横島忠夫は考えていた。「自分は美神令子という人間を愛しているのか」と、しかしながら答えは出ない、いや答えはでているのかもしれない「大切な人間ではあるが愛情を感じているわけではない」と。
今でもあの選択の瞬間を夢に見、うなされることが多々ある。ただ最近思うのは、「あの時ルシオラの命だけではなく何か別のものも同時に失ったのではないのだろうか。」
一人そんな考えに囚われつつ、惰性的に事務所に向かい、馬鹿をやりながら日常を過ごしていくが、美神令子に対しての執着心は次第に薄れていった。
高校を卒業する際、このままGSを続けるかどうか悩んだが続けることに決めた。その際、母親にその旨伝えたら「生活できるのか、仕送りはないよ。」と言われ、しょうがないので「時給の賃上げもしくは正所員にしてくれ」と美神に頼みこんだがすげなく断られたので事務所を辞めることにした。おきぬちゃんやシロは辞めないでといって引き止めてくれたが、正直、それまでの違和感がはっきりしたことで事務所にこだわる気が失せていた。
美神に断られた瞬間、自分は便利な荷物持ちにすぎないのかと思った。交渉を続けていく中に、彼女への気持ちが冷めたものに変っていくのを他人事のように感じていた。そして唐突に理解してしまった。今まで感じていた違和(喪失)感が何かということに。「ああ、あの時失ったのは過去の縁だったのか、ルシオラの命と共にメフィストの想いも失われたのだな、彼女(あなた)はメフィストではないのだな」と。心のどこかにあったメフィストへの贖罪の意思が消え失せた瞬間であった。
そして一言、
「本日を持ちましてこの事務所を辞めさせていただきます。」
事務所を出、空を見上げる。
「さあ、これからどうしようか」
この瞬間から横島忠夫の新たな人生が幕をあける。
後書
初めて投稿させていただきます
独白みたいなものなので、発言口調が横島母子らしくないと思われますでしょうが流していただけるとありがたいです、改行や行間の仕方、文章が読みにくいかもしれませんがその辺はご容赦願います。
原作を読んでいてアシュタロス編後の美神と横島の関係に恋愛要素がほとんどというか全く見受けられないことについて不思議に思っていたので自分なりの解答を書いた次第です。
1.美神が横島に恋愛感情を表わすのは、ほとんどの場合がメフィストの意思が表に出てきている時である、もしメフィストの意思が顕在しなければどうなるか、(美神令子が恋愛感情を素直に表わす可能性は低い、横島が事務所を辞めないよう引き止める可能性は低い)
2.メフィストの残留思念が魂の結晶と共にあったとしたら、(魂の結晶を抜き取られて以降でてくることがなかった)。
3.高島のメフィストに対する感情は愛情ではなく友愛だったのでは、(メフィストの思念はでてくることがあったが、高島の思念はでてくることがなかった)。
4.美神令子と結婚する未来は平行世界でありえた未来だったのでは(アシュタロス編後時間移動は禁止されているうえに、ルシオラの事が伝わり歴史が変わる恐れがあることを神魔族が認める可能性は低い、つまりアシュタロス戦がなかった世界の可能性が高い)
5.美神令子は横島忠夫に恋愛感情を持っているのか、(魂の結晶を抜き取られる瞬間に一度あきらめている、ハーピー、ヌル、特にベスパの出来事で横島の命が失われる危険性が理解出来ているにもかかわらず、「喉下過ぎれば…」的な行動しかしていない、好意を抱いているはずの横島に対しルシオラの子供への転生の可能性を示唆する)
最後に、後書のほうがもしかすると長いかもしれません、独立ものや事務所を辞めるSS がヘイトやアンチととられやすいようなので「横島に恋愛感情がなかったら」どうなるかという実験的なものです(一応ダーク指定はいれましたが)。
5に関しては反対意見も多々あると思いますがこれは私の意見であって皆様におしつけるつもりはありません。
どなたかこの続きを書いてみませんか、書いていただけると大変うれしいのですが