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▽レス始

「私的名シーンGS再現劇場 銀河英雄伝説版3(GS+銀英伝)」

テルヨシ (2005-06-13 21:16)

このSSは銀河英雄伝説のあるシーンを参考に書いています。
ネタばれにはなっていないと思いますが、これから銀河英雄伝説を読もう&見ようという方はお気をつけ下さい。

また、銀河英雄伝説ファンの方、笑って許してください。


街を一人の青年が走っている。
常人離れしたのその速さに周りのものは驚いているが、青年はそんな事には脇目もふらずただひたすらに走り続ける。


後に冷静になった時、何故『転』『移』と刻んだ文珠を使わなかったのか? と考えた。
そんな事を思うつかないくらい慌てていたのだろうと今になって思う。
だがそこまで慌てていたんだったら、文珠の制御に失敗する可能性は高い。
これはこれで正解だったのだろう。


そしてとある建物にたどり着くとノックもせずに玄関のドアを開け中へと入り問いかける。

「人工幽霊一号、美神さんは!?」
『今は屋上で外の風に当たっています』
「そうか」

そう言いながら横島の体はすでに屋上に向かい始めていた。
『美神オーナーを頼みます、横島さん』
人工幽霊一号の声を背中で受け、息を整えながら横島は事の始まりを思い出していた。


私的名シーンGS再現劇場 銀河英雄伝説版3


それは久々のオフを家でごろごろして横島が過ごしていた、ある昼下がりの事。
突然電話が鳴り始めた。


「何だ、せっかくの休日に」
そう呟きながら受話器をとり、応対する。

「もしもし横島ですが?」
『横島さんですか? 人工幽霊一号です』
「お前が電話してくるなんて珍しいな。なんかあったのか?」
『それが…』
人工幽霊一号は一拍置いた後話を続ける。


『美神オーナーのご両親が帰国の途中でハイジャックに巻き込まれたと連絡がありまして…』
「何っ!? で、二人とも無事なのか!」
『それがお二人の活躍により犯人グループは取り押さえられ、乗っていた飛行機も無事なのですが…』
そこまで語ると人工幽霊一号は言葉を濁す。


人工幽霊一号のその様子に何かを感じ取ったのか横島は
「まさか二人の身に何かあったのか!?」
と質問する。

『…分かりません。犯人を取り押さえる際どちらかが撃たれたとしか情報が入ってこないんです』
隊長の事だ、滅多な事は無いだろう。
そう考える横島だが不安は消えない。


「それで美神さんは?」
『気丈にされてはいますが…。横島さん、こちらに来ていただけませんか? 私には何も出来ませんから』
そう話す人工幽霊一号には何も出来ない悔しさ、歯がゆさが滲んでいた。
間の悪い事におキヌ、タマモ、シロの三人はそれぞれ用事があり出かけている。
人工幽霊一号が横島に電話したのもそんな理由からでもあった。


「そんな事無い。現に俺に連絡を入れてくれたじゃないか。
ともかくすぐそっちに行く。それまで美神さんを頼むぞ」
『分かりました。お願いします』
そんな人工幽霊一号を励まし、横島はすぐに事務所に向かった。


横島は屋上への扉を開き、美神の姿を探した。
そして見つけた。

屋上の手すりにもたれかかり空を見ている美神。
横島はそんな美神の後姿が何時に無く弱弱しく見えた。


横島がどう声をかけようかと悩んでいると、美神の方から声をかけてきた。
「横島クンどうしたの?」
「人工幽霊一号から連絡を受けまして…」
人工幽霊一号の無断でしたことに怒るでもなく、感謝するでもなく美神は
「そう…」
と呟いたきり黙りこんだ。


二人の間に沈黙が横たわる。


どの位時間が経ったであろうか。
美神が閉ざされていた口を開く。

「横島クン」
「はい」
「大丈夫よね。何せあのママがいるんですもの」

自分もそうは思うが、ここで無責任に『大丈夫です』というほど子供ではない横島は、
「隊長が一緒にいる以上滅多な事は無いと思いますが」
と答えるしかなかった。

「そうね。まだひのめも小さいのだからママに万が一のことなんて無いわよね。
それに私の復讐も終わってないしね」
「復讐ですか?」
仲のいい美神親娘には似つかわしくない言葉に横島は聞き返す。

「そうよ。アシュタロスの事件のことを知っていながら私には何も言わずオヤジと二人で仲良く暮らしていたんですもの」
それが美神にも仕方のない事だとは分かっていても、納得しがたい部分もあるのだろう。

美神は続ける。
「だから私が産んだ赤ん坊を抱きながら『ママの孫よ、おばあちゃん』って言ってやるつもりなの。それがママには一番効果的な復讐なのよ…」
そこまで言って美神は横島の方を向いた。


美神は特に泣いている訳でもなく、何時もと同じ表情だったといえるだろう。
しかし横島はその顔を見て、美神がまだ二十歳そこそこの、自分と大差ない事を急に自覚した。


そして横島は美神を抱きしめた。
それは何時もの煩悩全開のものではなく、自然と行動したものだからだろうか?
美神は何時もの過激な反応を示すことなくそのまま抱きしめられた。


「美神さん」
「何?」
「俺の前では無理しなくってもいいっスよ」
「べ、別に無理なんか…」
「何年美神さんと一緒にいると思っているんスか。嘘なんかすぐに分かりますよ」
「……」
「何も出来ないかもしれませんが胸を貸すぐらいは出来ますよ」
ちょっとくさいッスかね? そういって横島は美神に微笑んだ。

「そうね、横島クンのクセにかっこつけすぎね」
そう言うと美神は横島の胸に自分の顔をうずめた。
小さな、本当に小さな声で
「ママ、オヤジ…」
と呟いているのが聞こえる。

横島はそれ以上何も言うことなくただ美神の頭をなで続けた。


しばらくすると落ち着いてきたのか、
「ゴメンね、横島クン。服濡らしちゃったわね」
と言いながら横島から離れた。

「すぐ乾きますよ。それに美人の為ならこれくらい何でもないっスよ」
そう冗談めかして答える横島に何を思ったのか美神は真剣な口調で問いかけた。

「ね、横島クン」
「何ですか、美神さん」
「私の事好き? だったらうなずかないではっきり言って」
ここで横島は選択を誤らなかった。

何時ものように、
「美神さん、ボクはも〜〜〜!!」
と言いながら飛び掛らなかった。

「好きです、美神さん」
その答えを聞いた美神は横島が事務所を訪れてから初めて笑った。

「ゴーストスイーパーって素敵ね」
「どうしてです?」
「スリルと大金、そして恋人まで手に入るんだから。普通のOLじゃこうはいかないわ」
横島は笑いながら同意し、二人は再び抱き合った。

そしてこの日は二人にとって忘れえぬ日になり、同時に千年越しの想いが遂げられたのであった。


二人が屋上から応接間に戻ると同時に電話が鳴り始めた。
緊張した面持ちで美神が受話器をとる。
「もしもし美神事務所ですが?」
『令子? 私よ』
「ママ!? 無事だったの? 怪我は? オヤジは!?」
『二人とも無事よ。ゴメンね連絡が遅れて。テロリストの引渡しとか事後処理に追われて電話もする暇がなかったのよ』
「でも撃たれたんじゃなかったの?」
不たちが無事だと分かったからか、美神がもっともな疑問を聞いてみた。
美神も隣にいて二人の会話を聞いている横島もその点が気になるようだ。

『ああ、確かにテロリストを取り押さえる際に公彦さんが撃たれたわ。
でも横島クンに貰っていた文珠のおかげで怪我ひとつなしよ』
そこで二人は美智恵に頼まれ『能』『力』『封』『印』と刻んだ文珠を渡す際に『防』と刻んだ文珠もお守り代わりに渡したのを思い出した。


この後もうしばらくしたら事務所に顔を出せそうだからという事で、一言二言話し合った美神親子は電話による会話を終わりにした。

受話器を置くと美神は隣にいた横島に笑いかける。
もっとも先ほどのものと違い怖いくらいに迫力のあるものであったが。

「横島クン。ママに文珠を渡していた事なんで思い出さなかったの?」
「そ、そんなことあの状況下で思い出せるわけないっスよ!? 
それに美神さんだって忘れていたじゃないっスか!?」
横島のもっともな反論に美神は
「う、うるさいわね。私に口答えする気!?」
「で、でも…」

なおも言いたそうする横島に対し美神は実力行使に出た。
横島にもうこれ以上反論できないよう口封じをしたのである。
自らの口を使って文字道理に。


そんなこんなで二人がいちゃこいていると美智恵と公彦が到着した。

家族の邪魔をしてもなんだし、ということで横島は事務所を後にしようとした。
その際美智恵に呼び止られた。

「今日は色々悪かったわね、横島クン」
「いえ、何もしてないっスよ」
「いてくれるだけで力になるってこともあるのよ。それが今日恋人になった人ならなおさらね」
いきなりそんな事を言われた横島は面食らってしまう。

「な、なんで…」
「だって横島クン口紅がついてるもの、唇の右端に」
「えっ…」
慌てて唇に手を当てる横島。
手を見やると何も付いていなかった。

「隊長…」
「ちゃんと儀式は済ませたのね。けっこうけっこう」
「人が悪いっスよ隊長」
「恋人が口紅をしているかどうかも知らない方が悪いのよ、横島クン」
「これからは知るようにします」
「そうした方が良いわね」
悪戯っぽく笑う美智恵。

そうして横島はもう一度別れの挨拶をし、事務所を後にした。

ゆえにこれから起こった事件にとりあえずは巻き込まれなかったのである。
横島が立ち去った事務所では美神が両親(特に美智恵)から横島についてあれこれ聞かれたのである。


「昨日まではそんなそぶりはなかったわよね。今日一体ナニがあったのかしら?」
「そ、それは…」
そんなこんなで長かった一日も終わろうとしていた。


追記

両親に根掘り葉掘り追及された美神は、翌日そのイライラ&気恥ずかしさを横島にぶつけた。

ただそのぶつけ方が今まで通りの折檻だったのか、はたまた昨日と同じような行為だったのかは二人しか知らない事である。


が、
『オーナーも可愛くなったものですね』
とはその一部始終を知る人工幽霊一号の弁である。


あとがき

久しぶりになるSS投下、いかがだったでしょうか?

実生活でそこそこ忙しかったのもあるんですが、ハリーポッターSS&イラスト&マンガにはまりまして読みふけってました。
ドリームものからロンハー、ハリルナ。
それのおかげで久々に原作五巻を読み直したり。
いや〜、面白いSSというのはジャンルを問わずいいものですね。


さて内容の方ですが銀英伝ファンなら言わずともお分かりでしょうが十巻のユリアンとカリンのカップル誕生の瞬間が元ネタです。
と同時に私が初めて書く横島×美神SSですね。


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