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▽レス始

「神話の清算(GS+Fate)」

颯耶 (2005-11-25 13:41)

注意:この作品はGS美神とFateのクロスオーバーです。
   そしてクロスと言うほどキャラが出てきません。
   勢いだけで書いたので拙い部分は多々あります。
   暇つぶし以外で読むのはあまりオススメできません。

   上記の事を踏まえた上でも読んでいただけるならば、下にお進み下さい。


――――――――――――――――――――――――――――――――――


人類に…いや、人・神・魔の三界にとって未曾有の大事件が起きた。


後に魔神大戦とも言われる大事件。


とある時間軸によっては、世界を救った英雄『美神令子』と影の英雄『横島忠夫』、そして彼らの仲間達によって退けられた危機ではあったが…


歴史のIF…万華鏡に隠された歴史を覗いてみれば、様々な結末が世界には満ち溢れていた。


その中の一つの物語…

世界の危機を、自らの意思とは関係なく救った…

いや、救わされた物語である。


―――黄金の英霊―――



聖杯戦争が終わり数年の月日が流れた。
万能の釜はセイバーに破壊され中途半端に終わってしまった聖杯戦争。


望まぬ間に受肉を果たしてしまったが、今の世の中は暇が溢れている。


だが、呼び出された世は随分と進化した物だ。
聖杯から一通りの知識が与えられた際には、良くぞ民草が我の導き無しに此処まで進化を遂げたと関心もした。


―――その分、随分とムダも多いがな…


だが、今の我の関心はそちらには無い。
昨今TVから流れるのは、訳の判らぬニュースばかり。

どこぞの魔族が人界を滅ぼそうとしている。


そんな話題ばかりであった。


我の感想としては、『くだらん』の一言だった。


喩え一時的に魔族が支配する事が出来たとしても、すぐに世界の抑止力…
すなわち英霊が派遣され駆逐されるのなど、目に見えている。


ならば、我が動く必要も無い。降りかかる火の粉のみを払っていれば良いのだ。


―――そう思っていた。


だが先日、言峰から不快な言葉を聞いた。
否、聞かされた。


「知っているかね?今世界を賑わせている魔族…魔神の名を」


そんなものに興味は無く、言峰の言葉も無視していたのだが、暇に負けてニュースを見ていて思い知った。


『魔神:アシュタロス』


魔界の西方を支配する大公爵。

過去と未来を見通す力を持ち、天界の創造・過ち・失墜の一部始終に精通し、とてつもない科学力を持つ。

またはソロモンの72柱の内の1柱で、40の精霊の軍団を支配する。


だがそんな物はどうでも良い。


『アシュタロス』


その名前だけで、奴には会いに行く必要があるだろう。


―――故に


「言峰、我は暫く留守にする」


それだけを言い残して教会を後にした。


それから数日後、場所は変り都内のある場所に巨大な建造物が姿を現していた。


『コスモ・プロセッサ』


宇宙を改変する事をも可能とした、魔神アシュタロスの最高傑作。


美神令子の魂を取り込み、それに付属してしまっていた魂の結晶も既に動力源として確保してある。


つい先ほど、横島忠夫とルシオラが来たが引き返して行った。
それを追ってベスパもこの場を離れた。


故にこの場に居るのはアシュタロス本人とハニワ兵のみ。

試運転として無作為に妖魔を復活させたので、他のGS達に邪魔をされる心配も無いだろう。


そうして、宇宙を改変させる準備は整った。


―――筈だった。


コスモ・プロセッサを稼動させる為に操作盤…オルガンの様にも見えるが操作盤だ…の元に向かう。


先ずは何をするか…
そう考えた矢先であった。


「久しいな、娼婦」


不遜にもそんな声が聞こえた。


声の発生源に視線をやると、時代を間違えているのではないか?と聞きたくなるような黄金に輝くフルプレートを着込んだ全身から輝かんばかりの光を放つ男が立っていた。


その中でも、何故か紅い瞳から眼を逸らす事が出来ない。


「始めて見る顔だな。何者だキサマ?」


アシュタロスは言葉に魔力を込めて問いかける。
名乗らぬ事を許さぬ呪詛の様に。


『この男は危険だ』


何故かアシュタロスの頭の中にはアラートが鳴り響いていた。


コスモ・プロセッサは起動し邪魔は居ない。
―――既にチェックメイト寸前。

自らの勝利は揺ぎ無い物だと確信していた時に突如として現れた謎の男。
見たところ霊圧は人間にしては破格ではあるが、自分とは比べるまでも無い。


南極にも姿と見せなかったことから、GS達とは全く関係無い存在なのだろう。
だが、何かが頭に引っ掛かる。


「我を見忘れたか?―――アシュタルと融合し、性別や名を変え、魔族に落ちたとはいえ娼婦であった頃の記憶を失った訳では有るまい?」


その台詞に、ふと蘇ってくるのは遥か昔の話し。
自らが『女神:イシュタル』であった頃の…


「―――まさか…」


知らず、口から零れ出るのは驚愕の言葉。
よもや、神代の頃の人間と再会を果たすとは…


「思い出したか。我とて貴様の顔など二度と見たく無かったのだがな。

 貴様の嫉妬に狂った狂気のお陰で我はエンキドゥを失った。
 ―――今更な気もするが、我が唯一認めた親友の仇を討つ必要が有ると思ってな」


自分でもらしくない事をしている。と自覚があるのだろう。
少々自嘲気味に黄金の英霊は言葉を紡ぐ。


「―――良いだろう、ギルガメッシュ。この日貴様に再会したのも運命の一つ。
 世界に踊らされるのは癪ではあるが、今回ばかりは感謝しよう」


大した力を持たず、泣き付く事しか出来なかったあの頃とは違う。
男神と融合を果たし、魔族に落ちた身ではある。
だが、その代わりに強大な力を手に入れた。

そしてなによりも…
自らが忘れ去っていた『魂』が目の前の男を求める―――!!


性別など関係ない。
私の『魂』がこの男を奪いつくせと…――――!!


久しく忘れ去っていた高揚感が胸を支配する。
長年待ち焦がれた恋人に出会えた時の様に―――


掌をギルガメッシュに向ける。
ほんの一瞬にも満たない時間。


そのタメだけで…


――――バシュン!!


人など、数百人は殺せるだけの魔力砲が放たれる―――


だが…


―――フィン


それはギルガメッシュを傷つける事無く、黄金の鎧に阻まれる。


何たる強度か。

時代遅れの防具だと考えていたが、かの英雄王がその身を包む最高峰の神秘。


簡易的な攻撃など、表面を削る事すら出来はしない。


予想外の事実に一瞬だけ硬直した魔神の瞳が、次の瞬間に驚愕に見開かれる。


空中に浮かぶ無数の武具。
それら全てが自らに目標を定めている。


「――――王の財宝」


ギルガメッシュが一言だけ呟き、その指を鳴らした。

同時に発射される弾丸は全てが神話級の神秘を含んだ聖剣や魔剣…
いや、槍、矛、矢、斧、鈍器、錐、果てには杖までもがある。


その数、実に50。


クラスにして表すならば、全てかAランク以上の一級品。
それら全てが、アシュタロスに迫る――――


「―――莫迦なっ!?」


魔神をも恐怖に駆らせる英雄王の財宝は如何なる物なのだろうか。


喩え英雄王が生前に保持していた武具であっても、その実魔神には傷一つ負わせる事が出来なかっただろう。

されど、ギルガメッシュが『英霊』である事が話しを変える。

生前の力を飛躍的に上昇させる『世界との契約』。
それによって英霊化したかつての英雄王は、世界の破滅を防ぐ為に使役される。

このプライドの高い英雄王がその様な地位に甘んじる理由は誰にも判らないだろう。

されど、コスモ・プロセッサという名の宇宙改竄装置を世界は危機と受け取った。

故に、英雄王の財産は『英霊化』によって強化され、『世界の危機の抑止力』として更に世界からの後押しがされている状況。

ならば、その中でも選りすぐりの宝具が魔神を貫く力を持っていても不思議ではない―――


――――ザシュザシュザシュッ!!


肉を切り裂く嫌な音が辺りを包む。


アシュタロスとて大公爵とまで言われた魔神。

如何に学者肌であったとしても、その身体能力は人間―――いや、並みの神魔族の比では無い。


明らかに回避不可能だと思われた弾丸は、辛うじてアシュタロスの左腕を切り裂くのみに留まる。


だが、仮にそれを見る物が居たとしたらどう思うのだろうか?


異なる時間軸においては、人類でも最上級の霊力を持つ横島忠夫が魔族であるルシオラの力を借りて、神器とも謳われる文珠の進化形態『双文珠』に破壊力を重視した『粉/砕』の文字を込めた一撃ですら、薄皮一枚を傷つけるのがやっとだったのだ。


同期連結した二人の英雄ならば、無防備だった魔神に対して胸に大穴を穿つ事が出来た。

されど、たった一人の男が戦闘態勢にあった魔神に回避するしか無い攻撃を仕掛けるなど―――


「無様だな、娼婦が。今更『永遠の悪役は嫌だ』だと?
 過去にあれほど好き勝手してきてどの口が囀るか。

 ―――まぁ、安心しろ。貴様の悪役は今日で終わる。
 我の前に塵となって消えるが良い」


それで終わるならばアシュタロスは魔神などになれなかっただろう。
故に、本当の闘いは此処から始まる。


「人間風情が良く吼える―――!!」


今度は魔力砲の数が並みでは無い。

両の手を突き出し、塵一つ残さぬ。そんな気迫で連続して放たれるそれは、周囲を瓦礫へと変貌させていく―――


数十秒。

文字にしたならばたった3文字の足らずで、東京の街はその大部分を瓦礫と化していた。


魔神アシュタロスの力。
それは正に圧倒的と言える物だろう。


彼にしては珍しく、我を忘れるほどの怒り―――焦燥感に駆られ、一人の人間に対しては明らかに過剰な魔力を使用してしまった。

――――一人の人間に対して。ならばだが…


―――ザシュ


少々大人気なかった。

そう考えるアシュタロスの胸に、一本の剣が突き刺さる。


「―――な、んだと?」


瓦礫が巻き上げた砂埃が晴れる前に飛来した一筋の剣。

先端のみが湾曲し、剣というよりも巨大な釣り針と言われたほうが納得できる形状だった。


「娼婦風情が我を人間と罵るか?
 この身は半神半人であるぞ。

 ―――そしてそれ以前に我は王だ。薄汚い女神の成れの果てが愚弄するなぞ万死に値するわ!!」


そこには、一つの盾を携えた英雄王が変らぬ姿で立っていた。


「我にこの盾を使わせた事は褒めてやるが、この程度…彼の騎士王の聖剣の方がまだ威力があったわ!!」


彼が携える盾は7枚の花弁を持つ美しき物。
恐らくは後の世に『熾天覆う七つの円環』と伝えられる盾だろう。


あのトロイア戦争で、大英雄の投擲を防いだと言われる遠距離攻撃に対して最高級の防御力を誇る神秘。


その花弁も7枚のうち6枚まで散ってはいたが、それでも英雄王は無傷でそこに立っていた。

アシュタロスは視線だけで人を殺せるのでは無いか。と思われるほどの形相で自らの胸に刺さった刃を捨て去る。

そして一時的に魔力を回し、傷の回復を行うとするが…


「無駄だ。その剣は後の世にペルセウスなる物がメドゥーサを殺したといわれる『ハルペー』の原典だ。

 その傷は如何なる方法であっても治す事は出来ん。
 自然回復するのを待つ他にはな」


無論、そんな回復を待ってやる義理は無いのだが。

と付け加え英雄王は魔神を嘲笑う。


―――メドーサ。

かつて配下に加えた、元竜神族だったか。
コスモ・プロセッサで復活した様だが、先ほどその気も消えた。

最も、ギルガメッシュのいう『メドゥーサ』はゴルゴン三姉妹の末の妹の事だろう。

名は似ているが、メドーサなどとは格が違う相手だ。


「―――下らんな」


唐突に英雄王がそんな一言を零した。


「喩え数千年の時が流れても、大きくなったのは力だけか。
 今の貴様は、アヌ神の前で泣き崩れていた頃となんら変り無い。

 もうよい―――


 死ね」


―――パチン


一つ、指が鳴った。


同時に王の財宝から姿を現したのは、冗談であっても笑うことの出来ない程の武具の壁であった。

百や二百では無い。
数千もの神秘が、辺り一面を覆いつくす壁と化して圧巻する。


アシュタロスは一瞬で判断を下した。


自らの肉体であの攻撃を受けたら、如何に自分であっても死から逃れられない。と。
アシュタロスにとって『死』は『解放』では無い。

自分ほどの魔神ならば死んだ後も魂は牢獄に捉えられ、無理やり転生させられるだろう。
それでは自分の望みは叶わない。


それどころか復活後は監視が厳しくなり行動も出来なくなってしまう。
そうなれば自らの解放など夢に消えてしまう。


そしてコスモ・プロセッサでは間に合わない。

内部から直接願うならば別だが、外部からでは望む現象を起こすのに時間が掛かりすぎてしまう。

それを待つ英雄王では無い。


故に。


故に、アシュタロスには一つの選択肢か残されていなかった。


刹那の瞬間に、居空間に配置してあったソレに意識を飛ばす。
強制的に、可能な限り早く。
自らの肉体をそちらに移す。

魂の結晶はコスモ・プロセッサの中。
残存のエネルギーでは三日も活動したら停止してしまうだろう。
そして自らは理性を失ってしまう。


だが、それが判っていても。


――――それしか選択肢が無かった。


ギルガメッシュは自らの勝ちを確信していた。


だが、目の前の魔神は数千の刃を受け、尚も活動を続けていた。
その姿を大きく変えて…


「随分と醜悪になったものだな―――」

「―――Guoooooooooooo!!!」


ギルガメッシュの呟きを世界を振るわせる咆哮が掻き消す。


この瞬間、魔神は理性と余命と引き換えに、最高指導者すら退ける力と死へのカウントダウンを手に入れた―――


そして―――

歴史のIFは大きくなる。


突如として自らの主が究極の魔体になってしまった事によって、姉との戦闘中に一瞬気を取られてしまったベスパは、ルシオラの最後の一撃を喰らい地面に堕ちた。


GS達は戸惑う。
アシュタロスに何があったのか?と。


だが、それでもその場にはたどり着く事が出来ない。
地上にはまだまだ妖魔が蔓延っているのだから。


そして一番大きな混乱は横島とルシオラの二人だったのかもしれない。


自惚れている訳では無いが、事実としてアシュタロスに対抗出来るのは既に人界では自分たちのみだと思い込んでいた故に。

そしてルシオラはかつて見た究極の魔体が現れたことに。


だがそれでも歴史の歯車は回っていく。


神話の時代から数千年の時を隔てて、英雄王ギルガメッシュと女神イシュタルの争いは、世界の抑止力・英霊ギルガメッシュと世界に抗う者・究極の魔体アシュタロスとして…


数千もの刃に貫かれ、その身を削った究極の魔体ではあったがそれでも尚健在であった。


既に蔵の中には自らの愛剣が眠るのみ。
故に、彼は全ての武具を蔵に納め再度装填する。

再び世界を圧巻する数千の武具。

それらが巨大なだけで愚鈍な的に向け、発射される―――


だが――――


「GYAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!」


その壁は、巨大な叫び声と共に発射された極大な魔力砲によってその大半が消失させられる。

そして残った武具は、全てがバリアによって届かずに異なる宇宙へと流されてしまった。


「なんだと―――!?」


英雄王が始めて驚きの声を上げるが、その声すらも魔力砲の余波に消えていく。

仮に究極の魔体に理性があったならば、自らに届かない剣郡を撃ち落とさずに英雄王本人を狙っただろう。

しかし、理性を失っていたが故に自らを傷つける意思を持った剣郡を撃墜してしまった。

そしてそれがアシュタロスの敗因であった―――


放たれた魔力砲は地表を削り、関東の大部分を海底へと沈めて行った。


そして出来るのは大きな隙―――


最大出力の魔力砲を放ってしまった為に、動きを一時的に止めてしまった魔体は格好の餌食となった。


「―――天の鎖」


かつての親友の名を付けた鎖。
それが今、その仇とも言える女神の成れの果てを束縛する―――


バリアの弱点など、剣郡が消失した時点で見当が付いている。

全ての攻撃を異なる宇宙に消失させてしまうバリアであっても、『バリアの内側』に現れ、身を拘束する鎖には何の効果も発しない。


そうして拘束された鎖は、究極の魔体―――アシュタロスでは絶対に解く事は不可能だろう。

神性が高い者を束縛する事に特化した鎖ではある。


故に魔族相手ではそれほど大きな効果など得られる筈も無い。


だが、アシュタロスはかつて女神イシュタルであった存在。
望まぬ堕天の為に神性が残っていた。


そして何よりも―――


「貴様の行いで死した我の友の名を持つ鎖だ。
 貴様では絶対に解けぬわ―――!!」


咆哮を上げ、身を捩る魔体に向かいギルガメッシュが叫ぶ。


「薄汚い娼婦だった貴様が、エンキドゥに束縛され我の剣で死ねることを光栄に思うが良い―――!!」


いつの間にか彼の手には一振りの剣が握られていた。


円錐状の三つのパーツから成される剣は、大気中のマナを暴力的な迄に吸い取り世界を震撼させる―――


その名を『乖離剣・エア』

バビロニア神話に伝わる、知恵の神の名を冠した世界で唯一人、英雄王が所持することを許された最強の剣―――


聖杯戦争の時は使うまでも無かった剣。

現界してからは始めて握る。


死してマナに還った無数の妖魔の残照を吸い取り、英霊として己の全てを、身に残っていた聖杯の汚濁すらも継ぎ込み―――


そして世界からの圧倒的な後押しを受け――――


此処に神話が再現される――――


「――――天地乖離す開闢の星!!」


瞬間、世界に断層が生まれる――――


誰が知ろう。

天地乖離す開闢の星―――エヌマ・エリシュ―――天と地を切り裂き、世界を創造したと伝えられる神話を―――!!


だが、世界の断層は目の前に聳え立つ究極の魔体のバリアによって防がれ、魔体には届かない―――


「―――――――!!!」


ギルガメッシュの声にならない叫びと共に、世界をも切り裂く断層が更にその激しさを増す―――

そして、天と地を切り裂く程の神秘が、擬似的に作られた異宇宙程度を切り裂けぬ道理は無い――――!!


―――ピシ…ピシ・・・


バリアが悲鳴をあげ、その表面に亀裂が入る―――

そうなれば、後は早かった。


パリン。


と、本当にあっけなく。

安物の硝子が割れる様な音を立て、バリアは崩れ去ってしまう。


後に残るのは、地上から天へと昇る世界の断層のみであった・・・・


「――――ハァハァハァ…」


己の持つ全てを出し尽くした英雄が、大きく息を乱す。

乖離剣と天の鎖を蔵に仕舞い、ついでにバリアを壊した際に戻ってきた武具を仕舞いこむ。

恐らくはその数は百にも及ばないだろう。

随分と蔵が軽くなってしまった物だと自嘲する。


恐らく教会に戻れば言峰に嫌味の一つも言われるのだろう。


『それほどの武具を失って、数年後に起こる五回目の聖杯戦争に勝ち残る事ができるのか?』

とでも。


その時は奴に乖離剣を叩き込むのも笑えるかもしれない。


―――カラ・・・


ふと、背後から音が聞こえた。

だが敵意は持っていない様なので、取り合えずは無視する事にする。


「い、一体何があったんだ?」

「アシュ様は―――?」


どうやら男女の二人組みが此処までたどり着いたらしい。


この場にこれほど早くたどり着けたという事は、恐らくGSと呼ばれる職の者達だろう。
我にとっては、唯の人間。
雑種になど興味は無いが、今は何故か気分が良い。


「我が殺した」


故に振り返り、少しだけ相手をしてやる事にした。
二人組みは我の言葉を聞き、逆に言葉を失った様だ。

まるで金魚の様に口をパクパクさせている。
それはそれで滑稽ではあるが、長く見たい物でも無い。


「話しはそれだけか?ならば我は行くが」

「まって!!」


踵を返し去ろうとする我に女が声を掛ける。
―――先ほどは気付かなかったが、どうやらこの女は魔族の様だ。

しかも――――娼婦と同じ匂いがする―――


一瞬だけ『殺すか?』とも考えたが、その考えを打ち消す。


娼婦自身は死んだのだ。
その霊波を纏う者であったとしても、別に殺す必要は無い。


足を止め、視線だけで問いかける。


「ど、どうやってアシュ様を倒したの?―――それよりも何故?

 貴方は何者なの?」


口早に質問を飛ばすのに、少々疎ましさを感じる。


「質問は一つづつにしろ。
 アレを殺した方法については話す事が出来ん。
 色々と事情があるのだ、察せよ。

 ―――ああ、我は倒したのでは無く殺したのだ。間違えるな。

 何故―――か。我がアレを殺すのに理由などいらん。
 あえて理由をつけるならば、友の仇だ。我が気に入らないというのが最大の理由でもあるがな。

 我が何者か―――
 その質問は随分抽象的で答えられん」


仕方なく一通り答えるが、やはり面倒に思い歩き出す。
後ろで更に何かを騒いでいるが、既に気にせずに我は歩き出す。

やがて我が既に答える気をなくしている事に気が付いたのか、騒ぎは収まったが―――


「せめて貴方の名前を教えて!!」


最後にそう叫んだのが聞こえた。
我が名乗る理由も無いのだが、あの二人は娼婦と戦いに来たのだろう。

最後の最後で名も知らぬ我が殺してしまったのでは、納得が行かないのも判らないでもない。


「――――ギルガメッシュだ」


そう一言だけ伝え、我はその場を後にした―――――


後書き・・・というかいい訳


ええ、ごめんなさい。
何かヤバイ物を受信してしまいました。

こんなの書いてる暇があったら重なる心書けよ!って言われるかも知れないのですが、どうもモチベーションの関係で筆が進まないので短編書いてみました。


しかもシュメール神話なんて殆ど知らないので、設定もかなり適当です。
アシュタロス(アスタロート)の由来がイシュタルであったことから、ギルガメッシュと絡ませて見たいと思い書いて見ました。

ええ、ギルガメッシュ強すぎです。
それ以上にアシュタロスが弱すぎです。

―――判ってますので石を投げないで下さい。


熾天覆う七つの円環については、確か本来は皮の盾を継ぎ接ぎして作られた物なので王の財宝の中にあるのはおかしいかと思いますが、Fate原作に出てきた盾を使いたかったので齟齬は承知で記載してあります。


文中では説明しきれなかったので、少々補足です。

第4回聖杯戦争の後の話しです。

10年前から現界していたのだがらGSとFateのクロスなのでギルはアシュタロス事件の時は既に居た事にしてあります。

ギルの言動が前後で微妙に違っていたりもしますが、勢いだけで書いた物なので見逃してやってください。


補足の補足

本来はエピローグをつけようかとも考えていたのだけど、事後処理の事とかは書いてもあまり面白く無いかな?と思い切って削除しました。

流れとしてはコスモプロセッサは壊れていない事になっていて、横島が美神を救出後にルシオラと一緒に東京の再生を行う。

で、原作の様に妖蜂で復活したベスパが現れて泣く泣くアシュタロスの消滅を願う・・・

復活した美神が「私の事務所にあるのだから私の物よね!?」とか叫んで美知恵に怒られる・・・

最後はコスモプロセッサの動力切れor崩壊で終わらせる
みたいなのを考えてました。

書きませんでしたが。


自分でも色々とやっちまった感がありますが、楽しんでいただけたならば幸いです。


△記事頭

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