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▽レス始

「忘却の魔王(GS)」

枝垂桜 (2005-05-31 00:56)

 どれだけ生きれば悟れるかじゃと?
 知るかい。まぁ、千年生きれば悟れるというもんではないのは確かじゃな。


忘却の魔王


 「ヨーロッパの魔王」そう呼ばれたこともあるのぅ。
 まぁ、もとより根無し草の錬金術師。
 研究・実験・実践が好きなように出来ればどこに居っても良かったわけじゃしなぁ。
 ヨーロッパなんぞに縛られる理由もなかったわけじゃ。
 例外はマリア姫の居られたあの時代あの場所ぐらいのもんじゃった…。
 カオスフライヤーもあったしのう。移動手段はあったわけじゃし、色んなところへ行ったわい。
 その点では「ヨーロッパの」では物足りないのう。かっかっかっ。

 ともかく錬金術師であることが、わしのレゾンデートルであったわけじゃ。
 それ以外の大抵のことは、どうでも良いことじゃった。
 他人の決めた法や常識、倫理に人道…そんなもんはぁ、まとめて地獄炉にポイじゃ。
 わしが従うのは自分の決めたルールだけ、後は自分の能力の限界が自分を制約し規定する。
 それがわしの生き方じゃ。

 そう、自分の能力の限界、じ・ぶ・ん・の・の・う・り・ょ・く・の・げ・ん・か・い
 それには、寿命も含まれる。最大のものと言っても良いじゃろう。

 そもそも、錬金術師とは何者か。
 名乗る者は多かったがのう。ともかく、求めるものは、あるいは、求められるものは人それぞれじゃった。
 「真理」やら「賢者の石」、「ホムンクルス」…そして「金」。
 かっはっはっはぁ。「きん」でも「かね」でも、まぁどちらでも良いわい。どちらもあったしのぉ。

 そして、行動も結果も人それぞれじゃ。
 魔術に近づいた者、科学に近づいたもの、そして、ペテン師。
 「ニュートンは科学者の始祖ではなく、錬金術師の末裔だ」という言葉もあったかのう。
 ともかく何かを「求め、実践する者」が錬金術師じゃとわしは思っとる。

 そして、わしが求め実践したかったのは「わが身でなんでもかんでも」じゃった。
 そこで当時わしが実践したいと思ったいことを実際にやるのにかかる時間を計算してみたんじゃよ。
 答えは「普通の寿命では全く足りない」じゃった。

 そう。ここでさっきの「自分の能力の限界」が出てくるんじゃよ。
 早速、自分の寿命を延ばすことから始めたわい。老化の遅延化は楽勝じゃったよ。
 それから、そこそこ頑丈な身体ものぅ。
 なんといっても「ヨーロッパの魔王」じゃからな。かぁっかっかっか。

 だがのう、「不老不死」は無理じゃった。
 変化の無い「不老不死」ならいくつか思いついた方法もあったんじゃが、それでは意味が無い。
 わしはなんでもかんでも実践し、そこから知識を得なければならない。
 つまり、成長=変化しなければならないんじゃからな。

 しかも、そうそう実験するわけにもいかんかった。なんせ、わが身のことじゃからのう。
 もっとも、試行錯誤することに意味が無いわけでもなかったわい。
 「マリア」はその中でも最高傑作じゃわい。「傑作」という言葉がふさわしくない程にの。
 わしが求める不老不死性もある程度で手に入れることに成功しておるしの。なにより愛娘じゃ。

 ここで、不老不死について考えてみようかのう。
 まずはマリアの不老不死性についてじゃ。
 まず、マリアが成長しとるのは理解してくれるじゃろう。人と接することで成長しとるよ、あの娘は。
 そして、不老であるのは身体がわし謹製のアンドロイドであることで納得してくれるじゃろう。
 不死については大部分を破壊されてもバックアップを残せれば、新しいボディに移植することで「死」を免れる。
 次に不老不死の研究として不完全な部分じゃが、なにより「人」の生死のプロセスと隔絶して存在している不老不死点じゃよ。
 これは、当然マリア自身の欠点ではない。マリアはマリアじゃからな。
 じゃが、わしが不老不死になるための欠点ではある。わしは「人」じゃからな。


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 だが、ヒントにはなった。マリアのバックアップシステム。あれは、ただ記憶を残すだけのものではない。
 マリアの人造霊魂も収納されるようになっている。

 なんともなれば、記憶が霊魂に左右されるのは実証されているからだ。
 なぁに、難しい例を出さんでも他人の霊魂に憑依された人間を思い起こせば良い。

 だが、同時にハードに、人なら脳、マリアならディスクに記憶があるのも事実だ。

 だから霊魂だけでは不十分なのだ。身体だけでは不十分なのだ。

 日本語にはちょうど良い言葉があったな。「魂魄」というやつだ。
 死ねば「魂は天に、魄は地に」。

 人格を再現するには同一の「魄」が必要なのだ。
 マリアならば私が同一のボディを作る。それが同一の「魄」になる。

 「同一でかつ不老のボディを作る」これが私にとって不可能であるわけが無い。
 「クローン」現代科学でも不完全ながら可能なこと。ましてや「ヨーロッパの魔王」の私に出来ぬはずは無い。

 無垢な魂と明晰な若いままでいる私の魄を持った魂魄

 魂を入れ替える技術は完成していた。


 入れ替えたよ。簡単なものだった。そして私は私の錬金術を続けられるというわけだ。


 しかし、「無垢な魂と耄碌しかけた私の魄を持った魂魄」これが残ってしまった。

 魂は無垢とはいえ魄は耄碌しかけているとはいえ膨大な私の知識を持っている。
 合わさった魂魄は身体の記憶にひきずられ、私に似て非なる者になるだろう。
 あるいは、厄介な存在になるやも知れぬ。

 だが、殺すのは忍びない。なにせ元は私の身体だしな。
 マリアに任せよう。遺伝子を残すことを放棄した私の愛娘たるマリア。
 あの娘ならば良いようにしてくれるだろう。
   ・
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   ・
 あれから、600年はたったろうか。
 マリアと彼は今日本に行ったらしい。人に迷惑をかけずいてくれれば良いが。


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 じゃから変わりに、他人の若い身体を頂くんじゃ。まだまだ枯れるつもりは無いからのう。
 行くぞマリア。


  「イエス・ドクター」


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 まぁ、「私」のことだ誰かには迷惑をかけるだろうなぁ・・・。
 頼むぞ、わが愛娘マリア。


おわり。


『あとがき』
2度目のこんにちわ、枝垂桜と申します。
前回の初投稿、思わぬ好意的なレスを頂きましてありがとうございました。
お一つづつにレス返しするのが礼儀なのでしょう。
ですが恐れ多くて、恐れ多くて、ただただ「ありがとうございました<O>。」としか言葉が出ません。

レスを頂いて投稿のうれしさと怖さを知りました。
読んで頂くことを考えて書くということがどれだけ難しいか痛感いたしました。
ご期待に沿ったSSが書けたとは思えませんがご容赦ください。(誰に話しかけている文かも分からないし・・・。)

改めて、御目汚しいたしました、では。


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