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「どりーみんぐ(GS)」

zokuto (2005-05-26 09:03)


 ちょっとむしむしした夏の夜。
 ふと、俺はいつも読んでいる自家発電用の雑誌の広告に目が付いた。

『男の夢! これを飲めばもうモテモテ!』

 写真には気持ち悪いほど筋肉質な男が、てかてかした筋肉を露出させていた。
 無意味にさわやかな笑顔が、その体とのギャップを感じさせる。

 ふぅむ……この彼はどっちかというと、ねーちゃんよりにーちゃんの方が好きになりそうだな。

「……ふ〜ん……ん〜……これ、文珠でも代用出来そうだな」

 万能能力文珠を使えば、この広告のにーちゃんにようになるのも夢じゃないな。
 そういえば、私利私欲のために文珠を使ったことはほとんどないような気がする。
 そりゃまあ、着替えを覗いたりするときにこっそり使ったこともあったけれども、それでもここまで便利な能力を無駄に使ってきたのは否めなかった。

「よっしゃ! いっちょ、男の夢を叶えてやるぜぃ!」

 そういっておれはいそいそと、文珠に文字を入れたのだった。

 

 
 翌日。

「開けなさい、横島君! 今日は大事な仕事があるって言ってたでしょ!」

 どんどん、とドアを叩く音が聞こえた。
 だが、俺はドアを開けない。
 否、ドアを開けられないのだ。

「電話にも出ないから心配して来てみたら……いるじゃない、横島君! ドアを開けなさいッ!」

 美神さんの声は一層大きくなり、ドアを叩く音も大きくなっていく。

 む、むぅ、何か言わねば……だが……。

「う……きょ、今日はちょっと腹の調子が……」
「そうなの? まあそれでも文珠が必要になるかもしれないから、とりあえずドアを開けなさいよ、横島君!」
「え、えーと……その〜、文珠も打ち止めでして……」

 俺は嘘をついた。
 で、でもしょうがないんだ、嘘を付かなきゃ……こんな姿を美神さんに見られたら……。

「ええい、嘘はいいから早く開けなさい! さては……なんか隠してるのね、この横島!」
「う……いや、なんも隠してないっす! ええ、隠してないっすとも」
「もういいわ、合い鍵使うから!」
「え? えぇー!? 合い鍵なんていつの間に……」

 次の瞬間、ドアは開かれた。
 隙間から朝日が溢れ、美神さんのシルエットが浮かび上がってくる。

 ああ、もうこらあかん。

 俺はある意味死を覚悟した。

「……へ!?」

 まるで珍獣を見つけたかのような顔をする美神さん。
 というか、ある意味チン獣だった。

 テヘッ

「イヤァアアアアアアアアアアアアア!!!」

 美神さんはそのまま叫び声を上げてダッシュ。
 俺は追いかけない。

 否ッ! 追いかけられない。

 とほほ……。

 俺の部屋には、俺の体からびみょーんと伸びたアナコンダが這いずり回っており、俺としては身動きが全くとれないのだ。
 手元の雑誌の例の広告を見て、はぁ、と溜息をつく。

『男の夢、かなえます! ペ○ス五センチ増も夢じゃない! これを飲めばもうモテモテ!』

 写真の筋肉質な男が今の俺にとっては嫌味のような長さのますらおを掲げて、さわやかな笑みでこちらを見ているように見えたのだった。

「『長』とか入れるんじゃなかったぁ……」

 自分自身の体長を超越したチン様を見て愚痴が溢れた。


 とほほ……長すぎてパンツに入らないどころか、ズボンを履いても隠しきれないぜ。

 ……猛烈に死にたい……。


「こんの馬鹿がぁぁぁ!!」

 数十分後、アイマスクをしたまま美神さんが戻ってきて、俺の頭を思いっきり叩いた。

 ……う、ついでにちぬちぬも踏んづけられている……。
 まさに、『アレが』踏んだり蹴ったりだなあ。

「なんて馬鹿なことをしてくれたのよッ! 文珠は大切なのよ! こんなくだらないことに……」

 そう怒る美神さん。

 ……俺の心配はしてくれないの?
 そりゃあんまりだよ、美神さんッ。
 男の夢なんだよ?
 ハーレムに並ぶかもしれない、永遠の課題なんだよ?

「ううう……反省してるっす……」

 でも俺は謝った。

 だって、これ以上俺の暴れん『棒』将軍を無神経に踏んづけられたりするのはまっぴらなんだもの。
 人生にはな、卑屈にならねば生きていけないときもあるんや……。
 今は、言いたいことがあってもグッと我慢せな……。

「ったく……早く元に戻しなさいよ」

 美神さんが言った。

 だが、俺としてはそれをどうやればいいのかわからない。


 ふと、ミスターソーセージの先端に力を入れてみた。
 すると、俺を二回転半してぐったり倒れていたモノが、ひょいと鎌首をもたげたのだ。


 ほほう、これは面白い。
 笛を吹いて、レッドスネークカモン、と言えばのっぺらぼうの蛇のできあがりやな。

 俺は、バランス良く力を込めてそれこそ『チン』芸を試してみた。
 しゅるしゅると音を立てて、蛇もしくはノーガード戦法をしているボクサーみたいにふらりふらりと左右に揺れる肉棒を遊ばせる。


「だから、あんたの……そ、それ……がそんな風になったのは文珠のせいでしょ、だったら……」
「ほらほら、見てください、美神さん。 襟巻き〜」
「話を聞け、ボケがぁぁぁぁぁ」
「ぶげらばぁぁぁぁ!!」

 首に一物の生暖かいマフラーを巻き付けた俺は、美神さんの一撃をうけ、二回転半、後に壁に激突。

 ひ、ひどい……いくら美神さんでも酷すぎる……。
 ちょっとしたお茶目やないかい! なんでここまでせなあかんのや……。

「人が見たくもない醜いモノを我慢してやっているっていうのに、その態度は一体何なのよ? あぁ? 切り落とすわよ」

 ぐぐり、ぐりぐりと俺の腹を足で踏みつける美神さん。

 あ、あああ……痛いけど……快感も……。

「あああーーーッ! こ……」
「こ?」
「こ、コールミー、クイーン……」
「あんたがいうなボケぇぇぇぇ!!」
「ノォォォォォォォォォォ!!!」

 踏みつけがレベルアップして、会心の蹴りとなり、俺の腹を直撃した。
 幸いに、俺のながーいお友達が命中することはなかったが、衝撃を受けて深くダメージを負ってしまった。
 ……血液が集中してしまったことも配慮に入れねばなるまい。

「あんたいい加減にしないとね……本当にすり潰しちゃ……きゃッ、何!?」

 美神さんが怒っているのを尻目に、怒張が出てきてコンニチハ。
 肌色にしなびていたゴムみたいなものが、一転、高熱で赤くなった鉄の棒みたいな状態になってしまった。

 俺の首を中心として勢いよく鎌の首が回転し、その後カチンと一直線を保つ。

「は、ははは……ちょっと興奮しちゃったようっす。 あ、でも安心してください、噛みつきませんから」

 美神さんはさっきまで怒り狂っていたのを忘れ、ただぽかんと張りつめた棒を見ているだけ。

 ううむ、そんなに見つめられると俺としてもこれをおさめようがないというかなんというか。
 ますます興奮してしまうなぁ。

「…………」

 沈黙の中に沸々とわき上がるオーラを感じる。
 それは、遙か彼方にいる嵐の遠吠えとも、地表に姿を表していないマグマの対流のうめきにも似ていた。

「……あ、あのー、美神さん?」

 美神さんは『あくまで』無表情で。
 ただ、両腕をぴっと伸ばし、手を思いっきりにぎり、全身がぷるぷると震え、髪の毛が異世界の生き物かのようにゆらりゆらりと揺らしていた。

 あ、ヤベェ……。

 そう思ったが、後の祭りだった。

「横島ぁぁぁぁぁぁ! いっぺん死んだらぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 一瞬だけ、美神さんが暴徒と化し、棒と俺とをぶちのめす前に、美神さんと目が合った。


 あ、あれは美神さんじゃねぇ……鬼神(おにかみ)さんだ……。


 そう、思った。


「やめて……やめてくださいッ、美神さん! ああああああ!!! なんでこんなことを、あうッ!」
「うっさいわねッ! 何がなんだかわかんないけど、とにかくぶちのめさないと気が済まないのよッ! この馬鹿ッ、馬鹿、馬鹿ーーーーーッッッ!!!」

 気が済まない、たったそれだけでスタンピング、スタンピング、スタンピングの嵐到来。
 ハリウッドどころか全米……否、全世界を震撼させるであろう、今世紀最大の話題の巨大な暴力がここにはあった。


 折檻は数十分もの時間続いた。

 終わったときには流石の俺のビッグ息子は血液を主の体に戻し、へなへなとしぼんでくれた。
 ただそれをするために、俺は至る所に青あざを作らねばならなかったのだが。

「う……うう……興奮してすんませんでした、男のさがですんへんでしたーーッ!」
「ええい、寄るな、化け物珍たま野郎!!」

 俺の謝罪の擦り寄りも、美神さんは俺の頬に思いっきりビンタでお返しをしてくれた。 

 ううう、痛いよぅ、痛いよぅ……先端から二十センチあたりのところがじくじく痛むよう……。

「ったく、世話ばっかり焼かせるんだから……文珠を使ってそんなんなったなら、文珠を使えば元に戻すことができるでしょう?」
「あ、そーか、そういう風な見方もありましたね。 いやぁ、気づかなかった」

 完全な盲点だった。

 とゆーか、こんなに長物になってしまったビッグマグナム、否、もはやサイズは戦車砲……に動揺してしまってそこまで脳に血液が回らなかったのだ。
 なにせ、長くなった分、それだけ血液が必要だからな。

「じゃ、戻しますよ……」

 と俺がそう言ったときだった。
 美神さんが合い鍵を使って開けっ放しだったドアが、あの無防備すぎるドアが、かろうじて外界とこの部屋とを遮断していた薄いドアが開かれ、その隙間からお隣さんの顔が。

「横島さーん、おかずを作りすぎてしまったん……で……すけど……」

 手に持たれていた漬け物がかちゃんと音を立てて床に落ちた。
 美神さんと俺は同時に小鳩ちゃんを見、沈黙の三つ巴戦が勃発した。

 俺が美神さんに『なんとかごまかして』とアイコンタクトを送ると、美神さんは沈黙のまなざしで『察しなさいよ』と小鳩ちゃんを諭す。
 しかし、小鳩ちゃんは俺の男の部分に釘付け状態。

 三つ巴戦の最初の敗者は小鳩ちゃんだった。

「ふっ……ふぇぇ……」

 事態を理解出来たのか、はたまた脳の思考能力がオーバーヒートしたのか、どっちだかわからないが、とにかく今は乙女であるならば卒倒しても無理はない状況だということだけはわかったようだ。

「ふぇぇぇぇ……」

 涙がぼろりとこぼれた。
 続いて、涙がぼろぼろこぼれた。
 さらには、涙がぼろぼろぼろっとこぼれた。

 その涙が決して、「ああっ、横島さんたら立派な物を持っているのねっ。 小鳩、感激しちゃいました」という風な意味を表しているとは流石の俺も思わない。

 バム、と音が立てられドアが閉められる。
 大きな泣き声が、段々と遠ざかっていく。

 あたりは再び沈黙に包まれた。

「うっ……ううう……何か大切なものを無くしてしまったような気がする……」

 無くしたものは、それはそれは大切なものだった。
 貞操とか、そういうのに匹敵するようなものだったのだ。

「う……ま、まぁ、そ、そんなに気にすることじゃないわよ」

 美神さんが同情するまなざしで俺を見下ろし、言った。
 だけど、今はその気持ちが逆に痛かった。

 ……死にたい。

「……とにかくッ、今は落ち込んでいる場合じゃないわよ。 文珠を使ってやることやるッ」

 男でしょっ、と美神さんが付け加えた。

 だけど……男だからこそ、今辛いんじゃないか……。

 そう思ったものの、美神さんが折角俺を励ましてくれているというのに、前にすすまないわけにはいかなかった。

「う……文珠、出ろ! 俺の悲しみの結晶として産まれるんだッ!」

 もう半ばヤケクソだった。

「『短』ッ! 命短し変せよ男子ッ!!」

 文珠の光が俺の目の前に広がった。

 

 

 

 

 

 

 
「…………」

 言葉がなかった。
 というか、感情の動きすら無かった。
 ただそこにあったのは空白だけ。

「えーと……き、気にすることはないわよ。 うん、男の価値はそんなもんで左右されないわ……多分」

 多分ってなんなんだよ……。

「……美神さん……」
「……何?」
「俺、死にたいっす……」

 ある意味お約束通り、俺のおっとり刀改めおっとりチムポは短くなった。
 それも極端に。

 俺に残されているのは、亀さんの頭の四分の一ほどがにょっきり股間から生えているだけ。

 ……男として、死にたい……。
 こんな大きさで、どのように美人と事をイタせばいいというのか。
 というか、トイレすらヤバそうな気がする……。

 珍歩が小さい男なんて……胸のない女と同じだッ!

「……ちょっと富士の樹海に行ってきます」
「は、はやまっちゃダメよ! 横島君ッ! なんとか他の方法を考えましょ!」
「嫌だー! 今度また『長』の文珠を使ったら、お約束通り超ロングサイズポテトになって、その後『短』を使うともっと短くなっちゃった、という落ちが待っているんやーー! 今のウチ……せめて男である状態で死なせて欲しいんやーーッ!」
「この……分からず屋ッッッ!!」

 美神さんの張り手が俺の頬を打った。
 もんどり打って尻餅をつく俺。

「男の価値が本当にそんなもので決まると思ってるの!? あんたは甘えているのよ! 辛い現実に目を背け、なんとか逃げだそうとしているだけなのッ! そこで逃げだすことこそが、あんたの男の価値を決めるのよッ!!」

 美神さんのビンタが体に染み、言葉が心に染みた。

 ああ、なんだか目が覚めたような気がするよ……。

「わ、わかりました……美神さん……俺が馬鹿でしたッ!!」
「わかってくれればいいのよ、横島君」
「富士の樹海なんてまどろっこしいことせず、今ここで俺は死んだほうがいいんです。 てゆーか、死ぬべきです!」

 そう言って俺はガス栓に突撃した。
 だが、残念ながら我が家にはガス栓なるものが無かった。

「ええい、こんな現実、『無』かったことにしてしまえばッ!!」

 新たな文珠を産みだし、『無』の文字を込める。

 これで俺の存在そのものが抹消され、俺は男としてのメンツが保たれる……。

「ダメーーーッ! 早まっちゃだめよ、横島君!」

 美神さんがすかさず飛びかかってきた。

「う、やめてください美神さんッ! 俺はもうダメなんだーッ!」
「弱虫ッ! わかったわよ、私が責任を取ってあげるからッ! 一生面倒見てあげるから……死ぬなんてそんなことは止めてー!」
「嘘やーッ! そんなこといってまた飛びついたら、目が覚めて現実の美神ぶん殴られるんやー。 もー誰も信用できへん! 死んでやるーーー!!」

 もみ合いになった。
 いつもは虐げられている俺だけれども、男のメンツにかかわるこの状況で負けを認めるわけにはいかない。

「あっ!」
「今よッ!」

 もみ合いの結果、文珠が手から落ちてしまった。
 それをすかさずキャッチする美神さん。

 ただ、とっくみあいをしている最中にそんな無茶な体勢をとってしまったということは。


 ぶにゅ


 何か嫌な感覚が俺のミニチュアピストルに触れた。

「「あ……」」

 ちょうどその瞬間、文珠のエフェクト光が俺と美神さんを包んだのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 
 数日後。

「あぁん、ピィートォん、待ってぇん」
「ひえええええええ!! 美神さんッ、助けてください! また横島さんがッ!!!」

 おれ……いや、あたしは新しい人生をエンジョイしているわん。
 男だったという嫌な過去は忘れて、新しい生活を楽しんでるのん。

「……あー、横島君。 ピートをからかうのはやめておきなさい」

 美神さんが言ったのん。

「ぶー。 からかうなんて酷いわん。 あたしはいつでもピートには嘘ついてないのにん。 ア・イ・し・て・るのよ、本当にん」
「か、勘弁してくださいよ。 横島さん、エミさんよりもしつこいです……」
「ウフ。 まあしょうがないわねん。 プロポーズしてくれるかどうかの答えは保留にしておいてあげるわねん」

 そう言ってチュと投げキスをプレゼントしてあげたのん。
 そしたらピートったら照れちゃったのか、真っ赤な顔して逃げちゃったのよん。

「うふふ、かわい」

 そう言ってあたしは美神さんにしなだれかかったのん。

「ふふふ。 お前の方がかわいいぞ」

 美神さんはそういってあたしの頭を撫でてくれたのん。
 とっても優しくて、力持ちで、あたしの恋人。

「今日はフランス料理でも食べに行こうか、横島君」

 がっちりした体形で、それでいて美形な美神さんがあたしをぐいっと引き寄せたのん。

「ふふふ、一緒に行きましょ」

 あたしたちは口づけを交わし、夜の街を再び歩き始めたのん。

 

 色々あったけど、あたしは幸せ♪

 

 

 

        終わり

 

 後書き

 出ました、どりーみんぐ!
 ぶっちゃけありえなーい、のエンディング。
 書いた自分でも目玉が飛び出してしまいそうな怒濤の展開でした。
 なんで美神さんまで男になっとるんじゃボケェ! という類のツッコミも多々ありますが、まあ、そこらへんはご愛敬で(まて)

 MAGIふぁさんの作品、『どりーむ』の作品を拝読させてもらっているときに、ぴぴっとインスパイアが沸いてきたのです。
 男の夢とは何か……と。
 それを可能な限り忠実にシミュレーションして、一番確率の高いものがこの作品でした(大嘘)

 MAGIふぁさんに敬意を表し……というかこのような作品でその上自分ごときに敬意を表されても困ってしまうかもしれませんが、『どりーみんぐ』を書き上げました。


 では、また次の短編かもしくは連載かで会いましょう!


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