
一番嬉しいものよ・・・女って。」

「そんなもんっスかね・・・」

「そういうものよ。」

そういって令子は笑った。
その笑顔に横島は思わず、ドキリとする。

“この人、こんな顔で笑うんだ・・・”

令子の始めて見る顔であった。


時計を受け取り、すぐに横島にそれをつけさせると食事へと向かった。
慣れない料理に戸惑いながらも、横島はそれをそつなくこなす。

何気ない会話。

何気ない笑顔。

楽しい時間を二人で共有している。

しかし、令子の心は晴れない。
今の横島の笑顔は、決して自分に向けられているものではない。
明日、別の女性に向けられるもの・・・・

そう“バーチャル”なデートは終わりに近づいているのだ。


レストランを出て、近くのバーで一杯だけの約束をして入った時に令子は僅かな酒の力を借りて話を切り出した。

「ねぇ横島君・・・」

「なんスか?」

「デートに誘う子って・・・ルシオラよりも好き?」

令子の言葉に、横島は手に持っていたグラスを置いた。

「そうっスね・・・よくわかんないっス。ルシオラはルシオラで今でも忘れられないっスけど
その人を好きなのは、まぁなんつーか自然の流れみたいなもんで、比べようとは思わないっスよ。」

そういって少しだけ笑うと、グラスを呷った。

「そっか・・・」

令子の目の前のグラスのボールアイスが、静かな音を立てた。


デートを始めた当初はギクシャクしていた横島だが、自然と右手を出し令子も自然に腕を絡めていた。
楽しい時間もこれで終わり。
偽りの魔法は解けようとしていた。
帰り道、二人は言葉を交さなくなっていた。
令子は、横島の腕に絡めた自分の腕に少しだけ力を入れた。

“離したくない。”

意地っ張りの彼女の、精一杯の表現だったのかもしれない。

鈍感な男と意地っ張りな女・・・最後の接点かもしれない・・・
それでも素直になれない自分。
なんでもいい・・・何かきっかけさえあれば・・・・

思わず目を閉じ、俯いてしまう。
右足になにかショックを感じた。
体が傾く。

“やだ・・・ヒールが・・・”

傾く自分を支える手。

そうだ、この手だ。

独立して事務所を立ち上げて以来、ずっと支えてくれたこの手。

ただの荷物持ちで頼りなかったこの手。

それがいつの間にか、自分より強くなっていつからか守ってくれるようになったこの手。


「大丈夫っスか?」

「黙って!」

令子は一言だけそういうと、横島の胸に顔を埋めた。
横島への想いだけが、込み上げてくる。
離したくない・・・でも言えない。
込み上げてくる涙を横島の胸で押さえると、声にだけはださなかった。

「美神さん・・・」

永遠とも思える時間の中、令子はようやく顔を上げた。
横島の顔が息の届く場所にある。
その顔も涙で曇ってよく見えない。
横島をもっと近くで感じたい・・・抱きしめられている今でも令子は横島を感じていたかった。
瞳を閉じ、その唇は横島を求めた。
二人の唇が近づく・・・・


横島の唇が、何かに触れた。

「・・・・・・・・・特訓はここまで・・・・続きは本当のデートでやりなさい。だからといって迫りすぎちゃダメよ。」

令子は唇の前に、手を沿えそういうと折れたヒールを手に持つと歩き出した。

「美神さん!!」

横島の声が聞こえるが、令子はそれに気付かないフリをした。

「送らなくていいから・・・がんばんなさいよ!明日は事務所にこなくていいからね。」

横島に背を向けたまま、令子はヒールを持った手を振ると歩いていった。

「明日???」

令子の背中を見送りながら、横島は首をかしげた。

「あ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そーか・・・・・・」

思わず顔に手をやると、失笑が漏れる。

「困った人だなぁ・・・・」

失笑と共に、零れた言葉であった。


事務所にどうやって帰ってきたのかは、あまり憶えていなかった。
他人が自分をどう見てたかも、気にはならなかった。
何も見えなかった、何も気にならなかった・・・

『お帰りなさいませ、美神オーナー。』

「お帰りなさい、美神さん。」

返事を返そうと思ったが、声でバレてしまう。
令子は挨拶もそこそこに、自室に飛び込んだ。

「人工幽霊!」

『は、はい。美神オーナー』

「結界を強めて!この部屋の音、外に漏らさないで・・・」

最後の言葉はよくは聞き取れなかったが、人工幽霊は令子の言葉に従った。
真っ暗な部屋のまま、令子は折れたヒールを投げつけベットにうつ伏せになると、ようやく声にだして泣いた。

なにが悲しいのか。

なにが辛いのか。

よくわからない。

でも、泣かずにはいられなかった。

ただ子供のように泣きじゃくる、今の令子に出来るのはそれくらいであった。


翌日の夕方、何事もなかったかのように事務所ではクリスマスパーティが開かれていた。
令子から皆に、プレゼントが配られた。

「ありがとうございます!」

おキヌが満面の笑みを浮かべて、そう答えた。

「美神殿、かたじけないでござる!これで拙者も立派な“れでぇ”でござるよ♪」

鏡をに写った自分の姿を見ながら、シロは千切れんばかりに尻尾を振った。

「まったく・・・あんたのどこがレディなのよ・・・」

皮肉っぽくタマモがいうが、今夜のシロの耳には届いてないようである。

「美神さん、ありがとう・・・ま、少しは仕事も手伝ってもいいかな・・・」

少し顔を赤らめてタマモがそういった。
自分に少し似ているこの少女を、令子に向かって令子は微笑んでみせた。

「先生遅いでござるな・・・拙者のこの姿を見てもらわないと・・・」

鏡から振り返り、シロがそういった。

「横島君は・・・・・来ないわよ。」

顔を少しだけ俯けて、令子はそういった。

「「「え??」」」

「デートらしいわよ・・・・私、ちょっと部屋に上がるわね。」

令子はイスから立ち上がり、部屋を出て行った。

「え???デート????」

タマモはきょとんとした顔で辺りを見回した。

「それって????」

「どうなってるんでござるか???」

3人が顔を見回し、目を白黒させていると部屋に横島が入ってきた。

「あちゃーー!遅れちゃったかな?」

3人は横島の顔を見たまま、固まっている。
それに気付かないのか、横島は紙袋の中からプレゼントを取り出し3人に配った。

「あれ?美神さんは?」

固まったまま3人は、天井の方を指差した。


令子の部屋の前まで駆け上がり、ドアを3度ばかりノックした。
暫く待ったが何の反応も無い。

「入りますよ。」

一声かけて横島はドアを開けた。
ベッドの一部が盛り上がり、誰かが寝ているのは分かる。
ふと周りを見渡すと、酒瓶がゴロゴロと転がっていた。
1本だけ拾い上げ、振ってみると見事なくらいに空であった。

「美神さ〜ん、起きてますか?」

ゆっくりと近づきながら声をかける。
僅かにベットの一部の盛り上がりが動いた。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・何しに来たのよ・・・・・・・・デートなんでしょ?」

掠れるような声が返ってくる。

「いや、まだ誘ってないんスよ。」

惚けたような口調で、横島が返事をする。

「・・・特訓までしてやったのに、何やってんのよ・・・付き合ってやった私がバカみたいじゃない・・・」

令子はシーツを被ったまま、こちらを向こうとはしない。
横島は失笑ともとれる息を吐くと、頭を掻いた。

「あのっスね・・・美神さん、今日何日か判ります?」

「アンタ、師匠をバカにしての?24日よ!クリスマス!!!!」

頭を掻きながら溜息をつくと、横島はベットの端に座った。

「はぁ〜〜〜・・・やっぱりね。」

「やっぱりってなによ!ってか、来んなっ!!!!」

横島から離れるように、令子は完全に丸くなってしまった。

「美神さん、今日は24日っスよ。クリスマスじゃなくって、クリスマスイブですよ。」

そう、24日はイブであり日本人が大騒ぎする日ではあるが、本当のクリスマスは25日である。
横島にそういわれ、令子は自分のミスにようやく気付いた。
しかし生来の気性のせいか、謝る事はしない。

「うるさいうるさい!!24日も25日も関係ないわよ!!今日じゃなきゃ、明日じゃない!!!
さっさと誘ってきなさいよ!!!!!!!」

上半身だけ体を起こすと、抱きしめていたマクラを横島の顔に投げつけた。
酒のせいか、泣いたせいなのか、令子の目は真っ赤である。

「まぁ目的はもう果たしたんですけど・・・最後がちょっとアレだったもんで、誘いにきました。」

横島はGジャンのポケットから小箱を取り出した。

「メリークリスマス、美神さん。」

蓋を開け、令子の前にそっと差し出す。
昨日見た、ピンクダイアのリングであった。

「・・・これ、昨日の・・・」


「まったく・・・拙者たちをフっておいて、先生は何をやってたんでござるか・・・」

横島が令子の部屋に行った後に、残された3人は令子の秘蔵のブランデーをチビチビとやっていた。

「そうよね、誰が好きなのかハッキリしろ!って問い詰めてから、もう半年過ぎてるんだもんねぇ〜。」

少しだけアルコールを飲めるようになったおキヌは、顔を真っ赤にしながらもチビチビと飲んでいる。

「“くりすます”までにはハッキリさせるから!と言っておいて、これだもんね・・・」

我関せずの姿勢を貫いているように見えたタマモも、実は問い詰めた方である。

「でも、いいでござるよ。先生が幸せになってくれるのならば拙者は潔く身を引くでござるよ。」

両手に骨付きの鳥もも肉を持ってシロがそういった。

「このバカ犬・・・ウソばっかり・・・」

タマモはシロを鼻で笑った。

「く・・・クソ狐こそ、寝言で先生の事いってたでござるよ!!!」

言い争いを始めようとした、2人の間にシメサバ丸が振り下ろされた。

「ハイハイ・・・喧嘩はあの二人だけで十分です。」

座っている目でおキヌがそういった。
3人は大きな溜息をつくと、同時に天井を眺めた。


「これって・・・」

「昨日の指輪です・・・美神さん。」

指輪を眺めていた令子は、横島の呼びかけに顔を上げた。

「な、なに?」

「明日・・・デートしませんか?バーチャじゃなく、本当のデートを。」

横島がそういうと、令子は黙ってゆっくりと頷いた。
頷いて指輪を持つ横島の手を握り締め、その手に顔を寄せた。

「美神さん・・・」

二人の顔が自然と近づいていく・・・・


むぎゅっ!!!


またしても二人の唇は触れる事はなかった。

「な・・・なんスか?」

顔に手を当てられ、まぬけな声を出す横島。

「あ、あれ・・・」

令子が顔を入口の方に向けている。
横島もそれに習い、入口の方を見た。


「「「お気になさらず、続きをどうぞ♪」」」

獣娘と元清純代表が、正々堂々覗きをしていた。


「「できるかーーーっ!!!」」

この二人、いったいいつになったら結ばれる事やら・・・・

とりあえず、Merry Christmas♪


                          〜終わり〜

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お久しぶりのおやぢです。
始めての方は、始めまして。

気合いと根性で約4時間で書き上げました・・・って、もうイブじゃないですが・・・・

かなり焦って書いたので、誤字脱字があるかもしれませんが、そこらへんは大目に見てやってくださいませ。


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