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▽レス始

「月に吼える ―第二部・第参話―(GS)」

maisen (2005-10-09 00:59/2005-10-09 01:00)
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―――深夜。某温泉より程近い、都会の喧騒等とは完全に無縁のその場所で。

 普段は、精々森を渡る風の音、虫の鳴き声、獣の声が響き渡るだけのその場所で。

―――今、轟音が鳴り響いていた。

 巨大な『ナニカ』と、それに比べれば細い―――本来ならばどれほどの長さを持つのだろうか―――蛇のような数多くの『ナニカ』が、森の一角を砕きながら闘争を繰り広げているのだ。

「―――っ!―――ぃわえっ!」

「―――ぁっ!―――っ!!!」

 どごん、と一際巨大な音が響き渡る。それは地面を揺らし、その奥底に流れる何かを一時的にとは言え塞き止める。

 それとともに動きを止め、巨大な『ナニカ』から一斉に離れて行く細い『ナニカ』達。

 細いその影が完全に夜の帳に紛れ込み、再び動き出す事がないのを確認してから、その巨大な影も夜の空気に溶け込むように消えていった。


 その日、東京の空は、灰色の雲で覆われていた。その、昼なお薄暗い都会のビル郡の一角に、今日も今日とてお仕事に精を出すGS美神除霊事務所のメンバー達の姿がある。

「うひょぉぉぉぉおおおっ?!」

「ガアァァァァ!!」

 表面の塗装の剥げ落ちた、ぼろぼろのビルの屋上の扉を蹴り開けて、真っ赤なバンダナを巻いた青年が飛び出してくる。その後を追いかけてその背中に迫る、暗い雰囲気を纏った数体の悪霊達。

「美神さーん!どこっすかー!!早く早くもう限界ー!!」

「ちっ!中々にすばしっこいわねっ!横島君、そいつの動きを止めなさい!」

「簡単に無茶言わんで下さいっ!」

 ビルの屋上、先程忠夫が蹴り開けた扉の上に設置された給水塔の影から、ボウガンを構えた美神がそう叫ぶ。
 忠夫を囲むように展開する悪霊は、前後左右から僅かづつタイミングを逸らして襲い掛かる。それを、あるものは手に展開した霊波刀で受け流し、あるものはしゃがみこんで避けながら忠夫が叫び返す。

「クルシイ・・・イタイ・・・!」

「だからって生きてる人間に迷惑かけるんじゃないってのっ!其処ぉ!」

 頭の中に直接響き渡るような、悪霊たちの怨嗟の声。その声を吹き飛ばすような美神の声に、一瞬気を取られたその悪霊は、額に突き刺さった霊体ボウガンの矢でこの世から消滅させられた。

「さっすが美神さん!」

「気を抜くんじゃないの!まだ居るわよっ!」

 悪霊から逃げ回りながらも快哉を叫ぶ忠夫に声をかけながら、再び矢を番えていく。囮を囲んでいるのは四体、破魔札と忠夫と今片付けたので3体。偵察に出したおキヌは―――

「美神さん、下から来ます!」

「おキヌちゃんっ?!―――チッ!」

 屋上の床を突き抜けて飛び出してきた幽霊の少女、おキヌの後を追いかけるように数体の悪霊が湧き出てくる。舌打ちをしながら適当に辺りをつけてボウガンを打ち出し、すぐさまそれを投げ捨て神通棍に霊力を通して左手に破魔札を広げる。

「オレハ、オレハシニタクナンカナカッタンダー!!!」

「もう止めてっ!こんな事続けても―――」

「全く・・・! 成仏もせずに命有る人間に迷惑をかける馬鹿どもっ!このGS美神令子が―――」

 幸運にも矢は一体の悪霊を貫き、打ち減らしていた。横合いからの不意打ちに動揺し、一瞬隙を見せたそれらに向かって破魔札を投げつけながら、美神は、告げる。

「―――極楽に、行かせてあげるわっ!!」

 破魔札の爆発と共に飛び込んだ、亜麻色の髪を靡かせた美神の神通棍は、悪霊の体を砕いて尚、燦然と輝いていた。


「ふぅ、何とか片付いたわね」

「だから、俺を巻き込まんで下さいっ!」

 目に見える範囲に悪霊が居ない事を確認し、ようやく神通棍を収めた美神に何処となく煤けた忠夫が半泣きで迫る。

「・・・あんたも大概タフよねー。半分とは言え妖怪なのに、どうして破魔札の爆発に巻き込まれてそれで済んじゃうのかしら」

「タフで済ますなぁぁぁっ!!こうなったら、傷物にした責任を取って嫁に来てもらう――きゃいんっ!」

 馬鹿に霊力を篭めた拳骨を振り下ろし、頭を押えて悶えるそれを踵で「ふみふみ」しながら辺りに霊力を広げ、敵の残りがいない事を確認する。

「・・・おキヌちゃん?」

「・・・え、あ、どうかしましたか?」

 その視界に入ったのは、何処となく落ち込んだような雰囲気の少女。いつも明るい彼女らしくなく、俯いたまま自分の、床から浮かんだ足を哀しげに見つめていた少女は、美神の声で慌てて頭を上げた。

「・・・それはこっちの台詞よ。おキヌちゃんこそ、どうかしたの?」

「いえ・・・何でもないです」

「美神さんに苛められたのかっ?! 例えば囮にされたのにしばらくほっとかれたとかようやく援護してもらったと思ったら悪霊ごと纏めて吹っ飛ばされたとかしかも責任取って貰えなかったとかっ?!」

「あんたは黙ってなさい」

「ぐええ・・・」

 自分の状況を忘れて足元で問い掛ける半人狼を、更に力を篭めた踵で踏み潰しながら強制的に静かにさせる。

「クスクス・・・いえ、何でもないですよ」

 その様子を、楽しそうに眺めながらおキヌが答える。まだ僅かに陰がありながらも、ようやく何時もの雰囲気を取り戻しつつある少女をほっとしたように優しく見つめながら。

「ま、馬鹿もたまには役に立つのかしらね」

 美神は、足の下の青年に視線を下ろした。

「・・・うううっ! 今なら神秘が覗けるっ! しかし、それは侍としては余りにも恥ずべき行為っ! しかし、俺の野性が、狼の本能がっ! 今こそその時だと告げているような気がしないでも無くは無い訳でっ!」

「一生眠らせてなさいその本能っ!!」

―――結局、神秘を覗く前にあっちの世界を垣間見かけた訳で。


 そんなこんなで、帰りの車の中。

 何時もなら「まあまあ、美神さんその辺にしてあげた方が・・・」と言いながら止めに入ってくれる筈の少女が物思いに耽ったままの性もあってか、ちょっとリカバリーが追いついていない半人狼の青年は、ぼろぼろの姿で目を覚ました。

「・・・いたたた。美神さん、もうちょっと優しくしてくれてもえーやないですか」

「私の神通棍喰らっておいて、「いたたた」で済ます非常識にかける優しさなんて無いわよ」

 何時もの如くあっさり目を覚ました忠夫に、何となく納得いかなさげな声が運転席から返ってくる。
 ちなみに、助手席に放り込んだのは美神である。とは言えおキヌも手伝って二人掛りではあるが。
 そのおキヌは、今も少し悩んだ素振りを見せながら、何時ものような忠夫を心配するような台詞も無く車のシートに掴まって浮かんでいる。

「・・・美神さん、おキヌちゃんどうしたんっすか?」

「・・・さぁねぇ。さっきからあんな調子で、こっちも困ってるのよ。おかげでやり過ぎちゃったし」

「・・・久し振りに綺麗な川が見えましたしね」

 バックミラー越しにおキヌの方を見ながら、こそこそと運転席と助手席で話す二人に、おキヌの小さな声が聞こえてきた。

「美神さん・・・私・・・」

「ど、どうしたのよおキヌちゃん」

 鏡越しに見える少女の顔は、思いつめた表情で。

「さっきの人、とっても苦しそうでした。死にたくないって・・・まだ生きていたかったんだって・・・すごくかわいそうで・・・」

「・・・ああいう霊は、他人に自分の苦痛を分かって貰いたくて人を殺しつづけるわ。・・・死んじゃったもんはしょーがないのに。何時までも現実から逃げ続ける、そして、同じような霊を作っていくのよ」

「・・・・・・」

 ハンドルを握る美神の言葉に、少女は再び俯いて沈黙する。

「ま、おキヌちゃんにはもうちょっと死にぞこなってて欲しいけどね・・・」

「えっ?」

 その少女の耳に、小さな声が聞こえた。目線をあげれば、鏡越しの視線は逸らされていて、運転席の女性の顔は殆ど見えない。それでもほんのりと恥ずかしげに染まった頬は、夜の近づく薄闇の中でも僅かに見えた。

「そうそう! じゃないと、俺の身が持たないしっ!」

「あんたのは自業自得でしょうがっ!」

 視線を前に固定したままの美神が、片手をハンドルから離して助手席の青年に裏拳をかます。

「・・・いった〜。ま、それはともかく」

「・・・横島君。本格的なお仕置きが必要かしら?」

「そんな照れ隠し―――そ、それはともかくっ!!!」

 言葉の途中で膨れ上がった殺気に、慌てて話題を逸らしながら、シートの上で体をひっくり返して後ろのおキヌを直接見る忠夫。

「俺としては美人は大歓迎っ! おキヌちゃんが居なくなったら、俺はさびしーなー」

「・・・ありがとうございます、横島さん」

 何となく流れる良い雰囲気に、運転席の女性からちょっと不満げな空気が広がっていく。


「―――この子の可愛さ限りない。
―――山では木の数萱の数」

そんな雰囲気の中、夕日を頬に受ける少女の唇から優しげな歌声が響き渡る。

「―――星の数よりまだ可愛い、ねんねや ねんねや おねんねや・・・」

 何処までも優しいその歌は、日も沈みかけた夕闇の街に、ゆっくりと余韻を残しながら消えていった。

「・・・私が、生きていた頃に覚えた歌なんです。もう、殆どその時の事、思い出せないけど・・・」

「・・・ん、いや、いー歌だよ」

「そうね・・・。なんだか、懐かしい歌・・・」

 寂しげに笑う少女の歌声に、ただ聞き惚れていた二人が静かに、心のままにそう告げる。

「・・・思い出せないけど、忘れない歌。大事な事は、忘れない事。美神さん、横島さん」

「何?」

「なんだい、おキヌちゃん」

 その笑顔は、何時もの、おキヌの笑顔だった。

「・・・私は、きっと、今を忘れません」

「そう」

「俺も、絶対に忘れないよ」

 一人は、視線を前に向けたままそっけなく、それでも口元を緩やかに曲げて。

 一人は、真っ直ぐに視線を合わせたまま、とても嬉しそうに笑いかけながら。

 一人は、その二人との出会いを心に刻み込みながら―――


―――突然降り注いだ光の柱に、溶け込むようにして消えていった。


「「――――っ!!」」

 街灯の付き始めた街並みに、急ブレーキの音が響き渡る。

「おキヌちゃんっ?!」

「何よ今の強烈な気配っ?! いきなり―――おキヌちゃんは何処っ?!」

 路肩に止められた車の上に、混乱と驚きが満ちていく。

「い、今の光に溶けて、消えちゃいましたっ!!」

「―――っ! もう、なんだってのよっ?! 横島君、匂いは追えそうっ?!」

「無理っす!! まるで本当に消えちゃったみたいに唐突に途切れてますっ!」

 慌てて立ち上がり辺りの匂いを嗅ぐ忠夫が、鋭い美神の声にそう返答する。

 親指の爪を食い千切らんばかりに噛み締めながら、美神は辺りの気配を探る。

「・・・駄目、霊的な痕跡も全く無いわ。一体・・・」

「まさかUFO?! これがあぶだくしょんってやつなのかっ?!」

「TVの見すぎよっ! 少し黙ってなさいっ!」

 唐突にトンデモ理論をぶちまける馬鹿に全力の拳を叩き込む美神。

「でも消えましたよっ?! 攫われましたよっ?! 都会はなんて恐ろしい所なんじゃー!!」

「ああもう黙れっ!!」

 顔面に食らった一撃を、一瞬後ろに仰け反っただけであっさり回復した異様な耐久力を見せる半人狼に、再度コンビネーションを叩き込みながら車から降りる。

 懐の携帯電話が通知を告げたのは、その瞬間だった。

「誰よっ?! お兄ちゃんっ?!」

「・・・何かあったのかい? 西条さんじゃなくって、昔の呼び方で僕の事を呼ぶだなんて」

 電話の相手は、オカルトGメンの西条輝彦。慌てた美神の声で、何かがあった事を察知しつつゆっくりと話し掛ける。

「それが、たった今おキヌちゃんが消えちゃって―――」

 その声色に少し落ち着いたのか、美神が途方に暮れたような声で西条に今起こった事を伝える。

「おキヌちゃんって言うのは・・・」

 電話の向こうで、紙を捲る音が聞こえた。

「・・・人骨温泉での除霊の際、令子ちゃんが雇った幽霊の少女だよね?」

 確認するように、西条が電話の向こうで念を押す。

「そうよ。―――オカルトGメンの方に、違うわね」

 電話を耳に当てながら、考える素振りを見せる美神。

「―――なんで西条さんの方に、その情報が回ってるの?」

「察しが早くて助かる。おそらく、おキヌという少女の消失は、今起きている事件に関係していると思う。・・・僕の霊能者としての勘だがね。こっちに来れるかい?」

「行くわ」

 迷わず即答した美神は、携帯電話の電源を切ると素早く懐に戻し、車の運転席に飛び込むようにして座る。

「飛ばすわよっ! 何時までも寝てないで、とっととシートベルトを締めなさいっ!」

「う、ういっす!!」

 よろよろと起き上がりながらシートベルトに手を伸ばす忠夫を横目で確認し、ギアを入れながらクラッチを繋ぎ、アクセルを一気に底まで踏み込む。

「うぉわっ?!!」

 シートベルトを締め切れなかった、加速に思いっきり体勢を崩す半人狼の悲鳴を無視しながら、美神の車は道交法ぶっちぎりでオカルトGメンへの道を加速していった。


「お兄ちゃんっ!」

「お義兄さんっ!」

 事務所の隣のビル、其処にあるオカルトGメンのオフィスの扉を叩き壊さんばかりの勢いで開き、ついでに隣の馬鹿に伸び上がるようなアッパーをかましておく。

「令子ちゃん、落ち着いて。横島君が痙攣し始めてるよ」

「時と、場合を、考えろって、体に、教えて、いる、のよっ!」

 もんどりうって倒れた忠夫にストンピングの嵐を降らせながら、荒くなった息を深呼吸して落ち着かせる。
 大きく息をついて、疾走で少し崩れた髪の毛を手櫛で梳きながら西条に向かい合う美神。

「で、何がどうしたのよ西条さん」

「ああ、昨夜人骨温泉の近くの森で、妙なものが見られていてね。あの辺りで除霊作業をやった事の有る令子ちゃんなら何か気付いた事でもないかな、とも思って連絡したんだが」

「オカルトGメンに流れてきた目撃情報? 思いっきり霊的な事件ってこと?」

 そろそろ痙攣がゆっくりと止まりつつある忠夫を放置し、西条に渡された報告書に目を通す。

「・・・何よ、これ」

「ま、確かに警察じゃちょっと無理だよ。巨大な人型の何かと、大量の蛇みたいな何かが戦っていたなんてね」

 報告書によれば、深夜、温泉旅館の湯治客が、露天風呂で突然聞こえた轟音で気付いたという。
 静かな夜を震わした、幾度もの爆音は夜半を過ぎても響きつづけ、最後に巨大な揺れとともに収束。次の朝そこを見に行った従業員が見たものは、巨大なクレーターのみであったと言う有様。

「・・・臭いわね」

「で、心当たりは?」

「心当たりねぇ・・・うーん・・・あ゛」

「あるんすね? さあきりきり吐いて楽になりましょう!」

 何時の間にやら復活し、こちらに向けて何処からか調達した卓上ランプの光を向けてくる忠夫に灰皿を投げつけつつ、慌てて自分の冷や汗を止めようとする美神。

 と、誰かの視線を感じた。

「で、何をやったんだい?」

 不自然なまでの笑顔で美神に詰め寄る西条。顔はものすッごく笑顔だが、目が全く笑っていない。

「令子ちゃん、正直になるんだ。今なら怒らないから」

「え、う、あ〜。御免なさい」

 ちょっと、昔の光景がフラッシュバックした美神であった。


「・・・お、怒らないって言ったのに〜」

「時と場合による。全く、迂闊に地脈に手を加えちゃ駄目だろう?」

 西条の拳骨が振り下ろされた頭頂部をさすりながら、美神は西条に涙のたまった視線を向ける。何処となく拗ねたような、ちょっと子供っぽさの有るそんな仕草に昔を思い出したりしたものの、美神からは見えない角度で唇を少し曲げただけの西条は。

「・・・はぁ〜。ま、妹の手助けは兄の役目、かな?」

 溜め息とともに卓上電話の受話器を取り、あちこちに連絡を取り始めるのだった。

 美神の説明を要約すると、人骨温泉に出没する幽霊を除霊する依頼を受け、其処に出向く最中の出来事であったと言う。
 突如、巫女服姿の女性の幽霊―――おキヌ―――が、一抱えも有る岩を、景色を楽しみながら歩いていた美神に向かって振り下ろしてきたそうだ。
それが、彼女達の出会いであった。
 かるーく苛めて、泣きながら逃げ出そうとする少女を呪縛ロープで捕獲し、彼女の事情を聞いてみれば自分の代わりに身代わりになって、本人曰く山の神になる事を期待して地脈に括られたという立場を変わって欲しかったのだと。

 お金にならないから、と放って置いたら何故か着いて来て、結局依頼場所まで来る始末。依頼主に聞いてみれば、事前情報どおりやっぱり依頼された除霊対象と違うようで、如何したものか、と悩んでいたそのときに。

 折りよく、除霊対象が現れたのだ。何故か山が大好きな。

―――これで依頼があっさり片付く。しかも元手ゼロで。

と、言う訳で。

 山の神の立場を変わってもらい、おキヌは首尾よく括られた立場から開放され、依頼主は霊が出現しなくなった事に満足し、登山服姿の霊は山の神となれることに狂喜乱舞し、美神は報酬丸儲けできた事に満足し。

八方丸く収まる筈であった。


―――ところがどっこい。

 依頼場所に妙な存在が現れ、しかも気心の知れ、最早美神にとっては妹のような存在となっていたおキヌが消え。

 今頃になって、何かが起こり始めていた。


「とりあえず、此方の方でも情報を集めてみる。令子ちゃんたちは」

「ええ、現地に向かってみるわ。幸いあそこの旅館なら知ってるし、山の神見習が知り合いだから」

「美神さん、おキヌちゃん大丈夫っすかね?」

 真剣な表情で話し合う二人を余所に、そわそわと落ち着きの無い感じで今にも駆け出しそうな忠夫。

「横島君、あんたこれ持って先に行ってて。もしかしたら一刻を争う事態になるかもしれないわ。あんたの鼻なら、なんか見つけられるかもしれないでしょ?」

 見かねたように美神が忠夫に通信機を投げて寄越す。

「―――分かりましたっ!先に行きます!」

 それを受け取った忠夫は、そのままオカルトGメンのオフィスの窓から飛び出し、着地と同時に駆け出していった。

「全く、焦っちゃって。・・・無理しないでよ、横島君」

「そんなに心配する事は無いさ。彼だって修羅場は潜ってるんだろう?」

 一言呟いて身を翻し、出口に向かって歩き出した美神に西条の声がかけられる。


「それに、だ」

 ドアノブを捻り、扉を開けた美神の背に言葉がかけられる。それを背中で聞きながらも、歩みを止める事無く出て行こうとする美神。

「君がおキヌちゃんの立場でも、彼はきっと同じように焦ると思うよ?」

 閉まるドアが一瞬止まり、今度は勢い良く叩きつけるように閉じられる。それを面白そうに笑いながら見ていた西条は再び電話機に手を伸ばしながら、にやけた頬を隠そうともしていなかった。

「ま、兄からの助言は以上だね」

 きっと耳までほんのり赤く染まっているであろう妹分を思い浮かべながら、西条はダイヤルをプッシュするのであった。


―――アトガキッポイナニカ―――
はいすいませんmaisenでございます^^
というわけで月に吼える、第二部第参話、此処にお送りさせていただきます。

と、言う訳で。

スリーピング・ビューティ編、プロローグでございます。
忙しい、一週間でした。死ぬかと思った・・・。

レス返しー。

D,様>背後に西条が居ますから、そう言ったところまでキチンとフォローしていますともwしっかりアトラクションは楽しんだようですよw

桜葉様>基本時系列的には原作沿いですからねー。楽しんでいただければ何よりですw 嫉妬エネルギーと言っても可愛いもんですともw 黒くなっちゃったら忠夫が可哀相ですし、ねw 西条は、美神が幸せなら何でも良し、ですなー。ま、色々と楽しんではおりますがw

ト小様>あ、お久し振りです^^ 原作との差異で忠夫と張り合っていませんからねー。何故かというのは秘密秘密w 楽しんでいただけるように頑張りますねw

k82様>静かに壊れているのかな?w お隣なのに気付かないのはデフォでお願いしま(ぱーん( ゜д゜)・∵.

ヴァイゼ様>初めて出会ったその日から、恋の花咲く事もある。とは言え2度目でしかも墓穴堀まくりの忠夫君ですがw あー、まだまだ小鳩嬢に良い目見せてあげたかったな、とも思いますがw 一歩リードがどうかは・・・どうなんでしょ?〈爆 まぁ、直接的な戦力でその二人には及びませんからw

柳野雫様>初めてのデートで浮かれまくる忠夫君でございましたw 微笑ましくも楽しんでもらえれば幸いですw 美神さんが幸せになれればそれで良くて、忠夫では、と言うか誰も居ないとなれば自分が、程度の考えでしょうなー。 後その過程で楽しめれば言う事なし、位の勢いですw 

masa様>は、締まらない彼だからこそ良いのではないでしょうかw 迂闊だからこそですなーw とは言えはてさて誰がヒロインになるのやらw

マヒマヒ様>狼と鳩では狼に軍配が上がる筈なのに、何故か狼の頭の上にとまって昼寝する鳩と、笑いながら一緒に眠る狼ですがw 

桜月様>登場シーンがカッコ良いかどうかはあっちの方に投げやるとしてw 忠夫が忠夫である限り、と言ったところでw

法師陰陽師様>おお、そう言っていただけると嬉しいですなー。世界が変わろうとも彼は彼。とは言え此処から先がどうなるのかは・・・まだまだ分からない訳ですがw

梶木まぐ郎様>ありがとうございます^^ ロナルド・ドッグ=八兵衛・・・それですなw 結局どこかしら抜けていますからw おキヌちゃんは、事務所で包丁をシャーコ、シャーコと研いで居たりしたのかもしれませんねぇ。そうすると人工幽霊一号が怯えていそうですなw

偽バルタン様>ちょっとしたミスから雪崩れのように自爆していくのが忠夫君でしてw 一応いいムードだったんですがねぇw 

ジェミナス様>迂闊と言うか本人にしてみれば率直な意見を言ったまでというかw それが連鎖的に地雷となっていくのですよー。 貧は拗ねた、でも楽しそうな帰ってきた小鳩の話を、こちらも楽しそうに聞いていたりするのですよ。

八尺瓊の鴉様>自爆と閃きは確定で、後は熱血があるのかな? 偵察はありそうですがw ど根性と???ってところで6個ですかねー。幸運?無い事だけは間違いないでしょうなw 天竜さんは問答無用でゴッド○ィンガーですよ(爆

迷える駄犬様>GJありがとうございますw 墓穴は彼の場合いくらでも生産可能ですからねー。 楽しんでいただけたようで此方としてもとても嬉しいですw

しゅーりょー。

さてさて今回は少々短め。次回からは怒涛の展開に・・・なれれば良いなぁw

それでは、次回も頑張っていきますので、楽しみにして頂ければ―――これ以上の嬉しさはありません^^ノシ

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