ありふれた、ごくありふれた日常の一こま。
何気ないソレも、ひとつの「ありふれない」原因でまるっきり違うものへと変わってしまうものである。
コレは、そんな非日常を体験した者たちの物語・・・
デムパ読み物
「シロとタマモの入れ替わるって事は・・・」
ぴぴぴぴ・・・ぴぴぴぴ・・・ぴp(かち)
「ん・・ぁ」
布団の中から眠そうな声が発せられ、続いてけたたましく鳴っていた目覚まし時計がとめられた。
「銀髪の少女」は、眠そうな目をこすりながら、ゆっくりと布団から這い出すと、いぶかしげな表情で時計を見る。すると、一瞬怒ったような顔をしてとなりの布団を睨んだ。
しかし、ため息をもらすだけに留めると、頭から布団を被りなおし再び心地よい眠りの丘へ旅立っていった。
数時間後・・・
「あぁぁぁあぁぁぁぁあぁあぁぁ!!もうこんな時間でござる!
先生とのサンポがコレでは間に合わないでござるよ!!」
となりの布団から、「金髪の少女」が叫び声と共に跳ね起きた。
耳の中に違和感を感じたようで、詰められていたイヤーウィスパーを引っ張り出すと、その詰め物をしたであろう犯人を見つけ、じとっと見つめながら布団をひっぺがえす。
「まったく!この女狐は!いつの間に拙者の耳にこんなものを仕込んだでござ・・る・・・・か・・・・・・」
「金髪の少女」は、思わず目の前に広がった光景に言葉途中で絶句した。
程なくして、先ほどの絶叫と、突如感じた肌寒さから「銀髪の少女」が目を覚ます。
「うるさいわね!アンタがサンポに行くのは別にかまわないけど、私を・・・・私・・・・・え?」
恨み言が途中で途切れ、こちらも唖然とした表情をして、布団をつかんだ「金髪の少女」を見上げる。
数分の時が経ち、二人同時に叫んだ。
「どうして(私)(拙者)が目の前にいるの(よ)(でござるか)!!」
「んー どうやら二人の魂がいれかわっちゃったみたいなのねー。」
ヒャクメはそう言うと、二人を調べるために使っていた機材をかばんにしまいながらそう答えた。
「あんまり心配することはないのねー。多分、二人の種族が近い事と、二人が何時も一緒にいる事とかが重なってたまたま起こったことだろうから、一晩寝れば元に戻れると思うのねー。」
ヒャクメの答えに、「金髪の少女」と「銀髪の少女」はホッとしたように胸を撫で下ろす。
ここになぜヒャクメがいるかというと、美神達が二人の少女の変わり様にワタワタしている時に、
「神さまは、見ていたのねー!!」
と、いきなり登場したのである。
それでいいのか?神様って・・・
テキパキと帰り支度を済ませたヒャクメは、「人間界に長くいると(小竜姫に)怒られるのねー」とまくし立てると、
「コレで事件は解決したのねー!!」
と言って、ワタワタとゲートをくぐり、戻っていった。
美神は、異常事態が短時間で終わると解り、気を取り直して電話を手にした。
「美神さん、どうしたんですか?」
黒髪の少女・・・おキヌが美神の行動に問いかける。
「ん?・・あぁ。心配が無くなったとはいえ、このままじゃ仕事に影響がでるからね。
シロもタマモも何時もどおりに動けるとは思わないし、下手したらコッチの身も危なくなるから、今日の分の仕事を延期するのよ。
今日は一日ゆっくりしましょう。」
「美神(さん)(殿)・・・」
美神の意外な優しさに、おキヌ達は胸を暖かくする。
「そ・・その代わり、明日はいつもの倍は働いてもらうからね!!」
美神はそっぽを向いて皆に言っているが、耳が真っ赤に染まっていることから説得力は無かった。
「でも、その格好してたら入れ替わってるのが解り辛いわね。
・・・・そうだ、あんたら服だけでも自分の服着なさい。」
一方横島は、毎朝のサンポ(という名の耐久マラソン)が無かったおかげで、学校の授業もまじめに受けることができた。
「やっとやる気がでのね。青春だわ」とか「熱でもあるのか?」とか「天変地異の前触れだ!」とか「貴様!偽者だな!本物をどこへやった!」など、殆どいじめのような事を言われたりしたが・・・概ねいつもどおりの平安な日常を過ごせたと、ニコニコしながらバイト先へ向かった。
「ちわーっす。横島忠夫!ただいま到着しま・・・・し・・・・た?」
横島は、目の前の光景に違和感を覚えた。
いつものメンバーがそろっているのだが、どこか変なのだ。
マホガニーの机に肘を立てて横島を見ている美神。お盆の上にお茶を乗せて横島へ微笑みを投げかけるおキヌ。
カットジーンズにへそだしルックで横島を見ているタマモ。眉根を寄せて髪が痛んだと大人しく櫛を通してるシロ。
何時も通りのメンバーであr・・・・
「シロ!タマモ!お前ら一体どうしたんだ!!」
横島の叫びがこだました。
「なるほど〜そういう事情があったんですか〜」
美神から事情を聞き、納得した様子の横島は、そういうこともあるんだなと暖かい目でシロとタマモを眺めた。
一方シロとタマモは、
「手の先に霊波を集め、指の先に刃が伸びるように・・・爪がそのまま伸びるように・・・そうそんな感じでござる。」
「相手の目を見つめて、自分が思い描いた光景を・・・んー口で伝えるのは難しいわね。」
お互いの魂が入れ替わった状況を楽しんでいた。
霊波刀の出し方を教わったり、幻術の使い方を教わったり。
シロがタマモを馬鹿にしたり、タマモがそれに怒ったりする場面は中々見れるものでは無い。
シロもタマモも、本気で怒っている様子ではない。どちらかというと、じゃれあっているように見える。
初めてこの二人を見た人は、仲の良い姉妹に見えるかも知れない。
事務所のメンバーも笑みを浮かべながら、この微笑ましい非日常を楽しむことにした。
「んじゃ、ここら辺で俺は失礼しまっす。」
夜も遅くなり、横島が帰宅する時間となった。
特に、何の事件も起きず、何時もと同じ日常を、ちょっと違った状況で楽しんだメンバー達。
シロが油揚げを美味しそうに食み、タマモが熱々のステーキを食べたり。
タマモが横島の顔をなめまくったり。
シロが横島を夜のサンポに付き合わせようとしたり。
全員が笑顔ですごせたのは、何物にも替え難い安らぎであった。
しかし、楽しい時間はすぐに過ぎてゆくもの。
それは誰しも例外はない。
明日からはまた、何時もの日常を送ることになる。
楽しかった時間は思い出となり、何時しか振り返ることもあるであろう。
『人は、思い出を積み重ねて生きていく生き物。』
誰かの言った言葉。
今日はソレを存分に味わったメンバーであった。
「中々面白かった出ござるな。」
「まぁ、偶にはこういうこともあって良いんじゃない?」
屋根裏部屋でいつも通りに布団を並べる二人。
何時もの場所ではなくお互いの場所の布団にもぐりこむ。
「明日からは何時も通りでござる。ちょっと名残惜しいでござるな。」
そういいながらイヤーウィスパーをつけるタマモ。
「サンポもほどほどにしなさいよ?そうしないとその内横島が倒れるわ。」
そういいながら目覚まし時計をセットするシロ。
明日からの日常に備える彼女達は、微笑みながら、楽しかった非日常に別れを告げた。
「「おやすみなさい。」」
二人は布団の間から手を伸ばし、手をつないで眠りに着いた。
「「きゃーーーーーーーーーー今度はいったいなん(なのよ!)(でござるか!!)」」
次の日、屋根裏部屋から「銀髪」を「九つのポニーテール」にした一人の少女が発見され、再び、日常が非日常へと変化した。
あとがき
どうも、皆様お久しぶりです。
たかす氏の絵に触発されて、久々に描いてみましたが・・・・・・・・・
腕が落ちてる。オチが弱い。ショートなのに時間がかかった。
などなど、反省する点がいっぱいです。
しかし、こういったSSSは鮮度が命なので、ためらいつつも投下w
しかも、たかす氏には無断で投下してるので、何時怒られるかどきどきだったりw
思い出せば、物語を投稿するのも、はっかい。氏のレスにちょこっと描いたことが切欠だったんですよね〜