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「ちびタダ夢日記 レポート・1  開かずの焼却炉(GS)」

銀二 (2005-02-03 15:05)


 問題!!


 それは、ダイオキシン発生の危険性が指摘されるまで、日本全国で使用されていた。


 掃除のゴミ捨て、見られたくないテストや証拠隠滅。


 何でも消せる、魔法の鉄の箱ってな〜〜んだ?


 答えは、焼却炉・・・・・


 レポート・1  開かずの焼却炉


 その日もよく晴れていた。夏休みが終わった最初の授業中、俺は先生がいるのにも関わらず惰眠をむさぼっていた。


 「おい・・おい!!ヨコッち。起きぃ!!先生がこっちくんぞ!!」

 「ぐおぉぉぉぉぉぉ・・・・・」


銀ちゃんに後で聞いたところ、俺は、先生お得意の白墨乱舞を喰らっても起きなかったらしい。というか、驚いたことに一瞬跳ね起きて白墨を指で挟んで受け、先生の額にヒットさせたらしい。我ながら器用なものである。

 その器用さが元で、今、罰掃除をしているのだが・・・・・

 おやつが・・・・ガリガリ君が・・・

 ミニ四ファイターの改造講座が・・・・・

 タミヤRCカーグランプリが・・・・

 あっ!!仮面ライダーBLACKの最終回やないかい!!


 この頃の俺にとって、将来よりも大切な宝物が次々と頭の片隅に浮かんだ。それを考えると、罰掃除なんて反則ではないか!!職権乱用だ!!鬼!!悪魔!!


 と、先生を一頻り罵っていたとき、『彼』は現れたんだ・・・・


 『おい!!お前、先生に怒られたんだろ?』

 「けっ!!ハゲ爺がうるさいねん。貴重な睡眠を俺から奪い追ってからに!!」


 彼は同情するとばかりに俺の肩をたたいて言った。


 『俺もさっき先生に罰掃除言われたんやけど、あほらしいからサボろう思てん。お前はどないする?』

 「サボりたいのは山々やけど、うちのハゲ爺は監視がきついねん。はよ、定年退職せーよ!!」

 『ははははは!!さよか。ほな、俺は帰る!!サバラ!!サバラ!!』

 「それを言うなら、サラバやろ!!間違えんな!!」


 彼は楽しそうな笑い声をあげて廊下を走っていった。
 俺はあきらめて、掃除を再開した。

 と、箒の先に何かが当たった。見ると、それは青い体育着ぶくろだった。名前を確かめようと裏を見ると、


 『高山雄一・5年3組・15番』


 と、縫いつけてあった。俺はさっきの彼が忘れていったのだと思い、明日朝一番に届けることにして、掃除を終えると家に帰った。

 当然ながら、俺が見たかった番組はすべて終わっていた。


 翌日、俺はさっそく5年生の教室へ出かけた。
 3組の教室へ行くと、俺は近くの先輩に声をかけた。


 「すんません。ここに、高山雄一っていう先輩は来てますか?」

 「はぁ?高山なんてやつ聞いたことあらへんけど・・・おい、こいつが高山ってやつをさがしてんねやけど、誰か知らへんか?」

 「いいや。そんなやつ名前も聞いたことあらへん」

 「さぁ・・・うちもきいたことあらへん。あっ?!ちびタダくん。後で図書室に来てくれへん?ちょっと確かめたいことがあんねん」

 「へ〜〜い。ありがとうございます」


 俺はあきらめて教室を出た。
 授業中もずっと『高山雄一』のことを考えていた。彼の服に付けてあった名札は、確かにうちの学校のものだった。それに、体育着ぶくろの中身もうちのだったし。どういうことなんだ?


 「横島!!教科書P45、音読せんかい。横島!!」

 「へ?あっ!!え〜〜と、“鉛筆のむこうには、たくさんの世界が広がっている。のぞいてみよう・・・・”」


 授業が終わった後、俺は先生を職員室に訪ねた。この先生は林先生と言って、うちの学年長を勤めている年かさの先生だ。55歳のお爺さん先生で、この学校のことを何でも知っている。俺は、先生にあの袋のことを尋ねた。


 「先生、これなんですけど・・・」

 「ん・・・・な、なに!!横島、これいったいどないしたんや?!どこで拾ったんや?!」

 「は?!あ、あの、ちょい先生落ち着きぃ!!」


先生ははっとして落ち着きを取り戻すと、俺を生徒相談室に連れてきた。古びた皮のソファーに腰掛けて、先生はタバコを吸った。


 「あの・・・先生・・・?」

 「ん?ああ・・・すまんかったな、さっきは取り乱してしもて」

 「いや、いいんです。あの、何か知ってるんですか?」


先生は一呼吸おくかのようにタバコを灰皿に押しつけると、俺の目を見てゆっくりと話し出した。


 「横島・・・その、生徒はな・・・5年前に亡くなったんや」

 「はぁ?!」

 「信じられへんか・・・無理もない。高山は、お前そっくりの元気なやつやった。サッカーが好きで、放課後の掃除をさぼってまで校庭に飛び出していくほどな。わしの受け持ちやったからよく覚えてんねん。
  あの日もそうやった・・・・
  高山は、わしの一瞬の隙をついて教室を飛び出したんや。しゃあないからすぐに追いかけていって、捕まえようとしたんやけどな。あいつ、どこかに隠れてしまったのか見つからへんかったんや。
  まあ、後でひょっこり出てくると思ってそのままにしてたんやけどな。夜になっても家に帰ってきーへんから、学校の先生や警察のみんなでさがしたんや」

 「で?見つかったんですか」

 「ああ・・・ほら、学校の裏に扉を針金でぐるぐる巻きにした焼却炉があるやろ?高山はあそこで見つかったんや・・・真っ黒こげになってな・・・・」

 「・・・・・・」

 「ポリエステルの袋も一緒に燃やしたんやろな。本人とは思えないほど、ぼろぼろに崩れておったわ・・・・どんなに苦しかったか・・・」


 俺は先生の話を聞いて全てを悟った。高山は自分が死んだことを知らないんだ。だから、学校に残って今もサッカーをしているに違いない。
 俺は意を決して先生を連れだした。俺の考えが正しければ、高山はまだ焼却炉の近くにいるはずだ!!


 「先生!!はよう!!」

 「よ、横島!!どないしたんや?!」

 「高山を、高山を極楽に送るんです!!先生も手伝ってください!!」


 いた!!思った通り、高山は焼却炉の側にぽつんと立っていた。
 俺は驚いた表情の先生を引いて高山を呼んだ。


 「おい!!高山、なにしとんねん?!」

 『ん?さぁ・・・何でかな?家に帰ったんやけど、誰もおらへんのや。お母ちゃんもお父ちゃんも・・・でな、何でか知らんけどここに来てしまったんや』


 俺は高山をまっすぐに見つめて言った。


 「高山・・・お前の両親は・・・引っ越したんや。お前が死んでしもうたからや」

 『は?何言うとんねん?!』

 「高山。お前、サッカーが好きでたまらなくて掃除サボったんや。先生が追いかけてきたから、ちょっと隠れようと思ってそこの焼却炉に隠れたんや」


高山は、何かを思い出そうとするかのように俺の話に聞き入っていた。


 「でも、お前・・・・すぐに出てこいよ!!熱かったやろ・・苦しかったやろ?!なぁ!!」


高山は全て思い出したようだった。力無く泣き崩れ、拳で地面をたたく姿に俺は溢れ出す涙を止められなかった。
 林先生も泣いていた。先生は涙を拭いて、高山に声をかけた。


 「高山!!こんなとこにおったんか!!・・・掃除せぇよ・・・な?」

 『先生・・・?は・・はは・・・何や、ハゲ爺になってしもうたんか?』

 「あほう!!これでもまだ・・・まだ・・・」


先生は高山を強く抱きしめた。高山は大きな声でわんわん泣いていた。思いっきり泣いた後、二人はいろんなことを話していた。死んでしまった高山には知らないことばかりで、何度も驚いた顔をしていた。

 やがて、太陽が西に沈もうとしているのが見えた。
 俺はポケットから数珠を取り出した。


 「高山・・・ほな、そろそろ逝こか」

 『ああ・・・横島、ありがとうな。先生も・・・ほんまにありがとう』

 「おう。天国に行ったら、勉強教えたるからな。それまで、きちんと予習しとくんやで?」

 『ええ!!かなわんなぁ〜〜〜』


 俺は数珠を振りかざし、心を込めてお経を唱えた。数珠を振り回すたびに美しい光が渦になって俺たちを包み、心が安らいだ。
 やがて、高山の体は金色の玉になって空へ飛んでいってしまった。


 「極楽で・・・幸せにな・・・・・」


 帰り道、先生が何気なく尋ねてきた。


 「横島・・・お前何者やねん?」

 「別に?ただの小学生ですわっ!!ほな、また明日!!」


 俺は笑って先生と別れた。
 でも、これが先生を見た最後だった。先生は翌日の朝、布団で冷たくなっているのを奥さんに発見された。突然死とされたその表情は、とても安らかだったという。


 高山が使っていたふくろはご両親の元へ届けられ、大事に供養されたと言うことだ。


 続く・・・・


 しばらくぶりです。ネタ探しと文章構成に時間がかかったばかりか、パスワードを忘れるというポカをやってしまいました(土下座)
 感想、ご意見ともにお待ちしています!!  


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