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▽レス始

15禁注意

「おキヌちゃんEND(GS)」

S (2005-09-02 20:05)

その日横島が事務所に顔を出したとき、いたのはおキヌ一人だった。
美神さんは打ち合わせに出ているという。あと2時間もすれば戻ってくるだろうと。
「それなら、もっとゆっくりしててもよかったかな」
「そんなこと言わないでくださいよ」
くすくすと微笑みながらおキヌが差し出してくれたコーヒーに口をつける。
砂糖も何も入れてないのにほんのり甘く感じるのはどうしてだろうな。
「んで、後の二人は?」
「あの二人、最近仲がいいみたいで今日は一緒に出かけてるんです。と言っても、シロちゃんが引っ張って行ったんですけど」
それでも本当に嫌だったらタマモは動こうとしないだろう。
諦めたと言うことかもしれないけれど、タマモにとってはいいことだと思う。
ついでにサンポの負担が半分に減ってくれれば、横島としても万々歳だ。
まったりとした午後のひと時、おキヌと二人きり……いや違うか、声は聞こえないけど幽霊一号もいるしな。
「そうだ、横島さん、ちょっと手伝ってくれませんか?」
「ん? 何か運ぶものでもあるの? いいよ」
「いえ、ちょっと……こっちです」
階段を下りて――この辺りは普段使わない部屋が並んでいる――他の皆がいない間に整理しておこうというのだろうか。
カチャリ
中を覗けば、元は客間だったのか、サイドボードとタンス、それとシンプルなベッドがあるだけの小さな部屋。
掃除でもするのかと思ったけれど、違うらしい。ほこりっぽくもないし、よく見ればシーツもちゃんと交換してあるようだ。
「おキヌちゃん、別に片付けるとこないみたいだけど――」
――ガチャリ
あれ? この音は、鍵を?
振り向くと、おキヌがぺたりとドアにお札を貼り付けていた。
ボウッ
空気が揺れた。馴染みのある波動。
「……結界?」
見渡せば、四方の壁でもお札が燐光を放っていた。
「こんなこともあろうかと、準備してあったんです。やっぱり、覗き見されたらいやですから」
恥ずかしそうに首をすくめて。
「横島さん……最近は私、随分体に馴染んできたと思いませんか?」
「あ、ああ。そうだね」
「どうしてだと思います?」
「どうしてって……」
どうして、おキヌちゃんはにじり寄って来るんだ?
「私、美神さんに言われてるんです。毎日……オナニーしなさいって」
ガンと頭をぶん殴られたみたいに。まさかおキヌの口からオナニーなんて言葉が飛び出すとは思ってなかった。
「そりゃ、恥ずかしかったですけど、もうあんなことになるのは嫌だったから」
肉体と幽体のズレをなくすには、性的な行為が一番なのだと言う。
「最初は胸とかを触っても少しも気持ちよくなくって。ただ触っているのが分かるだけ……必死だったんですよ。美神さんも色々考えてくれてたみたいなんですけど、どうにも上手くいかなくて……」
ぷち
ブラウスのボタンを一つ また一つ。
胸元から清楚な白いブラが覗く。
「覚えてますか? 先月ですけど、横島さんに肩を叩かれたとき、私びっくりして叫んじゃったことがあるでしょう? あれって、美神さんとそんな話をしたばかりだったからなんです」
覚えてる。確かあのときはおキヌちゃんが真っ赤になっちゃって、つられて俺まで赤くなって。
「あの夜……どきどきしたことを思い出しながら……そうしたら、私初めて、気持ちいいって感じたんです」
横島さんのおかげです。
「それって……」
それって、俺のことをオカズにして、オナニーしてたってこと? もしかして、毎晩?
喉がからからに渇いて言葉にならなかったけど、おキヌちゃんには伝わったんだと思う。
かぁと胸元まで真っ赤になって。
「……はしたないと、思いますか?」
ぶんぶんと首を横に振った。嘘じゃない。心臓が止まるほど驚いたけど、でもむしろ俺は
「きゃっ」
気が付いたら、おキヌちゃんの華奢な体を思いっきり抱きしめてた。想像していたよりもずっと柔らかくて、熱くって、震えていた。
「おキヌちゃん、怖いの?」
ふるふる
「分かりません……頭の中がぐるぐるして……」
なんだ、それなら俺と一緒だ。
さらと流れる黒髪に顔を埋めて、小さな耳を口に含む。
「ふあぁっ」
ぴちゃ ぺろ
「よ!……よこしまさ……ひゃうっ!……」
尖らせた舌で、耳の中を。耳たぶに軽く歯を立てて。
「ひうっ!……やぁっ そこ……くぅっ!」
暴れようとするけどしっかりと抱きしめられているから。乱れたブラウス。汗で透けて。
れろ ぬちゅくちゅ ぢゅる
「……うあ!……ああ!……ぁ……」
かくんと力が抜けて、はぁはぁと荒い息をつく。そんなおキヌちゃんを俺はベッドに押し倒した。
自分ではどんな顔をしてるのか分からない。だけど、おキヌちゃんの震える手がそっと俺の頬に添えられて、逆らえないまま寄せられた唇が――


「……ただいまぁ」
「ただいまでござるっ!」
ああ、帰ってきたな。
ばたばたと駆け上がってくる二つの――違うか、片方は引き摺るような足音だ。
それがドアの向こうでぴたりと止まる。
「?」
顔を見合わせる俺たちの耳に、ひそひそと囁き交わす「……なはずは……」「……でも…かに……」のが聞こえた。
カチャ
そうっと、ドアが開いて、二つの顔が覗きこんでくる。
「よう、お帰り どうし――」
「あああああああああぁぁぁぁぁやっぱりいいぃぃぃっ!!」
突然のシロの絶叫にひっくり返りそうになる。
「うるさいバカ犬!」「だってせんせいが!」「いいからこっちにきなさいよ!」「でもでも……」
ばたばたばた!
……何がどうしたんだ?
呆然とする俺に、おキヌちゃんが消え入りそうな声で。
「あ、あの……横島さん、もしかして、匂いとかで分かっちゃったんじゃ……あの? 平気なんですか?」
「ああ」
残っていたコーヒーを飲み干す。
まぁ考えて見たら当然だな。狼だし。
「ばれちゃったものはしょうがないさ。あいつらだって吹聴して回ったりはしないだろ」
多分、昨日までの俺だったら、真っ青になってうろたえてただろうな。
「大丈夫だよ」
心配そうにしてるおキヌちゃんの頭を、ぽんと軽く叩く。
それから抱き寄せて、軽くキス。
「俺、ちゃんと頑張るからさ」
先ずは最初の難関――美神さんへの賃上げ交渉だ。


そうして俺は、全治2週間と引き換えに、2DKのマンションを借りれるだけの給料を勝ち取った。


          Fin


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