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▽レス始

「C'est Si Bon(絶チル)」

神楽坂隼人 (2005-10-01 01:09/2005-10-01 14:07)

「はぁ…疲れた」

 一日の激務を終えて自宅に戻った皆本光一はネクタイをほどき、そのまま崩れるようにベッドにうつ伏せた。
 若くして内務省特務機関超能力支援研究所(通称バベル)に研究員として入所した彼は、当初の予定からはずれ、特務エスパー「ザ・チルドレン」の担当指揮官に就任していた。18歳という若さで学位をふたつも取った才能を見込まれ、柏木朧一尉によってへの志願をうながされからである。柏木は若くしてその才能を開花させ、特別な境遇に置かれた彼を見込み、同じような境遇にいる三人の超能力少女の理解者としてその任について欲しいと希望したのだ。しかし皆本を待っていたのは、その境遇からわがままに育てられた三人の少女に振り回されるといった日常だった。
 念動能力者の明石薫、瞬間移動能力者の野上葵、接触感応能力者の三宮紫穂はいずれも超度最高レベル7に位置し、その行く末によっては地球にとって天使にも悪魔にもなるといった逸材である。それゆえ皆本の手腕が問われることとなったのだが、三人とも一筋縄ではいかない、一癖も二癖もある連中だった。しかも局長である桐壺帝三が彼女達を猫かわいがりするものだから手に負えなかった。
 それでも皆本は彼女達を理解し、その成長に関して良好な方向へ導こうと連日奮戦していた。その気持ちを三人の超能力少女達がどれだけわかっているのかは彼自身知り得るものではなかったが。

「明日は…よほど大事件でも起こらない限りゆっくりできる……かなぁ?」

 勤務予定表では休日となってはいるが、特務機関に努めている以上、いつ何時緊急招集がかかるやも知れない。その時、三人の少女達がおとなしく従うかどうか。そう思うといくぶんか憂鬱になってしまう。

「ま、悩んでもしょうがないことか」

 皆本はいくぶんか「流す」ということを最近覚えた。平素少女達とは真剣に精一杯向かい合っていき、プライベートでは完全休養をする。そうでもしないと正直心身がもたないと思い始めていたからだ。

「根は悪い子達じゃないんだがなぁ」

 生意気な「クソガキ」のお守りと着任当初は思っていたが、彼女達と触れあううちにそんなことはどこかへ飛んでしまった。今では彼女達がその力をまっとうな方向へ持っていくようがんばって支援しようという気になっている。それでも時々「キレテ」しまい叱責するわけだが、その都度薫によって手痛いしっぺ返しをくらう。そんなことでさえご愛嬌と捉えられるように皆本は順応していった。

 トゥルルルル、トゥルルルル、トゥルルルル、

 デジタル時計が午後9時を示そうかというときに皆本宅の電話が不意に鳴った。こんな時間に、と思いながら皆本は受話器を手にする。

「もしもし皆本ですが…?」
「いたいた、わたしわたし。薫の姉の好美です。いま皆本さんのマンションの玄関まで来てるんですよ」

 突然のことに皆本は対応に困ってしまった。むげに帰す訳にもいかず、かといって部屋に上げたら後々面倒なことになるのは目に見えている。

「えっと…ご用件は?」
「良かったらこれから飲みに行きませんか?いつも薫がお世話になってるお礼といったらなんですけど」

 どうやら部屋に入れなくてすみそうだと判断した皆本は、明日が休日だということもあって好美の誘いに乗ることにした。

「それはわざわざ…喜んでお誘いを受けますよ」
「やった!それじゃ下で待ってますね」

 嬉しそうな声を皆本に聞かせて好美は通話を切った。とりあえず飲みに行くだけなら問題はないだろうと、皆本はネクタイを外したままのスーツ姿で部屋を後にした。

 玄関ホールに降りた皆本は自動ドアの向こうに好美の姿を確認した。スポーツ帽を被った彼女はキャミソールの重ね着にデニムのミニスカートといったいでたちで辺りをキョロキョロとうかがっている。それは彼女がグラビアアイドルであり、大女優明石秋江の娘といった立場からくるものだった。下手に写真週刊誌のカメラマンに見つかったら何を書き立てられるかわかったものではないからである。
 好美は皆本の姿を見るやジェスチャーで何やら伝えてきた。そのアクションから外に車が来るらしいということはわかり、皆本はうなづいてみせた。好美はOKサインを出してさっさと先に玄関から出ていった。

「さてと…それらしき車はないんだが…」

 マンションから出た皆本は辺りをうかがった。しかし該当する車が見つからない。しばらくして首を傾げる皆本の前に白いベンツが横付けされた。ドアが開き、社内では好美が手招きをしている。皆本はなんの疑いもなくベンツに乗り込み、ドアを閉めた。

「こんばんは皆本さん」
「あ…薫のお母さん?」

 ベンツを運転していたのは薫の母親にして大女優の明石秋江だった。「はめられた」と皆本は思ったが、後の祭りである。乗り込んでしまった以上は引き返すこともできない。相手は芸能人である。一般人の皆本が一緒にいるところを写真週刊誌に撮られたら、それを見た薫とどう接するのか、そして「ザ・チルドレン」の行く末は。
 最悪の方向へと考えがどんどん進んでいく。

「名前で呼んでくださってかまいませんのよ。今日はお礼もかねての食事会ですから」
「今日のことは薫も知っていることだから気に病まなくていいんですよ」

 にわか好美の言葉が信じられない皆本だったが、薫の家族がそういうならと食事をお呼ばれすることにした。

「薫のことなら心配なさらなくてもいいんですよ。今日はみんなとお泊まりだって言ってましたから」
「はぁ、そうですか」

 秋江が今夜の薫の行動を説明したが、皆本はかえって不安になった。薫のお泊まりとなると葵や紫穂も絡んでくるはずである。彼女達が変な勘ぐりをしなければいいのだが、と皆本は思った。

 やがて三人を乗せたベンツは都内にある高級ホテルへと着いた。ドアボーイがキーを預かり、ベンツから降りた皆本達はそのまま玄関ホールへと向かう。

「こんなとこでだいじょうぶですか?」

 ひとけの多いところで大女優明石秋江とグラビアアイドルの明石好美が並んで歩き、その横に誰ともわからない若い男がついている。この状態はまずいんじゃないだろうかと皆本は思った。

「だいじょうぶ。ふたりでいるところだと騒がれるかも知れないけど、三人でいれば皆本さんはマネージャーくらいにしか思われないから」

 心配そうな皆本に好美は明るい笑顔でウインクをしてそう言った。事実、そんなものかと思うほど混乱もなく受付まですんなりと進めた。

「あ、これは…ようこそいらっしゃいました」

 三人に気づいた支配人が名前を呼ぼうとしたところ、秋江は唇に人差し指を立てて制した。支配人も心得たもので知らぬ素振りで接客にあたってきた。

「ちょっとディナーをね。あと泊まれるお部屋あるかしら?」

 秋江は皆本に気づかれないよう指を3本立てて支配人に確認をとった。

「はい、それはもう御用意できますので、鍵は…お食事の後にお持ちいたしましょう」

 支配人は皆本達をエレベーターに案内し、深々と頭を下げて去っていった。

 地上200メートルの高さに位置するレストランに着いた三人は、ウェイターに案内されてちょっと奥まった窓側のプライベートルームへと通された。窓の外はネオンや街の灯りといったきらびやかな夜景の都内が一望でき、ロマンチックな雰囲気を醸し出している。他の席と完全に遮断されていて、いわば有名人のお忍びの間として利用されることが多かった。

「やっぱ…芸能人ってすごいなぁ」
「そうでもないんですよ。こうでもしないといろいろとあるので」

 苦笑する秋江達に皆本は思わず納得した。今のテレビや雑誌媒体を見れば、やれ芸能人の誰それがひっついた別れたなどくだらない話題があふれかえっている。そういった標的になりやすいのが秋江や好美といった一線で活躍する有名芸能人なのである。皆本は五年前に秋江の離婚会見が行なわれているところを見たことがある。今彼女の存在が身近にあるからこそ、皆本は余計に気をつかった。

「かえってご迷惑じゃ?」
「その辺はだいじょうぶ。此処の支配人とは長いつきあいだし、秘密は厳守してくれるわ」

 その辺は抜かりがないと秋江は胸をポンと叩いた。肩を大胆に露出したビスチェの胸元がぷるぷる揺れて皆本は目のやり場に困ってしまう。

「母さん、皆本さん困ってるでしょ?ホントに…ごめんなさいね」
「あ、いやだいじょうぶです」

 何がだいじょうぶなのかわからないまま皆本は差し障りない返事を好美に返した。その視線の先に好美の胸元があった。皆本はますます目のやり場に困った。
 秋江はもう40歳というのに躰のラインが崩れることなく、娘の好美とタメをはっていた。そのうえCカップはあろうかという豊かな乳房を誇っている。無論、好美もその血筋を引いてか秋江と同じくらいの乳房をしていた。特に秋江はその見事なプロポーションは言うに及ばす、顔のしわもなく肌の張りもあり、とてもふたりの子供を持つ女性には見えなかった。やはり人に見られる仕事というのは実年齢より人を若々しくしてしまうのだろうと皆本は思った。
 ほどなくしてワインが用意され、続いてアミューズが運ばれてきた。モッツァレラチーズのプリパレーションサラダを前にした三人が乾杯をしてディナータイムが始まった。

「こういった席で食べるのは初めてですが、美味しいですね」
「お口にあって良かったわ」
「母さん此処よく来るの?」

 好美は意地の悪い質問と視線を秋江に投げかけた。当の秋江は知らん顔をしてワインをクッと飲み干す。ソムリエがいるので好美はそれ以上突っ込むことはなかった。
 そうしているうちにコースは進み、前菜、スープ、パスタと続き、メインである肉料理仔牛のスカロッピーネへとたどり着いた。薄切りの仔牛肉をレモンとソテーしたそれはポテトとアスパラガスが添えられていた。口の中にふわっと広がるレモン風味が、ボリュームがあるのに食べやすいといた演出をしていた。
 三人は薫のことから始まって世間話などで話を弾ませ、デザートでディナーをしめた。

「はぁ、美味しかった」
「御馳走になりました」

 好美と皆本が満足そうな表情を浮かべたのを見て秋江はニッコリと微笑んだ。落ち着いたところで三人は席を立ち、秋江が会計をすませた。その際レジ係が部屋の鍵をソッと渡してきた。それを受け取った秋江は何事もなかったかのようにレストランから出た。皆本と好美もその後に続く。

「あいたたたた」
「だいじょうぶですか?」
「母さんどうしたの?」

 エレベーターホールに着いた秋江は急にお腹を押さえてうずくまった。皆本は心配そうに介抱にあたる。その隙をぬって秋江は好美に目で合図を送った。うなづいた好美は皆本の反対側にまわる。

「どうも母さんの持病が出ちゃったみたい…皆本さん悪いんだけど部屋まで一緒に母さんをはこんで」
「わかりました。しっかりしてください。お部屋までお連れしますから」

 皆本は秋江を背負い、エレベーターのボタンを押した。

 ホテルの最上階付近に位置するロイヤルスイートが明石母娘の宿泊する部屋だった。好美が鍵を開け、その後に秋江を背負った皆本が続いた。

「皆本さん、こっちこっち」

 好美が招く方へと進むとそこには幅3メートルはあろうかというキングサイズのダブルベッドがあった。その大きさと室内の豪華さに呆気にとられた皆本だったが、すぐさま気を取り直して秋江の躰をベッドに預けようとした。

「えい、ひっかかったぁ」
「え!?」

 不意に好美に押された皆本はバランスを崩し、秋江共々ベッドに倒れこむ。

「な、なにを…って…秋江さん!?」

 何がどうなったのかわからない皆本に秋江がギュッとしがみついた。彼女の甘い香水の香りと背中に当たる豊満な乳房の感触に皆本は戸惑った。

「まーだわからないかな?ぜーんぶ母さんの芝居だったってこと」
「ごめんなさいね…こうでもしなくちゃ皆本さん来なかったでしょうから」
「え…と…つまり…はめられた??」

 呆然とする皆本に好美と秋江はウンウンとうなずいて答えた。

「薫がお泊りっていうのは本当よ。でもこのことは薫は知らないわ」
「いつも薫がお世話になってるから皆本さんを癒してあげようって母さんと仕組んだのよ」
「し、しかし、こういうのは癒しとは…」

 騙されてホテルのスィートルームに連れ込まれる事の何処が癒しなのか皆本には皆目つかなかった。

「薫たちの世話で日ごろストレスが貯まってらっしゃるでしょ?」
「パッと発散させちゃいましょ」

 気がつけば皆本は秋江によってジャケットを脱がされ、シャツのボタンも外されていた。好美は何の迷いもな
くベルトに手をかけている。

「ちょっとまってください。発散って…」

 焦る皆本をよそに秋江と好美は彼の着衣をどんどん剥いでいく。とうとう皆本はトランクスとTシャツだけの姿になってしまった。


あとがきのようなもの
どうもこちらでははじめまして。
今回NTさんが1000万突破したというので記念コネタをアップしました。
タイトルはフィーリングです。続きは此処にあがるか某所であがるか未定です。
思いっきりすん止め(この場合生殺しかなw)ですが、作品の雰囲気を楽しんでもらえたらと思います。


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