続きを書いてもよろしいとの皆様のお言葉、ありがたく頂戴いたしました。
そこで続きを投稿させていただきます。
ただし、下記のことにご注意下さい。
※前作のようなほのぼのは期待できません。
※中途半端に壊れているキャラクターがいます。
あの運命の日から数日後。
今日も今日とて美神事務所の面々は、世を騒がせる悪霊を蹴散らしていた。
本日の仕事のラスト。
浄化された悪霊が昇天する光が消えぬうち、美神令子は宣った。
「はい、お疲れさま!よーし、今回は儲かっちゃったし……みんな、打ち上げ行くわよ!」
「わ、いいんですかー?」
「お肉お肉お肉ー!」
嬉しそうなおキヌと力の限りに尻尾を振るシロ。
彼女たちを見て、横島が浮かべた表情は微笑。
ほんの少し、照れを含ませて。
「お疲れさまっしたー」
言い残し、事務所に帰ろうとしたところで。
「何帰る準備してるの?横島くんも行くわよ?」
報酬が多かったため機嫌が良かったのか、はたまたただの気紛れか。
たまには良いだろう、と横島を誘ってみたものの。
「いや、俺は遠慮しときます」
横島はあっさり断り、
「あたしもパス」
タマモも同じく。
そして二人は並んで去っていく。
それを見送り、美神は苦笑を浮かべ――
「珍しいわねー。てっきり付いてくるもんだと思ったけど……
ま、いいわ。それだけ安上がりになるから」
そして、凍り付いた。
微かに聞こえる横島とタマモの会話によって。
「で、今日は何作ってくれるんだ?」
「焼き厚揚げとかどう?」
「お、バリエーション増えたな?」
「あたしだって日々研鑽してるもの」
「……まぁ、お揚げさんなのは変わらずだがなー」
次の瞬間、三人の夜叉が降臨した。
まず動いたのは美神。
迅雷の速さで回り込み、横島を睨め付けた。
「よ・こ・し・まァァァァァ!」
「な、なんスか美神さん?」
そして美神を押しのけ、納得できないと言った口調でシロが問う。
「先生!何でござるかその会話は!?」
「ごく普通に今日の晩ご飯何にしようか、って会話だけど。
それがどうかしたか?」
最期に、包丁――シメサバ丸と呼ばれるそれ――を手に、いっそ優しいとさえ言える声音でおキヌが言った。
「だからなんでタマモちゃんとそんな会話をしてるんですか、横島さん?」
答えられない。言葉に出来ない。
怯える横島を庇うように、タマモが一歩踏み出して。
「付き合ってるからに決まってるじゃない。気付いてなかったの?」
恐怖に耐えつつ宣言した。
放たれたその言葉を理解するのに数秒。夜叉三人は各々困惑の声を発した。
「……………へ?」
「……………え?」
「……………なんですとー!」
そう言われてみれば、思い当たる節がある。
横島がセクハラしなくなった。
タマモの物腰が柔らかくなった。
横島がソファーに寝っ転がっている時、そのお腹の上には丸まったタマモがいたし、横島の手は狐の頭を撫でていた。
獣形態だったから、さほど気に留めなかったが。
仕事中二手に分かれる時は、横島にはいつもタマモが付いて行っていたし、横島もタマモとペアを組むのが当たり前のような顔をしていた。
前衛・後衛とバランスも取れていたし連携も上手かったから気にしていなかったが。
etcetc。
「直接のきっかけになったのは、そうやなー、あの日だよな?」
「そうそう。忠夫以外のみんなを高級料亭に連れて行ってくれた日ね」
「カップうどんとか喰いかけてたらタマモが来たんだよなー」
仲睦まじげな二人が告げたのは、正しくあの日。
3人が呑気にご飯を食べている間に、この二人は出来てしまったのだ。
「………み゛か゛み゛と゛の゛〜」
「う」
「だから横島さんも連れて行ってあげましょう、って言ったのに……」
「す、済んだことは仕方ないじゃない!」
ヤケになって言った言葉。
それが、おキヌとシロにとっての天啓となった。
済んだことは仕方ない。今更元には戻せない。それは確かにそうだ。
だがしかし、都合のいいことに――過去に戻る手段が有るではないか。
ほら、目の前で冷や汗を垂らしている。
それに今の事態を招いた元凶だ。拒絶はさせない、絶対に。
おキヌとシロはアイコンタクト、逃げだそうとしていたた美神の肩を掴み、
「美神さん、ちょーっと一緒に来て下さいねー」
「悪いようにはしないでござるから」
美神を引きずり、疾走を開始した。
疾走の終着点、そこは美神除霊事務所の地下室。
簀巻きにされた美神を見下ろし、おキヌはにっこり微笑んだ。
「大丈夫ですよ。ほんの少しだけ死ヌほどビリビリするだけですから」
言いつつ、コンセントを差し込む。
そのコードは、電気機器には繋がってはいなかった。
途中で断ち切られ、火花が踊っている。
美神は自分の能力と、目の前の事態とを照らし合わせた。
そこから推測される、これから起きること。
「え?もしかして?」
返答の代わりにニタリ、とおキヌとシロは笑い――
「えい♪」
そして、紫電が舞ったその刹那。
「させるものかー!」
狐火で扉を粉砕しつつ、タマモが飛び込んだ。
見聞きしていた美神の能力、勘で気付いたシロキヌの想い、それらから推測したのだ。
きゃつらは過去に帰りやり直す気だ、と。
そうなれば――横島と結ばれることは無くなるだろう。
故に、この幸せを壊させまいと。横島との生活を守ろうと飛び込んだのだが――
だが、無情にも美神の時空転移能力が発動し、シロタマ美神おキヌはまとめて時空の壁を越えた。そりゃぁもうあっさりと。
怒号と希望の声を地下室に残し、彼女たちの目指すべき先は、運命が分岐した日。
そこへ辿り着けるかどうか。
そして辿り着けたとして、書き換えられた歴史がどう動くのかは――また別の話である。
<言い訳めいた後書きのような中書きのような。>
不思議です。
最初はベクトルがダークの方向に行っていたのですが、『これはいかん!』と再構成しましたところがこの様な作品に。
微妙に続いてしまう上、更に妙なベクトルに向かう模様です(´・ω・`)。
………いいのかなぁ?(汗