お前は何をしているんだ?
自分で自分に問いかける。
無明の闇を彷徨いながら、無限に等しい時間の中で何度も繰り返した。
神通棍を受け、神剣をかわし、ある時は大気圏に生身で突入し、それでも生き延びた。
何故まだ生きているのだろう。
自分に生きている価値はあるのだろうか。
何処に行っても犯罪者の様に扱われ――実際に犯罪者だったのかもしれないが――石を持って追われた。
高い基本性能に反則の如き特殊能力。
余程基本的な霊力値に差が無い限りは負けるなどありえない。
……だが、それがどうしたというのだ。
もう信頼できる友はいない。
同僚も、上司も、あるものは去り、あるものは逝った。
危険の多いこの仕事。
別れは当然だと思っていた。
全て覚悟の上で、この仕事を選んだ。
今考えると、運命とか、宇宙意志の介入といった言葉も浮かぶが。
それでも今まで生きてきたのは自分の意志だと信じたい。
だからこそ、己に問いかける。
独りになってまで生きる価値はあるのか、と。
何をしたいが為に生きていたのか、と。
お前が犠牲にした命に報いる事は出来るのか、と。
自分を雇っていた上司は、
「次に失敗したら殺す」
と言って、自分が先に逝ってしまった。
最後の最後まで、本心は明かさなかったそうだ。
髪の長い、あの微妙に腹が立つ奴は薄々感づいていたらしいが。
そんな些細な事にも嫉妬していた。
慕ってくれた弟子は自分をかばって死んだ。
莫迦な奴だと思う。
自分より弱い者を庇ってどうする。
少し、言葉遣いは変だったが、今思えば清々しいくらい自分に懐いていた。
自分はアイツに何かをしたのだろうか。
少し抜けたところがあるが、何処までも真っ直ぐな黒髪のあの子は別の男のところへ行った。
自分が失くしてしまった純粋さは、何者にも代えられないものだったと今になって思う。
仕方が無い。
自分だって他の人間とキスをしていたのだ。
お互い様だ。
責める理由などあろう筈も無い。
いつも刺々しい言動しかできなかったアイツは、行方も知れない。
今はどんな姿をしているのだろう。
最初は噛み付いてばかりだったアイツも、そのうち不器用ながらも自分に接してくるようになった。
不思議なもので、自分よりもか弱い存在に対する保護欲のようなものまで実感したものだ。
最も、それを自覚してからは認めたくないばかりに冷たく当たってしまったが。
もう少し構ってやれば良かったか等と今更ながら後悔している。
――なぁ、昔は敵同士だったが、よく考えてみるとあたし達似てると思わないかい?
――横島?