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▽レス始

「5人いる!(GS+アフター0)」

さみい (2005-01-10 14:38/2005-01-10 14:46)

ある日の深夜、美神除霊事務所屋根裏部屋。拙者・犬塚シロと同僚のタマモが寝ている。

ガサゴソ

タマモが目覚めたようだ。トイレに行くつもりなのでござろう。眠たげな目をパジャマの袖で擦りながら、真っ暗な部屋を危なげなくドアに向かって歩いていく。拙者もバカ狐も夜行性なので夜の闇も怖くはないが、ドアを開け階段を降りていくタマモはまだ眠そうでござる。
「きゃ〜〜!」
その時、2階からタマモの悲鳴が聞こえた。
(タマモが寝ぼけて転んだでござるか?!)
「タマモ、お主の野生のカンはどこにいったでござるか?・・・」
仕方なく拙者は起きて2階のタマモへ向かっていった。
どこからか箒で掃く音がする。
(こんな時間に奇妙でござるなぁ)

2階の廊下ではタマモが腰を抜かしておった。
「タマモ、どうしたでござるか?」
「あ、あれ! き、狐火も効かない!」
タマモが指さしたところに巨大な目が拙者たちをギョロギョロ睨みつけるように浮いていた。
「ひゃ、く、くせ者!」
驚いた拙者は霊波刀を出し、巨大な目玉に向かって行った。刺した、と思った瞬間、拙者の目の前に事務所の壁がござった。拙者は壁にぶつかった。
チュド〜ン
まだ目玉がいる。瞬間移動でござろうか。
今度は腰を抜かしたタマモの真上にいる。
(バカ狐が危ないでござる)

その時、美神殿が神通棍を持って、おキヌ殿がネクロの笛を持って出てきたでござる。
人間は闇が苦手でござる。美神殿は天井に向かって「人工幽霊一号、廊下電気点けて!」と指示された。パッと照明がつく。その瞬間、タマモの上には何も居なかったでござる。


「じゃあ、あんた達はその巨大目玉と事務所の中で戦ってたっていうの?」
美神殿もおキヌ殿も睡眠を邪魔されて不愉快だったようで、拙者達の話を信じてくれない。
「人工幽霊一号、侵入者は居た?」
「いえ、9時54分に帰られた横島さまを除けば侵入者はおりません」
「横島クン、夕食食べて9時頃帰ったわよね?」
「ええ、その筈ですけど」とおキヌ。
「9時から美神オーナーの入浴を覗きに2階外壁に張り付いておられました。9時53分にオーナーが入浴を終えられましたので横島さまもお帰りになられました。」
「あのスケベ丁稚!!」
「ま〜ま〜、美神さん。と言うことは誰もいなかったんですよね。2人とも寝惚けたんじゃないですか。」
「拙者たちは巨大な目玉を見たでござる。」
「そーよ、バカ犬なら兎も角、私が寝惚けて見間違えるってのはあり得ないわ!」
「腰抜け狐が何を言うでござるか!」
「うるさ〜い!2人とももう寝なさい!
 おキヌちゃん、明日は油揚げと肉抜きにしてね。アイツら反省させないと!」
美神殿の雷が落ちた。おキヌ殿は「明日とりなしてあげるわ」と言ってくれたが、拙者は武士として大事な信用というものを失ったでござる。


翌日、出勤するなり美神殿にシバかれ血の海に沈んだ拙者の先生・横島殿に拙者たちは相談した。おキヌ殿が美神殿を諫めなかったら、ぜったい先生でも死んでいたござる。
「・・・というわけでござる。せんせ〜、弟子を冤罪から救ってほしいでござる」
「でもなぁ。人工幽霊一号がいるから、ここはまず侵入できんぞ。人工幽霊も侵入者はいないって言っているんだろ」
血の海に寝そべりながら先生が言う。
「はい、侵入者は確認しておりません」天井から人工幽霊一号が言った。
「拙者たちは巨大な目玉と戦ったでござる」このまま先生にも寝惚けたと思われては堪らない。拙者たちは一生懸命説明した。
「そうよ私たちは見たの、巨大な目玉を」タマモも口添えする。
「でもなぁ、じゃあとりあえずお札貼っておこう。そうすりゃ二度と出ないぞ、たぶん」
結局先生とおキヌ殿にも手伝ってもらい、2F・屋根裏のすべての部屋にお札を貼ったのだった。


その翌朝6:00。拙者はさわやかに目が覚めた。昨日行けなかった先生とのサンポに行ける!しっぽを振りながら着替える拙者に昨日貼ったばかりのお札が見える。お札のおかげでござる。でも何か変でござる。
「お、お札が上下逆に貼ってあるでござる!」
拙者達はプロでござる。何て書いてあるか判らないようなお札でも上下間違えて貼るようなことはあり得ない。拙者は寒気がした。拙者も、隣で安眠を貪っているバカ狐も霊感は低くない。それなのに全然気がつかれずお札を張り替えるなんて!犬塚シロ一生の不覚でござる。拙者は美神殿とおキヌ殿を呼びに行った。


「見事に逆に張り替えられているわ。一昨日の晩の話は本当だったのね」
さすがに美神殿も侵入の証拠を見て拙者達のことを信じてくれたようでござる。
「人工幽霊、侵入者は検知できた?」美神殿が天井に向かって聞く
「美神オーナー、侵入者は検出されておりません」人工幽霊殿がすまなそうに言う。
「内部犯行は?たとえばシロが貼り替えたとか?」美神殿は”念のためね”と言いながら人工幽霊に尋ねる。勿論人工幽霊殿の答えは
「シロさま・タマモさまとも熟睡されておられ朝まで起きておりません」だった。

「怖いですね〜。怖いですね〜。」おキヌ殿は気が動転して同じ言葉を繰り返している。
ここ美神除霊事務所は女所帯でござる。所長の美神殿は20歳・おキヌ殿は16歳の乙女でござる。拙者は勿論、バカ狐も一応乙女でござる。それでも問題ないのは人工幽霊殿が完璧に警護しているからであった。その人工幽霊殿が検知できないような物の怪が侵入している。

「でも上下逆に貼り替えるだけって、ずいぶん子供みたいな事するわね」
美神殿は訝しがっている。確かにこれだけの美女・美少女ぞろいの処に侵入して、やることがお札の貼り替えだけってのが謎でござる。勿論みんな無事で良かったのでござるが。


「・・・というわけで、横島くんの今日の仕事はお札の貼り直しと不寝番よ。私たちが寝ている間事務所を警戒して!」
学校が終わって出勤した先生に美神殿が仕事の説明をする。
「となると、美神さんの寝顔を間近に拝見できるってことっすね!こりゃ〜もう愛の告白と受け取っていいっすね〜!」
先生が美神殿に向かって飛びつく。神通棍で撃墜する美神殿。
「私やおキヌちゃんの部屋は鍵かけてあるから、シロタマの寝顔だったらみれるわよ」


その翌朝。昨日先生が貼り直したお札がまた上下逆に貼ってあった。
「かんにんや〜。気がついたらみんな上下逆になってたんや〜」
先生をシバく美神殿。それを止めるおキヌ殿。既にいつもの光景になっているでござる。
今日は天気予報では一日雨。サンポにも行けず最悪の朝でござる

その時、事務所の玄関をノックする音がした。
「は〜い、少々お待ち下さい」
床に散った先生の血をおキヌ殿が手早く拭いてから出る。
「あ、パピリオさんと天竜童子殿下!おはようございます」
パピリオ殿は先生にとって妹のような方でござる。天竜童子殿は龍神王さまの嫡子で先生の事を壱の臣下とされておられる。先生はパピリオ殿や天竜童子殿に優しすぎるが、拙者はお子様にヤキモチをやくようなことはしない。

「パピリオ!それに童子、よく来たな!」血だらけだった先生が復活して呼びかける。
「ヨコチマ、今日は遊びにきたでちゅ。」パピリオ殿が元気よく言う。
「よく小竜姫さまが許してくれたな〜。」と先生。
「小竜姫はヒャクメと天界に旅行に行っている。斉天大聖は新作ゲームで買収した。ジークは余とパピリオで倒した」
天竜童子殿が事も無げに言う。ジーク殿は魔族でも結構強かった筈だ。
「でも今日は雨だからデジャビューランド行っても面白くないぞ。それに俺は今日学校なんだ。前もって言ってくれれば、なんとか出席をやりくりしてつきあったのに」
先生がすまなそうに2人に言う。2人はシュンとした。大変可哀想に見えたでござる。
「じゃあ、拙者と雌狐と一緒に遊ぶでござる、パピリオ殿・天竜童子殿!」
あ〜拙者何言っているでござるか。あ〜
「じゃあ、シロ・タマモ。2人を頼むぞ。美神さんは隊長・ひのめちゃんとデパートへ買い物だし、おキヌちゃんも学校だし、任せたぞ」
そう言って先生は学校に行くためにアパートに戻ってしまった。


「うすのろばかまぬけ!」
拙者・タマモ・パピリオ殿・天竜童子殿の4人は2階でトランプを始めた。タマモは飽きたのかあくびをしている。
「次は大貧民やるでちゅ」
パピリオ殿がカードを配り始める。パピリオ殿は凄い勢いでカードを投げて配るので座布団4カ所にカードが刺さったようになっている。
「じゃあ始めるでちゅ
・・・
「シロ!2で上がったでちゅ。大貧民でちゅ」
「えっ」拙者はアタマ使うゲームは苦手でござる
その時、タマモがおやつを持って現れた。あれ?4人で遊んでいたのに...。
「タマモ、お主はいつから席を外していたでござるか?」
「うすのろが終わった直後よ。な〜に、また大貧民やってるの?」
「パピリオ殿が好きでござるから」
拙者たちは5人でトランプを始めた。


先生とおキヌ殿が事務所にやってきた。学校が終わったのでござろう。
台所から御盆を持ってきたおキヌ殿がトランプをしている拙者達を見て言う。
「あれ?グラス5個出てるけど5人でやってたの?」
「シロ、タマモ、バカ殿、着物の男の子と私でちゅ。何か変でちゅか」
「着物の男の子って何処の子?」おキヌ殿が拙者たちに尋ねる。
「余はどこかで見たことがある顔じゃと思っておったぞ」と天竜童子殿。
「パピリオか童子の知り合いじゃなかったの?」タマモも驚く
「拙者も。そんな子は事務所には居ないでござる!」
「パピリオはその子知らないでちゅ」
「え〜っ」X4。
「人工幽霊一号。だれがトランプやってた?」
タマモが人工幽霊殿に尋ねる
「ここにおられるシロさま、タマモさま、パピリオさま、天竜童子さまです」
「何人でござるか?」
拙者も馬鹿なことを聞いてしまった。先生も呆れている。
「4名でございます」
人工幽霊殿の答えは決まっていた。


買い物から帰った美智恵殿が拙者たちに教えてくれた。
「日本ではね、座敷わらしって神様がいるの。主に東北地方の旧家に住むと信じられている家の神さまなの。着物着てる女の子か男の子の姿をしているわ。この事務所も相当古いから座敷わらしが出てきたのね。それとね、座敷わらしって、子供にしか見えないらしいわ」

ということは座敷わらしが見えた拙者は子供?
パピリオ殿や天竜童子殿と同じ子供??
人工幽霊殿に座敷わらしが見えないということは人工幽霊殿でも大人なのに!!
が〜ん、ショック!

美智恵殿の話は続く。
「貴方達、幸運なのよ。見た人は大きくなって出世するとか玉の輿に乗るとか。それにね、この神さまは時々イタズラもするけど、居なくなるとその家が衰えるといわれているの。令子!座敷わらしが愛想尽かすようなアコギなことするんじゃないわよ。座敷わらしが居る以上は黙っててもこの事務所は栄えるんだから、横島くんの時給も増やしなさい!」
いきなり話を振られた美神殿がビクッと震える。
「な、何言ってるの。私はアコギなことなんて全くしてないわよ。アイツの時給はアイツがそれでいいって言ったんだから...」
美神殿は顔を真っ赤にして美智恵殿に抗議する。

「玉の輿かぁ・・・私は当たり前よね。九尾の狐だし」
勝手なことを言っているバカ狐。でも拙者は...。
(せんせ〜の奥方になって、三つ指ついて玄関でせんせ〜をお迎えして、・・・)ポッ
「バカ犬があっちの世界逝ってる〜!」
先生も美神殿もおキヌ殿もバカ狐も笑っている。パピリオ殿も天竜童子殿も笑っている。
バカ狐が少々うるさいでござるが、拙者はこの幸せな時間が何時までも続いてほしいと思うのでござった。きっとそうなるでござる。この事務所には座敷わらし殿が居られるのだから。

FIN
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・座敷童の出現のしかたは岡崎二郎「アフター0」(小学館)を参考にしました
・人工幽霊一号が座敷童に気がつかないのは、人工幽霊が「大人」なので見えず、かつ座敷童が元々事務所に居たので「侵入」はしていないということで。
・シロを主人公にしましたが、何でも「〜ござる」なので書きにくかったです。


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