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▽レス始

「ある日の午後(GS)」

翔 (2005-02-10 16:55)


「ねぇ、パパ。これなぁに?」
 五才位の女の子が父親に尋ねている。父親は水辺をのぞき込み、少し驚いたようだった。
「……へぇ、珍しいなぁ。これはね、蛍という虫だよ」
 そう言って娘を抱き寄せた。
「ほたる?」
「そう、“蛍”と同じ名前の蛍だよ。夜になるとね、蛍が光ってるのを見るとね、それはもう、とっても綺麗なんだよ」


ある日の午後


「きれいなの?」
 可愛らしく小首を傾げて訊いてくる娘に父親は、頭を撫でてやる事で答えた。女の子は目を細めながらも、少し恥ずかしそうに、頬を膨らませた。
「もう、パパ! ほたる、子どもじゃないんだから、あたまナデナデしないで!」
 頬を膨らませながら怒っている様子がまた可愛らしく、父親は相互を崩しながら、「うんうん」と更に娘の頭を撫でてる。そしてますます女の子はむくれる。その光景はこの親娘にとって、最近とみに見られる光景となりつつある光景であった。

「もう。でもきれいなら、ほたる、ほたる見てみたいなぁ」
 子供でも女の子は女の子。やはり綺麗な物に興味を覚えるようである。綺麗な光景に心を踊らせて、「ほたるさん〜ほったるさん〜」と唄いながら歩きだす。
「よし、それじゃ夜になったらママと一緒に見に来ようか」
 唄いながらトテトテと歩く娘の手を取り、笑いかける。待ってました、とばかりに笑顔で女の子は頷く。
「うん! くるくる!」
 今は一緒に居ない母親を誘って、一緒に来る。そして「私が見つけたんだよ!」と自慢する。今から考えただけでワクワクする。ママはなんと言ってくれるだろうか。考えたら嬉しくなる。

 心浮かれる娘を見守りつつ、微笑む。この瞬間が彼は一番好きだ。家族が居て、最愛の娘が笑っているこの光景が好きだ。この笑顔を護りたいと思うし、手放したくないと思う。 蛍が“彼女”なのかどうかは、分からない。ただ、神・魔族の協力を得て試しはした。元々、「魂が弱いと流産するからダメだと思う」と言うことで、無事に産まれた事を考えると娘は“彼女”なのかもしれない。


 以前、彼の上司も言っていた。
「私くらい霊力が高くても前世の事を覚えて無かったわ。ヒャクメに視て貰う以外では、彼女自身が思い出さない限り確かめる術は無いわ。そしてね、横島クン。どんな理由があれ、貴方は自分の娘の前世を確かめるの? それは確かめたい気持ちも分かるわ。でもね横島クン。彼女は貴方の幸せを願ったの。自分の子供が彼女じゃないと知りながら、貴方は心から愛せる? その時貴方は本当に幸せって思えるの?」
 と。彼はこの時答える事が出来なかった。

 だから彼は確かめようとは思わない。確かに彼女の事は愛した。しかし、当然娘も“娘”として愛している。娘だけではない。妻も、この間妻のお腹に宿った第二子も、だ。将来的に娘が“思い出す”事があるかもしれない。それについての覚悟は結婚する時に決めている。それが最低限の男としての義務であり、夫としての妻への誠意であると思ったから。
 家族としての“絆”、それが妻が家族に欲したものであり、彼も家族として当然の事と思う。夫として、父親として、家族として。考えないといけない事は尽きない。

「…パ、パパってば!」
 娘が手を引っ張りながら呼び掛けていた。自己の中に没頭していたせいか、気が付かなかった。
「どこいくの? スーパーはこっちだよ?」
 娘が、もぅしかたないなぁ、といった感じでまた頬を膨らませていた。
「あ、あぁ、ごめんごめん。パパちょっと考え事に夢中になってたみたいだったよ」
 そう言って頭を掻く。反省しなくてはと思う。目の前の娘を蔑ろにして、何が父親だというのだろうか。
「ごめんな、蛍。よし、じゃあママが帰って来る前にスーパーでお買い物だ。今日の夕ご飯はカレーだぞ?」
「カレー!? やったー!」
「じゃあ、さくっとお買い物済ましてしまおうな」
 再び娘の手をとり、歩き始める。やっぱりカレーのルーは甘口なんだろうなぁ、と考えながら。


 買い物を済ました帰り道。夕方に差し掛かり、家路に着く人やスーパーのタイムセールに駆り出る主婦に時間などお構いなしにギリギリまで遊ぼうとする子供達。そんな人々を後目に家へ帰る。
 四つ角を曲がり、目の前には地平――建物の隙間へと沈み込む太陽。
「わぁ……パパ、きれいだね」
「…………そうだね、夕日がとってもきれいだね、蛍」
 娘はとても可愛く笑っていた。彼もとても綺麗な顔で微笑っていれた。
「さ、蛍。早く帰らないとママが帰って来ちゃうから早く帰ろうか?」
「うん!」
 親娘は歩みを早めて家へと向かう。そんな親娘の後ろから、真っ赤なボディーのコブラが近づいてきていた。

 夕日はいつもいつまでも変わることなく、親子――家族を照らし続けていた。水辺の命と共に。


 あとがき
 まずは言い訳をw(マテ 今回、携帯で書いてネットカフェから書き込んでので誤字脱字が目立つかもしれませぬ。ご容赦くださいませ。
 昨日、電車の中で仲のよい親子を見かけました。それで、思いついて携帯でちまちまと思わず書いてしまいました。短かったりしますが、その点も含めてご容赦ください。

 追伸(という名の私信(?)<マテ)なんとか生きてますw(ぉ


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