・『帰り道』『熱帯夜』から続いてます。
困難だとか、トラブルだとか…そーゆーのは突然、何の前触れも無しに降りかかってくる物だ。
…オレ自身、そんな事は過去に嫌ってゆう程に経験し、骨身に染みて解っている。
でもやっぱり、いざそんな予想外の出来事に直面してしまった時…ヒトは意外に何も出来ない。
頭では理解していても、身体の方がついていかずに、咄嗟に動くコトが出来ない。
「…ぁ~…」
そう…オレは今困っている。
突然の予想だにしない出来事に見舞われて…非常に困った事態へと陥っている。
「う…うぐ……うあぁぁ~…」
ぐしぐしと鼻をすすりながら、泣きじゃくる少女…パピリオの事を前にして。
お泊りの日の惨事
SIDE:横島
夜明け前……空が薄らと白み始めたその頃。
オレは奇妙な感触に、浅い眠りから引き起こされた。
そして…
「ぱ、パピリオ!?おまえ…まさか…」
「うッ!?よ…ヨコシマ…これは…」
…妙にキモチ悪く冷たい感触、そしてほんの微かな異臭…
目の前で起こっていた事は…思わず泣きたくなってしまう程に、無常でそして残酷な…
最も、それはオレではなく“パピリオにとって“という事でだが。
「…ぁ~…」
「う…うぁ…うぅうあ~んッぅ…ぅ…ぅぅ」
「…あッ…パ、パピリオ?」
泣き出してしまった…いや、泣かせてしまったのか。
その可愛らしい顔をくしゃくしゃに歪め、ぽろぽろと涙を零すパピリオを前にオレはかける言葉も無い。
…オレが悪いのだろうか?
や、どちらかとゆうと此方のが“被害者”と言えなくも無い様な…
しかし、オレの無思慮な言動がパピリオの事泣かせてしまう、その原因となってしまった…らしい…というのもまた事実。
「うッ…うぅッ…うぇ…あ…ぁ…」
「え~と…その…しょ、しょーがねーよこれは。お前まだ小っさいんだからさ?な?」
『もうヤダ』とか。
恥しくて情けなくてキモチ悪くて哀しくて…消えたいとか、死んじゃいたいとか…
パピリオのヤツ、きっとそんな事を考えてる…何となくだがオレには解る。
なぜならば、オレもまた同じ様な“経験“を、過去にしたコトがあるのだから。
…或は、それは恐怖感。
叱責…仕置き…嘲笑…侮蔑…
目の前のこのオレからの仕打ちを思い、彼女はそれに恐怖している…その可能性も高いだろう。
無論、オレはそのどれも大事なパピリオにする気は無い。
「うぁ…ぁ…ひぃ…ぇ…うぐ…う…うっ…」
「そ、それにな、ほらオレ全然怒って無いぞ?な?」
しかし、それが解った所でどうにかできる訳でもない。
どーすればいいというのか?
パピリオの涙を止める術なんて…オレなんかが知るわけも無い。
故に…
「うあぁ…ひ…ひっ…うぐ…ぅ…」
「あ~その…だから…泣くなよパピリオ…」
オレにはこうやって、泣き続ける彼女を慰める位しか出来る事は他には無い。
…他に今のパピリオに、このオレがしてやれる事なんか解らないし思いもつかない。
全く…なんて情けない。自分のバカさ加減がイヤになる。
しかし…
「ぅ…ぅ…ぅ…よ、ヨコシマぁ…」
「あーよしよし…」
不器用なりに一生懸命に慰めた、その努力が実ったのか。
パピリオは、漸く…ほんの少しだけれど落ち着きを取り戻してきたようだ。
その泣声が小さくなってきた気がする。
…しかし…
「ぅ…ぅ…ぅ…」
「だからよ、その…な?」
…それなのに…
「おねしょしたぐらいでそんな泣くなよ?」
「う゛ッ!?…
あ゛…ぐ…う゛あ゛ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーん!!」
「のおっ!?」
…愚かにもオレは思いきり地雷を踏ん付けてしまった。
パピリオ折角鎮火しかけていたのに、思いっきり再点火。
あ”~…折角泣き止みかけてたのに…
でも…考えてみればそりゃーそーだ。
“おねしょ”だなんて…いちいちオレから言われなくとも、そんな事ぁしちまった本人が一番よく解ってる。
この上更にそのコトを、穿り返されたくなんか無いよな。
そっとしといて欲しいよな。
だってのに…
本当にオレってヤツは…何て愚か者なんだろーか…(涙
「ヨ゛ゴジマ゛のばかぁぁぁぁ~~~!!」
「す、スマンッ、何だか知らんが兎に角スマン!!このとーり謝るから!頼むから機嫌直して!泣き止んでくれ!!御願いしマス!!」
ヘコへコと、土下座までするも効果は無く…パピリオは、大声で泣き続ける。
寝る前に、ちゃんとトイレに行かせなかった…それが悪かったのだろうか?
暑いからってかぱかぱと、ジュースのがぶ飲みを許した所為か?
昨日遊んだ市営プールでおなかを冷やしたのだろーか?
まさか、もしかして帰ってくるときの“のーぱん”が原因だったりはしないよな?
しかし…今更何を悔やんだ所で、最早全ては手遅れで。
パピリオの身に付けているシャツとショーツは、お漏らしの所為でべっちゃべちゃ。
そんな彼女に抱きつかれていた、オレだって似たような有様で。
だから当然、一緒に寝ていた布団はもっと酷い事になっていて…
大きく広がったその濡れ染み…何て見事な“世界地図“…ん~このカタチは南極大陸か?
クッキリと、自分のおねしょの痕の残った布団の上に座り込み、ぴーぴーと火がついたよーに泣き叫ぶパピリオの事を前にして、オレは途方にくれるのだった…
「う゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛~~ん」
…や、泣きたいのはこっちの方だって…
終り…
後書き
パピリオ位の歳(実年齢じゃなく精神年齢)なら、まだおねしょとかやっちゃいそうな気がするのですが…無理がありましたでしょーか?
でも書きたかったんです…パピリオのおねしょネタ(爆
こんなんですが、ご感想・ツッコミ等頂けると幸いです。