――――――――――身体は剣で出来ている
――――――――――血潮は鉄で、心は硝子
――――――――――幾度の戦場を越え不敗
――――――――――ただ一度の敗走もなく
――――――――――ただの一度も理解されない
――――――――――彼の者はここに一人、剣の丘で勝利に酔う
――――――――――故に生涯に意味はなく
――――――――――この身体は、きっと剣で出来ていた
気が付けば、真っ赤に染まる世界の中を、ただひたすら歩いていた。
空は黄昏。大地には炎が広がり、足元には自分が歩いていた痕跡となる赤い液体―――自分の血。
世界はただ赤く、誰かに助けを求めようにも誰も見つからない。痕跡すらない。
視界が霞み始め、意識が朦朧とする。その原因が疲労なのか酸素の欠乏なのか、それとも出血多量故のものなのか・・・・・・。
それでも助かるために、生きてこの地獄から抜け出すために、
歩く。
歩く。
歩く。
そして――――――倒れた。
起き上がろうと手足に力を込めるが、全く力が入らない。這ってでも進もうとしたが、ただの徒労に終わってしまう。
「くぅ・・・はあっ!!」
気力を振り絞って仰向けになると、自分の意思に反して瞼が閉じていく。
心の中で希望が次々と潰えてゆく。これが走馬灯なんだな、と思いながら。
自分の短い人生―――ほんの七年分の人生の記憶が次々と浮かんでは消えてゆく。
母が懲りもせず浮気をした父に折檻している記憶。
初恋の少女と初めて会ったときの記憶。
親友の少年達とイタズラをし、自分だけ吊るされた時の記憶。
そして先程見た、赤い服の男が―――――――――黒い“何か”と戦っていた記憶。
瞼が今まで以上に重くなり、意識が泥に沈むように消えてゆく。
ああ、もうだめだ・・・・・・
そうして意識が沈む前に見えたのは、沈む夕日、消えてゆく炎、そして――――――安堵する表情をした、先程戦っていた赤い服の男だった。