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▽レス始

「大きくなったら(GS)」

さみい (2005-03-20 21:38)

「パピリオは大きくなったら何になるの?」
妙神山居住区にある居間でアタチは美神から聞かれ、とても戸惑った。普段はサル爺・小竜姫と3人(柱)での食事なのが、ヨコチマ・美神・おキヌがここ妙神山に修行に来ていて、お陰で随分賑やかでちた。

アタチは魔族。アシュ様によって生まれた時強大な力と引換に1年間という短い寿命が設定された。戦争後これは解除されたが、逆にアタチは何年経っても変わらないことになった。

「そんな先のことを聞いてどうするんでちゅか!」
怒っているように答えたアタチに廻りにいたヨコチマ・おキヌも驚いたようでちた。

アタチが大きくなる頃には美神もヨコチマもとっくに死んでいるでちゅ。
そう、大きくなったアタチを一番見てもらいたいヨコチマはいない。ヨコチマの娘として人に転生してくるルシオラちゃんですら亡くなって数百年たっているころでちゅ。

そんなの嫌でちゅ。

アタチは大きくならなくってもいい。今のままでいいから、みんなと楽しく幸せに過ごせればいい。そう思ったアタチはその場から逃げるように自室に引きこもった。


アタチは布団を被って丸まって泣いていた。

アタチはどうしたらいいんだろう。早く大きくなって美しい蝶となったアタチをヨコチマに見てもらいたい。でもアタチは魔族。数千年もの寿命を持て余す存在。
アタチは何になりたいのか自分でも判らないでちゅ。今は小竜姫に預けられ修行の日々でちゅけど、いったい修行が終わることはあるのでちょうか?ベスパちゃんみたいに軍に入るとかヒャクメみたいに情報機関で活躍するとか出来るのでちょうか。出来たとしても何百年後なんでちょうか。

人間の子供だったら、十年・せいぜい二十年もすれば大きくなった姿をヨコチマに見てもらえるでちゅ。綺麗になったアタチ、一生懸命仕事をしているアタチ、スポーツや趣味を思いっきり楽しんでいるアタチをヨコチマに見てもらえるでちゅ。

アタチはアシュ様が言っていた言葉を思い出ちまちた。
「魂の牢獄」
アシュ様とベスパちゃんの会話を聞いた時は判らなかったでちゅけど、今は判るでちゅ。アシュ様の悲しみも願いも。


トントン
アタチの部屋に来たヨコチマがドアをノックする。そしてヨコチマは遠慮がちに部屋に入って来たでちゅ。
「パピ、急にどうしたんだ?」
布団の横に座って心配そうに尋ねるヨコチマ。また心配をかけてちまいました。

「アタチは大きくならなくってもいいでちゅ。いつまでもヨコチマやみんなと楽しく幸せに過ごせればいいでちゅ! 大きくなっても、それを見てくれるヨコチマが居なきゃイヤでちゅ!」
布団のスキマから堰を切ったように思いをヨコチマに伝えると、アタチは布団から飛び出してヨコチマの膝で泣きじゃくった。


居間では先程パピリオが急に出て行った後、横島が後を追いかけて出て行ったので、美神令子と小竜姫・おキヌだけが残されている。
「何なの、あの子は」
美神はちょっと不思議そうだ。おキヌも呆然としている。そんな二人に小竜姫が静かに話し始める。
「パピリオが大きくなった自分を一番見てもらいたいのは横島さんなんです」
おキヌはハッとした顔をした。美神は
「そりゃそうでしょうねぇ。アイツのことペットにした位なんだから・・・。
あっ!」
「そうです。なのに横島さんに成長した自分を見てもらえることは決してありません」
「可哀想なこと聞いちゃったわね・・・」
「アシュタロスが悩んだ『魂の牢獄』、娘のパピリオちゃんにも別の形で引継がれちゃったんですね・・・」
「そうです。私だって時々思います。横島さんが居ない世界なんて、って。それでも私は横島さんが生をうける遥か前から生きていますから、そのうち生まれ変わった横島さんと出会えることを待つことで耐えられると思います。でもパピリオは最初の頃から横島さんと一緒なんです。死別に耐えられるかどうか。」
3人(柱)は押し黙ったままだった。


ヨコチマはずっとアタチの頭を撫でてくれた。そして言った。
「そうか、パピは気にしていたのか。
そうだよな、たった1年だった寿命が今度は数千年だもんな・・・。
ありがとう、パピ。俺に一番見てもらいたいって言ってくれて」

「ヨコチマが居なきゃ大きくなりたくないでちゅ!」
「パピ、俺は死んでもお前のことを見守っているから、そんなことを言うんじゃないぞ。お前は大事な妹だからな。将来生まれるはずのルシオラもそうだ。
日本じゃ『草葉の陰から』っていうんだけど、俺たちはいつでもどこでもお前のことを見守っているぞ。それに生まれ変わっても、きっとまたお前と出会うさ」
「ヨコチマ〜!」
アタチはまたヨコチマの膝に頭をうめて泣きじゃくった。


翌朝。ヨコチマの膝で思いっきり泣いたしたアタチは元どおり元気になった。
「パピリオ、昨日はごめんね」
朝食の時に美神が昨日のことを詫びたでちゅ。天変地異の前触れじゃなきゃいいでちゅけど。
「いいでちゅよ。アタチは大きくなったら魔界と人界・神界を繋ぐ外交官になるんでちゅ。ヨコチマたちが築いた神魔界と人界の繋がりをずっとずっと太く強くするでちゅ。」
「そっかぁ、パピは外交官かぁ。」
ヨコチマはアタチの頭を撫でてくれたでちゅ。
「そうでちゅ。美人で辣腕で優しい外交官でちゅ」
「その前に赤ちゃん言葉直さなきゃな」
「ヨコチマ、それひどいでちゅ!」
そう言ったアタチは朝食を食べ始めた。ヨコチマの卵焼きも食べちゃうでちゅ。
「あっ、こらっ、パピ。人の卵焼き盗るんじゃない!!」
アタチはヨコチマとの会話を楽しみながら、おキヌが作った美味しい朝食をさらに美味しく頂いたでちゅ。いつもの日常の始まりを感じながら。

(完結)

さみいです。
パピリオはいつ大きくなるのでしょうか。それがこの話を書くに至った動機です。サ○エさんちのタラちゃんを例に挙げるまでもなく、マンガは多かれ少なかれ時間の流れが異常なのですが、いつか(18禁ものじゃなしに)大人になったパピリオを見てみたいものです。その名の通り、そして美人の姉たちに負けないくらい美しくなるのでは?と私は思います。


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