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「雨宿り(GS)」

おびわん (2005-04-19 02:46/2005-04-19 03:08)

この話は、読む方によっては『菜』指定かもしれません。
ご注意ください。(作者)


昼過ぎから降り出した霧雨は、夜を深く潜っても、静かになる事は無かった。
まるで墨汁の様な雨。黒い静寂に支配された世界は、単一の音に支配されている。

ざあざあと。

雨に負けじとおぼろな光を主張する古びた街灯だけが、男にとっての道標であった。ずいぶんと水を吸って重くなった傘が手に余る。

街灯の下で立ち止まり、彼は悲鳴をあげる手首を揉み解した。
学生時代から使い続けている時代錯誤な和傘。今は行方も知れない父が、初めて自分に贈った物である。

「・・・ああ、ちゃうなあ。初めてもろたんは、『きみ』やったなぁ。」

独り言だろうか。
彼は自分の足元に映る影を見ながら、口を歪めて呟いた。

傘を持ち替え、彼は再び歩き始めた。
赤い鼻緒の下駄が、カラリコロリと音を立てて辺りに響く。

雨の日は和装では歩き辛い。
しかし今さらスーツで職場に赴く事も出来ない。

「あらあらあら〜。洋服着ちゃうと、誰だか判らなくなっちゃうわねぇ〜。」

そう言われた事があるからだ。
おかげでクローゼットの中の一式が無駄になった。

故に、毎日を不便な和服で過ごしている。
こんな格好で仕事をするのは自分だけだが、同僚の好奇の視線にも慣れた。

下駄を鳴らしながら、夜の闇より黒い雨を掻き分けて男は自宅へと急ぐ。

心持ち雨脚が強まったようだ。
水溜りに注意しながら、彼は足を速めた。


生まれ故郷の京都を離れ、この町に来てから大分経つ。

倒すべき仇に職をあてがって貰って生活している自分の姿を、
居なくなった父は笑うだろうか。

自分の限界を知ったあの日。
あれこそが父と、過去との因縁と、そして己の未来との訣別の日だったのかもしれない。

あの日から自分は何事にも興味を持てず、浮きも沈みもしない毎日を過ごしている。その事については特に感慨も無い。既に納得済みの事だからだ。

ただ生きている。
それで良いと割り切った。

だからこうして同僚の誘いも断り、独り家路を急いでいる。

カラリ、コロリ。

夜道を急ぐ彼の足が、自宅近くの公園に差し掛かる。
ここを越えれば愛しの我が家はすぐそこである。

ふと、公園の出入り口付近で彼は足を止めた。

匂いを嗅いだのである。
あの激動の夜から、久しく嗅ぐ事の無かった濃密な匂い。

・・・魔力。

男は少しだけ眉をひそめた。

数週間前、雇い主に少しだけ見せて貰った、ある極秘資料。
そこに記された『魔神』の文字と数人の知り合いの名前。

あの夜、何があったのか自分は知らない。
無限に湧き出る悪霊達から、ドブネズミのように逃げ回るので精一杯だったから。

資料には雇い主の娘やその友人達、更には自分の教え子の名まであった。
彼らが事の沈静に手を貸し、多大な犠牲を払って魔神を退じたのだという。

多大な犠牲?

おそらくそれは、資料の節々で黒く塗りつぶされた個所、その下に記されている人物が関係しているのだろう。黒塗りにより歯抜けでしか読み取れないが、前後の文章から大体は推測できる。

『誰か』と『誰か』が恋に落ち、『誰か』は『誰か』に打倒魔神を誓った。
その言葉どおり『誰か』は魔神を追い詰めるが、そこで一つの決断を下さねばならなくなった。

恋人の命の為に世界を捨てるか、それとも恋人を殺して世界を救うか。

歴史の分かれ道を前に、運命の梶を手にした『誰か』は逡巡する。
それも仕方ないだろう、お互いに比べられる種類の価値ではないのだから。

そして『誰か』は、理性の囁きではなく魂の言葉に従い、魔神の野望を破壊した。

それだけである。
資料中の、魔神打倒の直接の功労者である『誰か』についての記述らしい物は、それで終わりなのである。

雇い主の娘やその友人達のように、世界を救った至高のGSとして世に名が広まった訳でも無く、まるで映画が終わって画面が途切れたように、その『誰か』に対しての記述はプッツリと途切れていたのであった。

それについては奇妙に感じた事を憶えているが、だからといって自分がどうこう出来る訳でもない。
ただ何となく釈然としないものを覚えつつ資料を返却したのだった。

まあとにかく、あの夜が明けてから、妖、魔族はおろか低級霊ですら姿を現す事は少なくなっていたのだ。

だがこれが本当に妖魔の類、しかも人間に害する可能性のある存在の物だとするならば、このまま放って置けない。

まがりなりにも自分は教師であるのだから。
一般人、それに生徒達が危険に晒される可能性があるものは、絶対に除去しなければならないのだ。

『相棒』にその意思を伝え、警戒して辺りを見回す彼の前に、不意におぼろな光が燈った。

それはまるで蛍の光。季節はずれの幻想の光に、男はおもわず目を細める。

たとえその光が自分の命を奪う危険な物だとしても、不思議と彼の心に視線を逸らす意思は湧かなかった。

用心しながらも立ち尽くす彼の前で、蛍光は弧を描くように宙をたゆたい、次いで公園の闇の中へと流れていく。彼も黙したままそれの後を追って園内のぬかるんだ土を踏んだ。

「・・・・・寂しぃな。」

無人の公園を見渡し、彼はポツリと呟いた。
考えてみれば、雨の日の夜に公園へ来るなどというのは始めてである。

切れかかった照明と、それに照らされる錆びたブランコ。
項垂れたラクダの滑り台が雨に打たれて物悲しい。

日中でも利用する物は少ないのだろう、雨夜の園内は余りにも孤独だった。

そして公園のほぼ中央、広場のように開けた場所へ、蛍光はフラフラと飛んでいく。

後に続く男の前、黒い雨のカーテンの向こうに、痩せた少年の後姿が見えた。

年季の入ったジャケットにジーンズ、余り手入れのされていない髪と、そこから覗くバンダナ。少年の細い肩の周りを蛍光が円を描くように、いや、慕うように、慰めるように飛び回る。

どれほどの時間、この雨に打たれ続けていたのだろうか。
男が近づく足音に気付き振り向いたその顔は蒼白で、薄い唇は蒼くなっていた。

「・・・横島、くん・・・か?」

「・・・・・よお、鬼道・・・。」

傘を傾けて呟いた鬼道政樹に、光の灯らない瞳を向ける横島忠夫。
彼の顔を伝い流れる雨のせいか、鬼道には彼が泣いているように見えた。


                  雨宿り


「さ、はよ入り。」

「あ・・・お邪魔、します。」

木製の扉を開け、暗い部屋へ招き入れる鬼道。
横島は多少の遠慮を見せた物の、素直に中へ入って来た。

現在、六道女学院で教鞭をとる鬼道政樹の給金は多くは無い。
むしろ少ないとさえ言えるその中から家賃を捻出し、彼は六畳二間のアパートを借りて住んでいた。

六道の女性教師には各部屋2LDKの職員寮が宛がわれている。
しかし数人しかいない男性教師は、自分で住処を用意しなければならないのだ。

家賃には困らなかったが部屋が寂しい。電化製品はテレビと冷蔵庫、それに汚い炬燵机くらいしかない。

元々酒も煙草もしない無趣味な男である。そのあたりは別に何とも思わなかったが、こうして客があるとどうしても気にしてしまう。次の休みにMDコンポでも買いに行こうかと鬼道は思った。

カチリと電灯の紐を引き、二度三度と点滅を繰り返してから部屋を照らした明かりの下、鬼道は所在なげに突っ立っている横島を狭い風呂場へと押し込んだ。

「この部屋で一番金が掛かっとる『何時でも入れるお風呂』や。十分温まってから出ておいでや。」

「・・・すまね。」

薄寒い部屋とはいえ、雨の降りしきる外よりはましである。
平常に戻りつつある体温がだんだんと横島の顔に血を通わせ始め、白くなった肌を紅く染めていく。

壁を向いて服を脱ぎ始めた横島を残し、鬼道は寝室兼書斎へ向った。
クローゼットを覗き、考える。横島と自分の体格は大分違う。彼に合う服が少ないのだ。

しばらく迷った後、鬼道は麻の寝間着とハンテンを手に取り再び脱衣所に向った。
風呂の中からは殆ど水音は聞こえてこない。彼は湯船に浸かっているのだろう。

「横島くん? ここに着替え置いとくからな?」

「え、あ、ああ。判った。」

中から聞こえてくる控えめな返事を受け、次に鬼道は台所へ足を運んだ。
ヤカンに水を張り、火にかけた後茶葉を取り出す。

いつの物かは定かで無いが、茶葉に賞味期限など無い筈だ。・・・たぶん。
そう自己暗示をかけて湯飲みを用意する鬼道。途中、何を思ったかうどんも作り始めた。

粉末昆布と鰹醤油で味を調え、うどん玉を入れる。
数分後、玉子を入れた所で横島が風呂から上がってきた。

「・・・・・あ、あの。」

「ん? 出たか。今うどん出来るから座っとき。」

ダボダボの寝間着とハンテンを着込んだ横島を、小さな折り畳みテーブルの前に座らせ、鬼道はうどんと茶を乗せた盆を手に台所を後にした。

「さ、食べや。」

そう言って横島の前に盆を置く。
暫くの間、彼は視線を卓上と鬼道とで行き来させていたが、徐に箸を掴むと勢い良くうどんを啜りこみ始めた。

どんぶりで顔を隠す程の横島をおいて、鬼道は茶を注いだ湯飲みを片手にテレビをつける。

午後九時半。どの局も流れているのは代わり映えの無いバラエティばかりだった。

部屋に言葉は無い。
あるのは、音量を絞ったテレビの音、古い壁掛け時計の歪な音、ざあざあという雨の音、うどんを啜る音。見るともなしにテレビへ視線を向ける鬼道には、その混合された音が何故か心地よく感じられた。

コトン、と卓に置かれて音を立てる空のどんぶり。
少しぬるくなった茶を一口含み、横島は無言で鬼道を盗み見た。

こちらに横顔を向けている鬼道。
もううどんを食べ終えているのは気付いている筈なのに、彼は何も言わない。
自分が何故、雨に打たれるがままにして公園に居たのかすら聞かない。

やはり無言の二人。
先程より一つ音の減った部屋の中、ただ時間だけが緩やかに過ぎていく。

「・・・・・聞かねぇのか?」

時計の秒針が何周かした後、横島はポツリと呟いた。
その視線は両手の中の湯飲みに固定され、鬼道の方を向くことは無い。

横島と鬼道の二人は、別によく知った仲という訳ではない。
六道などで数回会った事がある。ただそれだけの縁だ。

あの公園で自分を見かけても、声を掛けずに通り過ぎてもいい間柄であるのに。
それなのに彼はこうして自分を部屋に招き、食事まで振舞ってくれた。

ならば理由を問われれば答えねばならない。
そしてそれぐらいは訊ねて来るだろうと思っていたのだが、彼は何も言わない。

それが、不思議だったのだ。

「聞いて欲しいんか?」

テレビに視線を向けたまま答える鬼道。
抑揚の無いその声からは、何の感情も感じられなかった。

「う・・・、わかんねえ・・・。」

「・・・・・。」

自分でもどうしたいのか判らず、結局口篭もってしまう横島。
そんな彼を、鬼道は温度の無い瞳で見つめた。

「・・・吐き出してしまいたいもんがあるんやったら、聞いたるで。」

「え?」

囁くような、優しい声。
鬼道が初めて見せた感情に、横島はうろたえた様に視線を上げた。

「あるんやろ? 内に溜まったもんが。」

「な、んだよ。・・・急に。」

「あの公園でキミ見かけた時な。直感、ゆうんかな、キミが泣いてる様に思えてん。」

「・・・・・。」

なんか放っとかれへんかってんな。
そう陳べた鬼道の視線は、優しい柔らかさで横島を貫いた。

「この子をこのままにしといたら絶対に後悔する、て思た。」

この部屋の初めての客やねんで、と締めた鬼道。
湯飲みに茶を注ぎ、彼は再び口を開いた。

「まあ、それは僕の都合やから、キミが言いた無かったら別にええんやけど。」

「・・・・・。」

横島は頭を垂れ、湯飲みの底を凝視する。
迷って・・・・・、いるのだろうか。

やがて彼は、雨音にかき消されそうな小さな声でポツリと呟いた。

「恋を・・・したんだ。」

項垂れている為判らないが、髪の毛に隠されている彼の目はどんな色をしているのだろう。教師である鬼道には、それが気になって仕方が無かった。

「・・・生まれて初めて、本当に好きになったヤツだった。」

「・・・・・。」

ここは口を挟むべきではない。
そう察した鬼道をよそに、横島の独白は続く。

「ただ良いカッコしたかっただけの俺の言葉を信じて、命を失う事になっても、
俺の思い出になりたいって笑って・・・。そんなのねぇよな、たかが俺なんかをそこまで想うなんてよ。」

やはり顔を伏せたまま、横島は話しつづける。
鬼道は彼の言葉を受けて、六道理事に見せて貰ったあの資料の事を思い出していた。

もしや、記述にあった『誰か』というのは・・・。

「アシュタロスは俺が倒す。なんて大見得切っちまったけど、俺は本気だった。
この俺が生まれて初めて、理由をもって自分から戦場に立ったんだ・・・。」

やはり。
鬼道は確信した。資料にあった『誰か』とは、この横島忠夫の事だったのだ。
ならば、横島が告白する話の最後に待つ結末は。

「でもやっぱり俺ドジっちまってさ。アイツ、死にかけた俺を助ける為に自分の魂削って、俺に与えてくれたんだ。・・・そんな事すりゃどうなるか、ガキでも判んのにな。でも、バカな俺は判らなかった。いいから行けって言うアイツの言葉を鵜呑みにして、立ち上がる事も出来ないアイツを置いて、行っちまったん、だ。」

その時の事を思い出しているのか、段々横島の声が震えてくる。
彼とって、あの戦いの傷は今だ癒えてはいなかったようだ。

「俺さ、天秤に・・・掛けたんだよ。世界か、アイツかって・・・さ。」

そこで一端言葉を止め、横島はゆっくりと顔を上げる。
彼の顔を見た鬼道は、自分が微かな悲鳴をあげた事を自覚した。

横島の瞳。果ての無い穴の様なソレは、部屋の電灯の光を受けても輝きが灯る事無く、
ただ無限の悲しみと、後悔の闇に染まっているのであった。

「よこ・・・し、ま。」

「好きだったんだっ! 初めて心の底から愛した女だったんだっ!」

心の内に塞き止めていた物が、ダムの決壊により濁流のように溢れ出す。
横島は鬼道がそこに居る事も忘れたかのように立ち上がり、両手で顔を覆って泣き叫んだ。

「なのに俺、殺しちまったんだっ! アイツを、ルシオラを見殺しにしちまったんだよぉっ!!」

「横島くんっ、横島くんっ!」

「俺の為なら命も惜しくは無いって、それほど俺を愛してくれたヤツをっ、俺は、俺はぁっ!!」

感情の昂ぶりと共に、何故か魔力を迸らせ始める横島の体。

このままでは彼の精神が崩壊してしまう。そう感じた鬼道は、とっさに彼の体を抱きしめた。

背の高い鬼道の胸に抱かれ、しかしそれでも横島の嗚咽は止まなかった。

「俺・・・、アイツと一緒に死んでやればよかった・・・。」

「横島くん・・・。」

かける言葉も見付からず、鬼道は歯噛みしながらも横島を抱く腕に力を込めた。
横島の顔と接した胸の辺りが、ジンワリと濡れていくのを感じる。

「・・・その場に居る事も出来へんかった僕には、キミには何も言われへんけど、でもな、その、ルシオラさんは、横島くんに泣いて貰う為に死を選んだんや無いんちゃうか?」

「・・・・・。」

「キミは、ルシオラさんが生きた証しやろ。キミが死んだら、誰が彼女の愛を思い出すねん?」

「俺は・・・そんな綺麗に、アイツの事整理できねぇよ。」

彼女を失ってしまったのは、ひとえに自分の力の無さゆえと理解しているから。
横島の心は鬼道の言葉を受け入れる事が出来なかった。

鬼道の腕に抱かれ、その胸から横島は話を続けた。

「アイツには、俺の子供として再びこの世に生まれ出る権利もあったんだ。
・・・でもよ、そのささやかな権利すら、俺は潰したんだよ。」

「・・・えっ?」

それはどういう事か。
疑問に思い横島を見下ろす鬼道の腕の中から、あの蛍光に良く似た光が迸った。

「っ!?」

目を眩ませ、横島を離して交代する鬼道。
今や人型の光となった横島から、皮肉に染まった声が聞こえた。

「欠損した俺の魂を補った後、アイツの欠片は俺の深い場所に沈殿し、いつか俺の子供に変生してこの世に生まれる筈だったそうだ。でもよ、俺の薄汚い魂は、眠りについたアイツの欠片をも食い尽くしたんだ。」

夕日が地に沈むように、横島の体から光が消えていく。
それと共に段々見えてきた彼の姿に、鬼道は思わず目を見張った。

腰まで届きそうな長い髪は艶やかな黒。
元々痩せていた体は更に細くなり、しかし寝間着を押し上げる胸の膨らみはやたらと豊かで。

「その報い、か。俺の体は朝晩の決まった時間、アイツに良く似た姿になる。もう未来永劫、俺はアイツを抱く事は出来ない。
・・・鏡に映ったその姿を見る事でしか、アイツと逢う事は出来ないんだ。」

自嘲するように笑うその顔は、あの資料にあった敵方の女幹部の一人に少し似ていて。

「横島くん・・・、キミは。」

女性体に『変身』した横島は、その瞳から涙を一粒こぼれ落した。

「俺にはもう・・・、未来なんて見えねえよ・・・。」

鬼道は初めて、心の底から絶望した者の眼という物を見た。
明日を信じず、未来を夢見ず、ただ虚無の褥に蹲った『何も無い』瞳。

在るのは己の可能性との訣別。
そして無限の悔恨と永遠に無くなる事の無い寂しさ。

彼、いや、彼女は、とても悲しい顔で口を歪めた。

「・・・飯、ありがとな。俺帰るわ。この服しばらく借りとくけど、良いよな?」

そう言って横島は鬼道の返事も待たず、寝間着のまま玄関に向う。
彼女の後姿、その背に揺れる綺麗な髪を見ながら、

同じなのかもしれない。

不意に鬼道はそう思った。
彼女と自分が居る場所は、全く違う様で、その実とても近いのかもしれない、と。

幸せな未来を諦め、『今』しか見る事が出来なくなった自分。
未来に絶望し、選んだ『今』を悔やみ続ける横島。

自分達に一体どれほどの差があるというのだろうか。
ならば自分は、横島を返すべきでは無いのかもしれない。

隣を通り過ぎた横島から香った、安いシャンプーの匂い。
それを嗅いだ瞬間、鬼道の足は彼女の後を追っていた。

「じゃあな・・。」

後ろを振り向く事も無く、女横島は扉に手をかける。
靴がまだ濡れている事も気にせず、そのまま履いて出て行こうとした彼女の体が、後から追ってきた鬼道に抱きとめられ、拘束された。

「・・・・・何の、つもりだ? 鬼道。」

鬼道のいきなりの行動に、特に驚いた様子も見せない女横島。
脇の下から胴をまわる鬼道の腕に手を置き、幾つも染みの付いたドアを見つめたまま小さく問うた。

「まだ・・・、雨は降っとるやないか。」

彼女の髪の間から少しだけ覗く耳を啄ばむように、鬼道もまた小さく囁く。
横島は自分の臍の上辺りで組まれた彼の両手に手を重ねた。

「・・・泊まっていったら、どうや?」

「・・・・・。」

俺は、心のどこかで、こうなる事を望んでいたのかも知れない。
鬼道の体温に包まれた横島はそう思った。

だからだろうか、救いを求めるような言葉が無意識に零れ出る。

「辛いんだ・・・。寂しいんだよ・・・。でも、そう言って美神さん達に甘える訳にも行かなくて・・・。」

あの戦いに加わった、あの頃の横島達『二人』を知る者達に、己の内を曝け出す事は出来なかったのだろう。それ故、あの時に居なかった、無関係でも自分を拒絶しない鬼道に縋りついたのだ。

無論、横島は男が好きな訳でも鬼道を愛している訳でもない。
後悔し続ける横島は、ただ自分を無条件に受け入れてくれる相手が欲しかっただけ。

後悔に怯える自分を包みこみ、庇護してくれる者。
それは美神令子でもおキヌでもなく、まさしくこの鬼道政樹でなければならなかったのである。

横島の体を抱く腕の力が強まる。
しかしそれは苦痛や嫌悪の念でなく、痺れるような快感を横島に与えた。

「・・・ギュッてしてくれよ、忘れさせてくれよぉ。・・・少しの間でいいから、鬼道ぉ・・・。」

「横島くん・・・。」

体ごと振り返り、横島は鬼道にしがみついた。
・・・幼い迷い子が、やっと逢えた母を失わぬよう抱きつく風に。

二人の間で潰れた横島の豊満な胸が、鬼道の鼓動を高鳴らせる。
そして二人は絡み合ったまま寝室へと移動した。

一人用の硬いベットの上に横島の身を優しく倒し、鬼道は幾分緩んだ帯を解きにかかった。潤んだ瞳で彼を見つめる横島の前で、彼は下着一枚の姿になり、ベットへ歩み寄った。

体を硬くして彼を見上げる横島に微笑み、その身を包む衣類をゆっくり脱がせていく鬼道。ハンテンを脱がせ、次いで麻の寝間着のボタンを一つずつ外していく。

「・・・怖い?」

「・・・ちゃうねん。ちょっと、恥ずかしいだけや。」

他人の手で服を脱がされていく事に羞恥心を覚え、顔を紅くする横島。
そのためか、言葉が標準語ではなく関西弁になっている。

動機は激しくなり、薄っすらと汗が滲む。

「正直、僕も初めてやからなぁ。」

「なんや、鬼道もなんか。」

もてなかった訳ではない。

密かに鬼道を想う女性は何人も居たのだったが、父の妄念に囚われた彼がそれに気付く事は無かったのだ。

もう顔も覚えていない母が居なくなってから、鬼道は孤独な毎日を送って来たのである。

しかし断じて女性に興味が無かった訳でもなく、テレビや雑誌から得た情報で己を慰めていたのだ。今、彼を支えているのはその中学生レベルの知識だけである。

少々震える手を苦心して操り、横島の服を繋ぎ止めるボタンを総て外し終えた鬼道は、ひとつ唾を飲み込んでから、彼女の素肌を外気に晒した。

途端に立ち込める、石鹸と汗と、・・・女の匂い。
むわっとしたそれを吸い込んだ鬼道は、自分がこれまでに無いほど勃起している事に気付いた。

寝間着の下には無論、下着などは付けていない。
よって鬼道の眼前に、仰向けになっても形が潰れる事も無い、大きな二つの乳房が現れた。

サイズはDカップはあるだろうか。若さに溢れた見事な乳房である。

女横島の白い肌は、その下に走る血管を浮かび上がらせ、頂点に揺れる桃色の突起が昂ぶる鬼道の視線を淫らに引き寄せる。

少量の汗に濡れたそれは、まるで何かの果実の様であった。

「・・・・・。」

「あ、あんまり見んなやぁ・・・。」

元は男でも体が女性に変化すれば、精神も器に惹かれるのか、鬼道の無遠慮な視線を受けた横島は、少女のように頬を紅く染めて顔を背け、小さな声で抗議した。

「ご、ごめん・・・。でも、綺麗なんやなぁ、女の体って・・・。」

「・・・・・アホ。」

呆けたように呟く鬼道に、横島は益々顔を火照らせた。

「触るで?」

「・・・うん。」

首尾よく許しを得た鬼道の大きな手が、それでも余る横島の胸に伸びる。
彼の指の腹が乳房に触れた時、横島の背に電撃が走った。

「んぅっ!?」

突然背を仰け反らせた横島に驚き、鬼道は何か悪い事でもしてしまったのかと手を引っ込める。

「ど、どないしたんや。」

そう言って覗き込んだ鬼道が見たのは、顔を上気させてさせて喘ぐ横島の姿だった。

「な、んか、電気が、走った・・・。」

「? 触ってええのんか?」

「ええ、ええからもっと触って?」

どうやら拒否された訳ではないと安心した鬼道は、再び横島の胸に手を伸ばした。
今度はその『電気』にも耐えれたのか、横島は眉間に皺を寄せながらも何も言わなかった。

にゅっ、にゅっ、っと。
少し硬さが残る乳房を、鬼道は思う存分揉みしだく。

その度に、横島の口から小さな喘ぎ声が聞こえる。
自分の手が彼女に快楽を与えているのだ。そう気付いた鬼道は悦んだ。

縦に、横に、揉みしだき、頂きに主張する乳首を摘まむ。
いつしか鬼道は手だけでなく、口と舌も使って横島を愛撫していた。

「あ、くっ・・・ひぃっ・・・。」

横島の耳朶を口に含み、鬼道の唇は彼女のおとがい、そこから首筋、そして乳房へと滑り落ちていく。

唾液に光る筋が、横島の女としての性感を少しずつ開拓していった。

「ひあっ、・・・胸、胸ぇっ!」

鬼道の舌が、横島の乳首を捕らえる。
そこから広がる甘い痺れに、横島は切なそうに泣き出した。

止めて欲しいような、それでいてもっときつくして欲しいような。
そんな背反する感情に悶える横島を尻目に、鬼道の唇は止まらない。

硬くなった乳首を口に含み、前歯であま噛みし、口中の先端を舌で舐めあげる。
空いているもう片方の乳首では鬼道の手が踊っていた。

「あ、あかんってっ。ちく、びばっかりぃ、・・・あかんってぇ!」

いやいやと子供のように首を振り、横島は紅い顔で泣き叫ぶ。
しかしそれでも鬼道に遠慮は無い。

鬼道の手に隷属したように、横島の乳房は彼の意のままに踊り続ける。
激しい快楽の波にのまれた横島は、ただ喘ぎつづける事しか出来なかった。

「下・・・いくで?」

それから十分ほど経った頃、汗と唾液塗れの双乳を、鬼道はやっと解放した。
問い掛けられた女横島だったが、虚ろな目を虚空に彷徨わせるだけで返事も出来ない。

彼女の返事も待たず、鬼道の手がその男物の下着にかかる。
性器の部分に黒い染みが出来たそれを、鬼道はゆっくりとずらし脱がせていく。

すぐに現れた『そこ』からは、先程の物よりも幾分か強い匂いがする。
既に濡れそぼった横島の性器に、鬼道は沸きあがる衝動を必死に堪え、再び愛撫を再開した。

横島の顔を見ながら、薄く毛が生えた『そこ』に手を触れる。
くちゅっという水音がして、鬼道の指はたちまち横島が分泌した粘液に塗れた。

「ひいぃっ!?」

少しずつ動悸を沈静させていた横島だったが、自分の性器に鬼道の指が触れたその瞬間、またしても初めての感覚に翻弄される事となった。

くぷちゅ、くぷちゅ、くぷちゅ、くちゅっ。

「ひ、ひ、ひぁっ、あくぅっ!?」

人差し指と薬指で閉ざされていた門を割り広げ、残った中指と共に柔らかく濡れた肉を蹂躙していく。

すぐに探り当てられた処女の秘穴も、その上部にある肉の突起も、侵入者に抗う事は出来なかった。

鬼道はたちまち『そこ』の虜となった。
信じられないほど柔らかい肉と、泉の如く湧き出す愛液。初めて接したそれは、鬼道の思考を緩やかに奪っていく。

性器に埋めていた指を増やし、貪る速度を上げようとした鬼道だったが、
苦しげな横島の声にようやく我に変える事が出来た。

「いた、痛い。こらっ鬼道ぉっ、ちょっと痛いってっ!」

「!? あ、ご、ごめん、大丈夫か横島くん!?」

慌てて指を引き抜き、鬼道は大きく息を吐く横島に訊ねた。

「はぁ、はぁ、・・・もうちょっと優しく、な?」

「う、うん。気ぃつけるわ。」

「たのむで・・・。」

何度か深呼吸を繰り返し、横島は再び体を開いた。
鬼道も今度は激情に流されないよう気を付けて触れる事にした。

ちゅぴっ。

「んっ。」

優しく、彼女を傷つけぬよう注意して。
鬼道の指が、再び横島の中心で踊り始めた。

「痛ないか?」

「・・・大丈夫や。」

どうやら痛みは感じないらしい。
快感と痛みの境目を理解し、鬼道は愛撫に集中していく。

左手は乳房を、右手は性器へ。
そして鬼道の唇は、横島の細い鎖骨に吸い付き、そこに赤い印を残して少しづつ下降し始めた。

きめの細かい肌を滑りながら、唇は右の乳房、その頂き、そこから可愛い臍を経由して性器に至る。

彼が何をしようとしているのか気付いた横島が、慌てて膝を閉じようとしたのだったが、それを見越していた鬼道の腕に阻まれ、彼女は逆に両足を大きく割り開かれてしまった。

「いやや、そんなん嫌やぁっ! 鬼道ぉ、恥ずかしいってぇっ!!」

「ええから、ちょっと静かにし。」

泣き喚く女横島の抗議を無視し、ついに鬼道の顔が彼女のヴァギナに到達した。
独特の、しかし全く嫌悪感を感じない彼女の深い匂い。

花に魅せられた蝶のように、鬼道は自然とそこに口をつけた。

「ぅはあっ!?」

鬼道の唇、そして舌がそこに沈んだ瞬間、性器から生まれ脊髄を駆け登り脳を直撃した快感の矢に、横島は目を見開いて狂ったように声をあげた。

「ちょっ、うわ、うわぁっ!? くぅっ、あ、あ、ひあぁぁっ!!」

くちゅ、ちゅ、ぴちゃっ。

錐のように細めた舌で、横島の深い部分まで貫き通す。
それに答えるかのように、彼女の膣からは際限なく愛液が湧き出てきて、口付ける鬼道の喉を潤した。

飲んでる・・・、鬼道が俺の出したもん飲んでる・・・。

既に女横島の思考はピンク色の靄によって正常に働かせて貰えなくなり、
彼女は自分が元は男であった事など、遥か遠い忘却の彼方へと押しやってしまっていた。

ぐいっ。

「!? わうっ!?」

突然、鬼道は横島の体を仰向けから一転、犬の様な四つん這いの格好にさせた。
そこから上半身を伏せさせ、逆にお尻を高く上げさせる恥ずかしいポーズをとらせたのだ。

彼女の尻の方に座る鬼道からは、横島の潰れた胸も、濡れそぼったヴァギナと可愛いお尻の穴も丸見えになった。
当然だが横島はこの暴挙に猛抗議しようとした。流石に尻の穴まで見られるのは嫌であるようだ。

「こ、こら鬼道ぼけっ! 何を・・・て、ひゃうっ!?」

しかし、抗議の声は鬼道の舌の一撃に静められた。
横島のヴァギナから肛門までを、一気に舐め上げられたのである。

それも何度も何度も。

「ひあぁっ、くふぅっ! ふやぁぁぁぁっ!!」

泣き声をあげ続ける横島の視線が、硬く屹立した鬼道のペニスを捕らえる。
何時の間にか鬼道は仰向けに寝転び、それにつられて横島の体も移動していたようだ。

いわゆる69の形である。

「・・・・・。」

女横島の視線がソレに固定される。

下腹部に溜まった快感の泡と、ヴァギナから送られてくる激しい快楽に思考が鈍くなったのか、以前なら他人のペニスなど見るのも嫌だったのに、今の彼女の心はソレを当然のように受け入れていた。

恐る恐る、横島は鬼道のペニスを両手で包む。マグマの様に熱い。
何度か両手を上下させた後、横島は静かに口付けた。

「よ、横島くんっ!?」

「・・・・・。」

突然の奉仕、その快感に鬼道は驚いて声をあげる。
まさか元は男である横島が、フェラチオまでするとは想像もしなかったのだ。

ふふ、鬼道のヤツ、驚いとるな。

先程から驚かせられてばかりだったので、逆襲出来た事に満足感を覚えた横島。
口付けただけでなく、彼女はさらに奉仕を始めた。

先の割れ目に下を這わし、湧き出る雫を掬い取るように舐めあげる。
そしてペニスの裏側を舌で刺激した後、喉の奥まで一気に頬張った。

「おあ、よ、横島くん、すご・・・!!」

鬼道もまた、自慰以外の肉の悦びに酔っていた。
自分で快感をコントロールする自慰とは違い、これは快感を無理矢理吸い出されるような感覚。

温かく湿った肉が己の物を包み、吸い、舐めあげる。

りゅぷちゅ、りゅぷちゅ、りゅぷちゅ。

横島は窄めた両頬の肉と舌を使い、巧みに鬼道から快感を引き出していく。
元が男であった分、何処を責めれば気持ち良いのか熟知しているようであった。

自然と、鬼道の腰が更に深い快感を求めて動く。
下からペニスを突き上げられた横島の口中は、唾液と鬼道が分泌した液で溢れそうになっている。

「う、ぷぁ・・・はぁ、はぁ、はぁ。」

暫くすると流石に顎が疲れたのか、横島はペニスから口を離した。
その半開きの口から、溢れるように二種の混合液が垂れ落ちる。

股間から心地よい温度が失われた事に、鬼道はいささか寂しく感じたが、
気を取り直して次のステップに進もうと、己にもたれて喘ぐ横島と体の位置を交換した。

「あ・・・。」

再び仰向けに寝転ばされた横島。鬼道が無言で彼女の股を押し開き、その間に割って入って来たのを見、彼の意図を察して顔を赤くした。

「入っても、ええか・・・?」

汗の為に、横島の額に張り付いた髪を掻き分け、鬼道は不安そうに自分を見上げる彼女に微笑む。
横島は二度三度、視線を左右に振っていたが、やがて決心したように微笑み返した。

「・・・優しくしてな? 痛いのは苦手やねん・・・。」

「約束はできへんけど、努力はするわ。」

ぎゅっと目を瞑った女横島を安心させるように囁きかけ、鬼道は反り返る自分の分身に手を添えて、愛液と唾液で蕩ける彼女の泉へ宛がった。

くちゃ。

敏感な粘膜同士が接着し、二人に恐ろしい程の快感を与えた。
熱い沼に沈んだ鬼道のペニスが、横島の処女穴を探してこね動く。

「え、と。ど、どこやろ?」

「ぃあっ、ふ、も、もうちょっと下やと思う、・・・あ、そ、そこ・・・。」

横島の誘導に、ようやく目的地を探し当てた鬼道。
一気に貫きたい衝動を必死に堪え、彼女と目を合わせたままゆっくりと侵略していく。

何枚もの柔らかな肉のカーテン、その奥にある処女の証。
そこにペニスを押し当てた鬼道は、少しでも彼女の苦痛を和らげようと、用心して腰を押し当てていった。

「ぐぅっ、・・・は、入って、あぐっ!」

それでもやはり痛みは大きいのだろう。
横島は辛そうに柳眉を寄せ、体が裂かれていく苦痛に喘いでいる。

みっちりと狭い穴。それがもたらす快感。そして少しの痛み。
それらに翻弄されるように、鬼道はついに女横島の処女膜を破り貫いた。

瞬間、横島は股間から頭頂部まで引き裂かれたような激痛を感じ、
喉を反らせて目を見開いた。

「ああぐっ! あ、あ、いぎぃ・・・・・。」

大きく口を開け、空気を求めるように舌を突き出す。
自分の内に入って来た他人の肉を感じ、横島は多量の涙を流して自分が女になった事を理解した。

(そ、想像はしてたけど・・・、こんなに痛いもんやったんか・・・。)

単純にセックスに憧れていた時の、浅はかだった自分の考えを悔やむ。
そんな思いにかられる彼女のヴァギナから一筋の鮮血が伝い落ち、白いシーツを赤く染めた。

「は、は、は、・・・い、息が・・・。」

「・・・大、丈夫か? 横島くん。」

「そんな訳、無いに、決まっとる・・・やろがぁ。」

涙で曇った目で鬼道を睨み、横島は荒い呼吸を繰り返す。
そのまま苦痛に慣れるまでの間、彼女は腰を動かしたがる鬼道の胸を抑えていた。

暫くして、横島は漸く鬼道に動く許可を与えた。
まだ少し辛そうな彼女の雰囲気に躊躇いながらも、さっそく鬼道は腰を進め始める。

いまだ半分も入っていない鬼道のペニス。
それが横島の最奥を目指して進軍を開始した。

「う、くぅっ、はぁぁっ!」

ついに彼女の子宮口に、鬼道のペニスが押し触れる。
それを感じて息を吐く横島を見ながら、鬼道はゆっくりと抽送を始めた。

欲望に硬くなった亀頭が柔らかい秘肉をえぐり、その奥の窄まりをノックする。
鬼道は腰を突き上げる毎に、彼女の膣が甘く解れていくのを感じた。

段々横島に打ち付けられる鬼道の腰のテンポが速くなっていく。
二人の恥骨がぶつかり合い、その度に激しい水音があがった。

ぱちゅんぱちゅんと淫猥な音を響かせ、二人は夢中でお互いを貪りあう。
既に横島は痛みの欠片も感じていない様だった。

もっと深く、もっと強く。

さらに激しい快感を求め、鬼道は腰を突き上げる。

「ひっ? ひぃああっ、ひぁぁぁあああっ!!?」

元々性交に対する素養でもあったのか、横島は垂れる涎も気にせず狂ったように嬌声を上げ続ける。

快楽に堕ちた彼女は、もう何も考えてはいない様だった。

(すご、すごい。凄ぇ気持ち良えっ!)

自ら腰を動かし、貧欲に快感を求める女横島。
鬼道に己の内部を擦られる度に体中に電気が走り、何かが高まっていくのを感じる。

今の彼女は、体の総てが性感帯であった。

「きど、鬼道っ! 良え、気持ちええねんっ、鬼道ぉっ!!」

「僕も、僕もやっ、横島くんっ! もおイキそうやぁっ!!」

鬼道は腰を激しくグラインドさせ、横島の胸をきつく揉みしだきながら、
少しでも永くこの快感を持続させようと、必死に射精感を押し殺した。

女横島の膣を突き貫く。
ただそれだけの動きしか出来なくなった鬼道。背を仰け反らせて甲高い声を上げ続ける彼女に手を伸ばし、
二人の接着部分が少しでも多くなるよう掻き抱いた。

激しい抽送を繰り返す鬼道。抱き締めた女横島の首筋に顔を埋め、彼女の汗の匂いを嗅ぎながら一心不乱に腰を振りつづける。その結果、今度は抑えきれない程の射精感が込み上げて来た。

「う、あ、あかん、出そうやぁっ!」

下腹部に力を込め、何とかその衝動を遠ざけようとするのだったが、もはや彼の意思とは関係なく動きつづける腰、そしてペニスから絶え間なく送られてくるとてつもない快感に、とうとう彼の理性は敗北した。

「あっ! あっ! あっ! あっ!」

「よこ、横島くんっ! 出るっ!!」

鬼道は喘ぐ彼女の耳元で、数瞬後の射精を予告する。
その言葉に、横島も悲鳴のような声で返した。

「出してっ! 俺んナカにいっぱい出してぇっ!!」

「うっ・・・、くぅあっ!!」

びゅグンっ!! びゅるっ! びゅくっ!

「ふゃあああぁぁぁっ! イ、クうぅぅぅっっ!!!」

膨れ上がった亀頭を横島の子宮口に深く押し付け、鬼道はそこを割り開くようにして欲望を解き放った。

横島の小さな子宮内に、濁流の様な勢いの精液がどんどん流れ込む。しかし、彼女の子宮はそれを貧欲に飲み下していく。

撃ちつけられた熱い奔流に押し上げられるようにして、横島は初めて経験する『女』としての絶頂に意識を手放したのだった。


ながい、ながい射精を終え、力尽きたように横島の上に倒れ伏す鬼道。

荒い息を吐きながら、彼は気絶した横島の中からペニスを引き抜く。そこから流れ落ちる己の精液をティッシュでふき取り、そのまま彼女を抱き締めて寝転がった。

錘を付けたみたいに重い腕を伸ばし、ベッドの足元に蹴散らしていた掛け布団を引き寄せる。

「雨・・・、まだ降っとんのやな・・・。」

規則正しい横島の呼吸の向こう、窓の外から聞こえる音を耳にして、鬼道は一人呟いた。首を廻らせ、横島のあどけない寝顔に目を向ける。

自分とこの子は、愛し合っているから体を重ねた訳ではない。
ただ単に、お互いの持つ寂しさを紛らわせたかっただけなのだろう。

この様な関係になったからといって別に幸せになれる事も無いし、希望の未来を手にした訳でもない。

所詮、傷を舐めあって慰めあっているだけに過ぎないのだ。

それに、このベッドの暖かさが永遠に続きはしないという事も理解している。
またすぐにでも、自分もこの子も冷たい現実と向き合う日々に出て行かねばならないのである。

・・・だけど、せめて今この時だけは。

「この雨が止むまでは・・・一緒におろうや、横島くん・・・。」

腕の中の温もりを確りと抱き締め目を瞑る。
また少し勢いを増した黒雨の向こうに、鬼道は蛍光の幻を見たような気がした。


                 了


あとがき。

皆様こんにチワワ。
またしてもやってしまったおびわんです。

前回の予告どおり、鬼道×タダヨ、お届けしました。
初の完全シリアス。死ぬほど苦労しましたよ。

それにしても、女性化した男の心理なんて書くの初めてですよ。
しかもそれが横島くんですからね。

相変わらずHシーンはぬるいし・・・。
うぇ〜ん。


遅れすぎですが、前回へのレス返しです。

>紅様。

パピはもっと壊そうとしてたんですが、流石にやばいと思って
削除しました。ホントなら××××が○○○になって・・・。

>D,様。

バイオは怖そうなのでやってません。
『かゆうま』はネタとして知ってるだけです。
おそらく、もんのスゴイおなピーではないかと・・・。

>MAGIふぁ様。

レス有難う御座いますっ! めちゃ嬉しいっ!!
こんな所で言うのもなんですが・・・ファンなんです。

某所の『何度も逆行を繰り返してしまうシンジ君』小説、大好きです。

>ncro様。

『うま』は三角木馬のヒンベエですyo!!


△記事頭

▲記事頭

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