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▽レス始

「ごーすとすいーぱー・せかんどすとーり 第二話(GSinSO2)」

<える> (2005-02-09 07:55)


「まぶ・・・しぃ・・・」

瞼に強い日差しを感じ、うっすらと目を開いた。背中にはごつごつとなにやら硬いものを感じ、あんまり寝心地がよくない。
正直、寝覚めは最低だった。

「うぅ・・・痛たたたぁ・・・ここ、どこだろう・・?」

視界には、生い茂った植物。
南米方面の密林を思わせるそれは、都会育ちの俺にはとんと馴染みがない。

周りには誰もいない、とにかく静かな密林だった。

あぁあ・・・なんで俺はこんなところにいるんだったっけ?
たしかオヤジから逃げたくて惑星調査に志願して、それから惑星について・・・

『―――そうだ、惑星の遺跡を見つけて、装置が作動して・・・』

装置に刻まれていた法印はあまりに複雑で、まったく理解することはできなかったけど・・・この状況から考えて、効果はひとつしか思いつかない。

「空間転移・・・しかも惑星を超えた転移・・・・?」

今まで勉強してきた力学や霊能学ではまったく説明の余地もない。
確かにあの装置が複雑かつ高技術であったことは認めるけど・・・それでも、あの規模の施設程度で人間ほどの大きさの物体を転移させようなんて尋常じゃない。ほとんど不可能だ・・・・。

でも、いくら頭の中で否定しても―――こうして目の前で起こっている。

「と、とりあえず『マリア』と連絡を取らないと・・・』

懐にしまっておいた携帯端末を取り出す。
強力なICチップと法印が組み込まれたこの端末は、たとえひと銀河離れていても通信可能という優れものなのだ。

「えと、戦艦の認識番号は・・・」

希望を託し、ゆっくりとインプットする・・が、聞こえてくるのはザー、という耳障りな雑音だけだった。
通信機が通じない?
つまり複数の銀河、数百光年を超えた場所に・・俺は今いるっていうことになる。

冗談じゃない、そんなことはありえない。

たとえあの星で滅んだ文明がどれだけ優れていたとしても。それだけの距離を、一瞬で?
繰り返すことになるけど、本当に不可能なことだ。
少しでも量子学を学んだものなら分かるはずだ、移動した距離と質量の掛け算が必要なエネルギー量になるなら・・その値は天文学的なものになるんだから。

「しょうがないな、いつまでもこうしてはいられないし・・・。
 しかしここはどこなんだろう、雰囲気からして未開惑星みたいだけど。」

すると、草むらの奥からわずかに物音が聞こえてきた。
そう、たぶん、人の気配。

好奇心と、幾らかの危機感からそちら側を覗いてみた。

『・・・・・・・女の子?』

そこにいたのはたぶん俺とそう年の違わない、黒髪の美少女。
おかっぱ風な髪型だったけど決して地味ではなく・・・本当に神秘的で、かわいかった。

彼女の周りには発光する虫・・・蛍かな、が飛び交っていて、余計に神秘さを際立たせている。
声をかけるのも戸惑われるほどその光景は優雅で、いつまでも見ていたかったが、これではただの覗き魔だ。

「――――あの・・・」

意を決し、彼女に声をかけた瞬間だった。

「きゃぁああああああああぁぁぁぁーーーっ!!!」

少女の張り詰めたような叫び声があたりに響いた。

『な、なんだ・・・俺、どっか変な身なりしてるかな? 結構本気で傷ついたりして・・・』

が、すぐに彼女が俺の方を見ていないことに気づく。
怯え戸惑う彼女の視線の先にいるのは・・・・地球でもそうは見られないほどの強力な悪霊だった。

「くそっ、なんでこんな未開惑星に来てまで・・っ!」

躊躇する暇もなく、彼女の元へと駆ける。悪霊の爪が彼女のすぐそばまで迫っていた。

「危ない!」

咄嗟に近くに転がっていた枝をつかみ、渾身の力で悪霊に斬りかかる・・・が、それは空しく宙を切っただけだった。
くそ、俺は馬鹿か。霊に物理攻撃が聞くわけないじゃないか。心の中で悪態を吐き、標的を俺に変えた悪霊の一撃を紙一重でかわした。

「こっちだ、化け物!!」

大声で注意を促す、これで完全に彼女のことは悪霊の頭からなくなったと思う。

「だ、駄目です!あいつらには私たちの攻撃がなにひとつ通用しないんですっ!!」

少女からのアドバイスらしき声が届いた。
何ひとつ?そんな馬鹿な。こいつら悪霊が、冥界の住人たちが俺たちに敵うはずがない。
ゆっくりと精神を集中し、もう一度悪霊の攻撃を紙一重で避け、俺は右手に渾身の霊波刀を紡ぎあげた。

「ひ、光の剣・・・?」

ただ、この規模の悪霊相手だとこれでは消滅できない。それどころか中途半端な霊波攻撃は彼らの活気を促すだけになってしまう。

『どうすればいいんだ、どうすれば・・・っ!!』

考えこむ暇もなく、悪霊は次々と襲い掛かってくる。それを霊波刀で薙ぎ払いつつ、後ろへ後ろへと下がっていった。
・・・気づいたらもう後ろには大木が差し迫り、逃げ場すら失っていた。

「くそ、まだ綺麗な姉ちゃんとくんずほぐれずのプロレスもしてないのに、こんなところで死んでたまるかっ!!」

苦し紛れに叫ぶが、手はなかった。好機と見たのか悪霊は大振りの一撃を繰り出そうとする。

「きゃぁああぁ!!」

少女の叫び声がもう一度聞こえた。俺の方を見ていられないとばかりに両手で顔を覆っている。
くそ、本当にこれまでなのか・・・?

諦めかけたそのときだった。ふと、懐が熱を持っていることに気づく。

『なんだろう、ポケットになにか入れた覚えは・・・。』

手を突っ込んで中から出してみると、ビー玉のようなものが数個見つかった。
そういえば遺跡でオヤジが最後になにか俺に渡したような気がする。
それは古ぼけてはいるが、依然輝きを失ってはいない宝玉・・・。

『くそ、こんなの何の役に立つんだよ!なにがお守りだ、肝心なときに・・・っ』

それより力、力が欲しい。
このままだと悪霊は俺を喰らったあとで、きっとあの少女にも手を出すだろう。

許されるか?自称最高のフェミニストを気取っている(笑)俺が、そんなことを!

「力・・・もっと力があれば・・・オヤジみたいな力があれば、こんな悪霊なんて・・っ」

いまだかつてないほど、強く願った。
力が欲しい。この悪霊を一瞬で成仏させることにできる、強力な出力を持った力・・・。

何度も憧れた、あのクソオヤジの、それでも美しい輝きを持った霊波刀・・・!

「え・・・・?」

そのとき、目を疑うようなことが起きた。投げ捨てたはずのビー玉がひとつ、宙に浮き上がり、さっきよりさらに強い光を放っている・・。
そしてそれに呼応するかのように、右手を纏っている霊波刀が信じられないほどのエネルギーを携えていた。

「う、あ・・・熱い!な、なんだこれ・・・っ!!?」

玉には文字が刻まれていた。初めてみたときには確かに存在しなかったのに。だがそれがなにかを確認している余裕はない。
あまりに大きく膨れ上がったエネルギーを抑えきれず、右手から霊波刀がはじけとんだ。

「うあぁ・・・ああぁああああああああっ!!!」

バシュウゥゥウ・・・・・!!

俺の制御を離れた霊波が直接悪霊に降りかかった。
この出力なら・・・確実に消滅できただろうと思う。

霊波を放った衝撃で意識が朦朧とする中、安全を確かめるとようやく俺は女の子に声をかけることができた。

「あの、大丈夫だった?」

が、返事はなかった。視線を止め、瞬きもせずに呆然としている。
どうしたんだろう、精神汚染とか・・・悪霊の霊波に中てられた、とか?

「おーい、あの、怪我とかない?大丈夫なら『うん』とか返事をしてほしいんだけどなー・・・」

「え・・・・あ、はい!えっと、あの、私・・・っ」

「ああ、よかった、気がついて。立てる?」

「だ・・・大丈夫ですッ、すみません、ちょっとビックリしちゃって・・・」

「え、あ・・・いや・・。俺の方こそごめん、なんか怖がらせちゃったみたいで・・」

すると、少女はやんわりと立ち上がって快心の笑顔でこう言ってくれた。

「危ないところを助けていただいて、本当にありがとうございましたッ。
 私の名前はルシオラ・・・この近くの村に住んでるんです。」

「あ、うん。俺は横島忠夫、よろしくッ」

『やっぱ、可愛いや・・・この娘・・・』

あまりにすばらしい笑顔に見とれていると、なにがおかしかったのか彼女はクスリと笑って村へと案内してくれた。


「横島さん、あれが私の住んでいるアーリアの村です。」

「うわぁ・・・綺麗な町だなぁ・・・」

「ありがとうございます」

お世辞でもなく、口からこぼれた。今の地球は大戦後の復興がおぼつかなくて、どこも廃墟のようになっている。もちろん森林の大部分が焼き果てて、この町のように自然に囲まれた土地など存在しなかった。

「で、でもいいのかな・・・俺みたいなよそ者がいきなりお邪魔しちゃって・・・」

「クス、全然構いませんよ。それに助けていただいたお礼もしたいですし・・・」

街中を歩いていると、すぐに住民らしき人たちがルシオラに話しかけてきた。

「おや、どうしたんだいルシオラ、若い男を連れちゃって。彼氏かい?」

「ルッシーも隅に置けないねー」

「あれ、でも彼、ずいぶん変わった格好してるのね。こんな生地見たことないわ・・・」

ジャージやジーパンはこの世界には存在しないんだろうか・・?
そういえば町行く人たちはみんな麻を織ったような、割と軽そうな服をしている。

「ち、違いますよ!この人はさっき森で会って・・・」

「なに、会ってすぐに口説いたの?」

「それとも口説かれたの?」

「「どっちにしてもいやーんな感じ♪」」

「ち、違うったら!もう、からかわないでよッ」

『人気者なんだな、ルシオラは・・・』


しばらくして会話が終え、やっと彼女の自宅までたどりついた。
たどりついたはいいが、そこで俺はまたもとんでもないものを見つけてしまった。

「お母さん、ただい・・・「ずっと前から愛してましたぁーーーっ!!」って、横島さん!?」

ルシオラもかなりのものだが、ルシオラのお母さんもやばかった。
出るところがしっかりでた、柔らかな女らしさを持った体。優しく整った顔立ち。
おしとやかで、それでいてどこか充実した女を感じさせる・・・ぁぁあ!!!

というわけで、我慢ならず飛び掛った俺を誰が責められようか、いやできない!

「ぜひ僕をあなたのツバメにッ・・・ってぐはあぁッ!?」

しかし、そんな俺の情熱あふれるダイブに対し、彼女はカウンター気味の正拳で迎えてくれた。

「おかえりなさい、ルシオラ。早かったのね。それで、この人は?」

「あ、えっと・・・」

「初めまして、横島忠夫ですお母様!!いや、本当にお美しい!」

「って、今顔に拳が突き刺さっていたのにもう復活してるっ!?」

驚愕の声を上げるルシオラ。俺自身も驚きだ。さっき歯が何本か吹っ飛んだ感触があったのにもう生え変わったような気さえする。

「と、とりあえず改めて紹介するね。こちらは横島さん。さっき森でゴーストに襲われて・・・」

「ご、ゴースト!?」

「お母さん!?しっかりして、私は大丈夫だから!」

ふら、と倒れるのを、ルシオラが間一髪のところで支えた。
しかしそんなに悪霊って驚くことなんだろうか?確かにあれほどの規模だと下士官である俺だと厳しいが、連邦の将校クラスなら誰でも片手で相手ができるんじゃないかと思う。
それにさっきのこのお母さんの右ストレート・・・容赦のなさといい、戦力としては申し分ない気が(マテ)

「それでね、危ないところをこの横島さんに助けていただいて・・・」

「まあ、あなたがルシオラを?そうとは知らずさっきは失礼なことをしちゃって・・・」

「あ、いえ、失礼だったのは俺の方ですから・・」

「じゃあ、早く支度しないと!横島さんには二階の一番いい部屋を使ってもらって!」

そう言うと、ルシオラママはトコトコと奥の方へ歩いていった。


「支度・・・?」


それから数十分後、そんな短時間ではとても作れそうにないほどのご馳走がダイニングに並んでいた。

「お母さん、これって・・・」

「だって、助けていただいたお礼をしないと!さあさ、どんどん召し上がってくださいなっ」

「は、はい。いただきます。」

席から見てみると、改めてその量に驚く。
どれも手間のかかりそうなものばかりなのに・・・。

「じゃ、じゃあ早速・・・はぐ、はぐっ・・・・」

「あらあら、そんなに急いで食べなくても料理は逃げたりしませんよ。」

「いや、美味いっす!こりゃ美味いっすよ!」

実際、料理は飛びぬけて美味かった。
気絶してどれほど経っていたのかわからないが、だいぶ空腹だったようで。最近艦内のまずいレーションばかりだったし、ここに来てやっとまともな食事にありつけた次第だ。

しばらくして、むしゃぶりつく俺を楽しげに見つめていたルシオラが、俺に質問をしてきた。

「―――横島さんは、どちらからいらっしゃったんですか?」

「むぐ?ん・・・ゴクン・・。えっと・・・地球ってところ、なんだけど・・」

「チキュウ?」

やっぱり、知らないよな。

「なんて言ったらいいのかな・・・ここから、ものすごく遠く離れた場所にあるんだ・・・」

すると、ルシオラママが質問をかぶせてきた。

「遠くって、大陸よりもさらに向こうなのかしら?」

「え、ええ。たぶん・・・」

「そんな遠くからいらっしゃったの!?―――それにしては、ずいぶん軽装みたいだけど。」

「こ、この方が楽なんです。動きやすいし・・・」

「ふーん・・。」

それ以上は二人とも何も聞かず、黙々と食事を続けるのみとなった。


――――――――――――――――――――――――――――――――――


「う・・・も、もう食べれないぃ・・・・」

食事を終えて、案内された部屋に戻ると倒れるようにベッドの上に蹲った。

「大丈夫ですか、横島さん。」

「ん、微妙・・・・」

「クス、無理して全部食べるんだもの。残してもよかったんだよ。」

「いやぁ、君のお母さんの料理、すっごくおいしかったからさ。残しちゃもったいないと思って・・・。それに、うちのオフクロじゃああは・・・」

――――え?

軽い会話を交わしていたはずなのに、ルシオラの俺を見る目がやけに情熱というか・・・。どうしちゃったんだろう?

ま、まさか俺に気があるとか・・・!?
密室に二人きりだし、これはつまり、えーと・・・

「る、ルシオラッ、お、俺・・・」

「あ、ご、ごめんなさい横島さん!私ったらつい・・・」

「俺も、ルシオラってマジ可愛いなって思って・・・って、え?」

「私、後片付け手伝ってきますねッ、横島さんはゆっくり休んでいてください。」

トタトタトタ、バタン。

「ってえーーっ!?生殺しっすか!?そんな、期待させておいて!(させてない)」

そんな俺を尻目に、ルシオラは逃げるように部屋を飛び出していった。実際逃げたのかもしれない、俺の危ない視線に耐えかねて。

「ちぇー。人生に一度あるかないかのチャンスだったのになぁ・・・・」

まぁ・・冗談はこれくらいにして。なんかとんでもないことになったみたいだな・・・。なんとかして地球に戻る方法を探さないと・・・。
ここがどこだかも分からないし・・・・どうしようかなぁ・・。


――――――――――――――――――――――――――――――――――


「ん・・・・て、あれ。寝ちゃったのか・・」

やわらかい布団の感触と、満腹感が手伝ったのか。そういえば今日はいろいろあったし・・・。

「外も暗くなってるし、とりあえず今日はここに泊まらせてもらうにしても、これからどうするかルシオラたちと相談しないと・・・」

ルシオラは一階にいるんだろうか?
まだ日が沈んで間もないから寝てはいないだろうし、今日のうちに話しておくことにしよう。

二階から一階へ通じる階段を下りて、さっきのダイニングの方へ足を進めるとなにやら話し声が聞こえてきた。

「ん・・・お客さんが来てるのか・・・?」

失礼だとは思いつつも、興味も手伝い聞き耳を立ててみることにした。


「――――本当なんだってば!私見たの、横島さんがね、」

「まあまぁ。落ち着くのじゃ、ルシオラ」

「あの横島さんがねー・・・・ぜんっぜん!そんな風には見えないんだけど・・・」


『なんだ、俺の話すっすか?いったい何を・・・』


「もう、カオス様も母さんも信じてよ!見たことがない服だって着てるし・・・私を助けてくれたときだって、光の剣を使って一撃でゴーストを倒したのよ!私たちでは触れることすらできないゴーストを!」

「ひ、光の剣じゃと!?それは本当かッ?」

「うん!
 間違いないわ、横島さんは伝説の勇者なのよ!!」


・・・・・・・・・・・・・・・・な、なんだって?

き、聞き間違いじゃないよな・・・・。お、俺が・・・・伝説の勇者・・・?


3話へ続くぅ


後書き。

なんか長くなりそうなので前後編じゃなく連載みたいな感じにしようかなーと・・。
というわけで貯めてた二話目を速攻投稿してみようかと思います。

・・・・横島に対して敬語使ってるルシオラって違和感バリバリ。やっぱりおキヌちゃんの方がよかったかな・・・?


△記事頭

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