「アイドル天使、妖弧のタマモ」
本日の除霊の成果も上々。美神除霊事務所の面々は意気揚々と引き上げることになった。
中級の悪霊など、今の美神事務所の前には雑魚霊と同じである。しかも今回は横島の文殊のお蔭で経費もゼロ。美神はホクホク顔で帰路についていた。何故だかおキヌとシロがボコボコになっている横島を引き摺りつつ後に続いて行った。タマモ一人が残っていることを知らずに。
今日の除霊現場は某民放TV局。視聴率買収問題などで騒がれた会社や乗っ取り問題のあった会社のライバル関係にあるところだった。タマモは好奇心から局内を探検することにしたのだ。自由に出入り出来る許可証は除霊の際に貰っているから万全の体制で野次馬心を満たすことが出来る。
(へぇ、こんなに広いんだぁ)
美神の事務所兼自宅で見るTVは、所詮一方からしか映してないもので、奥行きの広さなどは伝えてくれない。まだ21世紀前半だからこの程度の技術なのかもしれないが、将来のことよりもタマモにとっては現在が大切だった。もう九時を過ぎているのに何処も彼処も騒々しさを失っていない。さすがTV局といったところだろうか。
ドカッ。
タマモの肩にぶつかる人がいた。タマモがボウッとしていたのが原因だった。ぶつかった相手はタマモもTVの番組やCM、雑誌などでも目にするアイドルの奈室安美江だった。実はこの女性、密かにタマモが好きなアーティストだったりする。誰もいないしラッキーと思ってサインでもねだろうかと考えるタマモに対して安美江が言った言葉は、
「ボサッと突っ立ってんじゃないわよ、ブス!!私を誰だと思ってんの?謝りなさいよ!!」
一気に捲くし立てる彼女にタマモは一瞬呆気にとられる。普段TVで見ている彼女じゃない。そう思いつつも、驚いた拍子についつい謝っていた。
「ご、御免なさい・・・」
「ふん!!まあ良いわ。次からは気をつけることね!!」
そう言い残すと安美江はスタスタと立ち去っていった。
「・・・・・・・・・」
暫く呆然とするタマモ。
「・・・な、何ですって!?」
漸くして彼女は重大なことに気付いた。そう、彼女が生まれて初めて言われた言葉に。『ブス』の一言に呆然としてしまう。
(私がブス?なら世界中の女は全てブス以下になるじゃない!!)
何気に自分の容姿に自信を持っていたりするタマモ。もちろんプライドも高い。それだけにフツフツと怒りがこみ上げてくる。
(ちょっと成功してるからって好い気になって・・・この私を怒らせたことを後悔させてあげる・・・)
タマモは嘗て一国を滅ぼしたといわれる妖艶な微笑を自然に浮かべていた。
「ウフフフフフフフ、ウフフフフフフフフフフ、ウフフフフフフフフフフフフフフフ・・・・・・」
その日、退治された悪霊とは別に幾つかの人魂が目撃されることとなる。不気味な笑い声と共に。
後日、『私の彼はGS』や『愛、覚えていまっか?』など数々のヒット曲を出すトップアイドルの誕生した瞬間であった。
○あとがきみたいなもの
ちょっと短かったでしょうか?其処のところは勘弁して頂きたいっす。
続きそうで続かない(苦笑)
「アイドル天使、妖弧のタマモ」もしくは「アイドル天使、ようこそ妖弧」どちらか迷ったんですが、分かる方いらっしゃいます?私と同年代なことを白状しなさい(爆)
それでは、これで失礼します。
が、やっぱ短すぎるので、続きそうで続かないシリーズをオマケでもう一本。お情けで乗せてやっておくんなせえ。
『ゲロゲロ』(GS+ケロロ軍曹)
「地球侵略であります」
ふわああぁぁぁ・・・。ソファの上で横島が欠伸を一つ。
最近では、事務所の南側のソファは横島の昼寝用と化していた。ソファ、この事務所の持ち主、美神令子も呆れてはいるが文句を言わない。令子の母である美智恵からすると良い傾向に映っていたりもする。
事務所の一員であるおキヌが買い物に出かけているのを除けば、事務所はのんびりとした雰囲気であった。
「さてと、もう一眠りするか・・・」
横島はそう言うとまた瞼を閉じようとした。
ズコッ。シロが大きく身体を傾ける。
「先生、散歩のお時間でござるよぅ・・・」
少し瞳を潤ませながら横島の身体を揺するシロ。
実は、散歩が嫌だから寝たふりをしているだけなのだが、弟子であるシロを悪戯に刺激することになると思い本当のことを言えないのだった。
「先生、起きるでござるよぅ・・・」
ユサユサと身体を揺すり続ける。
いい加減可哀想に思ってきてしまうところが横島の良い所であり、弱点でもあった。
(う~ん、昨日は仕事で行けなかったんだよなぁ。今日は行ってやっても良いかな?)
何だかんだ言ってもシロのことを嫌いなわけはなく、ついつい流されてしまう横島なのだが、今回はその前にタマモが立ち塞がった。
「ねぇ、シロ、『宇宙人対侍MAN』ってのが始まるわよ」
TVのBSの再放送枠で昔の時代劇が放送されていた。シロは常々タマモに面白そうな時代劇がある時は知らせてくれと言っていたので、タマモはその約束を果たしたに過ぎない。
「ん?宇宙人?ふん、そんなつまらんものはタマモ一人で見れば良いでござるよ」
カチン。
これにはタマモも少しカッとなる。しかし、シロとは違い表情に出さないところがタマモのタマモ所以であった。
「・・・・・・・・・」
一人、シロの言ったつまらなそうな映画を見ているふりをして思案に耽る。
「先生~」
シロはまだ横島に縋り付いている。
(さっきのタマモに対するシロの態度は如何なもんかな?ここはビシッと言った方が良いのかな?けど、起きたら有無を言わさずに散歩に連れて行かされるような・・・)
横島もまた思案に暮れていた。
(まあ、散歩に行きたい時のシロはガキそのものだから、軽くからかってチャラにしてあげるか)
タマモの方は簡単に結論に達した。
「シロ、つまらないとか言ったけどね。実際に宇宙人はいるのよ」
タマモがシロに話しかける。
「ふん、また拙者を担ごうというのでござるな。毎度毎度騙されないでござるよ!!」
シロは毎度毎度騙されていると自分で言っているようなものなのだが、そのことに気付かず胸を張った。
「ほら、そこに宇宙人が」
サッと壁の一箇所を指差すタマモ。
「「え!?何処何処!?」」
シロは騙されないぞ、と言いつつタマモの指差す方向へ顔を向けてしまう。ついでに弟子が弟子なら師匠も師匠でついつい騙されてしまっている。何時も通りならそうだったのだが。
パラ・・・。壁がまるで剥がれるように落ちていく。
「な・・・何故バレたでありますか・・・・・・!?」
そして、まるで、カエルを大きくして軍人のコスプレをさせたようなモノが出てくる。コスプレといってもヘルメットを被ったにすぎないのだが。
「「「「・・・・・・・・・」」」」
横島、シロ、令子がその生物を見て唖然とする。そして、言った本人タマモが一番驚いていたりして。
「じ、人口幽霊一号。よ、妖怪を入れちゃだめじゃない」
令子が建物の上を向いて訪ねる。この建物全体が人口幽霊一号だから、わざわざ上を向かなくて良いなどとは、オーナーである令子の性格を把握している人口幽霊一号は言わない。
「お言葉ですがオーナー、このカエルから妖力の欠片も感じません。それから恥ずかしながら如何にしてこのカエルが私の中に侵入したのか皆目見当もつきません」
「クックックッ。愚かなるペコポン人どもに気取られるわけがないであります。そう、この『ケロボール』さえあれば、この星は我々のもの!!」
「ペコポン人・・・。このカエルはどうやら地球侵略に来たようね」
令子は迫力の欠片も感じないカエルを見つめながら言った。カエルが『ケロボール』と言った、黒くて所々突起のあるボールに目をやる。そして令子の瞳が光った。
「横島君給料アップのチャンスよ!!そのカエルを捕まえなさい!!」
「アイアイサー!!!」
令子は血走った眼で横島に命令を下す。長年付き合ってきた所為か、何故かこういう時の令子に逆らえない自分がいた。
「クッ。『ケロボール』の恐ろしさを・・・」
ポロリ・・・。カエルは手にしていたケロボールをあっさり落としてしまった。
ケロボールはコロコロと転がって自然に令子の元へと導かれていった。
「ハウッ!!ペ、ペコポン人のくせに、や、やるであります・・・」
涙目になりながらカエルが顔を蒼褪めさせる。
「「「「・・・・・・・・・」」」」
部屋にいる四人は呆れながらカエルを見つめていた。
○あとがきみたいなものPart2
怒らないで読んでね♪