『薔薇の手錠はずして 白い手首咥えて ふれあうことが奇跡
貴方がいとおしい』
「主?それは何の歌だ?」
横島の口ずさむ歌に耳(?)を傾けながら、心眼がたずねた。横島は少し困ったような顔をして、バンダナを優しくなでた。まさか自分が作った歌だとはいえない。こんな癖がついたのも、『彼女たち』の影響なのだが今では苦にもならなかった。思えば『彼女たち』に出会って幾年の年月が流れたのだろう。両親に祖父の形見だと手渡されたスーツケースに入っていた『彼女たち』はとても美しかった。本来は『七つ』あるスーツケースだが、祖父はそのうちの三つを所有していた。小さいときに屋根裏部屋で見つけて祖父に聞いてみると、
「お前がもう少し大きくなって、横島の秘術を使いこなせたら教えてやろう」
と言われた。それから数年がたち、あのときの少年は『彼女たち』の『下僕』となった。
一人は『我侭女王予備軍』
二人は『甘えん坊症候群』
三人は『陰険二重人格』
『誰が陰険二重人格かぁぁぁ!!ですぅ!!駄目人間!!』
『ひなは甘えん坊さんじゃないもん!!』
『下僕の癖になまいきよ・・・・忠夫』
実際そのとおりだろう?!と、心の中でそう思いながらも言えない健気な自分を誉めてあげたい。
『自分で言ってるですぅ、寂しいやつですぅ・・・・』
『友達らしい友達もいないから・・・・』
『忠夫、かわいそー』
ほっとけっ!!友達ならちゃんといるわい!!まったく、話が脱線しているではないかっ!!
「あ、主・・?大丈夫か?精神的に追い込まれた顔をしているぞ」
心眼が真面目に心配そうな言い方をしたので、少しむかついた。だが、彼女たちをいっしょにいる自分は幸せだ。これより先も一緒にいられることを・・・・・
「なぁ、心眼。ちょっと無茶な相談なんだが・・・」
「ふふふ・・・例えば、雪之丞をぶっ倒すとかか?」
「そいつは無茶もいいとこだ!!」
『実際は案外簡単なんだけどなぁ・・・・あいつ直情的バカだから、簡単に乗せられるだろうしなぁ・・・・・合掌!!』
結界内に二人が対峙した。片や根っからのバトルジャンキー、片や煩悩+下僕少年。まったくもって奇妙な取り合わせであるが、雪之丞は横島に親近感を覚えていた。
「ふんっ!!逃げずにきたことは誉めてやるぜ、だが、勝つのはこの俺だぁぁぁぁぁ!!」
「まずいな・・・最初から魔装術を使用してくるとは!!」
「おいっ!!ほんまに大丈夫なんだろうな?!」
勝負は両者一進一退の激しい攻防が続いていた。だが、霊力をコントロールするすべはやはり雪之丞のほうが一枚上手だった。
「おいおいっ!!このままだと本気で死ぬぞぉぉぉぉぉつ!!」
『まずいな・・・・主もそろそろ限界だ!!』
雪之丞は横島の油断を見逃さなかった。霊気を盾に変え、横島に向かって一直線に放ったそれは完全に直撃した。
「横島さん!!」
「横島君!!」
しかし、白い煙の向こうから現れたのは・・・・
「ふぅ・・ありがとうな、雛苺。助かったよ。」
某毒薬の貴公子の格好でシリアスに決めた横島と、彼を守るピンク色のフリルを着た小さな小さな少女だった。
「ほんとっ!!忠夫のこと、ヒナが守ったの?!」
「ああ!!もう少し遅かったら危なかったなぁ」
雛苺と呼ばれた少女はうれしそうに横島に抱きついた。
「あら・・・やさしくしてもらってよかったわね、雛苺?」
「真紅、セリフがまっ平らだぞ・・・・」(汗)
「忠夫、あそこにいる怪人カニ男を倒したら紅茶を入れてちょうだい。95℃以上で抽出して、ミルクもつけて」
「はいはい」
「駄目人間はチビチビに甘いですぅ。チビチビには殺るか殺られるかをしっかり教え込むべきでやがりますぅ」
「彗星石・・・・それは少し違うと思うぞ?」
「そうね・・・答えとしては30点にもならないわ」
この後、約1時間4人のフリートークが展開されるこことなり、雪之丞がいじけてしまったことをおまけに付け加えておこう。
続く?