インデックスに戻る(フレーム有り無し

▽レス始

「再開の果てに・・・ 前編(GS)」

ファリス (2005-03-18 03:40)


皆様、この名も無き語り部の劇場にお越し下さいまして、
真にありがとうございます。

さて・・・それでは今回は、一人の男性と女性の話をしようかと思います・・・
千年越しの再会の末に恋人となり夫婦となりながら、
再び長い別れを体験する事になった一組の男女の物語の一説を・・・・・・


それでは、これより『再開の果てに・・・』を開幕とさせて頂きます・・・


青々とした木々が左右に立ち並ぶ石段が、山の頂上付近にまで伸びている。
その長い石段を一人の若い女性がゆっくりと登っていく。
いや、「一人」と言うのは明確ではない。
その女性の腕の中には一人の赤子が抱かれているのだから。
ゆっくりと石段を登っていく女性は、意志の強そうな瞳を石段の上・・・
人が死んでしまった時、遺骨を納める場所である寺を見据えている。
隠そうとしても隠し切れていない悲しさと寂しさを宿しながら・・・

その女性の風貌は,髪の色は亜麻色で腰の辺りまで伸ばし黒いスーツに見を包んでいる。
この女性の名は美神・・・いや、『横島 令子』と言う。
令子の腕の中でスヤスヤと寝ているのは、ほんの数日前にこの世に生を受けた『横島 蛍』。
・・・悲しい事ながら、世界最高のGSと呼ばれるようになった『横島 忠夫』の忘れ形見である。

 令子は泣き腫らし真っ赤になった目で、母としての優しい眼差しで蛍を見下ろしながら、
出産の為に入院していた病院で聞いた話を思い返していた。


―――数日前・白井総合病院産婦人科 午前3時―――

「・・・え?」

令子は最初、何を言われたのか理解する事が出来なかった。
その様子を見て取った令子の母である美智恵は、もう一度先程と同じ事を令子に伝える。

「いい、令子。気をしっかりと持って聞きなさい。・・・横島君が死んだわ」
「な、何をバカな事を言ってるのよ、ママ。忠夫が死ぬ訳がないじゃない。
忠夫は最近、世界最高のGSって呼ばれる様になった程の男なのよ?
昔の忠夫ならいざ知らず、今の忠夫がオカGとの共同除霊で死ぬ訳が無いじゃない」

そう美智恵に言いながらも、令子の顔は真っ青になっている。
虫の知らせというのだろうか。
出産が終わり、生まれたばかりの子供を眺めていた時、令子は言い表せ無い不安を感じ取っていた。
その時は、忠夫が怪我でもしたのだろうか?と考えていたのだが、
不安は時間が経つに連れて大きくなっていった。
そして、つい二時間程前にまるで半身を無くしたかの様な喪失感を感じていた。

「・・・これは本当の事なのよ、令子。
出産直後の貴方に言うか迷ったんだけど、彼から伝言をあずかっ」
「いやっ!聞きたくない!!」
「令子!」
「忠夫が死ぬ訳ないじゃない!生まれてくる子供の性別も知らないまま死ぬ訳ないじゃない!」
「え?」

 その令子の言葉に、美智恵が驚きの声を僅かに挙げる。

「どう言う事なの?令子」
「どうもこうも、生まれてくる子供の性別は、調べないで生んだ時の楽しみにしようって、
あいつと話して決めてたのよ!?だから、子供の性別も知らないまま死ぬなんて事ありえないのよ!」
「ちょ、ちょっと待って令子。・・・それは本当の事なの?」

 美智恵は令子の言葉を聞き、明らかに狼狽えていた。
何故、美智恵が狼狽えているのか分かるはずも無い令子は、頷く事で答える。
令子が頷いた事を見た美智恵の瞳から一筋の雫が流れ落ちる。
それを手で拭うと、美智恵は「そう・・・」とだけ呟き黙ってしまった。

「どうしたの、ママ?」
「令子・・・生まれた子供は娘なのよね?」
「ええ」
「横島君の伝言はね、『娘には『蛍』って名付けてやってくれないか?』という物だったわ」
「え?」

 美智恵のその言葉を聞いた令子は目を見開き、驚いた表情を浮かべる。

「そうね・・・今日の、いえ、もう昨日ね。
共同除霊で何があったのかを順を追って話すわね」


―――昨日 午後九時・共同除霊現場―――

今回の依頼はオカGが横島君にスッケトとして来て貰ったのは知ってるわね?
最初は本当に何でもない。ちょっとだけ厄介な除霊だったわ。
だから、横島君が手伝ってくれれば直ぐに終わって、令子の出産にも間に合うと思ってたわ。


「横島君、いいのかい?令子ちゃんの出産に立ち会わないで?」

除霊の現場となっている廃ビルを見上げていた横島に後ろから声が掛けられた。
ここ数年で聞きなれた友人の声だった為、後ろを向く事無く返事を返した。

「西条か・・・まあ、見た限りは普通の悪霊が人質を取っての立て篭もりだからな。
そんなに時間も掛からないだろ。出産予定の時間は十一時だしな」
「しかし、出産と言うのは時間が中てにならないそうじゃないか」

西条がそう言うと、横島は振り返ってから答える。

「まあ、そうらしいけどな。油断はしないが、これくらいの除霊ならそんなに時間も掛からないって」
「あら。それが油断って言うのよ?横島君」

横島が西条に答え終わると同時に、横から声が掛けられる。

「た、隊長!い、いえ、そう言う訳じゃ・・・」

狼狽えながら答える横島に、美智恵は軽く微笑みながら「冗談よ」と言い、話を続ける。

「でもね。今回の除霊は本当に厄介なのよ」
「そうですか?見た感じ、俺が来る必要は無かったと思うんですけど?」

その横島の言葉に美智恵は「こういう所はまだまだなのね」と言い、横島に説明を始めた。

「いい?厄介な部分は、悪霊が一体じゃない事が一つ。人質が数人いる事が一つ。
通路が一本道のみと言う事が一つ。あと・・・」
「あと、何ですか?」

そこで、少し口を紡いだ美智恵に横島が質問する。

「立て篭もった理由を言ってこない事が可笑しいのよ」
「そうなんですか?」
「オイオイ。しっかりしてくれよ、横島君」

美智恵の言葉に質問をした横島に、今度は西条が話し掛ける。

「ん?どう言う事だ?」
「いいかい?大体の立て篭もりやジャック犯は何かしらを要求してくるだろ?」
「ああ、そうだな。昔、令子がGメンの手伝いをした時のバスジャック犯なんか、
東京ドームに自分の墓を建てろって言ったくらいだからな」
「だろ?所が、今回の立て篭もりは人質を取っていながら、何の要求も無い」
「・・・可笑しいな」

横島はそう呟くと、顎に手を当てて考え出した。
その横島の呟きを聞いた美智恵と西条は黙って頷くと、ジッと横島を静かに見ている。
横島の突発的な発想はこういう真剣に考えている時に出る為だ。
と言っても、美智恵の中では既に、横島が来た時点で一つの突入作戦が出来ている。
それを言わないのは何故か?横島が自分と同じ作戦を思い付けるかテストをしているからだった。
自分と違っていれば、両方の作戦を比べてみて、いい方を使えばいいのだから。

「(ん〜、文珠の転移でも行けなくは無いけど、移動できる人数は俺を入れて三人が限界だし、
かと言って、正面から気配を消して近付こうにも、一本道だから直ぐに見つかるだろ・・・)」

そう考えながら、横島は再度ビルを見上げる。
すると、何かを思いついたのか、美智恵に悪霊達は何処の部屋に立て篭もっているのかを聞き出した。

「えっと、隊長」
「何かしら?」
「悪霊が立て篭もっている部屋はあの部屋でいいんですよね?」

横島が指差した場所は最上階の一階下の部屋で、殆どの場所がガラス張りになっている。

「ええ、そうよ」
「じゃあ、今文珠のストックが五個あるんで、それを使って突入しましょう」
「どう言った作戦かしら?」

美智恵が横島にそう聞くと、横島は自分が考えた作戦を話し始めた。

「まず、俺と西条、それと突入チームがヘリに乗り込んで、
ビルの裏側からヘリで俺と突入チームが屋上に降ります。
突入チームの編制は隊長に任せますね」
「分かったわ」

美智恵はそう言うと、突入チームの編制の為にその場を後にした。
横島の考えた作戦が、自分とほぼ同じ物だと確信した為だった。

「で、西条以外の全員がヘリを降りたら、ヘリはビルの更に上空で待機。
そして、俺達が降下用ロープを取り付け終わって準備が済み次第、ガラスに穴を開けます。
これは西条の射撃の腕が無ければ出来ない作戦です」
「ちょっと待った、横島君」

この横島の作戦に待ったを掛けたのは、狙撃手に任命された西条だった。

「その作戦はいいとは僕も思う。だけど、文珠に込める文字は何だい?
それに、使う弾も普通の物を使うと、音で悪霊に気付かれてしまうんだよ?」

その西条の言葉に、分かっていると言いながら横島は頷くと、
ガラスに穴を開ける為に使う弾を掴み、それに文珠を二つ近づけていく。
文珠に込められた文字は、『無』『音』

「これで、発砲音とガラスに当たった時に発する音は防げるだろ?」
「なるほどね」
「で、残り三つの文珠は、一つは『縛』で、悪霊達の動きを止めるだろ。
で、残りの二つは、もし何かがあった時の為の予備だな」

この横島の作戦に西条は関心し、美智恵は満足げな笑みを浮かべながら、
突入チームの編制が終わったのか、何時の間にか傍で聞いていた。

「編制が終わったわよ。横島君と一緒に突入するなら、この二人以上の者はいないわ」
「先生、お久しぶりでござる!」
「横島、元気だった?」

美智恵に連れられてきたのは、嘗て美神除霊事務所でチームを組み、
現在はオカG所属のシロタマコンビだった。
二人がオカGに所属している理由は、横島争奪戦に敗れ事務所に居辛くなった為らしい。
ちなみに、氷室キヌは現在実家に帰郷中。

突入チームの編制が済み、人質解放作戦は開始された。
この後に、悲劇の運命が待っている事も知らず・・・・・・


前編 完


あとがき
皆さん、お久しぶりです。
私なんかの作品を読んで頂き、大変嬉しく思っています。
掲示板に書き込んでから時間が掛かったのは、学校の卒業課題の追い込みだったもので、
書くことが出来なかった為だったりします。
一先ず、絶対に物語を書く腕は落ちているので、短編?を書きました。
これは、後一、二話で終わる話です。
これが終わり、感想で言葉を頂き終わりましたら、連載を再開したいと思います。
それでは・・・


△記事頭

▲記事頭

テレワークならECナビ Yahoo 楽天 LINEがデータ消費ゼロで月額500円〜!
無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 海外旅行保険が無料! 海外ホテル