注・この作品では、美神親子が少し「壊れ」ています。また、伝記風ロボットアニメ『神×月の巫×』に対する私的な解釈も少し出てきますので、ご了承ください。
十二月も後半になると、各家庭は大掃除で忙しくなる。何故に新年に向けてわざわざ面倒な掃除を大々的に・・・と思うこともあるが、日本古来の慣習とか気分の問題とか様々な大義名分が出てくると、つい自宅内部が気になってしょうがなくなる。
ここ美神除霊事務所でも、家具を動かす音や掃除機の稼動音、ハタキのパタパタ音が響いていた。そんな中、犬塚シロは所長用デスクの近くに奇妙な箱を見つけた。
「・・・なんでござろう?」
その箱は、一辺が30cmの黒い立方体で、開閉口の右隅に0~9までの数字キーと七桁表示の液晶画面がついていた。
「金庫みたいでござる」
所長用デスクの近くにあったということは、これは美神令子のものである可能性が高い。では、何を入れているのか?シロの好奇心は大いに刺激された。
「ふーむ。たいていは、金銀宝石か見られて困るものを入れるものらしいが・・・。まさか、先生が言っていた『うらちょーぼ』とやらでも入っているのでござるか?」
考えると直のこと好奇心が刺激され、この金庫の中身を見てみたくなるシロ。しかし、後(美神の怒り)が怖いという恐怖もある。
頭の中で恐怖と好奇心が刃を交え・・・。
「ものは試しでござる!!」
好奇心が勝利を収めた。早速、数字キーを押してみるシロ。
「えーと、ヨコシマ」
「4」「5」「4」「0」
「シロ」
「4」「6」
「タマ」
「0」
そう呟きながらキーを押すと、「4540460」と表示された画面をじっと見た。すると、
ガチャ
「あ・・・開いた(汗)」
ふざけ半分で考えた数字を入力したら本当にロックが外れたことに唖然とするシロ。しかし、気を取り直すと扉を開け、金庫の中身を確認した。
「これは、びでおでござるな」
箱の中にあるビデオのパッケージをしげしげと眺めるシロ。そのパッケージには、巫女服姿の美少女二人が抱き合い、その背後で紺色の巨大ロボットがポーズを取っているアニメ絵が描かれていた。その題名は・・・。
「『カミナシヅキの巫女』と読むのでござろうか?ふーむ、この赤袴と紫袴の女子のうちどちらか、あるいは両方が背後のろぼっとに乗る話でござるな」
いえ、乗るのは主人公のHi子(仮名)でもヒロインのTi音(仮名)でもなく、何故か!!彼女の幼馴染So(仮名)少年だったりします。
「えーと、次は・・・なんでござるか、これは(汗)」
それからも、各種グッズが続々と出てきた。アニメと実写、空想と実在を問わぬ数々のグッズに共通するもの、それは・・・。
「み、巫女服の女子ばかりでござる~。む、これは・・・」
金庫の奥に、何重もの布きれで包まれた何枚かの薄い「板」を見つけたシロ。布きれを取ると、そこには・・・。
「お、おキヌどの!!」
それは、いずれも巫女服を着た氷室キヌの全身写真であった。喜怒哀楽全て揃ったラインナップとなっており、ファンなら百万出しても買い取りそうな代物であった。
「シロ」
ビクッ
背後に寒気を感じ、恐る恐る後ろを向くシロ。その時、彼女の目に映ったのは・・・。
「見ーたーわーね~~」
「ひっひぃぃぃぃ~!!」
数日後・・・。
「犬塚シロ、お清めするでござる!!」
おおおお~
美神除霊事務所の面々と、その親しい人々「私は親しくないワケ!!」により開かれた忘年会。当然のごとく各人が一発芸をすることとなり、シロが行ったのは、赤い袴の巫女服姿で除霊のポーズをとる芸であった。
犬耳と巫女服の取り合わせが受けに受け宴席が盛り上がる傍ら、誰にも気づかれずに小型ハンディカメラでシロを激写する人物がいた。
(ホホホホホ。あれほど採寸を嫌がってたのにステーキをちらつかせればチョロイもんだったわ。復活してからのおキヌちゃんは仕事でもないと巫女服着ないから飢えてたけど。ああ~、やっぱり巫女服は萌えるわ~)
そして、バレずに激写しているつもりのその人物を涙目で見る女性が一人、いや、彼女の手に抱えられた乳飲み子を入れると二人いた。
(ああ、令子。巫女服萌えだなんて、私がいない間に何があったの・・・。まあ、気持ちはわからなくもないけど)
「まーま?」
(おしまい)
・あとがき
ええと、はじめまして。ここに作品投稿するのは始めての文・ジュウです。
この話は、部屋の掃除をする合間に、シロ曰く『カミナシヅキの巫女』のビデオを見ている最中に思いつきました。巫女服姿のシロを妄想、もとい空想し、それを形にしようと思いましたが、自分には画力がないため文章にしました。『巫女』の放送もとっくに終わったのでお蔵入りにしようかとも考えましたがもう一度例のビデオを見ると我慢できなくなり、今更とは思いますが、ここに発表します。
今後ともよろしくお願いします。