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▽レス始

「帰り道(GS)」

偽バルタン (2005-08-03 22:26)


既に日は西に傾き始め…ほんのりと紅い色が混じり出してる…
…とは言え、今はまだ真夏の盛り…完全に沈みきって暗くなるには、まだまだ時間がかかるだろう。

ここは市営プールの入場口。
営業時間はもースグ終り…人影もそろそろまばらになってきた。

…で、そんな時間に何故オレ…横島忠夫が、んな場所に居るのかといえば…


「遅ぇぞ、よーやく出てきたか〜」


彼女のコトを待っていたから。

ライム色の髪、くりくりと大きな瞳…純白のミニのサマードレスがとても良く似合っている、小っちゃな女の子のコトを…


「…よ、ヨコシマぁ…」


パピリオの事を待っていたからだ。


帰り道


SIDE:横島

妙神山でも“夏休み”…なにやら小竜姫様からの、特別の計らいとか何とか…で、その間中パピリオはオレん家にお泊りしにきてる。
…なんでもパピリオの強い希望なんだそーで。

因みに、泊まるんだったらオレん家みたいなボロい所じゃなくても…と思って『美神さん所は?』と尋ねてみた。
そしたら、パピの保護者の小竜姫様…『美神さんにこれ以上“貸し”を作るのはちょっと…』なーんて微妙〜な顔して応えてくれた…ま、それは良く解りますが…

や、最初は断ろーかなって思ってたんだ…オレだって夏休みん間は色々と忙しい訳だし…ちょっとだけ『めんどくさいかな』とか思ったし…

でもなぁ…

『い…イヤなんでちゅか!?ヨコシマは私の事キライになったでしゅか!?』…なんてガン泣きするんだもんなー…断れる訳が無い。…ほんと、女の子の涙ってズルイと思う。
オマケに『貴方しか居ないんです』なんて小竜姫様からも“お願い”されちゃ…なぁ?

まぁ…オレもパピリオには日頃寂しい想いをさせてホントに悪いとは思ってるんだ…場所が場所だけにそーちょくちょくと逢いに行ってはやれないし。
それにあそこ(妙神山)じゃ遊び相手もいないだろうし…かといって同年代(…実年齢じゃなくて精神年齢な)の友達は作れないだろうしなぁ…因みに、パピリオから見ると、小竜姫さまはお姉さん(お母さんって言ったら叱られたとか)…老師はまんま爺さん…鬼門はペットって感じなんだそーだ。

だから…まぁたまにはいいかなって…普段逢いにいけない分、寂しい思いさせてる分こんな時くれー何かしてやんなきゃなぁ…って思って…
で結局休みの間、パピリオのお守りは引き受ける事にした。
…彼女のあまりのはっちゃけぶりに、初日からその事後悔したってのはここだけの秘密な…

で、折角来たんだからとゆー事で…今日は市営プールまで遊びに来た。
やー大変だったわー…パピリオのヤツ初めてのプールに際限無しにテンションあがりっぱなしでさー…持ち前の“お子ちゃまぱわー“を存分に発揮して、閉園時間の間際までオレのを引き連れまわったからなー。

で、漸く帰ることになって…入り口で待合せてた訳なんだけど…


「ずいぶん遅かったな〜
どうしたんだ?シャワーが混んでたのか?」

「………」


…アレ?何かヘンだな…
静かにゆっくりとこちらへと歩いてくる…その顔は俯き、表情は見えない。
だが…水着一式を詰めたバッグを持った手で、スカートを端をぎゅうっと押さえ、しずしずとおしとやかに歩くそのさまは…なんとゆうかとても“オンナのコ”していて、…元気いっぱいな普段のこいつからは何か想像もつかない姿。ぶっちゃけ新鮮だ。
こんな時…そう、いつもならば、にっこにこの笑顔でもって、はしたなくスカートが翻ってんのも気にせずに走って、オレに向って『体当たりか!?』っつーほどの勢いで抱きついてくるんだが…
おかしい…らしくないぞ?…いつものパピリオとは何か違う。

やがてすぐ傍まで来た彼女は…
…ぺたり…
と、オレにしがみ付いた。


「…パピリオ?」


密着させられた小さな身体から感じる微かな振動…コイツ…まさか震えてる?
オレは慌ててしゃがみ込み、パピリオの顔を覗きこむ。
…ようやく見えた彼女の顔…顔を赤くし瞳を潤ませ、今にも泣き出しそうな表情…


「ど、どうしたパピリオ…?何かあったのか?どっか痛くしたのか?」

「…ん……ぁ…」

「…よく聞こえなかったんだが…?」


耳元に顔を近づけてきた…ナイショ話…どーやらあまり大きな声ではいえないコトらしい。
カルキ臭いプールのニオイに混じって、まるでミルクのような、ほんのりと甘い幼子特有の香りがオレの鼻先を擽った。

ごしょごしょごしょ…
蚊の鳴く様な…か細く頼りない声だ…これもパピリオらしくない。
…だが…それは、そのナイショ話からすればムリも無いことで…


「…はぁ?ぱんつとしゃつを…わすれたぁ?」

「!!ば、ばかぁっ!!こ、声が大きいでしゅよっ!!」


…パピリオの奴は、家を出る前から水着を着て…その上からサマードレスを着てプールへと臨んでいた…こーゆートコ子供っぽいよな。
しかし…そこでひとつ、コイツは重大な過ちを犯した。
…そう、パピリオは替えの下着を持ってくるのを忘れてたのだ。


「つまり…その…今のお前は…」


その薄い布切れの下に隠されたパピリオのカラダは…シャツもショーツも何も着けてはいない、生まれたまんまの…


「…な、ナニ想像してるでちゅか!このスケベ!!」


・・・はっ!?
い、いかんいかん!何アブナイ想像してるんだオレは!!?

…しかもどーやら最悪な事に顔に出てしまってたらしい…何を考えているか察したパピリオは、その顔を恥しさに更に真っ赤にして、涙目になってオレを睨む…


「え…や…ぁぅ…ご、ごめん…」

「う〜…」(怒)

「…と、ともかく…それは困ったな…どーすっかな…」

「…ごまかしまちたね…」


…そーいやオレも小学校ン時同じよーなポカやらかした事あったな。
その時ゃ下着無しでそのまんまズボン履いて帰ったけど、流石に女の子に同じコトはさせられない。
それにパピリオ、今日はスカートだし。


「…んじゃあ…飛んで帰るとか?」

「下から覗かれたらどーするんでちゅか!丸見えじゃないでちゅか!!」

「いや、だからヒトから見えないくらい物凄〜く高…」

「それでも何かイヤでちゅ!」


徒歩で帰宅…はちと無理か。
走るコトはおろか、普通に歩くのでさえキツイ…スカートを抑えたままよちよち歩きしか出来ない今のパピリオには、家までの帰路…階段有、エスカレーター有、バスや電車の乗継有りの行程は少々ハードと言えるだろう…
不可能…じゃないかも知れないけれど…一体どれだけかかる事やら。
タクシーは却下。…今のオレの寂しすぎる懐具合では、金銭的に不可能なのだ。
や、甲斐性なしだっつー事はイヤって程自覚してますよ?でも事実そーなんだからしょーがないじゃないか…

…と、なると…


「…コレしかないか…」

「?」


オレはしゃがみ込んだまま、パピリオに背を向けた。


「ホレ」

「…え?」

「…だから、おんぶだよ。家までオレがおぶってやるって言ってんの。」

「…え…ぁ…えぇぇえ!?」


空はすっかり真っ赤に染まり…日が沈みきり、暗くなるのももうじきだろう。
オレはパピをおんぶしたまま、てくてくとアパートに向って歩いている。
背中に身体を密着させて、腕は確りとお尻とスカートの端を押さえ込んでいる。風とかで煽られて捲れたりしないようにな。
…背中のパピリオは黙ったまんま…しかし寝ているわけではない。


「…………」

「…………」


恥ずかしーんだろうなぁ…“のーぱん”状態だってのは勿論、パピ曰く“こんな大っきなコ(…オレから見りゃー十分にお子さまなんだけど)がおんぶされてるってのは。
『おんぶする』って言った時も、コイツ顔真っ赤にしてたし。

…でも…パピリオには悪いが、オレは少し気分が良かった。
たまにしか逢えないパピリオと、こーして触合えるのは何だか嬉しい…別にヘンな意味じゃないぞ?…そう、いうなれば“すきんしっぷ”ってヤツ。
それより何より、『オレ、今パピリオの為に何かしてやれてる』って、そう感じるコトができるから…
ま、コレはオレの自己満足なんだろーけどな。
…と…沈黙に耐え切れなくなったのか、パピリオのヤツ…


「…ね…ねぇ?ヨコシマ…大丈夫でちゅか?その…お、重く無いでちゅか?」

「あぁ…大丈夫だって。オレが普段どんだけクソ重たい道具背負わされて仕事してると思ってんだ?
それに比べりゃー軽い軽い…」


そう、普段のアレを思えばパピリオ背負って家まで歩く位、オレにとっちゃどーって事無い。
…つーか軽すぎて逆に心配になる…コイツちゃんと飯食ってんのか?


「……ゴメンなちゃい……」

「あ?」

「…あの…おんぶしてもらって…その…」

「気にすんな…それに、当たり前だろ?
オレとパピリオは…その…兄妹みたいなモンなんだからさ。
お前が困ってたらオレは助ける…とーぜんの事だろーが」

「……うん……」

「それにな、間違ってるぞ?こーゆー時は“ありがとう”だろ?」

「…うん…アリガト…ヨコシマ…」


きゅっ…
パピリオは、首に回した腕にチカラをこめて益々強くしがみ付く…暑い最中で、ぴたっと身体を密着させて…でも不思議と暑苦しいとは感じない。
背に感じるパピリオの温もりが、何とも言えず心地良い。


「…なぁー、パピリオ?」

「…なんでちゅか?」

「明日は何処つれてって欲しい?行きたいトコとかあんのか?」

「…ん〜…そうでちゅねぇ…」


“夏休み“は、まだまだ始まったばかり…
背中のパピリオと、明日の過し方を相談しながら…オレはゆっくりのんびりと家に向って歩くのだった。


「…あ…」

「?…どうしたでちゅか?ヨコシマ…」

「や…今思いついたんだが…文珠使ってウチまで『転』『移』でもすりゃよかったのかな〜…なーんて…」

んなぁッ!?…な…なんで…なんでもっと早くソレに気が付かないんでちゅかーッ!?このバカァッ!!

「グハッ!?や、やめろパピリオ…く、首締めんな!?」


おしまい


後書き
『パピリオ“蝶”に変身すれば良かったんじゃ?』とかゆー突っ込みは勘弁して下さい(笑)
そんな事したら、横島クンがパピリオのことおんぶできないじゃないですか?

べッたべたの横パピものが書きたくなりまして…『血の繋がって無い兄妹モノ』みたいな感じで書いて見ましたがいかがでしょーか?

こんなんでも、突込み・ご指摘など頂けると幸いです。


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