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!警告!壊れキャラ有り

「それぞれの戦い!!(GS)」

毒虫 (2005-08-15 15:41)

その日の海は、荒れていた。
しかし老人は船を出した。逃げるわけにはいかないのだ。
以前乗っていた船は憎き仇敵に沈められたため、今では小さいモーターボートに乗っている。
悪霊の潜む沖へと漕ぎ出すには少々どころではなく頼りないが、彼は海の男なのである。小さい事は気にしない。

そして老人の操る『あわもりMk2』がある程度の沖へと達し、そのエンジンを止める。
波の波紋が収まってきた頃、大きな水飛沫を上げ、水面に人影が躍り出た!

「性懲りもなく現れおったか、貝枝ァ!!」

『ほざけ! 今日こそ貴様の命日にしてやるぞ、鱶町ィ!!』

海上に姿を現した、軍服姿の亡霊。彼こそが老人・鱶町の仇敵、旧帝国海軍中佐・貝枝五郎である。
幼馴染の腐れ縁でもあったこの二人、演習中のトラブルからここ60年ずっとこうして戦っている宿敵である。
もとは二人ともそれぞれの船を操り戦いを繰り広げていたのだが、今では船を失い、肉弾戦を繰り広げている。
今でも戦いが続いているという事は、無論全戦引き分け。
普通なら一般人が手の触れる事のできない貝枝が勝利するのであろうが、鱶町の気合の入りようは半端ではなかった。
気合と執念だけをその老骨に刻み、不屈の闘志を両の拳に込め、ただひたすらにぶん殴る!
鱶町に霊力など一般人程度にしか宿っていないが、彼はそれを気合とかそこらへんのものだけでカバーしているのだ。
元気なじーさんである。

それはともかく、既に洋上では死闘が繰り広げられていた。
揺れる足場もなんのその、ボート上で子供のように殴りあう。

『大体、尋常小学校時代から貴様が気に喰わんかったんだ!!』

「ワシなんか生まれた時から貴様にゃムシズが走ったわい!!」

…ここまでくると、本当に子供のケンカである。
それに、この罵倒の応酬。これも何十回と繰り返されてきた事をそのままリピートしている。
まあ二人ともも相当な歳だから、その辺の事は仕方が無いのかもしれないが。…かたっぽはもう死んでるけど。


ここで早送り。


…ふと気付けば、辺りはもうすっかり闇に包まれている。
結局、今日も決着がつかなかったようだ。
本来ならば貝枝の時間はこれから始まるのだが……鱶町がもうそろそろ限界なのだ。彼が寝る時間は午後八時である。

「ぜーっ……ぜーっ……ぜーっ……きょ、今日は……こ、ここまでにせんか……?」 

『ど、同感だ……』

息も絶え絶えな鱶町と、何故か疲労困憊な貝枝。幽霊も何だかんだいって疲れるらしい。
ともかく因縁の決着はいつものごとく明日に先送りし、引き揚げようとしたところで……海の雰囲気がガラリと変わった。

「!?」

『こ、これは……!?』

ざあぁっ……と小高い波が立ったかと思うと、突然宙から湧き出したかのように悪霊の群れが現れる!
それも『あわもりMk2』の周りの洋上だけではなく、見ると更に沖の方も、そして陸の方も同じ様だった。
鱶町は隻眼の目を見開く。

「貝枝、貴様ッ………さてはワシに恐れをなして、増援を呼びおったな!? この卑怯者めがッ!!」

『ざけんじゃねーッ!! 誰が、貴様のようなくたばりぞこないの老いぼれなんぞにッ!!』

「な、何ィ!? 人聞きの悪い事を言うなッ!! ワシはまだまだ現役じゃぁッ!! 
 機会さえあれば、若いねーちゃんでもひっかけて、帝国海軍じこみのウルテクを…」

『何の話をしとるかーっ!!』

大混乱である。
しかし狭まりつつある悪霊どもの包囲網にようやく危機感を取り戻すと、二人は頷き合った。
そして、お互いの背後に迫っていた悪霊をそれぞれ殴り飛ばす!

「『……………』」

そのまま睨み合う。
俗に言う、『勘違いするなよ、貴様を倒すのは俺だ』状態である。

「……貴様との決着がつかんうちは、死んでも死にきれんからの」

『……ま、そういう事だな』

ぺっ!と同時に唾を吐くと、お互い背中を向き合わせ、死角を無くす。
それから、数を競う合うようにして、迫りくる悪霊どもを力の限りに叩き伏せる!
60年に渡って死闘を演じ続けた者同士の究極のチームワークが、今ここに…………

「あ、おめー今、どさくさにまぎれてワシを突き落とそうとしたじゃろっ!?」

『うるせっ!! 油断してるてめーが悪いっ!!』

…誕生するはずもなかった。
手を止め向き合い、全力で罵り合う。
無視された形の悪霊達は、所在なさげに漂うしかなかった。

「なんじゃとこの陰険男がっ!! そんなだからマサエちゃんにフられるんじゃっ!!」

『んなっ!? て、てめ、何年前の話を持ち出しとるんだっ!! 大体、マサエちゃんにはお前もフられてただろーがっ!!』

「そ、それを言うなあぁぁぁぁぁぁっ!!」

『痛ッ!? ……上等だ! 今すぐ決着つけたらぁッ!!』

周りの悪霊などほったらかしで、ぽかすかと殴り合いを再開する二人。

『あのー………私も一応、復活してるんですけどー………
 ……だ、誰も聞いてないし……その上、レギュラーメンバーもいないし……どーせ、どーせ私なんか……』

悪霊どももどうしようかとふわふわ何となく漂っている中、登場のタイミングを完全に逃したセイレーンが膝を抱えてるるる〜と泣いていた。


ーーーあとがき?ーーー

時々でいいから、忘れてしまった人たちのこと、思い出してください…
とまあそんなわけで、脇役が好きなんです。キリンさんよりもっと好きなんです。


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