インデックスに戻る(フレーム有り無し

▽レス始

「子犬のワルツ(GS)」

からす (2005-06-15 23:48)

別に振り切ったわけじゃなかった。ただ今までどおりに過ごせれば俺にとって楽だから。腫れ物のように扱われるのは嫌だからそうしていた。けれど道化の仮面は、簡単に剥がれ落ちた。そう、俺は弱い。

霊刀の悪霊。まんまと俺たちは術中に嵌り西条は、乗っ取られる始末。
銃声。打ち抜かれたのは、最愛の弟子、犬塚シロ。彼女は、そのまま動かなくなり倒れる。

「ちっ、こいつショック死しやがったか」
悪霊に操られた西条が告げた。

目の前に広がる彼女の血。
儚さすら見えない横顔。
目は虚ろで。

『大丈夫っ……』

蛍。

その瞬間。俺は、ただ怖くて、必死で、意識すらないはずなのに。
「うぁああああああああ!!」
霊力を体に通す、奴に切りつけられた傷など気にしない。強制的に霊力を全身に。偶然か必然か、俺の手にはあの時のような双文殊。考えという動作をしないままに『蘇生』の文字を込めシロに放つ。そして敵(西条)に向き合う。
「な、なんだお前、霊力はさっきので殆ど吸い尽くしたはずだぞっ!!」
「五月蠅い、てめぇ……許さねぇ。オマエ、シロをシロをぉぉ!!」
力それが俺の全身に満ちていた。どこから来る力か今は、そんな些細なことどうでもいい。文殊を取り出す、込める文字は『乖離』。
ガシャンと音がして乗り移られていた西城の手から霊刀が落ちた。そしてハンズオブグローリの手には、奴の魂が握られていた。
「てめぇぇ!! 俺をどうするつもりだぁっ!!」
喚く、悪霊。言葉すら聞こえない。俺は万力のようにハンズオブグローリで締め付ける。
「ぁああああああああああ、痛い痛い、や、やめろ、ひひとおもいにこ、殺せぇぇぇ!! ぅあああああ!!」
「五月蠅い、お前はアイツを殺したじゃなぇかこれでおあいこだ。」
『消滅』シロのもとから手に戻した双文殊に込める。文殊を放つ。その名のとおり、悪霊は、掻き消えた。成仏などさせるつもりはなかった。


「……せ、先生?」


シロの声、そうか助かったか。よかった、助けられた、死なせなかった。
「もうだいじょぶだアイツは俺が倒したから……」
そう言い俺は、倒れた。


倒れた先生を背負い、美神たちの元へ走った。自前にマンホールを使い遠吠えで横島先生が倒れたことは、妖狐であるタマモに伝えた。
「せ、先生もうすぐでござるよ。もうすぐで美神殿たちと合流できるでござる」
しかし、背負った横島は、虫の息といっていいほどだった。人狼の直感、このままでは死んでしまう。どうすればいい、ヒーリングでは間に合わない。その時、横島の手から文殊らしきものが落ちた。
「そ、そうか文殊なら助かるでござる。でもこれは……しかたないでござる、いちばちか……って、か、漢字がわからないでござるーっ!」
師匠よろしくといわんばかりに泣き散らした。


「でマンホール使って遠吠えであたしら呼んだわけね」
あの後、必死に考えた結果が遠吠えだった。予想通りタマモが気づいてくれた。妖狐のタマモ、九尾の狐として有名なあれの転生だ。
「そうでござる。それと先生がこの文殊を……」
「あ、あんたこれどうしたのよっ!!」
大声を出す所長、美神令子、シロの雇い主であり保護者。別名、守銭奴だと先生から聞いている。
「それは、先生がだしたでござるよ」
「ホントの本当に?」
疑る美神によこからタマモが言った。
「当たり前でしょ、文殊使いなんてアイツしかいないんだから」
呆れ顔でタマモは言う。
「まぁそうよねぇ」
美神は、訝しげにその文殊を見ていた。おキヌはというと、横島に一応ヒーリングをかけていた。合流後、事務所へと戻った。横島はというとソファに寝かして安静にしてある。氷室 キヌ、もともと幽霊で雇われていたが肉体を取り戻してはれて事務所の一員になった子だ。

「仮死状態?」
「そうでござる。疑死を使い敵の隙をつこうと思ったのでござる」
「で横島は、あんたが死んだと思って暴走したわけね」
「……」
タマモのいいようは、的を射ている。シロは自分でも分かっていた。美神は、というと先ほどから仮死状態の話を聞いてからぶつぶつと呟いていた。おキヌは、横島の額にタオルを水で冷やしたものを乗せているところだった。
「美神さん、やっぱり横島さんは……」
「そうね、多分。きっと……」
それっきり二人は黙ってしまった。その沈黙に耐えかねて、シロは言った。
「そ、そうでござる。忘れていたのでござるが……先生が魔力を―――」
それの言葉で、二人の顔色は一瞬にして変わった。真っ青だ、タマモは首を傾げているが何がおかしいのかは、判っているようだった。
「それって横島が魔族ってこと?」
こともなげにタマモは言った。その言葉に美神とおキヌは顔を見合わせると諦めたかのように美神が溜息をついた。
「とりあえず、過去になにがあったか話すわ。黙ってたことは多分、聞いていれば分かるから黙って聞いて」
アシュタロス大戦のこと、ルシオラのことそのことがショックで横島が一時期ふさぎ込んだこと。そして、今もそのときの記憶を文殊を使い『封印』してること全てを話した。

「シロちゃんのしたことはね。結局、横島さんの傷を……抉ってしまったんだと思うの」
いっそ平手で打たれた方がましだった。

おキヌのその言葉が頭から離れなかった。話の後、もう夜中で疲れているということで皆、部屋にと戻ったのだ。シロとタマモは、屋根裏部屋で寝ていた。しかし先ほどの話が強烈すぎ、眠れなかった。
「タマモまだ起きてるでござるか?」
「んぁ? まぁね。 あんな話し聞かされた後じゃ泣くか寝れないかのどっちかでしょ?」
「それはそうかもしれんでござるが……」
先ほどまでシロはびーびーと泣き叫んでいたからだ。
「まぁ寝れない奴ってのが私なんだけどね。でもなんかショックかなぁやっぱ」
「何がでござるか?」
首を傾げる。
「横島のことに決まってるじゃないの。第一あんないつもへらへらしてる馬鹿が、あんなもん背負ってるなんて……なんか昔のあたしみた……」
その先をタマモは濁した。きっと前世のことだろう。迫害を受けたのだからそれそうおうのことを、受けたのだろう。
「先生は、馬鹿じゃないでござる。でもタマモ……拙者考えたのでござるが。先生が封印した記憶の文殊を破壊すれば……」
「消えるでしょうね。あんたの考えたとおり」
「じゃ、じゃあ……」
そこでタマモは体を起こすと冷ややかな目で、シロを睨んだ。
「それなりの覚悟があるんだったらやりなさい。そうすればあいつはずっと、嫌なこと忘れて生きていけるんだから……」
それっきりタマモは黙り込んですぐ寝てしまった。
「覚悟……。」
先生に恨まれるのはいやだった、けれど傷を負っている横島を見たくない。そうシロは、思った。


昼間、GSの手伝いを終えた後、シロはこっそり横島の家に向かった。事務所では今頃、昼食の頃合だろう。ぼろアパート、の二階の右端そこが横島の部屋だ。美神に頼んで作ってもらった合鍵でドアを開ける。狭い部屋だからこそ目的の物を見つけるのは、容易かった。それは唯一の家具たんすの中にあった。ぼろぼろの紅い布に巻かれ保管されていた。

『記』『億』の二文字の文殊。

これを壊せば、先生は……あの人から開放される。罪の意識から逃れられる。手に乗せた、文殊に力を込める。


その時、ドアが開いた。


「シロお前なにやってんだ?」
普段どおりの先生。しかし今一番、会いたけど会いたくない人物。
「!?」
驚いた途端、文殊が発動する。
「あ……」
もう遅い。手遅れだ、先生は思い出してしまうルシオラ殿のことを、先生を縛った女のことを。でも本当に壊せば、先生は救われたのか。そう思うとこれでよかったのかもしれないと思う自分が居る。

「シロお前……そうか。壊そうとしたんだろ? 俺が忘れられるようにさ」
「せっ、拙者は……」
「五月蠅い……でてけ。誰から聞いたかしらねぇけどなぁ。あの場に居なかった奴にとやかく言われる筋合いはねぇんだよ!」
「で、でも先生は、拙者が死んだと思ってあんなに必死になってくれたんでござろう? な、ならその記憶は……先生にとって辛いだけでござるよ」
「でてけ!」
突き飛ばされるシロ。大きな音を立てて、部屋のドアが閉まった。涙が止まらなかった。その場でシロはへたり込み横島の部屋のドアに、背中を預けた。体育座りみたいな状態でシロは言った。
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……」
日が暮れ、夜が来るまでそれは続いた。


「馬鹿野郎、そこにいちゃドア開けられねぇじゃねぇか」
ぶっきらぼうな声。けれどどこか優しさが込められた声。先生は、窓から出たのかシロの目の前に居た。いつものへらへらした顔で。
「せ、先生、せっ拙者は拙者はとんでもないことを……かってに先生が記憶を戻さないほうがいいとか思いこんで……拙者はっ……」
そんな泣き言は聞かんとばかりに先生は一方的に言った。
「おいおい、遅くまでこんなところに居るから体が冷えてんじゃねぇか。ほら中はいれ」
追い出しといて入れるのもなんだがな。と横島は呟いた。

「ほら、布団用意したし寝るぞもう一時過ぎだしな」
部屋に入るやいなや横島はそう言った。布団にシロは包まりながら先生を見つめた。先生は既に布団の中だ。
「先生……なんで許してくれたんでござるか」
「お前が五月蠅いからだよ。それにいいんだよもう、悪いのは俺だ記憶が戻って分かったんだよ。」
「先生、拙者は……拙者は先生のことがす……」
「うっせぇ。今は聞きたくねぇ」
そう言って文殊を押し付けられた。込められた字は『犬』。
「くぅ〜ん」
シロが不満の声を上げる。当たり前だ告白しようとする直前でこれじゃぁ。そんなシロを抱き寄せあの日のように眠った。

「なぁ、シロ記憶もどってわっかんだけどな。お前が死んだって思ったときアイツ失ったときくらい辛かったんだ」

そんな呟きが、シロの耳に届いたかどうかはわからない。


で、まぁ精霊石はずしてないし、シロがここに留まるなんて誰も知らないわけで。行方不明になったシロのことを言いに来たおキヌは大いに驚くのであった。なにせ裸のシロを横島が、しっかりと抱きしめているのだから。


あとがき

ついに書いてしまった。
というか書き逃げです。

つか初心者です。


△記事頭

▲記事頭

楽天モバイル[UNLIMITが今なら1円] ECナビでポインと Yahoo 楽天 LINEがデータ消費ゼロで月額500円〜!


無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 解約手数料0円【あしたでんき】 海外旅行保険が無料! 海外ホテル