―――どこまでも広がる広大な宇宙、そこには幾億もの星の数だけ人々の希望が、夢がある。
ゆえに彼らは空を目指し飛び立つのだろう。そこに一抹の可能性を見出して。
そして、俺もその一人・・・
「美人の姉ちゃん!裸でなんでも言うこと聞いてくれる裸の姉ちゃん!
どっかの惑星に転がってないかなぁーーっ!?」
―――ごーすとすいーぱー・せかんどすとーり―――
・・・俺は横島忠夫、当年で17歳。
俺たちは惑星調査のため、大宇宙戦艦「マリア」で惑星ミロキニアに向かっている。
この艦の艦長を務めるのが横島大樹提督―――俺のオヤジだ。
今から20年ほど前の地球での大戦で、壊滅的危機に瀕した連邦軍をわずか千人を率いて救った英雄。それからも星の治安維持、他星の侵攻阻止などさまざまな功績が称えられ、38歳という若さで提督に昇格した。
ついたあだ名が、その得意技から『霊波刀の大樹』。俺も若干なら霊波刀を使うことができるが、威力は段違い。
その上、部下の信頼も厚く、誰に対しても分け隔てなく接する。
どこまでもパーフェクトファーザーだ。
―――地球連邦士官、あぁ、なんてご立派。
確かに尊敬に値する職業だし、オヤジ自身の能力も認めざるをえまい。
しかし、しかし・・・・!!
「ねぇねぇ、幸恵ちゃん、今日の午後は暇かな?」
「は、はい!もちろんです!」
・・・職務中に職場の娘をナンパするような父親をどうやって尊敬しろっていうんじゃぁああ!!
『くそ、なんであのスケベオヤジが艦長の船に俺が乗らなきゃいけないんだよ・・・!
間違ってるよな、間違ってるよ!どうせならあの美人で有名な美神令子さんの船がよかったよぉぉ!!!』
幼いころから、このクソいまいましい父親のために俺がどれだけ苦労してきたことか!
『横島大樹の息子』というステッカーを貼られ、常に優等生たれと強いられる生活!
せっかく彼女ができかけてもことごとく父親の悪戯により失敗に終わる!
平日はオヤジの愛人が自宅に押しかけてきて、夫婦喧嘩の仲裁に追われるし!
そんなこんなで親の庇護がいい加減うんざりしたため、三年ほどの惑星調査に自ら志願したわけなのだが・・・
『横島くん、君の乗艦する船なのだがね、志望では美神大尉の船になっていたがせっかくだから横島提督のところにしてもらったよ。やはり父親の下の方がなにかといいと思ってね。』
と、上官の厚意によりここに来てしまった。
余計なお世話だこんちくしょう!
どこまでも付きまとってきやがって、俺は父親のからくり人形じゃない!
そう、自分が自分であるために。
いつか必ずあのオヤジの手から飛び出してやろうと、それが俺の悲願だった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
―――ところ変わって、それから三時間後。
「ここがミロキニアか・・・」
雑草すら存在しない、荒れ果てた地表。
堆く積もった瓦礫にはわずかながら文明の名残が感じられた。
「どうだ?降下前に調査した結果と照らし合わせてみて、新しい発見があったら教えてくれ。」
「提督・・・それが、通信機器の具合がおかしいんです。」
「なに?」
大樹がモニターを覗き込んでみると、何かにジャミングされたかのように、そこには砂嵐しか映っていなかった。
1000年ほどまえの電磁系通信端末ならいざ知らず、現代では惑星間ですら通用するものだ。
たとえこの惑星が強い磁場を持っていたとしても、影響はたかが知れている。
「ふむ・・・まぁいい、とりあえずは端末の方に調査結果を保存しておいてくれ。」
どこか不可解な不安を残しつつ、大樹は調査を開始した。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
と、オヤジたちが調査をしている傍ら、俺は星を散歩がてら探索していた。
「んー、ずっと艦内にいたからなぁ、やっぱり外の空気がおいしいや。」
どこか地球に似通った匂いを持つこの惑星を、俺は早くも気に入っていた。
ところで、現代の地球は科学とオカルトによって支配されており、その二つの要素が混じりあって構成されている。俺たちが乗ってきた戦艦にしても動力は霊力が二十パーセントを占めているし、こうして異なる惑星で宇宙服なしで動けるのも、スライムを改良したナノマシンの応用なのだ。
そんなわけでオカルトは割と身近な存在として密着に関わりを持っていたし、俺自身にも霊能の才能がある。
そしてこの惑星――ミロキニアといっただろうか――には、なぜか強い霊波を感じるのである。
「なんなんだろうな、この星は・・・」
呟きつつ、自分の右手に霊波を集中し霊波刀を作ってみる。
オヤジのものと比べれば貧弱なものだったが、地球のころに比べ明らかに出力を増している刃がそこにはあった。
『ここのアストラルフィールドは地球以上だっていうのか・・・?』
右手を振って霊波刀をかき消した。どうやらこの星には思った以上のものが眠っているのかもしれない。躍動する気持ちを抑えきれず、俺はより強い霊波を感じる方向へと歩いていった。
―――それからしばらく、数分ほど歩いたときのことだった。
「なんか・・・ここから霊波が発しているような気がするんだけど・・・」
わずかに隆起した丘の上、そこは近辺を見渡せる絶好のポジションだった。
試しに霊波刀を出してみる。普段は三十センチほどしかないはずの剣が、今は二倍ほどの大きさを持っていた。
「父さ・・・提督、ちょっと気になる遺跡がある。」
携帯で呼びかけると、しばらくして調査団がやってきた。
「ここか?確かに強い磁場を感じるが・・・」
「提督、γ崩壊の波長がわずかながら検出されます。
おそらく通信機器の不調もここからの波長が原因なのではないかと・・・」
「そうか。よし、忠夫、お前は危ないから下がっていろ。ここからは俺たちの仕事だ」
「なっ・・・!」
冗談じゃない、ここを見つけたのは俺なのに?
このオヤジはいつもそうだ、なにかと俺のことを子供扱いしやがる。
『ここでなにか大きな発見でもしたら、親父も俺を見直すかな・・・?』
調査に集中している親父たちを尻目に、俺は近辺になにか怪しいものはないか調べることにした。
思うにこの丘は強力な発信施設の役割を果たしていたんだろう。
きっと遠く昔に滅んでしまった文明の名残か、それならどこかに入り口のようなものが・・・
「・・・・ビンゴ」
丘を少し離れたところに、周囲とはわずかに色が異なる突起物を発見した。
パネルのような形をしており、開くと複雑な紋章が描かれた墓標が出てくる。
簡単な暗号の一種だ、この程度は研修生のときの授業で学習済みだった。
『えっと、まず中心に自分の霊波をゆっくりと流して・・・』
この惑星の文字は分からないが、紋章はスイッチのようなものだったので必要なかった。
しっかりと手順を踏まえ、封印を解き放っていく。
しばらくして目の前の丘に続く回廊のようなものが姿を現した。
『上の調査団に報告すべきか・・・?』
いや、今度こそ俺だけの力で謎を暴いてみせる。
そうすればきっと彼らも俺の力を認めてくれるだろうし、艦内の女の子たちだって・・・・
「グフ、グフフフ・・・・っと、いかん。涎が・・・」
「提督!ご子息がなにか発見した模様です!」
『げ、どこのどいつか知らんが余計な真似を・・・!』
慌ててその場から立ち去ろうとするが、すぐにそれは親父の知るところとなってしまった。
「忠夫!お前はさっきおとなしくしてろって言ったすぐそばから・・・!」
忌々しい親父の怒鳴り声だ、くそ、またさっきと同じ結果か・・・。
この・・・今まで幾度となく聞かされてきた説教を、俺はまったくといっていいほど頭に入れていなかった。
もしその十分の一でも理解していたなら・・今回の事件は起こりはしなかったんだろうが。
さて、説教が一通り終わったところで、俺たち調査団は回廊をゆっくりと降りていった。
どこに罠が隠されているかもわからない長い下りの階段を、親父を先頭にして一歩一歩踏みしめていく。
ほどなくして丘の内部にあたるだろう建物の中に辿り着いた。
「驚いたな、まさかこの星にもオカルトの文明が存在したなんて・・・」
それは俺も同感だった。
地球でもオカルトを技術として導入し始めたのはこの数十年の間、つまり親父が活躍した大戦以降である。それまでは雑多に存在する悪霊や低妖怪を退治するために類稀な霊能力者が払う程度だった。
だというのに、この施設はいたるところに霊力を有効に利用する回路が組まれ、長く放置されたにも関わらずいまだに駆動可能ときている。
遺跡に対しての衝動に呆然としている俺に、親父が声をかけてきた。
「忠夫、これはうちの家系に伝わる霊玉だ。これをお前に渡しておく」
「これを?なんかただの汚らしい玉っころにしか見えないけど・・・?」
「ばか、あんまり失礼なことを言うなよ。きっとこれが、危ないときにお前の身を守ってくれるはずだ・・・」
「・・・ふーん」
親父にしては珍しいほど神妙な態度に、一応大事にそのビー玉サイズの霊玉をポケットの中にしまった。
それからもう一度、俺は施設の中を歩きまわってみた。
建物自体は小さいはずなのに、部屋がいくつもあって一つ一つ確認するだけで一苦労だった。
また、施設の中は相変わらず不思議な霊波に満ちており、一歩踏み出すたびに濃度が高まっていく気配がある。
俺はまるで引き寄せられるように・・・その濃いほうへ、濃い方へと足を進めていった。
「なんだ、ここは・・・?」
その先にあったのは、他の部屋にくらべやけに小奇麗な施設だった。
人が一人ほど入れそうな魔方陣に、それを制御するための法印がところ狭しと描かれている。
『・・・この施設自体が、この装置を補うためのエネルギー増幅機関なのかもしれない』
ゆっくりと魔方陣に近づき、手を伸ばそうとしたその瞬間だった。
「忠夫!その装置に触れるなっ!」
急に駆け足で入ってきた親父の怒鳴り声が響いてきた。
「え・・・?」
振り向いた途端、足元に積もった埃にバランスを崩す。不運にもその先には法印の中心があった。
そして、わずかに目をそらした間に、法印がわずかに発光を開始していく。
「痛ぅ・・・急になんだよ親父・・・って?」
『やべ、これって魔方陣が効力を示すときの前兆じゃ・・っ!?』
「忠夫、早くその魔方陣から離れろ!
この施設は時空を捻じ曲げるために特別なチャンネルと繋がれた、かなり危険な代物だ!
そしてその装置はおそらく・・・」
時空を曲げる?特別なチャンネル?
急な展開に優秀とは言えない俺の頭はついていけず、俺の混乱をよそに装置は順調に駆動を続けていた。
『ゲート・・・・1・・・ブツ、ブ・・・エイジ400を・・・開き・・ま・・す・・・』
目の前がかすみだし、部屋が光に満たされていく。
「うわぁああぁぁーー!??」
「忠夫ぉーーーっ!!!」
そして数秒と経たないうちに、光は俺を包む大きな柱と化し・・・親父の俺を呼ぶ声がやけに遠くに聞こえた。
後編に続くぅ。
後書き。
大半に方に始めまして、知ってる方にこんにちは。
スターオーシャンセカンドストーリーのストーリーをGSキャラでやってみたいなぁと思いました。
思っただけです。すみません_| ̄|○
あれですね、まず個人的に思ったのは・・・
横島がクロードっ!?ってことですねー。
あははー、意味もなく謝ってしまいます、ごめんなさい_| ̄|○
えと、前後編で終わらせるつもりなのですが、こんな話でも続きが読んでみたいなぁ、とか
感想書いてくださると嬉しいです(≧∇≦)ノ
ではでは。