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「マッドネス3 『出会え、ヨコシマン』(GS)」

zokuto (2005-01-17 20:51)


 ここは日本の首都、東京、の地下の地下。

 密かに改造された蜘蛛の巣のように張り巡らされた下水道に、その場所にはそぐわない立派で大きな扉があった。

 その扉は悪の秘密結社アシュロスの入り口だったのだッ!

 防水加工良し、耐炎処理済み、高級絨毯はしきつめられ、床下暖房も完備したナイス基地。

 防衛装備も優れ、まさに第1級と称するに相応しい。

 だが、その基地にも一つの欠点が……。

「…………」

「…………」

「…………臭いな」

「ええ」

 下水道を出入りする戦闘員が多いが故に、いつもそこらじゅうに鼻が曲がりそうなかぐわしい香りがッ!!

 しかも、地下奥深いので、換気装置も申し訳程度にしか置いてなかったのだッ!!


 今日も、臭う秘密結社で、悪のもの達が世界を掌握するため暗躍している!

 

 

 

 

       マッドネスヒーロー 『出会え! ヨコシマン』


「陰念がやられたか……」

 アシュタロスが言った。

 手元に多くのボタンがついた奇妙な装置を持ち、溜息を一つつく。

 その地上では絶対に見られないであろう類の装置のスイッチは、大体卵のような楕円形をし、サイズもそれくらいの大きさ。

 黄色いランプが一つを覗く全てに点灯しており、表面には何やら名前が書かれてある。

 ランプの灯火が消えてしまった唯一のスイッチ、その表面に書かれている名前は『陰念』

 そう、昨日殉死した彼のことである。

 ランプの点灯の有無は、生きているかどうからしい。

「総統、怪人鎌田勘九朗が陰念死亡についての調査報告に参りましたわ」

 うやうやしく頭を下げる黒いシルエット。

 それの体は人間の平均的なサイズより突出して大きく、低い声で女言葉を使うのは見るものを圧倒させる。

 アシュタロスは声の主に向って、ほんの少し手を動かすとシルエットは淡々と話始めた。

「陰念が死ぬ前に行っていた任務でヨコシマンと名乗る者に妨害された、と本人が申しておりました。 陰念はその者に殺された、という可能性が一番高いと思われますわ」

「目の前を飛ぶ蝿がもう出てきたのか。 やつらは嗅ぎつけるのと大志の邪魔をすることだけには長けているからな」

 ギクッと怯える怪人が一匹。

 ベルゼブルと呼ばれる蝿だった。

 もっともそれは全く関係の無い話ではあるが。

「我がアシュロスのブレイン。 プロフェッサーヌル印のスーパーコンピューター『MUGI』や『CUSPER』に陰念が残したヨコシマンという輩の特徴を分析させ、絞り込み検索などを行っている最中ですわ」

 スパコンの名前がまんまパクリだということはさて置いて、ヨコシマンという者の捜索はそれらを用いたとしても難航していた。

 何せ資料が陰念が面倒臭がりながら書いた報告書に、『バンダナ』『短パン』『数字の8がプリントされたTシャツ』『男』ということくらいしか。

 というか、身体的特徴が『男』しかないところで、天下のスーパーコンピューターも閉口しているようだ。

「ふむ……ではヨコシマンの身元が分かったら、合法的に『消え』てもらおう。 何、手段は色々ある。 家に無人トラックがつっこむとか、偶然凶器が空を飛んでいて、それが頭部に命中するとかな」

 暗い笑いをするアシュタロス。

 流石悪の秘密結社というべきか、それでも今までのこの流れを一気に変えてしまうような生々しい発言であったことは当の本人も否めない所。

 明るく健全な悪の秘密結社アシュロスだが、実は裏ではやっていることをやっているのだ。

「つきましては、調査と暗殺を想定した部隊を派遣しようかと……」

 汗を少し浮かべながら、なんとか気を取りなおそうとする勘九朗。

「隠密行動に適した同志、怪人『伊達雪之丞』に任せたらどうでしょうか?」

 伊達雪之丞。

 陰念と同じ『魔装術』を使いこなす猛者で、バトルマニアと称されるほど闘争に快感を得る怪人。

 戦闘能力は陰念より遥かに高く、また身軽でスパイなどにも運用する予定で造られた。

 尚、身長が低い事にコンプレックスを持っている。

「ふむ、ユッキーか」

「ゆ、ユッキーって呼ぶなッ!」

 何時の間にか現れた目付きの悪いチビ男、彼こそが今話題に上がっている伊達雪之丞本人なのだ。

 ポリシーとして、いつも黒いローブにYシャツとスーツのズボンをはいて、安物の革靴を履いている。

 アシュロスの中では、『マザコンのユッキー』という二つ名で通っているほどの男なのだ。

「ちょうどよい。 ユッキー、お前にヨコシマンの調査、暗殺を命じよう」

「だから、ユッキーと呼ぶなって!」

 全く話を聞いていないアシュタロスと、背の低い体で自分をアピールする雪之丞。

 見ているものを何故かほんわかとさせる雰囲気だ。

「だが、ヨコシマンってヤツには興味があるな。 こう、何事も上手く進みすぎるってーのは大して面白くも無い」

 とは言うものの、まだアシュロス結成三日なのだけれども。

「悪の野望を打ち砕こうとするヒーローか。 燃えるぜ、悪の怪人の醍醐味は、正義のヒーローをギタギタにノしちまうことだぜッ!!」

「ハッハッハ。 まあ精々頑張ってくれたまえ、戦闘員はとりあえず三十ほど用意しておこう」

「いらねぇよ。 俺は一人で十分アイツを仕留めるからな。 じゃ、俺は行くぜ、総統」

 そういって身を翻す雪之丞。

 靴と床とがぶつかる音が基地内に響いていた。

「……やれやれ、私もヨコシマンとやらを独自に調査すべきかな。 不甲斐ない部下達より案外早いかもしれん」

 同じようにアシュタロスも、まるで最初からそこに居なかったかのように椅子の上から姿を消した。

「私は……あぁん、ケーキでも食べにいきましょ」

 優雅といえば優雅なのだが、もっとも似合わない内股歩きで勝手口に向う勘九朗。

 今日も今日とて、ここ、秘密結社アシュロスは平和なのである。

 

 
 一方、ヨコシマンの方というと。

「いやー、はっはっは。 俺、感激っす。 こんな絶世の美少女の下で働けるなんて、ガハハ」

 ご機嫌で、六道家を訪れていた。

 だだっ広い庭に、だだっぴろい屋敷を見たら日本の一般人は誰でも気後れするのが普通だが、そこはやっぱりヨコシマン。

 ドクターカオスに連れられて、西欧やアジアを回ったことがある経験からか、それらに全く目もくれない。

 もっとも、目の前の女性に釘付けにされているという原因が一番であると考えられるが。

「あら〜〜、あなたが〜〜、ドクターカオスさんの〜〜、紹介の方〜〜? 冥子〜〜、もっとおじいさんの方かと〜〜思ってたわ〜〜」

 間延びした口調で言うこの女性こそが六道冥子。

 六道家の一人娘であり、十二神将と呼ばれる式神を使役するGS世界の実力者の一人である。

「そうです。 さっきも紹介しましたけど、横島忠夫って言います。 お気軽ご気楽に横島と呼んでください。 マイダーリンでもオッケーっすけど」

「じゃあ〜〜、横島君って〜〜、呼ばせてもらうわね〜。 まぁ〜、綺麗なお花〜」

 冥子はヨコシマンの持ってきた花束に興味を寄せたようだ。

 白いタキシードには赤いバラが似合う、ということで無け無しの懐から出したヨコシマンモテ計画第一案。

 それなりに功を制した感じである。

「横島さんは〜〜、なんの霊能力を持ってらっしゃるの〜〜? 私は〜〜、知っているかもしれないけど〜〜、この子達に手伝ってもらうことができるの〜〜」

 冥子の周りにいる十二匹の式神が一声に鳴き声を上げる。

 どうやら個々に自己紹介をしているようだ。

「あら〜〜? みんな横島君のことが〜〜、気に入ったみたいね〜〜」

 のほほんと言う冥子。

 式神にとって相手を睨んで、じゅるりと涎を垂らしているのが気に入るというサインらしい。

 もっとも、そういう気に入られかたはあんまりしたくないタイプのものではあるが。

 しかしヨコシマンは恐れない。

 彼自身は不死身の肉体を持っており、式神に襲われようがトラックに轢かれようが死にはしない。

 ただちょっと体がバラバラになって、ドクターカオスに治してもらわなきゃならなくなるが、死にはしない。

 脳を潰されても、体を粉みじんにされても、彼の魂は不滅。

 新しい入れ物さえ用意すれば、彼は永遠に生き続けることができるのだ。

 もっとも、それらを経過した後は決して無視できないペナルティを負うことにはなるのだが。

「僕は、普通の高校生っすよ。 あんま優れたことは出来ないっすけど、荷物持ちでも雑用でも、なんなら囮でも、盾になっても構いませんよ、アハハハハ」

 横島は一人で笑った。

 彼もほんの少しだけ過去の記憶が持っているので、そういうことをされたのを思い出したのだろう。

 しかし今はもう違う。

 彼は正義のヒーローヨコシマン、アシュロスの怪人陰念と互角に戦うことが出来る改造人間。

 108つの必殺技に、秘密道具としてカオス印のカタストルフAを飲めばサイキック能力も発動するのだ。

 ただ、彼が勝手に作った『ヒーローの心得』の元、いつでもヒーローは正体を隠さなければならない、ヒーローは自分がヒーローであることを自ら言ってはならない、などと勝手に思い込んでいる制約多き正義の味方なのである。

 改造人間の弊害かそれとも天然か、精神年齢は著しく低いのが欠点なのだ。

「まあ〜〜、横島さんって〜〜、ユニークな方なんですね〜〜。 これから〜〜、どうかよろしくお願いします〜〜」

 ニコニコと、とても楽しそうにお辞儀をする冥子。

 精神年齢の低さはヨコシマンといい勝負。

 彼女も、彼女の式神とその性格から同年代の友人が極端に少ない人なのだ。

 GS免許取得試験のときに二人の友達を作ったものの、それ以外にはからっきしいない。

 優しい性格さゆえ、寂しさを押し殺す彼女。

 GSという職業の関係であっても、よりそえる人になるだろうヨコシマンが彼女にはとても眩しく見えた。

 ……でも、本当は『楽しそうな人で〜〜、よかったわ〜〜』ぐらいにしか考えていないことがあれなのだが。

「こちらこそ、あ、この花をどうぞ」

「まあ〜〜、どうも〜〜ありがとうございます〜〜」

 ヨコシマンは手に持った花を手渡す。

 赤い花びらが鮮烈で、トゲをすべて取り除いたバラはかぐわしい香りを放っていた。

 そして、かすかに聞こえる羽音。

 

 ところでところで、そんな微笑ましい男女二人をこっそりと見張っていた影が居た。

 その影はねじりはちまきを装備し、手には枝切りバサミを持ち、華麗な手さばきで庭の木の形を整えている。

 勤労の美しい汗を額に浮かべ、隣に居る親方に『いい腕だな、新入り』と声をかけられ、『どうもっス。 へへ、俺、実はこういう仕事に興味があったんすよ』と返している。

 そう、もうお分かりになっただろうが、その影は『伊達雪之丞』

 アシュロスの怪人の一人、ヨコシマン暗殺に出向いた彼である。

 彼はGSの名家である六道家にしのび込み、GS能力の高いヨコシマンの関与を探っていたのだ。

 手っ取り早く侵入する方法として、庭師に変装することを選び、ちなみにバイトしていこうという天才的なひらめきのもと今、卓越したセンスで枝切りバサミを自由自在に動かしていく。

「……おや? あそこに居るのは一体誰なんですか?」

「ん? ああ、お嬢さんか。 ここの当主の一人娘の六道冥子さんだよ。 優しい人だよ……ま、優しさに行動が伴っていないというか、まぁ、お前にも彼女のことがおいおい分かってくるだろうけど。 これだけは言える、あの子は優しい子だ」

「ふ〜ん、そっすか」

 再び手を動かす雪之丞。

 勤労の汗と、優しくて厳しい親方の元、本来の任務を少しずつ忘れてきている雪之丞。

 ああ、本来の目的のヨコシマンは目と鼻の先なのに、何故気付かないのか。

 運命の悪戯とはかくも残酷なもの、思い合う二人がすれ違うなど。


「ふ〜。 六道さんとのお話は面白くって、GSとしてためになるから随分長居しちゃったなぁ。 さて、俺ももう親父がうるさいんで、ここらへんでお暇させてもらいますね」

「え〜〜、横島くん〜〜、もっと遊んでいけばいいのに〜〜」

「はは、あんまり遊びすぎると、親父からコールが……あ、いや、妨害電波……あ、いやいや、失言。 受信専用の一方通行の電話がかかってきちゃうんでね。 じゃ、また明日、約束の時間にここっすね」

「ぶ〜〜……。 また明日ね〜〜」

 不貞腐れる冥子に手を振りつつ、ヨコシマンは門へ向って歩いていった。

 普段のヨコシマンであれば、美少女の冥子に会ったらまず最初に飛びかかるところなのだが、何故今回は一貫して談笑だけに留めたのか。

 それは彼女が『無垢』だったから。

 まるで子供のような心の持ち主で、純白な存在。

 なので手を出すべきではないッ。

 否、断じて出してはいけないのだ!

 せちがらい世の中、たかが一人のヒーローが活躍したとしてもその背中に掛かる声援は子供か、少数の大人、もしくは国の偉い人の政局を自分に上手く働かせるための黒い声援だけ。

 その中で美少女の存在!

 ああ、なんという甘美な響き。

 鈴を転がしたような美しい声で、精一杯自分の名を呼んで応援してくれる女性。

 この彼女に手をだしてたまるものか、いや、むしろ守ってあげるべきだ。

 その思いを胸に秘め、ヨコシマンは歩き出した。

 世界と、彼女と、その他大勢の美女を守る為、新たなる力を身につけ、悪しき秘密結社アシュロスと対抗するために。

 

 

 二人の庭師が庭の木を整備するために立てられた脚立のすぐ近くを通った時、彼の足スレスレのところに枝切りはさみが突き刺さった。

「あ、すんません。 お怪我はありませんでしたか!?」

 結構な高さの脚立から一気に飛び降りてきた、背が低くめつきの鋭い男が申し訳なさそうに頭を下げた。

 脚立の上に居た年かさの男の罵声と、ヨコシマンに向けての謝罪の言葉が飛ぶ。

「ああ、大丈夫っすよ。 怪我としはしてないですし。 けど、次からは気を付けてくださいね」

 機嫌の良さを利用して、普段は野郎相手に殺気しか出さないはずのヨコシマンだが、今回だけは微笑んだ。

「いや、ほんとすんません。 どうも……」

 ヨコシマンの手がはさみの取ってを持とうとした手に、庭師の新入りの男の手が触れる。

 ヨコシマンの比較的しなやかで、それでいて男性である証拠の少し角張った手に、男の手の汗が、少し移った。

「あ、すんません。 お仕事の邪魔っすかね」

「いや、大丈夫ですよ」

 軽い会釈を交わし、ヨコシマンは門へと再び歩み始め、雪之丞は親方に説教を食らいに行った。

 ふと、誰にも気付かれないように新入り庭師が言った。

「今の男……ママに、似ていた」

 

 

 

 そして、ここにも出会いがもう一つ。

 

 

 

 けっぱれ、ヨコシマン! 前を向け、ヨコシマン!

 新たな環境、新たな敵にとまどうだろうが、君は前に突き進まなければならない!

 例え、六道のお嬢様の世界最強のぷっつんに巻き込まれようと、例え、アシュロスの怪人にストーカーされても、君には前進しか残されていない!

 今日も戦え、ヨコシマン! 休むな、ヨコシマン!

 世界の未来も危ういが、君の未来の方がもっと危ういぞ!

 

 というわけで、今回も……『待て、次回!』

 

 

 

   後書き

 はてさて、ナンセンスギャグSS『マッドネスヒーローヨコシマン』の第三話はいかがだったでしょうか。

 あ、ナンセンスなのはお前の存在だろー、とか野暮なツッコミは無しの方向でお願いつかまつります。

 毎日毎日目を見張る数の作品が投稿されるNight talkerのGS小ネタ掲示板にこんな更新ペース遅い作品を出していいのだろうか、と自分でもちょっとおたおたしてしまいますが、とりあえず3話目と。

 とりわけzokutoは飽きっぽい性格をしているのか、連載作品は数多くあれど、完結させたのは処女作と三話構成の短編のみ、という少なさですが、まぁ、今回はそれなりに頑張っていきたいとおもいます。

 と、言っても、もう最終回の目処はたっているのですが(そこに辿りつけるかどうかは別として)。

 こんなお馬鹿な作品ですが、次回もお楽しみにしていただければ幸いです。

 では。


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