注)この作品の横島の性格は変わっています。原作通りの性格の横島をお求めの方には不快かもしれません。
<美神令子>
「じゃあ、今日はお願いね、横島君」
「はい、美神さん」
後ろの少年が答える。青のジーパン、ジージャンに赤いバンダナを額に巻きつけた、十六,七歳くらいの少年だ。
彼は横島忠夫。私の師である唐巣神父の知人の弟子で、今は先生の手伝いとして修行も兼ねて彼のところに所属している。正式に弟子になっている訳ではないらしいが、先生に霊能を指導してもらっているらしく、私の弟弟子と言えなくもない。
「ここよ」
今回の目的地に着いた。いかにもな雰囲気が漂う、寂れた洋館だ。
コブラを脇に止め、荷物を横島君に渡す。彼はあっさり持っているが、あれの重量は四十キロ近くある。
「何ていうか、いかにも出てきそうな雰囲気っすね」
「まあね。ここは取り壊そうとしてから三十年もこのままだから」
「てことは、結構厄介な悪霊ってわけっすね」
「ええ、今まで何人ものGSがやられてるわ。そこで私と横島君の出番ってわけ。依頼料は回り回って五億!!絶対にヘマしないでよ」
「り、了解っす」
あの時の値上げ交渉を思い出して頬が緩み、口元が吊り上る。その顔を見た横島君の表情が少し引きつる。失礼な・・・・・・
門を開け、中に入る。ドアノブに手をかけようとした瞬間、私の霊感が反応する。
「………ち………れ。立ち去れ―――――ッ!!ここがこの鬼ち「やかましい!」ぶべらっ!?」
飛び出してきた悪霊を殴りつける。
そのまま悪霊が解けるように消えていく。
「逃げたっすね」
「ええ、中に入るわよ」
そう言って洋館の中に足を踏み入れた。
GS横島 剣製の魔術使い 第一話
鬼塚畜三郎 享年三十二歳
残忍非道で犯罪組織のボスだったが部下の裏切りによって、殺された男だ。
館内での殺人回数は一日平均1.45人。その中には自分の部下も含まれており、気に入らないから、と言う理由で殺していたそうだ。そりゃ人望もなくなるし、いつ殺されるかと戦々恐々としていた部下に殺されても別に不思議ではない。
鬼塚邸の居間
屋敷に入った私達は鬼塚の霊をおびき寄せるために降霊術の準備をし、ターゲットの霊を呼び出そうとしている。 横島君はビデオ撮影担当だ。
「我が名は美神令子。この館に棲む者よ、何故死してなお、現をさ迷うか?降り来たりて我に告げよ!」
「んぐおーっ!! なめとったら――――あべしっ!?」
「五月蝿いと言っているだろうが!」
横島君の拳が貫かない程度に顔面に突き刺さり、鬼塚が悶絶する。早速スイッチが入ったみたいね。
倒れこんでいた鬼塚を遠慮なく踏み、グリグリと捻りを入れる。
「あんた、日本語を喋りなさい。日本語を」
「おんどれワシを誰やと思ってけつかんどんねん! 泣く子も黙る鬼塚――」
「その残りカスだろうが。何を偉そうに」
横島君が吐き捨てるように言い放つ。今の彼は男の悪霊、特に生前外道だった相手には一切の慈悲の心はない。
「畜生ー!」
鬼塚は涙を流しながら、消えた。こうなっては迂闊に探索は出来ない。
「逃げたわね。相手が何か企んでいるかもしれないから、結界を張って様子を見ましょう。長期戦になりそうだわ」
肩を竦める。
「俺が<視>てみましょうか? 美神さん」
あ、忘れてた。こんな時のために彼を借りてきたんだった。
「じゃあお願いね、横島君」
彼を先生から借りてきた最大の理由。それは非常に強力かつ特殊な霊視能力。
対象の構造を解析し、ある時は悪霊や妖怪の弱点を、ある時は隠し扉などの発見と、非常に便利な能力だ。
その力は、私自ら彼をスカウトした位だ。あっさり断られたが。むぅ、この私が自給四百円も出すって言うのに何が不満なのよ・・・・・・。
結局、彼のレンタル料は依頼料の一パーセントを先生の教会に寄付することで落ち着いた。その間には壮絶な交渉合戦があった事を追記する。
ちなみに、以前依頼料を寄付(支払い)に行った所、「おお主よ、感謝します。美神君が更正なさいました。主よ、私の祈りが届いたのですね・・・」と滂沱の如く涙を流しながら祈り始めたのを見て、怒るとか呆れるのを通り越して少し引いた。
トレース・オン
「同調―――開始」
目を閉じ、床に右手を付きながら呟く。そのままの姿勢で動かぬこと三十秒。
「そこの階段の踊り場の壁に隠し扉があります。ヤツもそこに隠れてますんで気をつけて下さい」
「でかしたわ横島君!」
立ち上がりながら答える彼に称賛の言葉を贈りながら、装備を整え、彼の案内の元、その場へ向かう。そこには横島君に顔面を殴られて少し変形した鬼塚畜三郎がへばり付いていた。
「ほほーう、ここに何かあるわけね」
「な、何もないわい、開けるなー!?」
私の言葉に鬼塚が声を荒げる。いかにもここに何かありますって反応よね。
「スイッチめっけ♪」
「や、やめろーーーーーーーーーー!!!!!」
ポチっとな
ゴゴゴゴゴと重低音が響きながら隠し扉が開かれる。
部屋は埃っぽい匂いが充満していた。
中には大量のノートが本棚にしまってある。
「やめろーーー見るなーーーーーぷぎゅるっ!?」
突進してきた鬼塚を神通根でしばいて動けなくすると、本棚に閉まってあるノートを手にとった。
私達はそのノートを次々と読んでいく。そのあまりにもあまりにもな内容に、私は笑いをこらえるのに精一杯だ。
『あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ーーーーー』
馬鹿だこいつ。本物の馬鹿だ。その一言を本人(?)に伝えてやろうと思ったら、横島君がノートを閉じ、そっと鬼塚に向けた。それは実に優しい笑顔で――――
「――――――――――――ハ」
わら
鼻で嘲笑った。
『ウ、ウオオオオオオオオオ!?』
てっぺんから一気に底に突き落とされた事により、ショックで昇天していく鬼塚。その断末魔の叫びは、絶望した者の慟哭のように聞こえる。
うわ、むごい。私がやろうとしたことの何倍も。
「さて、おつかれさまっす美神さん」
スイッチが切れ、元に戻った横島君。
「え、ええ。お疲れ、横島君」
実際に神父から聞いてはいたけど、ここまでギャップがあると思わなかった。
二重人格でもないのに普段の姿と除霊時の性格の違い。
そして大した霊力がないのに異常なまでの霊視力。
コブラに荷物を仕舞っている横島君を私は興味深く見ていた。
あとがき
前回あとがきを書くのを忘れてたので、読んでくださった方々はじめまして。
GS横島の第一話です。
一応、この物語は火災によって家族を失い、少々性格の変わった横島の物語です。
プロローグのみではわかりずらいですが。
書き方は試行錯誤中なので結構読みずらいかも知れません。
某様>アドバイス有り難うございます。何かございましたら今後ともよろしくお願 いします。
PO様>ありがとうございます。遅筆なのでいつまで掛かるかわかりませんが、長 い目で見てくださるとありがたいです。
L様>私としてはL様のも見てみたいので、書いて下さるとありがたいです。
MAGIふぁ様>プロローグではわからないかと思いますが、一応GSベースなの で。