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▽レス始

15禁注意

「再会・・・(GS+?(ネタバレの為))」

さみい (2005-06-15 02:12)

一応、念のため15禁ですが、その必要ないかも。
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『ここ青山葬儀所では1時からGS美神令子さんの告別式が執り行われています。10年前のアシュタロス戦では世界を救い、一昨日、南海村原子力発電所を襲った魔族と刺し違えて亡くなった美神令子さんを偲んで、各界から多くの著名人が駆けつけています。政界からはアシモト元首相、眼鏡田官房長官ら、芸能人では近畿剛一さんなどの姿が見え・・・』
ワイドショーのTVカメラが列を成し、喧しいアナウンサーが実況を行う中、俺は喪主として読経を聞いていた。隣には4歳になったばかりの娘・蛍が祖母の百合子に抱かれ大人しく座っている。まだ幼いので母親の死がよく判っていないだけかも知れない。ひのめちゃんがすすり泣く声が聞こえる。


沖縄で除霊中に第一報を聞いた時は信じられなかった。誤報だと思った。

その日は俺とおキヌちゃん・タマモが沖縄で霊団退治、令子とシロが原子力発電所に出た下級魔族の退治に出向いている。娘は小4になったひのめちゃんと人口幽霊一号が事務所で面倒をみていた。沖縄の除霊先にオカルトGメンから入った連絡に俺は耳を疑った。

"令子とシロはオカルトGメンと共同作戦で、原発をメルトダウンさせようとした下級魔族と戦闘。戦闘中に切断された原発送電線の超高圧電流に令子と魔族が触れ、令子と魔族は完全に燃え尽きた。よって遺体もない"とのこと。

そんなことがある筈ない!何かの間違いに決まっている・・・


しかし現実はもっと冷酷だった。空の棺桶を前に、シロからその時の状況を聞いた俺は泣くしかなかった。何より娘が不憫だった。そして俺に出来たことは娘を抱き締めることだけだった。
人狼の里を出て初めて身近な人の死を目にしたシロは大変取り乱していた。タマモがシロを抱いて落ち着かせようとする。10分以上タマモの胸で泣いて漸く落ち着いたシロがポツリと言った言葉が印象的だった。
「美神殿は死を恐れていなかったでござる」


そういえば一昨日の朝、令子が家で妙なことを言ってたっけ。
「もし万一、もしもだけど、アンタ、アタシが死んだらどうする? アンタのことだから、すぐにでも再婚するんだろうでしょうね?」
「ナ、ナニを言っているんだ? そんな訳ないじゃないか」
「蛍のこともあるから別にいいのよ。でもおキヌちゃんみたいな心の優しい人にしなさいよ!」
「蛍は俺一人で立派に育て上げる。だから再婚なんてする訳ないよ。誓う。俺の心はおまえと蛍だけで一杯さ」
「アリガト。その誓い、忘れないわよ・・・」
令子を抱き締めようとしていたら、蛍が「おトイレ〜!」と騒いで台所にやってきて、この話は中断してしまった。令子は自分の死を予知していたのだろうか。


悲しみが如何に大きくても、仕事を放っておくわけにはいかない。
美神除霊事務所の後継者については美智恵さんの助言でひのめちゃんを新所長にした。勿論、誰も10歳のひのめちゃんに所長業務が出来るとは考えていない。ひのめちゃんがGSになるまでの『美神』ブランドの維持が先決であり、彼女がGSになるまでの間は俺が所長代行として事業運営することになった。おキヌちゃん・タマモは残ってくれた。シロは令子を守れなかったことで自責の念にかられ、人狼の里に帰った。皆で引き留めたが駄目だった。アイツは時間が解決してくれるのを待つしかない。
シロが抜けた穴を埋めるためにおキヌちゃんの友人でタイガーの奥さんの魔理さんがパートで加わり、前のように大規模除霊も受注できるようになった。

令子の49日も無事終わり、相続手続きも概ね完了。どうにか蛍と2人の生活も落ち着いた頃、俺は娘の蛍と六道家の御茶会に呼ばれていた。
「蛍ちゃんに〜日本の〜古い〜伝統を〜体験〜させたいの〜」
冥子ちゃんのお母さんに強引に誘われ、しかたなく俺と蛍は六道家の巨大な門をくぐった。しかし蛍は冥子ちゃんにどこかに連れて行かれ、だだっ広い日本庭園で行われる御茶会にいるのは俺と冥子ちゃんのお母さん、知らないオバサンと、同じくらいの年の和服の女性の4人だけ。

・・
嵌められた。

「横島くん〜、この方〜どうかしら〜」
冥子ちゃんのお母さんが着物姿の女性を紹介する。漸く着物の女性が顔を上げる。
「タダオ、久しぶりやね〜」
「ドチラサマですか?」
着物の女性はハンドバッグから大事そうに阪神の野球帽を取り出す。子供用だ。そういえば引越の時に夏子にプレゼントした(させられた)っけな・・・。
(え、目の前におるやんか!)
「な、夏子やないか!」
「知り合いだったら〜話が〜とっても〜早いわ〜。横島く〜ん、ぜひ〜この方と〜再婚すべきよ〜」
気が付いたら俺は夏子とお見合いをしていた。

夏子は大阪で教員をしていて俺と同じ頃に結婚したが昨年旦那さんと死別、再婚話を知り合いの六道女学院の教員から持ち込まれたようだ。最初断るつもりだったが、名前と写真を見せられて俺だと判り、大阪からはるばる見合いに来たらしい。夏子には子供は居ない。俺には娘の蛍がいることを言ったら、夏子は
「タダオの子やろ。いい子に決まっとるやないか。心配することあらへん」
と言ってくれた。
「夏子〜!」
俺は夏子と再婚することにした。

後で聞いた話では蛍は見合いの間、冥子ちゃんとカルタをしていた。蛍は「冥子おばちゃんに勝った〜!」と鼻高々だった。
「負けた時に式神ちゃんたち暴走しちゃったけど、冥子おばちゃんのスカートの中にいたら平気だったよ」。
冥子ちゃん、ひょっとして本気だして負けたんか。意外な安全地帯(?)と4歳でカルタが出来る我が子の賢さには驚いた。


夏子は2学期から六道で英語を教えることになっている。結婚式はお互い再婚なので極めて地味に、7月下旬に唐巣神父の教会で親族やごく親しい者だけで行った。新婚旅行は北海道。理由は蛍の「クマさんやサンポするペンギンさん見たい!」との一言だった。この旅行で蛍は夏子をママと認めてくれた。


「「あ〜疲れた」」
俺と夏子の声が重なる。休暇を1日残し早めに新婚旅行から戻った俺は、おねむになった蛍に何とかパジャマを着させ子供部屋で寝かしつける。その後自分もパジャマに着替えてリビングに戻ると、リビングには夏子が居た。お茶を沸かしたりお風呂のお湯をはったりしていたようだ。
「夏子、蛍は寝たよ。これからは2人だけの時間だ・・・」
「タダオ・・・」
俺は夏子にキスをしながら服を脱がせる。夏子のシルクのように白くきめ細かな肌が上気して桜色に染まる。真っ裸にしてから"お姫様だっこ"で寝室に連れて行く。
そっとダブルベッドの上に夏子を寝かすと、俺は夏子に飛びかかった。

熱烈なキスをしていると、夏子が急に驚いた顔をして天井を指さした。俺が舌を入れているので何を言っているのかよく判らない。俺は夏子を抱き締めながらベッドに転がった。
(何を驚いていたんや?・・・  !!)
俺も驚いた。心臓が止まるかと思った。何故なら天井に令子の幽霊がぶら下がっていたのだから。天井に正座してキツイ目で俺達を睨みながら。


「令子〜。成仏せんかったんか〜。また三途の川の渡し賃を値切ったんか〜!」
「再婚しないって誓ったのはウソだったの!このヤドロク!!」
真っ裸のまま呆然としている夏子を横において猛烈な口喧嘩を始めた俺と令子。
「化けて出るGSなんて初めてみた!祓ったる!」
「何を〜!蛍とアンタのことが気掛かりで彼岸に行けなかったのに、何て言い草よ!それに私は美神令子よ。元丁稚ごときに祓えるわけないじゃない」
「ちょっとアンタ、私のタダオに何言うてんねん?!」
気が付くと夏子が喧嘩に参戦していた。

フツーの人間は霊の言葉を聞くことは出来ない。霊能力がある程度ないと。例外は幽霊演歌歌手のジェームス伝次郎。一方、夏子は霊能力が殆どない。本来だったら霊になった令子の言葉は聞こえない筈だ。しかし令子や俺は伝次郎の歌の先生をしたことがあり、どのようにすれば一般人にも聞こえるか承知している。そう、魂の叫びは全ての人に聞こえるのだ。令子が怒れば怒るほど、夏子にもハッキリ聞こえるというわけだ。


3人で暫く痴話喧嘩をしていると急に寝室のドアが開いた
「おしっこ〜」
蛍がトイレらしい。しかも寝ぼけている。慌てて夏子が裸のまま蛍をトイレに連れて行く。蛍には天井に正座していた令子は見えなかったようだ。
「あのまま蛍を放って喧嘩を続けるような女だったら祟ってやるところだけど、蛍のことを大事にしてくれているみたいでチョットだけ安心したわ」
「そうやな、夏子って言うんや。俺の小学校の時の同級生だ。」
「それにしても約束破ったらどうなるか判っているんでしょうね」
令子は神通棍を取り出すと俺をシバき始めた。
(幽霊に神通棍でシバかれる史上初のGSになるとは・・・)
夏子が蛍を寝かしつけ寝室に戻って来たとき、俺は血だらけになって床の上に一人寝ていた。新婚なのに・・・。


翌朝。エプロン姿も初々しい夏子が俺を起こす。俺はいつの間にかベッドで寝ていた。夏子が介抱してくれたのだろう。ケガにも包帯が巻かれている。神通棍でシバかれた程度で包帯が巻かれるのは久しぶりだ。とても新鮮な感動を覚える。令子が居る気配は無い。成仏したとは到底思えないが。

リビングで蛍と3人で朝食をとる。テーブルの上にはトーストとベーコンエッグ、野菜サラダにコーヒー(蛍はミルク)。朝は和食派だった令子ではあり得ないメニューだ。
蛍が夏子に尋ねた。
「ね〜、ゆうべ、なんでパパとママはハダカだったの〜?」
うっかりコーヒーを吹き出しそうになった俺を抑え、夏子が蛍に答える。
「それはね、実はね〜」
[夏子!性教育は早すぎるで〜、蛍はまだ4つやないか!]
霊波で必死に呼びかけるが霊能力がない夏子には通じない。しかたなくブロックサインを出す俺。
「パパもママも着替えてるところだったの。」
ガシャン。
俺はズッコケた。夏子にからかわれたようだ。蛍は夏子の答えに
「ふ〜ん」と言うと、今度は好物と嫌いなもの(ニンジン)が巧妙に混ぜられた野菜サラダと格闘を始めた。蛍には今日も保育園を休ませて、3人でゆっくり近所の公園を散策したりショッピングセンターで買い物したりするつもりだ。一刻も早く本当の一家になるために。


その夜。蛍も寝かしつけ、万事準備万端の俺は寝室のベッドでそわそわしていた。新婚旅行では蛍も一緒に川の字で寝ていたので、この夫婦、実は今晩が初めてである。本来なら昨日が初めてになるはずだったが、令子との痴話喧嘩で終わってしまった。
「夏子〜!まだか〜!?」
寝室のドアが開いた。そこには"俺の"夏子がいた。


《読者様へ:
 以下、さみいのショボい18禁文章は省略させていただきます。
 各自、テキトーに横島と夏子の夜を御想像ください。》


翌朝。夏子と俺はマッパで寝ていた。ニヤケながら昨晩の燃えるような一夜を思い出す。
(あんなことやこんなことや・・・。あれ? 俺の好きなことばかり・・・)
その時夏子が目覚める。
「タダオ、おはようさん」
俺の胸板に手を添えて夏子が言う。
「オハヨ!、夏子奥さん」
俺は優しく答える。布団の中から聴こえる関西弁。ええなぁ、こういう朝。
「あっ、私・・・」
夏子が急に自分の体を確認する。あちこちにあるキスマーク、あそこに残った痕跡・・・。
「自分ヤッタんか?」
「"ヤッタ"って若奥様がはしたないなぁ・・・。そや。夫婦やし」
「私覚えてない。風呂場でシャワー浴びてる時にフッと目の前が暗ろうなって・・・。あっ、またあの女!」
令子が天井に座っていた。

「昨日の忠夫すごかったわ。夏子さん、アンタの体を借りたケド、胸は一回り小さいし、一時はどうしようかと思ったわよ。でも感度もいいし、いい体ね」
「ま、まさか令子。夏子に乗り移ってたんか〜!?」
「そうよ」
「なんて女なの!!」
夏子がありったけのモノを令子に投げつける。ティッシュの箱・目覚まし時計・香水の瓶・枕・しまいには俺を投げ付ける。俺の頭が天井に突き刺った。


どうにか助かった俺は夏子の気が鎮まるまで1時間以上土下座し続けた。ようやく立ち直った夏子とリビングで蛍ともども朝食をとる。
ふと蛍の頭上を見ると、またしても令子が天井に座っていた。蛍の斜め後方。蛍にバレないように、でも蛍のことが気になって仕方がないような令子。
蛍にとっての「ママ」が自分から夏子になったことが悲しいのか、目に涙を浮かべている。夏子も気が付いているようだ。俺達は天井と食卓を交互に見ながら食事をとる。自ずと会話もぎこちなくなった。

「今日は夏子さんが蛍を保育園へ連れて行くのですか?」
「はい、私は蛍を保育園に送ったら、そのまま六道理事長に御挨拶に行ってきます。あなたは今日除霊をするのですか?」
「いいえ、僕の今日の仕事は、品川に立っている高層ビルで発生した霊障の調査だけです。そのため昼頃に家を出ることができます。帰りも早く帰ることができます。」
「それはすばらしいです。私達は一家揃って仲良く夕食をとることが出来ます」
蛍が不思議そうに俺達を見つめる。昨日までは子供の頃のノリそのままの非常にフランクな話振りだったのが、なぜか急に畏まった話し方をしている。というか、これでは中高生くらいの下手な英文和訳そのものだ。

「ね〜、パパ・ママ。だれかお客さんいるの〜?」
蛍が言うと同時に令子の幽霊は消えていた。


夏子が蛍を保育園に連れて行った後、俺は一人リビングテーブルにいた。
「令子、居るんだろ、出てこいよ。 但し天井はやめろよ! クビが痛くなる」
急に前の席に令子が出現する。
「アンタはホイホイ再婚しちゃうし、蛍は完全にあの女に取り込まれちゃうし、やんなっちゃうわ。それでも気を遣って、蛍の前には出なかったのよ!折角懐いたのに私が出てきたら水の泡だって思うから・・・。あ〜あ、化けて出てくるんじゃなかった・・・」
頬づえをついて溜息をつく令子。
「なぁ、令子。俺ってそんなに頼りないか?そういや昨日お前は蛍や俺が心配で出て来た、って言っていたよな・・・」
「まあね・・・」
「何が心残りなんだ?」
「蛍・アンタ・事務所のみんな・シロのこと・ひのめ・結局きちんと和解できなかったパパとのこと・地下シェルターに貯めたお金・高値で売り抜けようとしていた○○放送株・そろそろ円高になりそうだから円転しようと思っていた外貨預金・・・」
延々と続く令子の「心残り」にアタマが痛くなった。
「・・・そりゃ化けて出てくるのも仕方ないな。株や外貨預金は次の機会を見て整理するつもりだ。地下シェルターのお金はどうする?」
「3分の2は蛍に、残りはひのめに渡して。蛍もひのめも20歳になるまでは信託しておいてね。」
いろいろ話し合って、簡単な事はその場で電話で顧問弁護士に依頼して、最後まで残った問題は蛍と俺のことだった。


「再婚そのものはいいのよ。蛍には母親が必要。私もママが『死んで』からいろいろあったのはアナタも知っているでしょ。悔しいけど夏子さんもいい人よ。でもね〜。理屈では判っていてもね〜。」
天性の天邪鬼である令子のことだ、いつまでも居座るんだろうなぁ。目の前で愚痴りながら溜息をつく令子をよそに、俺は事務所に電話した。
「はい、美神除霊事務所です。」
ひどく明るい声の営業トークで人口幽霊一号が電話に出た。
「横島だ。おキヌちゃん呼んでくれ」
「はい、少々お待ちください。」
テープが流れる。
「除霊から悪魔退治まで美神除霊事務所は皆様に安心をお届けします。新所長美神ひのめの下、私達は事務所一丸となって取り組みます。・・・」
現在、GS・除霊事務所では「除霊を頼む意志がある」人以外に対して広告を打つことができない。広告は電話帳や自社ホームページしか認められていない。もし広く一般にCMやCFを流した場合、言霊を操作するなど不適正な操作がされる懸念があるためのGS協会の自主規制である。一方、電話の案内テープは「除霊を頼む意志がある」人が掛けると思われるので、美神除霊事務所でも高度にオカルト操作された案内テープを流している。美智恵さんが吹き込んだアナウンスは"ここ以外には頼めない"ように言霊が操作され、バックにはおキヌちゃんのネクロの笛の音が流れている。なおテープにひのめちゃんの名が流れるのは将来のことを考えてのことだ。十年後にひのめちゃんに事務所を譲った時には、ひのめちゃんは業界トップの美神除霊事務所所長として抜群の知名度を持っているはずだ。たとえ20歳になったばかりの娘であっても。
テープは続く。
「・・・美神ひのめ所長の抜群の霊能「はい、おキヌです。」」
「おキヌちゃん、用意しておいてほしいものがあるんだ。それから今から言うものを大急ぎでタマモに買いに行かせてくれ。それと午後の品川の調査は明日に延期だ。俺は令子とこれから事務所に行くよ。」
「えっ、令子さん?!」
「そうだ、化けて出てきたんだ」
俺はおキヌちゃんにはすべてを話した。


「さあ、令子。事務所へ行こう!」
「そうね、おキヌちゃんやタマモにも会いたいしね」
俺達はマンションを出て美神除霊事務所に向かう。

事務所に着いた俺達に、人口幽霊が声を掛けた。
「美神オーナーではないですか?!」
「人口幽霊、久し振りね。私も幽霊になっちゃった」
「は、はい。承知しました」

玄関のドアを開けると、おキヌちゃん・タマモが立っていた。
「横島さんから聞きました。美神さん、また会えましたね。幽霊の生活もいいものですよ」
おキヌちゃんが令子に抱きつく。
「美神、幽霊の気分はどう?」
タマモも令子に挨拶する。クールを装っていても、身内のことではクールになれないタマモが呟く
「早くバカ犬にも連絡しなきゃ!」
タマモは携帯電話を取り出していた。タマモの食い逃げを庇ってくれたあの駐在さんが取り次いでくれることだろう。

美神除霊事務所所長室。マホガニーの机に置かれたデスクマットにはひのめが描いた絵が挟まっていた。題は「家族」。公彦・美智恵・令子・ひのめの4人と、俺と蛍・おキヌちゃんにシロ・タマモ・鈴女が並んでいる。
「この絵は?」令子が尋ねる
「ひのめちゃんが描いたんですよ。所長としての『初仕事』です。ひのめちゃんは所長ですが、美神さんの代わりではなく、ひのめちゃんらしく皆をまとめてくれればいいって横島さんが描かせたんですよ」
おキヌちゃんがお茶を入れながら説明する。
「ひのめらしく・・・か。確かにあの子じゃ忠夫をシバいたりするのは無理ね。でもこれからの美神除霊事務所にはこれが一番かも知れないわね。事務所の先行きが心配だったけど杞憂だったみたい」
令子はほっとした様子だったが、どこか面白くない顔をしている。

「それとこれがタマモちゃんに買ってきてもらった織姫さまのボディコンです。ちょっと派手かもしれませんがエクトプラズム製なので幽霊でも着られますよ。」
おキヌちゃんが令子に紙包みを手渡す。驚いた令子だったが、おキヌちゃんに
「だって美神さん、亡くなったときの格好じゃないですか」
と言われ、改めて自分の服装をチェックしハッとする。あちこち破け血痕も生々しい。腹には大きな穴。確かにこの格好は拙い。
「おキヌちゃん、ありがとう。この格好で蛍の前に出なくて良かったわ」
そういって着替えに洗面所へ向かった。洗面所で着替えてきた令子はかつての美神令子だった。横島は10年前を思い出し、目頭が熱くなった。
(このボディコンに惑わされたんやな〜)
勿論横島に後悔は無い。美神の丁稚としての日々・おキヌちゃんやみんなとの出会い・そしてルシオラとの出会いと別れ。すべては美神除霊事務所のバイトになってからのものだ。おキヌちゃんたちと共に俺を支えてくれた令子。今も愛している。夏子を愛しているのと同様に。


「おねーちゃん!」
「令子!」
突然、玄関で声がした。ひのめちゃんと美智恵さんだ。おキヌちゃんが連絡してくれたのだろう。
「ひのめ!ママ!」
令子は二人に抱きついた、いや抱きついたつもりだったが、スルッと通り抜けてしまう。
おキヌちゃんが助言する。
「美神さん、霊の時はちょっとでも油断するとそうなっちゃうんですよ。霊力を体からこんな感じで出して・・・」
幽霊歴300年だったおキヌちゃんがわざわざ幽体離脱して令子に実在化の方法を伝授する。そういえばおキヌちゃんは幽霊の時に押し倒せたよな〜。掃除や料理・買い物も出来たし。それでいて壁抜けも出来た。
教わる前でも神通棍は使えた令子は要領よくコツを覚えたようで、既にひのめちゃんと握手をしている。
「じゃあ、もう一回」
令子はひのめちゃんと美智恵さんに懇願する。面白がっているひのめちゃんと呆れた面持ちで娘につきあう美智恵さん。
「おねーちゃん!」
「令子!」
「ひのめ!ママ!」
令子は二人に抱きついた。感動の再会(?)におキヌちゃんも目に涙を浮かべている。
「美神の妙に拘るところは相変わらずね」とはギャラリーのタマモの言葉。確かに・・・。


「令子、何で死んだの・・・」
感動の再会シーンもそこそこに、美智恵さんが令子に尋ねる。
(((美智恵さんもただの母親だな〜(なんですね))))
皆がそう思っていると、美智恵さんの口からとんでもない言葉が続いた。
「ジークさんの話だとアナタが倒した魔族は魔界で文官だったって言うじゃない!いわばヒャクメさまと刺し違えたようなモノよ。間違っても刺し違えるような相手じゃないわ。どうして死んだの?」
俺も含め周囲は皆フリーズしている。世間体?美神家の誇り?これじゃ令子が可哀想だ。
「お義母さん、それはないでしょう・・・」
「いいえ、この際だからハッキリ言っておくわ。あんな魔族相手に令子が死ぬ訳ないわ。」
確かにそうだ。俺も何度そう思ったことか...。俺は改めて令子を見つめる。
・・・・・
生き霊じゃないか!

「令子!オマエ生き霊なんじゃないか?」
「「「え"っ?!」」」
廻りはGS(及びGSのタマゴ)だらけ。四方八方から霊視される令子も戸惑っていた。
「そうですね〜。体どこに置いて来たんですか、美神さん?」
おキヌちゃんが不思議がっている。
「たしかに霊魂の色・艶といい、生き霊みたいね〜。」
タマモも同意する。
「言われてみれば、ワタシもそんな感じしてきた・・・」
令子が頷く。
「だから最初っから言ってるでしょ。いつ気が付くかと思ってたら忠夫さんから言われるまで気が付かないなんて!」
美智恵さんはカンカンに怒っている。

「どこに体忘れてきたんや〜」
俺は泣きながらツッコミを入れていた。10年以上の付き合いの相方に。


すぐに妙神山に連絡、小竜姫さまやヒャクメ・パピリオ・ジークも加わり三界で大捜索が実施され、令子の体は間もなく見つかった。300年前の人骨温泉で。
どうやら超高圧電流に触れた時に時間移動したらしい。霊魂だけを現在に残して・・・。道理で三途の川を渡れないわけだ。魔族は死津喪比女に勝手に殺られてくれた。抜け殻になった令子の体は道士・女華姫夫妻が発見保護してくれていた。神魔界最高指導者様の許可を得て令子の体を引取りに行ったヒャクメとおキヌちゃん。おキヌちゃんは親友と再会できて二重に嬉しかったそうだ。

夏子と蛍、人狼の里から走って駆けつけてきたシロを含め皆が見守る中、ヒャクメとおキヌちゃんが持ち帰ったばかりの体に、令子の霊を文珠で強制的に戻す。
「ママ!」「美神殿〜!」「おね〜ちゃん!」
感動的な再会シーンが続く。が、それを壊したのもやはり令子だった。
「やっぱり自分の体が一番ね!胸がないと何かソワソワしちゃう」
「二度と私の体使わんでくれる!」
夏子が令子にクギをさす。

さらに美智恵さんが追い打ちをかける。
「でも令子、横島くんの奥さんの座には戻れないわよ。横島くん再婚しちゃったし」
「それが問題よね。でも蛍の養育権は絶対手放さないわ。辣腕弁護士の1ダースも雇えばどうにかなるかしら?」
「令子、遺産相続が完了しているから、所長でも無いアンタにそんなカネ無いわよ」
「えっ?」
令子は完全に状況を理解したようだ。
「ひのめ、お姉ちゃんにお金貸して!」
小学生の妹から借りようとする令子。
「もともとお姉ちゃんのお金だから別にいいんだけど、しんたくしてあるから私も自由につかえないんだよ〜。あと10年たったらいいよ!」
とは賢い小学生のひのめちゃん。
「蛍、ママにお金貸しなさい!」
「なつこママ! れーこママこわいよ〜!」
蛍が夏子の後ろにかくれる。


結局、俺には「奥さん」が二人いる。夏子は蛍のために令子を受け入れてくれた。令子の立場は法律的には曖昧なままだが、事情を知る周囲は俺達を3人一組の夫婦として暖かく見守ってくれている。事務所にも復帰し、再び所長の座に就いている。

蛍もママが二人に増えたと喜んでくれている。俺も奥さんが2人で嬉しい。義務も大変だけど。
最近、夏子と令子はすごく気が合うようになってきた。連携して徐々に力をつける奥さんズに以前にも増して守勢気味だ。それでも俺は満足している。最高の嫁さんが二人もいて最高だ、と。


(完結)
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さみいです。
初めて18禁に挑戦しましたが無理でした。15禁の必要もないかも?

なお今回のお話は「居酒屋ゆうれい」味です(94年の作品がお薦めです。山口智子と室井滋・萩原健一、皆面白かったです)。

なお、これをきっかけに横島ハーレムが誕生したりはしません・・・。

最後まで読んで頂いてありがとうございました。


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