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▽レス始

「ラプンツェル(GS)」

Yu-san (2005-11-14 00:07)


ラプンツェル、ラプンツェル
垂らしておくれ、お前の髪を。


あたしは髪を切った。


初恋だった彼が引っ越した後、腰まで伸ばした髪をばっさりと落とした。
想いを伝える事も出来なかった、不器用なあたしにけじめをつけたくて。
それから、切った髪が肩口で揃えられるくらいの年月が経った。

〜某所〜
−おっ、ここだ!
−いやー、ご無沙汰〜!
同窓会、それも小学生時代の呼掛けでこんなに人数が集るなんてちょっと驚き。
まぁ、理由を考えれば当然かもしれない。
−近畿く〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん!!
−こっちキテーーーーーーーーーーーーー!!
小学生時代のアイドル銀一クンが、本当にアイドル近畿剛一になっていたのだから。
その彼が来るとなれば、女の子はもちろん有名人と知り合いたい男の子も集るもの。
でも、あたしのお目当ては……

「痛ててて…チックショーーー!俺は“障害物その一”かっつーの!」
銀ちゃんの隣から女の子達にはじかれて、彼は居た。
安っぽいジーンズの上下に、バンダナを頭に巻いて、昔と変わらないとぼけた顔で。

「横っち、久しぶり。あたしの事覚えとる?」
「……夏子?なっちゃんか!?うっわーーー!ひっさしぶりやわ〜〜」

それから。
あたし達は、いっぱいしゃべった。
思い出話から近況まで。どうでもイイ事を、いっぱいいっぱい。
そして。
何気ない風を装って、ようやく搾り出した。一番聞きたかった質問を。
「なぁ、横っちは今付き合ってる人おるん?」


照れ隠しに頭を掻きながら、彼は答えた。
「………ああ、おるよ(赤)」


予想外の、いいえ想像したくなかった答えを、彼は返してきた。

「ふーん、そうかそうか。とうとう妄想と現実の区別もつかんよーになってもーたか」
「何言うとんのや!ホンマやで!証拠もあるわい!」

冗談めかして否定したかったのに、知らないとはいえ彼は残酷なほどに私をおいつめる。
その人に持たされたという携帯電話。
その待ち受け画面に、その人はいた。
反則だった。
もし側に寄られたら、自分が同姓であることが恥ずかしくなるくらい綺麗な人。
整った顔立ちに意思の強そうな瞳、服を着ていても隠しきれない抜群のスタイル。
そして、自慢げに翻す亜麻色の長い髪。

「バイト先の上司やったんやけど…何とか拝んで口説き落とした♪」
「へー、えらい金星やん。良かったなー」
「……良かったのかなー。だって仕事上の立場は変わってへんし、以前にもましてスキンシップには厳しいし、他のねーちゃんに目を向けたら殺されそうになるし…」

何故か、その人の亜麻色の髪が不可思議なほどあたしの心を掻き乱した。
自分が失った全てを、その髪で奪われたような錯覚。
どうして?
どうして?
どうしてこんなに綺麗な人がこの世にいるの?
どうしてこんなに綺麗な人が彼の側に現れたの?
どうしてこんなに綺麗な人が彼を奪ってしまったの?

「とにかく金に汚くてなーー。今だってコンビニ以下の時給で…」
「アンタはホンマ、ねーちゃんに弱いトコ変わらへんなー」

そんな中で、彼はあたしに向かって止め処なく現状の不満を述べていく。
止めて欲しい。気の置けない仲間に愚痴をこぼすように振舞うのは。
その時、携帯の呼び出し音が鳴った。

「……げ!何で?ま、まさか今言ったことが、エスパーかあの人は…ちょっとごめん!」
「…はい!横島ッス!…え、今ですか?いやだから同窓会に…いーえいーえ!他の女の子に変なマネなんかしてないッスよ!そんな滅相もない!」
「…そんなー!殺生なー!これ以上時給減らされたらホント生活できないッスよー!」
「……それとも、俺をヒモにして養ってくれます?」
「…っ!……ぁ!じょ、冗談ッスよーーーーーー!」

電話越しにでも、二人の力関係がどういったものか容易に想像出来た。
険悪そうな内容なのに、どうしても入り込めないような雰囲気が哀しかった。
だから、あたしは……

「…分かってますって。ちゃんとすぐ帰りますって…ええ」
「じゃあはい、お休みなさい。………………うん、愛してる」
「お待たせーー!いや、ホントに……あれ?なっちゃん?どこ行ったん?なっちゃーん!」


ラプンツェル、ラプンツェル
垂らしておくれ、お前の髪を。


あたしは髪を切った。


後書きというか言い訳。

テーマは『淡い初恋はすれ違いで終わった』です。
KC36巻に登場シーン僅か三コマながら、魅惑的な後姿でファン増加中の夏子嬢!
そんな彼女を徹底的に苛めまくり、夏子ファンを完全に敵に回した問題作!!

いや、誤解しないで欲しいんですけど私は別に夏子嬢は嫌いじゃないですよ。
大体、嫌いになるほどの関心も無……アワワワ!
それに、成長した幼馴染が再会して初恋を成就させるなんて“怪奇現象”を成立させる力量は私には無いんですよぉ。
タイトルは世界に知られた童話『ラプンツェル』一応解説をば。
魔女によって少女の頃から高い塔に閉じ込められた美女ラプンツェル。
魔女はラプンツェルに会いたくなると塔の下から「ラプンツェル、ラプンツェル垂らしておくれ、お前の髪を」と呼びかけ、彼女の長〜〜〜い髪を垂らしてもらい、それを伝って上に登るという訳です。(じゃあ魔女はどうやって塔の上に閉じ込めたんだろう?)
ある日、その様子を見つけた王子様が魔女と同じように髪を垂らしてもらってラプンツェルの元へと赴き“愛の営み”をしちゃいました。
そして、ラプンツェルの大きくなったお腹を見て(生生しいなぁ)激怒した魔女は、ラプンツェルの髪を切り落として砂漠に追放し、王子様の目を潰してしまいます。
その後、放浪した王子様とラプンツェルは再会して(何故か視力が戻る)二人は結ばれてめでたしめでたしになるんですが…。
何だかこの二人からは、自分達で運命を切り開こうという積極性が感じられなかったので今一感情移入しづらいお話でした。
そこで、後一歩が踏み出せず髪と同時に恋も失った女性というイメージを夏子嬢で表現してみたのですが、いかがだったでしょうか?


大丈夫かなぁ。ヘイトネタとして削除されたりしないかなぁ…


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