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「狐と狼と青年の生活 超激番外編 取り合えず前だけ見て走れ!!(GS)」

ろろた (2005-01-11 20:52/2005-01-11 21:57)

「んん〜〜、よく寝たなあ」

俺は上体を起こして、両手を挙げて伸びをした。
ん? 待てよ。
何で俺は寝ているんだ?

俺はベンチから立ち上がり、見回した。
小さな公園。
滑り台、ジャングルジム、ブランコ、そして俺が座っていたベンチしかない。
ここは俺が住んでいたボロアパートの、近くにあった公園に似ている気がする。
日本だよな?

空を見ると、晴れ渡り太陽は高く昇っているので時間は昼ぐらいだろう。

空?
そら?
ソラ?

「ああーーーーーーーーっ!!」

ある事を思い出し、俺は大声を出してしまった。


そうだ。俺はシロとタマモと結婚したんだ。
シロとタマモが六女を無事卒業し、俺が二三歳の誕生日に結婚式を挙げた。
法律の関係上、籍を入れられなかったが、俺がケジメをつける為に行ったんだ。
美神さん、おキヌちゃん、雪之丞、ピート、タイガーなどたくさんの人や、小竜姫さま、ワルキューレ、ジーク、ベスパ、パピリオ、愛子といった神魔族、妖怪も集まってくれた(さすがにハヌマンは気軽に俗界には来れなかったけど、前日に祝福してくれた)。
そして人狼の里の方々も来てくれて大いに盛り上がった。

いやあ、ウエディングドレスのシロとタマモは凄え、綺麗だったな。

もちろん初夜では、ウエディングドレスを着たままやったぞ。
少しやりづらかったが、むちゃくちゃ燃えた。
何回やったか覚えていないし。

それで次の日に新婚旅行でオーストラリアに飛行機で出発したんだ。
一年かけてオーストラリア中を回る新婚旅行、というか半分は武者修行の為にそこに決めたんだ。
シロが言い出したけど、タマモも賛成して決行する事になった。
ナップザックや寝袋、などといった本格的なサバイバル用品を持っていったしな。

それで―
そうだ。枯れ木が人の形をした様な魔族が、俺達に襲い掛かってきたんだ。
あいつは人間に化けて、飛行機に潜り込み、逃げられない上に乗客員を人質に取って。
目的は半デタントとアシュタロスを倒した俺を殺して名を上げるとか、ほざいていたな。
でも結局は俺達の力を甘く見ていた。
タマモが幻術であいつを惑わしている間に、俺が文珠の『結』『界』で封じ込め、なおかつ乗客には『護』で護った。
仕上げは俺とシロのダブル霊波刀でフィニッシュ。

それから、そうそう、倒した瞬間にあいつが眩く輝いたんだ。
そこからは記憶はない。
どう頭を捻っても出てこないし、文珠で『覚』『醒』とかやっても無駄だった。

という事は何故か分からないが、俺が光に包まれた瞬間にここの飛ばされたという事か?

シロとタマモはさっきから気配を探しているが、感知しない。
どうやらこの近くには居ないらしい。

こうなったら……


「事務所がない……」

美神さんを頼ろうとしたら、居なかった。
いや、事務所がボロボロで誰も住んでいないのだ。
しかもこれは美神さんが来る前の状態にも見えた。

『あなたは霊能力者ですね』

聞き覚えのある声が頭に直接、響いてきた。
忘れる訳がない、それは人工幽霊壱号のものだったから。

「ああ、そうだけど……」

俺は何とか声を絞り出す。

『よかったらオーナーになってくれませんか? 私は……』

ここから人工幽霊一号の説明が始まるが、俺は知っているので割愛する。

「何で俺なんだ?」

『あなたからは凄まじい霊力を感じます。ですからこうやって、お願いをしているのです』

どうする?
ここでOKしたいところだが、まだ早い気がする。

「ちょっと待ってくれないか? 今日中には結論を出すから」

『……了解しました。ですが私はあなたを望んでいますので』

俺は踵を返し、ある場所に向かった。


美神除霊事務所、看板にはそう書かれていた。

「どういう事だ? 全然理解できないぞ」

俺はビルを見上げながら、呟いた。
そこにはメドーサによって、吹き飛ばされてた旧事務所がそのままあったからだ。
もしかして時間移動したのか?
いや、俺にはそんな能力はない。じゃあ、あの魔族の仕業か?
だったらこんな事をする理由が思い当たらない。

!? 俺は中から誰かが出てきそな気配を察知したので、物陰に隠れた。
あれ? こんな事をしなくても言い様な気がするが、仕方ないので俺はじっと身を隠す事にした。

出てきたのは男性だ。
年は二〇歳を過ぎたばかりぐらいで、上等なスーツを着て、亜麻色の髪を見栄えよくセットしている。
顔は美形で、自信に満ち溢れている。霊力も中々高い。
多分GSをしているのかも。
何となくムカついた。俺も所帯を持ったが、こういう美形を見ると今でも腹が立つ。

「な……!?」

大声を出しそうになったので、慌てて両手で口を塞いだ。
何とか飲み込み、その“幽霊”を見つめた。

髪型はオカッパで見るからに美少年で、男なのに巫女服を着ていた。
俺にはそれがおキヌちゃんと姿が重なって見える。
どういう事だ?
意味がさっぱり分からん。

男が口を開く。
一言一句を聞き逃さない様に、俺は耳を澄ました。

「全く、横島クンはまた遅刻か……」

「まーまー、美神さん。横島さんはもうすぐ来ますよ」

「時給減らしてやろうか!」

どっかで聞いた会話だ。
それに男が美神さんで、あの幽霊はおキヌちゃんだって!?
何てこった。


俺は確かめるべく、ボロアパートへ全速力で向かった。
途中で車を追い越したりしたが、構わない。

横島小百合

ネームプレートには可愛い丸文字で書かれていた。
オーマイガー!! 
ただの過去ではなくて、パラレルワールドって奴か!?

ガタガタと扉の向こうが騒がしかったので、俺はここから離れて様子を伺うことにした。

「あ〜ん、遅刻だよ〜。また美神さんに怒られちゃう〜!」

何とも可愛らしい声で出てきたのは女子高生ぐらいの女の子で、ブラウスにジーンズといったラフで動きやすい姿をしていた。
顔は……げっ!? エクトプラズムスーツで俺が女装した姿そのまんまだ。


「はあ〜、参った……」

日も暮れ、俺はベッドに寝転がりながら、呟いた。
ここは人工幽霊壱号の館、結局俺は契約し、ここに住む事にした。
だって唐巣神父とピートはシスターだし、エミさんと冥子ちゃんも男でカオスは婆さん、マリアは男性タイプだった。

俺はまだ人狼の里と殺生石に行っていない。
正確には行く勇気がない。
このパターンだと男だし、何よりも重要なのは俺が知っているシロとタマモではないからだ。

一人ぼっち、そう考えると無性に寂しくなった。
この世界には俺を知っている奴は居ない。
それだけでここまで心が空虚になるとは思っていなかった。

いや、空虚な理由はシロとタマモが居ないせいだ。
結婚してこれからだっていうのに、俺だけが知っている様で知らない世界に飛ばされた。
あの二人はどうなったんだろうか?
俺が居なくなったので、悲しんでる筈だ。

全く俺が何をしたって言うんだ?
愛する妻達と幸せに暮らしたかっただけなのに。
俺の心を救ってくれたシロとタマモに、まだ何もしてあげていないんだぜ。

……鬱になりそうっだので、思考を変えよう。
金は財布に三万しかないし、稼ごうにも俺が持っている免許も使えない。
それにカードが全く使い物にならない。
何故なら戸籍がない=横島忠夫はこの世界に存在していないからだ。
よって何も出来ない。
せめて金さえあれば、戸籍を買う事が出来るのに(美神さんに教えてもらった事がある)。

やべえ。更に鬱になりそうだ。

「寝るか……」

俺は目を閉じ、外界からの情報を一切遮断した。


「先生、起きて下され」

ゆさゆさと体を揺さぶられたが、俺は眠たいのでこう答えた。

「あ〜シロ、散歩ならタマモに頼んでくれ」

「何言ってんのよ。シロの全力散歩に付き合えるのは、タダオしか居ないんだから」

今度はタマモの声が聞こえてきた。
何か怒っている様な……。

「そうは言っても俺は疲れているんだ。美神さんとおキヌちゃんは男だし、それにシロとタマモが居ないから何にもする気が起きないんだよ」

「何を言っておるのでござるか? 拙者達はここに居るでござるよ」

「そうよ。全く確かめもしないで、諦めるなんてタダオらしくないわ」

「そんな事言われたって……って、えええーーーー!!??」

俺は急いで飛び起きた。
そう、俺は誰と会話しているんだ?
目を開け、見るとそこには―

「シロ! タマモ!」

「先生、会えて良かったでござる」

「本当。私だけがここに来たかと思っていたわ」

シロとタマモがそこに居たのだ。
俺は抱きしめ様としたが、ある事に気付いた。

「どうして縮んでいるんだ?」

「私には何でタダオだけが元のままか、不思議に思えるわ」

「くぅ〜ん、許してくだされ。おっぱいが元の大きさに戻ってしまったでござる……」

二人は俺と出会った頃の姿、つまり中学生ぐらいに戻っていた。

「いや、悪くないぞ、シロ。何か新鮮だ」

「せんせい〜〜〜」

と感激したのか、シロは俺に抱きつき顔を舐め始めた。
いかんシロの感触にムラムラしてきた。

「うおおおおぉぉーーーー!!」

「せ、せんせい」

「もう、タダオったら♪」

俺は野獣と化して、二人に襲い掛かった。
いや、一日でもやらないと溜まった気がするんだよな。


「ええと、大丈夫か?」

「これが大丈夫に見える? まあ、気持ちよかったけど」

「拙者は腰ががくがくして、しばらくは立ち上がれないでござるよ」

二人は汁まみれの格好で、ベッドの上で死んだ様に寝そべっていた。
しまった、体力もその格好当時のままだったのか。

「二人はどうしてここに来れたんだ?」

「私は目覚めたら殺生石の近くに居たわ。だから急いで走ってきたの。東京に来てからはタダオの匂いを辿ってきたわ」

気だるそうにタマモは話していく。
何か色っぽいな。また……っていかん、いかん、自粛しろ。

「拙者の場合は人狼の里の家でござった。父上……ではなく母上は拙者が急に成長したもので驚いてござった。しかも里の人狼全員の性別が入れ替わっていたのでござる」

「でも、よくここに来ていいなんて言ったな?」

俺は疑問に思った事を口に出した。

「母上に自分を鍛える為に旅に出たいと言ったら、すぐに納得してくれたでござる」

「何かアバウトねえ」

「何を申すでござるか。人狼は仲間は尊いと教えられているでござが、自立も大事だと考えているのでござる」

「シロ、親父さん……じゃないな、お袋さんに甘えていても良かったんだぞ」

シロには両親が居ない。
これって結構辛い事だよな。

「大丈夫でござる。八房は振るったら壊れる様に細工したので、犬飼が何をしようとしても無駄でござるよ。だから何時でも会えるでござる。それに何よりも先生に何かあってはいけないと思ったのでござる」

うるうるした瞳で、俺を見つめてくるシロ。
きゅんっと胸が高鳴ったので、またもや……以下略。

それにしてもちゃっかりしてるな。
でもまだ事件も起きていないのに、大切な刀を壊してもいいのだろうか?

「って事は犬飼も女性なのか?」

「無論。それに八房がなければ、犬飼では父……母上には勝てないでござるよ」

シロが自信満々に言うが、やはり心配だ。

「そうかもしれないが、近い内に里へ行こう。もしかしたらがあるからな」

「承知」

シロが頷く。
旧事務所が壊されていないから、メドーサの天龍暗殺未遂はまだ起きていない。
犬飼が暴れるのはまだ先の筈だ……ここがあの歴史通りに行けばだが。

「ねえタダオ。美神さんはどうなったの?」

俺はタマモに聞かれたので、美神さん達の事を話した。

「美神さん達も性別が逆なのね」

「ああ。唐巣神父やピートもそうだし、エミさんに冥子ちゃん、カオスとマリアもだ」

「どうして拙者達は飛ばされたのでござろうか?」

「さっぱり分からん。あの魔族が何かしたとしても、ご丁寧にここまで飛ばす力があるとは思えないが」

あの魔族はそうは強くなかった。
精々中級でメドーサと比べると雲泥の差だ。

「帰れる算段は?」

「多分無理だ。文珠でやろうにもどうイメージしていいのか、全く分からない。無理にやろうとすれば、もっと変な世界に飛ばされるかもしれない」

「だったらこの世界で暮らすでござるよ」

「……それもいいかもしれないな。シロとタマモが居れば、俺は満足だ」

あっちの世界の美神さん達や親父とお袋には悪いかもしれんが、戻る手段が分からない以上はどうし様もないしな。

金の事はシロから金山の在り処を聞いて売ればいい。
これも美神さん譲りの裏の世界の生き方を参照すれば、何とかなるだろう。
今日から俺はアウトローに生きるぜ。

「ん?」

「どうしたのでござるか?」

「そういえばアシュタロスの時はどうなるんだ?」

俺はボソリと呟き、思考に耽った。
美神さんやおキヌくんと、横島小百合がここには居る。
まあ最初の頃は美神さんが何とかするだろう。

横島小百合さんはサイキック・ソーサーやハンズ・オブ・グローリー、文珠を覚える事が出来るのか?
その前に霊能力に目覚めるとは限らない。
昨日見た時は、霊力は一般人並みだった。
……何か考えれば考える程に、不安になってきた。

今、思えばアシュタロス戦はギリギリの戦いだったし、今度も勝つとは限らない(ここではアシュタロスが反逆するかは分からないが)。
どうする? やはりここは美神さん達に加勢すべきか?

「本当にどうしたの? 顔色が悪いわ」

「ちょっとある事が気になって……」

タマモが心配に瞳を揺らして、こちらを見てきたので俺はアシュタロスの事を語った。
シロとタマモは直接出会った事もないからな。

「そうでござったな。やはり美神どのに手を貸すべきでござる」

語気を荒げ、シロは断言した。

「バカ犬! それが出来れば苦労しないのよ」

久し振りにシロの「狼でござる!」を聞いた。
何か懐かしい気分になった。昔に戻ったみたいに、ここは昔と言えば昔か。

「そうなんだよなあ。こっちから話しかけるのはおかしいし、俺は戸籍もないから怪しさ大爆発だ」

このまま何も考えずに会いに行ったら、美神さんに何をされるか分からない。

「う〜〜ん」

俺は唸るしかなかった。
だけど、切っ掛けというものは来るみたいだ。
まるで何かに、もしかしたら宇宙意思に操られているかもしれない。


東京湾の空中では四つの人影が舞っていた。

「死ねっ!!」

メドーサが刺叉で突きを繰り出した。
美神さんは何とか神通棍で受け止め様としたが、出来ずに吹き飛ばされた。

「大丈夫ですか!?」

「くそっ、あの野郎!!」

それを何とか小竜姫?さまが受け止める。

「飽きてきたな。そろそろ死ね」

強大な魔力砲をメドーサが放つ。

ずががががんっ!!

「はーはっはっはっは、ざまあないな!!」

メドーサが勝ち誇り、高笑いを上げた。

「甘いな」

「何!?」

メドーサが驚愕の声を上げる。
俺が急に現われ、魔力砲を受け止めたからな。

サイキック・ソーサーに文珠で『護』で強化し、『大』で大きくしてみんなを守ったのだ。
そして『飛』『翔』で宙に浮いている。
半人半魔になって修行して少しは強くなったが、自力ではまだ飛べないからだ。

メドーサは何ていうかワイルドな男だ。
筋肉もあり、マッチョな体型をしていた。
あのチチがないとは、まことに残念だ。

首を向けると美神さんと小竜姫?さま、それにヤームだったか?が驚いていた。
小竜姫?さまはジーンズ姿の好青年で凛々しい雰囲気を受けた。
ヤームは何と言っていいのか、一応女性らしい。

「お前は何もんだ!?」

「貴様に名乗る名はない!!」

一度は言ってみたかったセリフだ。
気持ちいい、これは癖になりそうだ。

「行くぞ!!」

俺は宙を滑り、メドーサに肉薄する。

「ちいっ!!」

俺を迎撃するべく、メドーサは刺叉を振るうが右手のファング・オブ・ウルフで弾き飛ばす。
ぐらついたところに膝蹴りをお見舞いしてやった。
女性じゃない分、思い切りやれるな。

俺は何度も斬りつけながら、メドーサと着かず離れずの間合いで戦う。
もうそろそろか。

「妾の家臣に手を出すなあっ!!」

すかさず『転』『移』でメドーサの間合いから消えたところに、天龍の霊波砲がまともにぶち当たった。
これは効いただろう。俺を探している時に当たったのだから。

「くそっ! まずいっ!」

メドーサは不利を悟ったのか、あっという間に飛んで消えて行った。
しかし天龍は可愛らしい娘だ。
中国のドレスみたいなのを着ていて、それが似合っている。
数百年もしたら美人になること間違いなしだ。


俺達が港に降りると、シロとタマモは小百合さんとおキヌくんと話をしていた。
どうやら友達になれたみたいだ。

「あ、タダオ!」

「先生!」

俺を見つけた二人は笑顔を浮かべて、駆け寄り俺に抱き付いてきた。

「お前は誰だ?」

聞いてきたのは美神さん。
ここでも金が大好きな性格だ。

「人に名前を聞くときは先ず自分から名乗るもんだ。と言ってもあなたの事は知っていますがね。美神令矢さん」

美神さんはくっとこちらを睨みつけてきて、神通棍をこちらに向けてきた。

「あなたからは魔力を感じます! 殿下の命を狙いにきたのですか?」

小竜姫?さまも神剣を向けてくる。
向こうに居る小百合さん、おキヌくん、天龍はどうしていいのか分からずおろおろしていた。

「俺の名は横島忠夫。半人半魔、つまりは人間と魔族のハーフだ」

もちろんハーフってのは大嘘。
俺の名を聞いて美神さん達がぴくりと反応する。
まあ、小百合さんと同じ苗字だからな。

「拙者の名はフェンリルのシロ。先生の一番弟子で妻でござる」

「私は金毛白面九尾のタマモ。タダオの妻よ」

「ロリコン……」

小百合さんが小さく呟いた。
ぐぐっ、今は中学生みたいだが、あの時はムチムチのねーちゃんなんだぞ。

「フェンリルに金毛白面九尾だと、そんな馬鹿な!?」

美神さんが驚く。
小竜姫?さまも眉が動いたので、動じたのだろう。

「待ってくれ。俺もこの二人も別に悪い事はしていないし、あんた達に危害を加えはしない」

「そんな事が……」

小竜姫?さまが食って掛かる。
う〜む、こっちでも熱い性格なんだな。

「フェンリルだから、金毛白面九尾だからって悪いとは限らないぐらい分かるだろ?」

ワザと挑発っぽく言ってみる。
こういった役は結構辛いな、俺のキャラじゃない。

俺はスタスタと無防備に歩いていき、美神さんの目の前で止まった。
すっとジャケットの懐に手を入れる。
美神さんは神通棍を振り上げようとするが、

「名刺だ。困ったことがあったら、相談に乗る」

俺が名刺を差し出したので、神通棍を下ろした。

「何でも屋だと?」

それを受け取り読むと、美神さんは俺を睨んだ。

「ああ、金さえ貰えば大抵の事はやる。しかし悪逆な事は一切引き受けないが」

「どういうつもりです?」

小竜姫?さまだ。
読みは『しょうりゅうき』だが、『き』には何の漢字を使うのだろうか?

「簡単さ。神族に恩を売っておけば、いい目を見られると思っただけだ。それじゃあな」

そう言って踵を返し、俺達は帰路についた。
誰かに呼び止められるかと思ったが、なかったのでちょっと悲しかった。


「これでいいのでござるか?」

充分に距離が離れてから、シロが話しかけてきた。

「分からん」

「せんせい〜〜」

「シロ、情けない声を出さないの。少しはタダオの考えぐらい読んでみたら」

タマモがシロをからかう様に言った。
しかし姿が幼くなったせいか、二人とも精神年齢が下がっている様な気がする。
これじゃあ、ロリコンと言われても仕方がない、手も出しているし。

「う〜〜、美神どのとは距離を取るのでござろう?」

「そうだ。本当に危なくなった時、助けておけばいいと思う。そうしないと成長しないからな」

「でもそれだとタダオに頼るんじゃない?」

「だからこうやって見下す様な態度を取ったのさ。プライドが高い美神さんはこれで安易に俺に頼らなくなる」

とは言っても不安も多い。
この先、どうなるか分からないし、未知の出来事も起きるかもしれない。
これから先は神のみぞ、いや、宇宙意思のみぞ知るって事かな。

今回もちょっとだけ失敗した。
俺達がメドーサの魔力を気付いた時には、旧事務所は木っ端微塵。
ああ、勢いで人工幽霊壱号と契約してしまったから、美神さん達はどうなるんだろうか?

「さて腹も減ったし、メシでも食うか?」

俺は不安を追い払う様に明るく言う。
金の方は隠し金山から、ちょっとだけ貰ったので何とかなる。

「拙者、肉がいいでござる!!」

「私は油揚げ!!」

こういったのがずっと続けばいいよな。
俺は海を横目で眺めながら、そう思った。


あとがき

これは電波ネタです。
急に思いついたので、勢いで書き上げました。
だから続かないし、プロットも何も考えていません。
それよりも本編と某所の逆行物を続けろって、自分でも思いました。
ではまた。


△記事頭

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