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「『絵本』〜GS仕立て・桃太郎風味〜(GS+おとぎ話)」

拓坊 (2005-11-05 02:06)


うららかな日差しが降り注ぐ午後。

美神除霊事務所の応接間のソファーで、横島はぐた〜っと横たわっていた。
現在は皆事務所を出ていてここにいるのは横島一人である。


「あ〜、流石に一日で四件も仕事をこなすのはキツイわ〜」


横島はどうやら何時もの如く美神にこき使われて除霊の仕事を徹夜でこなしてきたらしい。
それでもまだしゃべる気力がある横島は、やっぱり並みの体力ではなかった。

そろそろ飯でも食べようかなと体を起こした横島だったが、


「先生! 横島せんせーーい!!」


「ぐぼはぁぁっ!!」


突然事務所の扉を開き、体を起こしたばかりの横島に人狼のシロがタックルをかました。
扉を開けてから三歩でトップスピードに入り、まだ少女とはいえ全体重をかけたタックルを諸に受けた横島はソファーを転がり落ち、美神のデスクに頭をぶつけて…


「……がくっ…」


あっさりと気絶した。


「先生? せ、先生ー! 一体誰がこんなことを!!」


残念ながら『お前だ!』と突っ込む人物は事務所に存在は…


【シロさん…横島さんに抱きつくときはもうちょっと優しく……】


人口幽霊一号がいた。ただ、突っ込みではなくやんわりとした意見だけだったが…


「うぅっ、痛いでござる…」


横島は当たり前だと言わんばかりに腕を組んでソファーに座りなおしていた。


「それで…何でまた襲い掛かってきたんだ?」


「拙者は襲い掛かったわけでは…」


「どうでもいいから、さっさと理由を言え理由を!」


横島は頭にできたコブをさすりながら、用件を言えと促す。
散歩に連れて行ってと言ったら一拍もおかずに拒否するぞと思いながら。


「実は…拙者『桃太郎』について聞きたいでござるよ」


「はぁ? 桃太郎って…桃から生まれたって奴か?」


「そうでござる。拙者、幼い頃から人狼の里にいたためそういった話を知らないのでござる」


そりゃ人狼の里に人間の御伽噺が伝わってるわけないよなと納得する横島。

しかし、知りたいといっても横島は疲れていてそんな話をする気力もない。
かと言って本を買ってやるほど金銭の余裕はないのだ。


「あ〜、そうだな…此れで出来るか?」


横島が取り出したのは、ビー球のようなオカルトアイテム『文殊』だ。
現在少なくとも人間では横島だけが作ることが出来る、ほぼ何でも出来てしまう万能なアイテムである。

そして横島は文殊に、『絵』『本』と文字を込める。

決戦兵器と言ってもいい文殊をそんなことに使う横島。
羽振りがいいのか、ただ何も考えていないだけなのか…多分後者であろう。


「おお! これに桃太郎のことが描かれているんでござるな?」


「んじゃ、読んでみるか」


横島は、文殊で作った絵本の表紙を捲った。


『絵本』
〜GS仕立て・桃太郎風味〜


むか〜しむかしの、あるところ…
説によれば日本中に散らばっているのですがその辺は無視しておきましょう。


ある村におキヌばあさんと西条じいさんがすんでおりました。
村の皆からはおキヌちゃん、西条と呼ばれているのでそちらで呼びしょう。


「何で私が西条さんの奥さんなんですか!」


おキヌちゃんが川で洗濯をしながら夫の西条が聞いたら崩れ落ちそうな文句を言っています。

因みに西条は山に芝刈りに行っています。
何で僕がこんな仕事をと文句を言っていますが勿論無視です。

そしておキヌが洗濯を終えようとしたとき、川の上流から何かが流れてきます。


それは大きくて、丸っこくて、そして桃色をした…


煩悩の塊でした


おキヌちゃんはそれを見て、ちょっと躊躇いましたがどこか運命を感じたので拾って帰る事にしました。


そして家まで持って帰ると、それを見た西条は冷や汗を流しました。
そりゃ桃色の煩悩の塊なんて拾ってこられたら驚くでしょう。
食べれるわけもないし、こんなものどうしろっていう話です。

そこで西条、すっと立ち上がると何処から取り出したのか、聖剣『ジャスティス』を正眼で構えました。
何で日本の昔の話で西洋の剣、しかも英語の名前がついているかなんて良い子は聞いてはいけません。

そして西条は、何の躊躇いもなくジャスティスを煩悩の塊めがけて、に振りました。

煩悩の塊は真っ二つに横に割れ、中に入っていた男の子も勿論胴から真っ二つに……


「なってたまるかーー!!」


なることはなかったようです。どうやら斬られた瞬間下の部分に体を屈めて助かったようです。
西条はもっと下を斬れば良かったと舌打ちしますが、それを聞いたおキヌちゃんにお玉で殴られて地面に口付けする羽目になってしまいました。

生まれてきたのは、まだ赤子ほどの男の子です。けど、立ってますし喋ってますし、しかも洋服まで来ていると随分と変な状態で生まれてきました。

おキヌちゃんと西条は、子供もいなかったので…正確にはおキヌちゃんが絶対作らせなかったため…生まれてきた子供を我が子として育てることにしました。

そして、その子の名前は…


「じゃあ、煩悩から生まれたし『邪』ってことでどうだい?」


「それじゃあ変なんで、『横島忠夫』って名前にしましょうか。ねっ、横島さん♪」


子供にしたはずなのに苗字が違う。まあ、おキヌちゃんと西条も夫婦別姓ですのでいいとしましょう。

あと昔々の時代でただの村人が苗字なんて持っているのかなんて質問を良い子は…<以下略>


それから横島少年はおキヌちゃんの美味しいご飯と、毎日命を狙ってくる西条を撃退することによってたくましく成長しました。


そして、年頃になった横島は…


「おねいちゃ〜ん!」


村で若い女の子をみればナンパする立派な煩悩少年に育っていました。


「俺と一緒に…ぶろばっ!?


「近づかないでよね!」


しかし、結果は全戦全敗です。
顔は其処まで悪くないのに、失敗するのは…


「ふふふっ、横島さんったら…」


木陰からその様子をストーカー見守っていたおキヌちゃんが笑っています。
このナンパ方法を教えたのも、村中に横島君の悪い噂を流したのもおキヌちゃんなのでしょうか?


「あっ、それは西条さんですよ。特に後ろのは私知りませんし…」


どうやら西条の所為のようです。
一応既婚者なので浮気したくてもやったら、おキヌちゃんのシメサバ丸が血を吸うことになるので出来たものではありません。
そのせいで西条は鬱憤が溜まっていたようでそれを解消するべくやったらしいのです。


「くっそー! 俺も早く彼女欲しいぞーー!!」


多分、この村を離れない限り彼女はおろか女性と話すこともできないでしょう。


そんなある日、町にこんな噂が流れてきました。


「知ってるか? 海の近くの村でまた鬼が出たらしいぞ」


「ああ、何でも金銀財宝と若くて綺麗なばから集めてるらしいな」


二人目の言葉の前半はいいのですが、何だか後半がとってもデンジャーな気配です。


「よし、横島君。君はこの鬼たちを退治してきなさい。というかしろ」


「命令かよ!」


西条に言われて横島はしぶしぶ鬼退治に出かけることにしました。

旅に出る前に、おキヌちゃんはこれを持っていきなさいと袋いっぱいの『文殊』を渡してくれました。
出所は何処だと聞いてみましたがいいようにはぐらかされてしまいました。


とにもかくにも鬼退治に出発した横島が道を歩いていると…


「先生ぇぇぇーーーー!!!」


「ぎゃーー! 抱きつくな! 頬擦りするな! 顔を舐めるなぁぁ!!」


突然現れた尻尾の生えた少女に押し倒されてしまいました。


そう! 彼女こそ忠け…「狼でござる!」…忠狼と名高い人狼のシロです。


「あ〜…着いてくるか?」


「勿論でござる! 先生の行くところならたとえ火の中水の中! 出会茶屋にだって!!」


「誰がそんなとこに連れてくか!!」


俺は幼女趣味じゃないといいながら、横島は追いかけてくるシロと一緒にさらに歩いていきました。


因みに出会茶屋とは…まあ、男の人と女の人が休憩するところとだけ言っておきましょう。


そして山に入ったところで、今度会ったのは…


「ん、どうしたんじゃ小僧?」


現れたのは玉帝より斉天大聖、釈迦如来より闘戦勝仏など色々な名前を付けられた真っ赤な目に金色の瞳のお猿さん。

もっともポピュラーな名前で孫悟空という名のとっても強い神族の一人です。

何故大陸にいるはずの彼が此処にいるかというのは良い…<以下略>


「えっと…老師もついてきてもらえます?」


「うむ…報酬次第じゃな」


「じゃあ前賃として…」


横島はそう言って『甘』『蕉』と文殊に文字を込めました。読み方は勿論『バナナ』です。

そして出てきたのは色も形も艶もいいという最高水準のバナナでした。


「うむ、まあ着いていってやろうかの」


「あ、ありがとうございます…」


そう言って好物で神を釣りあげた横島。文殊を使っても安い買い物だったでしょう。

そうしてお供を二匹に増やして横島は進んでいきます。


一同は海までやってきました。途中で休んだ村などでナンパに行こうとした横島にシロが噛み付いたり、茶屋を見つけては猿神ハヌマンが団子を食べたりで結構時間をくってしまいました。

横島たちは壊れた舟を見つけて、『新』『品』を使って舟を新しい状態にして海に出ました。


海に出て暫く、小さな島がありました。そこで…


「その命貰うジャン! フェザー…」


「…ほい」


相手が何かする前に横島は『落』と込めた文殊を放りました。
そして見事に地面に落下するのは魔族のハーピィー。

そして落ちてきたところで呪縛ロープで捕らえます。
縛り方は『大菱縄』です。女囚を縛る奴です。マニアックすぎです横島君。


「さて、このまま置いてくか…」


「ち、ちょっと待って! このまま置いてかれたらのたれ死ぬジャン! 仲間になるから助けて欲しいジャン!」


ハーピィーも命がかかって必死です。


「あ〜、仕方がないな〜」


『解』の文殊を投げて縄を解く横島。文殊の無駄使いのしすぎです。


こうして三匹のお供と共に横島たちは鬼ヶ島を目指します。


そしてやってきました鬼ヶ島。島の形が鬼の顔のよう。
とっても住みにくそうと思うのは気のせいでしょうか?

横島たちは島に上陸すると、見張りの鬼をとりあえず戦闘描写どころか登場すらさせず倒しました。


『うおぉ…我らの出番が……』


『泣くな右の…分かっていたことだろう……』


そんなこんなで、門を倒した横島達は鬼の本拠地へと攻め込みます。

そして其処にいたのは!


「ホーッホッホッホ! 世界の金銀財宝は私のものよーー!!」


高笑いする亜麻色髪の鬼、その名も美神令子。
村や町からお金を奪っていたのは彼女のようです。


「ふふふふっ、此れで選り取り緑なワケ…」


集めた美少年達を見て舌なめずりする黒髪の鬼、小笠原エミ。
村や町から若くて綺麗な男を奪っていたのは彼女のようです。

良かったですね男性諸君。どうやら最悪の状況は……


「うふふっ、あなた結構可愛いじゃない……」


「ひぃぃぃ!!」


逃れられなかったようです…

最後に出てきたオカマな鬼、鎌田勘九朗。
どうやら手遅れな人物も数名いるようです。

その人に対して横島は南無と手を合わせていました。


さて、気を取り直して…


「悪逆非道を繰り返す、残忍な鬼たちよ! このGS…じゃなくてただの横島が成敗してくれる!」


「こしゃくな! 皆やってしまいなさい!」


そう言って、周りにいた鬼たちが横島たちに襲い掛かります。


横島は霊波の刀と盾を作って鬼と戦います。


「はっはっは! いいぞ! 楽しいぞ横島あぁぁぁぁ!!」


「こんの、バトルジャンキーがあぁぁぁ!!」


特に中ボス的な雪之丞という鬼と熱戦を繰り広げています。
その周りでどっちが勝つかトトカルチョを始めた鬼は無視しておきましょう。


ハヌマンは傍観しています。


犬「狼でござる!!」…狼のシロは横島と同じく霊波刀を作って名前も出してもらえない脇役な鬼達をばっさばっさと倒していきます。
皆やられていく顔には涙がつたっています。


ハヌマンは座って欠伸をしています。


ハーピィーは空からフェザーブレッドを乱射して鬼たちを倒しています。
降りて来い卑怯だぞと鬼達は叫びますが勝負は非情なものなのです。


ハヌマンはお茶を飲み始めました。


「ってか、アンタも何かしろよ老師! ゲームザルって呼ぶぞ!」


流石に何もしないハヌマンに横島がキレました。
それを聞いてハヌマンがやっと重い腰を上げました。

そして取り出すは、『天河鎮定神珍鉄』…いわゆる如意棒ですね。


「ほれ!」


「「「「「ぎゃあああぁぁぁぁぁ!!」」」」」


巨大な如意坊に薙ぎ払われ多数の鬼達が空の彼方へ小旅行に出かけます。


「ふぅっ!」


そしてハヌマンが自分の毛を一吹きすると何十匹ものハヌマンの分身となります。
分身ハヌマンはそれぞれ近くにいる鬼達を、地中に埋め始めました。ちゃんと息ができるように顔は出してあります。


「えっと…」


横島はその様子に言葉を失ってしまいました。
だって、鬼達の半分はお空の旅へ、もう半分は怪しくて恐ろしい奇妙な晒し首畑になってしまったのです。


ぶっちゃけハヌマン強すぎです


流石は道教の神々において最強を誇る、顕聖二郎真君と互角に戦えるだけはあります。
やっぱりただの耄碌のゲームザルではなかったというわけですね。


美神やエミ達も巻き添えで飛んでいってしまいました。本編では主役やレギュラーでもこの場においてはただのやられ役だったようです。


「おお! 鬼達が退治されたぞ! 此れで俺たちは自由だ!」


そう言って捕まっていた美少年たちは大いに喜びました。


「横島さん! 本当にありがとうございます!!」


「ぬぉっ! ピートも捕まってたんか!」


なんと横島の友達のピートも掴まっていたようです。流石にその容姿では日本人とはいえないので日本に移住してきた生粋の外国人さんなのです。


「もう怖かったですよ。エミさんったら風呂に入ろうとしたら一緒に入ろうって言ってきて、眠ろうとしたらいっつも添い寝してこようとするんですから」


横島君はいっちょしばいたろかと思いましたが何とか自制しておきました。


「それでもう女性は怖くなっちゃって…」


「そ、そうか…」


横島は何だか嫌な予感がして一歩下がりました。
だがそこにすかさずピートは間合いを詰め横島の手を握ります。


「僕、真実の愛に目覚めたんです! さあ横島さんも一緒に!」


「待てピート! 同性愛は桃太郎の設定の室町時代にはまだ日本には広まってない!

それにキリスト教では厳重に禁止されているはずだ!!」


「大丈夫です! 桃太郎が広まり始めたのは江戸時代、同性愛が広まったのもその頃です!
だから多少は脚色してくれます! 伝承では良くあることですよ!!

それに言うじゃありませんか! ばれなきゃ犯罪じゃないんですから、ばれなきゃ戒律を破ったことにはなりませんよ!!」


何だかとっても楽屋裏的な会話をする二人。
特にピートのほうは中々にヤバ目な発言をしています。
そんなことで良いのでしょうか聖職者? 草葉の陰で唐巣神父が泣いていますよ。


「横島さーーーん!!」


「止めれー! 野菜は嫌いやぁぁーーー!!」


横島に飛びつこうとするピート。ただ服は脱げずあの伝説の怪盗三代目のアレではありません。
何故かって? そりゃ彼は男には飛びつかないからですよ。


<閑話休題>


あわや注釈に『菜』を加えないといけなくなりそうになった瞬間、ピートの頭上のみに雷雲が立ち込め、


「ぎゃあぁぁぁぁぁ!!」


ピートの頭上に雷が降り注ぎました。そしてピートはこんがり真っ黒になって地面に落下します。

そして何処からか落ちてくる一枚の紙…


『天罰ですよ♪ byキーやん』


どうやら神族の最高指導者も流石に見逃せなかったようです。
こんなアジアの極東の島国までわざわざご苦労なことです。


「……そろそろ帰るか」


その横島の一言で、三匹のお供と共に村へと帰ることにしました。
勿論、金銀財宝を全てを『収』『納』で頂いてからです。

それから、このまま鬼たちを生首畑にするのも可哀想なので『収』『穫』の文殊で皆を地面から引っこ抜いてあげました。


こうして横島は村に戻ってから裕福な暮らしをして平和に暮らしましたとさ。


めでたし、めでたし……


横島はゆっくりと文殊で作った絵本を閉じました。


「ねぇ、今のって本当に桃太郎なの?」


「おおぅ! タマモいつの間に!」


絵本を読み終わったところで、座っているソファーの後ろから声をかけられたので横島は大層驚いています。


「何か私の知ってるのと大分違うんだけど? しかも登場人物が皆知り合いじゃない」


「あ〜、この絵本は俺の記憶とか思い出で作られたものだからな。その辺の人物の配役はほぼ無意識だ」


無意識の配役で自分は主人公な横島、結構いい性格をしている。

そして行き成り、仕方がないんやー男なら主役がいいんやー、と叫びだす横島にシロタマは不思議顔だ。


「…すると今の話は先生の作り話でござるか?」


「まあ、そうだが…けど大筋はあってるぞ。細かいところで変になってるが…」


横島は苦笑しつつ絵本を机の上において立ち上がった。


「さ〜て、腹も減ったし飯でも食いにいくかな」


「先生! 拙者肉が食べたいでござる!!」


「って、誰がお前に奢るって言った!!」


抱きつこうとするシロをかわしながら横島が反論する。


「それじゃあ私は狐うどんね」


「タマーモお前もか!」


ブルータスお前もか、と言いたかったんだろうが咄嗟のことで変な発言をしてしまった横島。
結局二人に押し切られながら横島は外へと出かけていった。


〜数分後〜


「ただいま〜」


「ただいまです」


【お帰りなさいませ、美神オーナー、おキヌさん】


美神とおキヌの帰還に人口幽霊一号の声が出迎えた。


「あら? 横島君達はいないの?」


てっきり事務所でのんびり昼寝でもしていると思った美神は人口幽霊一号にそう尋ねる。


【横島さんは先ほどシロさんとタマモさんと一緒に食事に出かけられました】


正確に言えば、『連れ出された』が正しそうだ。
美神もそれに気付いたのか苦笑いを見せながらデスクの椅子に腰を下ろした。


「あら? 此れなんでしょう?」


そう言っておキヌが手に取ったのは、横島が文殊で作ったあの絵本…まだ文殊の効果時間が続いているらしくそのままになっていた。
そして、おキヌの問いに人口幽霊一号が答える。


【それは横島さんが文殊で作った絵本です。何でも自分の記憶や無意識などで作られたとか…】


「全くあいつは…そんなものに文殊なんか使うんじゃないわよ」


美神は口では怒りつつも、表情はそれほど怒ってはなくむしろしょうがないわねと言った感じだ。
最近は横島も頼れるようになってきたし、何より収入がドンッと増えたことが理由としては大きそうだ。


「へぇ、桃太郎ですか…」


「懐かしいわね。どれどれ…」


久しぶりに童心に返ったのか二人はその絵本を読み始めました。


…読み終わって……


「あんの横島! 何で私が悪逆非道で残忍な鬼なのよ!!」


「うふふふふふ、横島さんったら私をおばあさん何て…しかも西条さんが夫ですか?」


怒りにより紅蓮の霊波を発しながら髪を逆立たせる美神。

ブラックなオーラを纏わせながらキッチンからシメサバ丸を取り出してくるおキヌ。


【すいません横島さん…私にはこの二人を静める術がありません】


そしてその状況に、もはや諦めの境地へと行き着いた人口幽霊一号。


そして……


「ただいま戻りました〜」


軽い調子で部屋へと入ってきた哀れな子羊、横島忠夫。

因みにシロタマは扉を開ける前に並外れた超感覚によってさっさとその場から離脱していた。


死ななかったとだけ…言っておきたい……


〜おまけ〜


妙に生々しい音が響く部屋の中でポトリと、何故か真っ赤になった床に絵本が落ちた。
そしてパラパラっとページが捲れ、開いたのは最後のページ。


其処に描かれているのは、


村人も…


動物も…


妖怪も…


鬼達も…


誰も彼も…


分け隔てなく仲良く騒いでいる様子が描かれていた。


これが横島忠夫が無意識に求める『めでたし、めでたし』なのかもしれない……




あとがき


どうも、拓坊であります。
何故か頭の中でこんな話ができちゃいました。

まだ『せかまわ』(略称)途中なのに何やってるんだ自分は…(汗)

それに全然『壊』れきれてない様な気がするし!
さらに最後のとこ、微妙にギャグじゃない!
どうするか結構悩んだんですがこっちにしましたけど…


読んでいただいた方、こんなものですが読んでいただけて感謝で一杯です。
本当にありがとうございます。


それではこの辺で失礼致します…


△記事頭

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