*一応、コレ単品でも大丈夫とは思いますが、『帰り道』から続いております。
真夜中…だけど私は眠れない。
あちこちほちゅれた(解れた)ボロボロの網戸…そこから入り込む夜風はねっとりと重く生暖かくて…涼しさなんて感じられない。
ちりんちりん鳴ってる風鈴…これもただただ煩いだけで。
“くーらー”とか“えあこん”とか、そーゆーのは持って無いって。まぁ…ヨコシマなら仕方ないでちゅか…
扇風機だって今夜くらいの暑さだと、お部屋の中に篭った熱気をただ引っ掻き回すだけ…単なる役立たずに過ぎない。
とてもじゃないけどこんな夜は、掛け布団なんて掛けたくも無い。
…ついでに蚊とかハエだとかが、ぶんぶん煩く飛び回ってて…あーもーうっとーしーったらないでちゅねー!!
夏休みに私が過すヨコシマのお部屋…そこは“快適”だなんて言葉とは無縁のサイアクな有様だったりして。
寝苦しい夜…
眠れない夜…
あぁ…これが“熱帯夜”ってやつなんでちゅねー…
熱帯夜
SIDE:パピリオ
お気に入りのピンクのパジャマも…こんな暑くちゃ着ていられない。
だから今日お布団に入る時にはシャツとぱんつだけで。
…小竜姫に見られたら『はしたない!』って怒られそう…でも暑いんだからしょーがない。
…でも、それすらも汗でべたべたに濡れてしまって。ベちゃりと湿気った感触が、何だかとってもキモチ悪い。
むき出しになった手にも足にもお顔にも…ほかほか火照った素肌には、じんわりと汗が浮んでる。
「うう~暑いでちゅ…」
「…あぁ…そーだな…」
思わず口に出たその呟きに、すぐ横から返事がかえる。
…なーんだ…ヨコシマも起きてたでちゅか。
「…暑いでちゅねー…」
「…あー…暑いなぁ…」
隣に寝ているヨコシマは、Tシャツにぱんつ…つまり私と同じで、下着だけとゆーカッコ。
…最も、コレは暑いからってだけじゃなく、いつもコレで寝てるんだってそーいってまちたけど。
「あぁぁ…暑い~あつい~アツイ~…うぅぅ死むぅ~」
「…あーもーパピリオ!“耳元”で暑い暑いって連呼すなや!余計暑ッ苦しくなんだろーが!
…それになぁ…」
「…それに?…なんでちゅかヨコシマ…」
「…暑いってぶちぶち文句たれる前にオレから離れろ!そーすりゃ少しは涼しくなんだろーが!」
「それはゼッタイにイヤでちゅ♪」
隣は隣でも、ヨコシマが居るのは私と同じお布団の上…そう私はヨコシマと一緒に寝てる。
『布団はひとつ枕はふたつ』ってゆーやつでちゅね♪
でもそれはしょーがない事。だってヨコシマのお部屋には、お布団が一組しかなくて。
だから、私はそのひとつしかないお布団で、ヨコシマと一緒に寝るしかないんでちゅ♪
しかもそのお布団は、とってもせまいものだから…今みたいにこーやって、ぎゅ~っとふたりのカラダを寄せ合い、くっつけてなくちゃいけまちぇん♪そーしないと、手とか足とかがはみ出しちゃうもの。
でも…
「だーかーらー!オレは別に布団でなくてもいーっつたろーが!?
別に畳にごろ寝でも大丈夫だって…」
「それは駄目でちゅ。お布団無しで、おなか冷えちゃったりしたらタイヘンじゃないでちゅか?」
…ヨコシマは、明らかに不満たらたら。
む~~。
こーんなカワイイ美少女と一緒にねられるってゆーのに…ナニが不満なんでちゅかねー?
それともなんでちゅか?パピリオの“抱きまくら”になるのは、そんなにイヤな事だとでも?
…ちょっぴり“かちん”ときた私は…むぎゅっとヨコシマに抱きついた。
「だから引っ付くなって!
や…無理に同衾せんでもいーだろって言ってんのさ。…暑いんだろ?」
「暑いでちゅよ?でもパピリオは平気でちゅ♪」
「あーそーですか…」
暑い。確かに暑苦しい。
でも気にしない。暑くたって寝苦しくたって私はガマンするコトができる。
だって…今はそれ以上に…
「…それにね…?」
「…それに?」
「こーしてるのが……一番キモチ良くてスキなんでちゅよ…
ヨコシマの傍だと…安心して眠れるの…」
こつん…と、私はヨコシマの肩にアタマを預けて囁いた。
抱きついた私のカラダ全部で感じる…ヨコシマの確かな存在感は、私をココロから落ち着かせて、安心させてくれるから。
だから、暑くても大丈夫。
ヨコシマと一緒。
普段逢えない、一緒にいれないヨコシマを…今は私が独り占め。
それは何て幸せで、キモチのイイ事なんだろ…
「ぁ、ぁ~…そ、そう…なのか」
「うんうん♪そーなんでちゅよ♪」
ふふん♪ヨコシマ…照れてましゅね?
暗くてよく見えないけれど、きっと顔まっかになってるでちゅ♪
ちりんちりん…
生暖かい風に吹かれて、ちっとも涼しくない風鈴の音が、お部屋の中に響き渡る。
私とヨコシマはお布団の上、きゅっとふたりくっついて眠れないままぼーっとしてる。
「…あー…暑いなぁ…」
「…あー…暑いでちゅねぇ…」
それは、ある夏の一日…
寝苦しい夜のお話…
後書き
横島クンとパピリオ…暑苦しい位に“べたべた”するお話を書いてみました。
冷房機具の無い部屋での、じめじめとクソ蒸し暑い真夏の夜…な感じが少しでもでているといいのですが。
…でも、そんな最中でべたべたってのもアレですかねー…
因みに横島クンの部屋、ハエや蚊が煩いのは蚊取り線香とか焚けないからです…“蝶々”のパピリオに、殺虫効果のあるアレはキツかろーって事で。
こんなのでも、突っ込み・感想等頂けると幸いです。