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!警告!壊れキャラ有り

「マッドネスヒーロー 『ヨコツマソ』(GS)」

zokuto (2005-01-10 01:58)


「時は満ちた!! 私が神界、魔界、人界を掌握してこの腐りきった秩序を正し、魂の牢獄といういつまでたっても定年退職すらできない愚劣なる世界の制度を滅するのだ!! 一体何の為に私は何万年間も年金のためのつみたてをこまめにしてきたのか!? この苦労は早急にやつらの死によって報われなければならない!!」

 ここは都心の地下に存在する霊地……のそのまた下50メートルほどのところに建設された、悪の秘密結社アシュロスの本部である。

 日々世界征服を目指す、昨日結成された恐るべき秘密結社アシュロス、千里の道も一歩からという割と控えめなスローガンを抱え、まずは人界制覇を目的に歴史の影で暗躍する予定の組織なのだッ!!

 悪役に相応しい赤くて大きい椅子に座り、周りに精鋭足る幹部をそろえ、演説をしている人こそ、アシュロス総統『アシュタロス』御大そのものである。

 玉座の横には三大幹部、幹部、プロフェッサー、怪人、そして戦闘員とカテゴリーされる悪霊達、そしてハニワが少々。

 絶大な権力を持つ予定のアシュロス、昨日決起したのである。

 我々、人類はこの組織に対し、恐れなければならない。

 そして戦わなければならないのだ。


「土偶羅魔遇羅。 具体的な世界征服計画をみなに伝えよ」

 美しき首領、敬うべき総統。

 紫色の長髪を垂らし、一級美術品の造形を誇る角を二本頭に生やし、筋骨逞しいアシュタロス。

 彼の持つ力は幹部クラスでさえ把握することが出来ず、その全貌は謎に包まれている。

 そして、その有能なる総統の視線の先には一体の魔法生物が。

「では記念すべきアシュロス、最初の占有地予定となる場所は……この上です」

 土偶の姿格好をしている、悪の秘密結社アシュロスのブレイン。

 『土偶羅魔偶羅』

 優れた計算能力、随一の作戦立案をこなす、実質アシュロスナンバー2の位置を占めるもの。

 絶対なる忠誠と、アシュタロスさえ適わぬ頭脳の持ち主が彼だ。

「東京か?」

「……日本です」

 スケールの小さい野次馬が居るが、まあ、それはそれとして、騒然とする戦闘員達。

 特殊攻撃部隊のハニワ兵はところかまわずゴトゴトと音を立て、通常工作部隊の悪霊戦闘員達は『アタシ、まだ生きたいの〜』と叫び出す。

 そして怪人達は何かブツブツと呟き、幹部達は欠伸をし、三大幹部達は談笑していた。

 ……アシュロス、実は結構間の抜けた組織なのである。

 

 

 

 

 
        マッドネス ヒーロー 『ヨコツマソ』

 

 

 

 

 

 どこから出てきたのか? 実は道路のマンホールからなの。 とゾクゾクと現れた全身白タイツの軍団。

 そうである、賢明なる読者諸兄にはもうおわかりいただけたように彼らは悪の秘密結社『アシュロス』の悪霊戦闘員。

 全身タイツは、統一感を出す為に悪霊用簡易触媒をアシュロス幹部ナンバー4の『プロフェッサーヌル』が作成した秘密兵器なのである。

 故に、怪しさ爆発、変態度天井破り、である。

 彼らは職務をまっとうするため、それぞれ悪事を働き始める。

 まるで地上は地獄絵図!

 横断歩道を手を上げずに渡ったり、自転車を二人乗りしたり、酷い者は全身タイツ馬を乗り回し、花壇の花を滅茶苦茶にし始めたのだ!

 なんという罪深き軍団!

 ここの騒動を見れば修羅場ですら生ぬるい!

 数百にも及ぶ軍団に警察も迂闊に手を出せず、あたりにいた幼稚園生が泣き叫ぶ。

 特に花を愛でる、女の子達は懸命に花壇を守ろうと目に涙を溜めて抗議している。

 しかし軍団の勢いは止まらない。

 遂にはおもちゃを壊すなど、破壊行為すら行われた。


 このままでは小さい子供達がやさぐれてレディースになり、気軽に女の子をナンパすることが出来なくなってしまう。

 この世界のおしとやかな女の子の未来が閉ざされていく、と世界中が絶望したとき、七色の光とともに一人のヒーローが誕生したのだった。


「ヨコシマーン、パーンチ!!」


 二人乗り……通称『ニケツ』と呼ばれる行為をしているアシュロス戦闘員が転んだ。

 そして、その横に立っていたものが……。


「未来の美女が叫ぶとき、溢れる煩悩うめきだす。 誰が呼んだか、奇跡のサイボーグ戦士、ヨコシマン推参ッ!!」

 全身白タイツに負けず劣らず変態ぶりをさらけ出す我らがヒーロー、ヨコシマン!

 泣く子にもトラウマを植え付ける究極のヒーローが降臨した。

 そのヒーローは、いい年をして短パン、Tシャツ、顔の下半分を隠すように巻かれたマフラーに赤いバンダナがトレードマークのほんとにほんとに憎いヤツ。

 謎の超人、ヨコシマン、ここにて初お目見え。

「少子高齢化社会に小さい子供を狙う作戦とはよく考えたもんだ……だがな、俺が来たからにはもうバカな真似はさせねぇ!」

 そう言った瞬間、ヨコシマンは忽然と姿を消した。

「ヨコシマン、空中チョーップ!!」

 そして、先ほど転んだ戦闘員二人の頭に猛烈な勢いのチョップ。

 なんとッ! 空中を大跳躍し、落下エネルギーを利用したチョップを食らわせたのだった。

 転んでいる相手にチョップするとは多少卑怯な気もするが、正義の味方で勝てば官軍だから、この際黙っておこう。

 全身タイツ男は、断末魔とちょっとぬくいタイツを残して消滅した。


「説明しよう! ヨコシマンパンチとヨコシマン空中チョップとは、ヨコシマンの108つある必殺技の中の二つ。 ヨコシマンパンチは腰の捻りを加えたパンチで、ヨコシマン空中チョップとは今ナレーターさんが説明した通りのチョップなのだ!」

 ビシィと音を立て、空の彼方へ指を突き出すヨコシマン。

 自らに寄っているのか、直ぐ近くにまで迫ってきた戦闘員達に全く気付かない。

「ウィーッ!!」

 ヨコシマンの腹に猛烈なキックを叩き込まれる。

 しょぼいことしかやっていなかった戦闘員だが、彼らは一般人を凌ぐ身体能力をもっているのだ。

「く、クソッ! 卑怯だぞ、人が解説をしている最中に攻撃をするなんて!!」

 そう言うヨコシマン。

 だが、自分の行動を省みたらどうなんだヨコシマン!

「けひゃひゃひゃひゃひゃ。 なんだぁ? テメェ。 俺様のハーレム作成け……あ、やアシュロス世界征服計画を邪魔しようってのかよ?」

 戦闘員の中で唯一一般人に近い容貌をしている……といっても世間一般ではそれでも十分変人と呼ばれる部類に入っている男が言った。

 マユ無し、ヤンキー顔で背が低く、目付きが鋭い男。

 何故か胴着を着ている。

 戦闘員はその男とヨコシマンを円で囲むように集まってきた。

 あたりは白いタイツに覆い尽くされ、まことに見苦しい。

 戦闘員の中で個性を強烈に主張している彼の名は『陰念』

 アシュロス怪人の中でも下っ端の男である。

「何ィッ!? それは……聞き捨てならないな。 このロリコン野郎!!」

「ち、ちげーよ! 俺は強い女が好きなんだ!! 小さい頃から、花を眺めて悦に入らねぇつえー女を育てるために……しまった!! 作戦内容を……。 貴様、汚ねぇぞ! 口車に乗せやがって!」

 残念ながらこの作戦は『子供達をグレさせて両親の心を痛ませ、ストレスを倍増させそれにともなう心臓病とかそういうのを流行らせよう大作戦』という名前だ。

 レディースを増やし、陰念のハーレムにするという作戦ではない。

「なんとッ! これは恐ろしい……!! このままでは俺の好みの女性が絶滅してしまうではないかッ!!」

「ヘッ! おしとやかな女なんて何が楽しいんだ? 刺激、暴力、飲酒、タバコ! それらを好む女の方がよっぽどいいじゃねぇか!」

「何をぅ! 女性は女性らしくあればいいんだ! おしとやかで美人を俺は……俺は……信じる!」


 ……このバカどもめ。

 陰念は自分の好みの女性のタイプを語るのに熱弁を振るい、ヨコシマンに至っては男女差別ともとられかねない発言をしている。

 それに加え、この白タイツのドームという場所が、前代未聞の異様なオーラを発していた。


「俺はお前を許さないぞ、アシュロス! この俺が居る限り、お前らにおしとやかな美人候補生を悪戯に貶めることは許さないっ! いくぞ必殺、ヨコシマンドリルーッ!!」

 ヨコシマンの手首から先がドリルに変化した!

 歯医者でよく聞く、ドリルが空気を切り裂くイヤな音を発し回るドリル。

 ようやく技らしい技が出た。

「ヨコシマンドリルは類人猿のことではなく、ヨコシマン ドリル……即ち特殊金属で作られたドリルだ。 ヨコシマンの108つの必殺技の一つ。 敵を穴だらけにする、とある人も真っ青な超必殺技なのだッ!」

 ヨコシマンドリルがその何物をも穿つ回転で、陰念に狙いをつける。

「死ねッ!」

 陰念は大きなエネルギーを持つドリルを捌いた。

 ヨコシマンの攻撃を横に避け、一瞬のうちに数メートルの間合いを取る。

 目標から逸れたヨコシマンのドリルが戦闘員数名に穴をあけ、中身を昇天させた。

「へへ。 やるじゃねぇか。 ならこっちも……魔装術チェーィンジ!」

 陰念の回りに霊気が集まり、着ぐるみのような形へとなっていく。

 極微小ながら空気中で発電現象を起こし、火花の音が聞こえてくる。

 戦闘員はカセットテープ『陰念テーマソング(変身時)』を再生し、やる気の無い声援を送っている。

「どうだ俺の魔装術? 力を纏い飛躍的に運動能力を向上させるどころか、神経伝達も強化され、反応速度ももう人間の比じゃねぇぞ?」

 言葉通り、もはや陰念の強さは人間を超えていた。

 強い霊能力を持たないものでは絶対に倒せない相手。

 この地上でヤツを倒すことが出来るものは、アシュロスの彼より上級の怪人達か、もしくはヨコシマンくらいしか居ない。

 実は他にもいるのだが、ここで言えないところをお許し下され。

「行くぜ。 必殺、切り裂きスラーッシュ!!」

 『雷獣の陰念』の攻撃。

 指先から刃物のような霊気の刃を生み出し、ヨコシマンに狙いを定めた。

 両手の指10本から現れたそれは、際限なく伸びてヨコシマンの喉を掻ききろうと、まるで意思があるかのように空気を切り裂いていく。

「死ねッ!」

 恐るべき技。

 四方八方から爪が迫る。

 危うし、ヨコシマン。

「ヨコシマン・サイキック・ソーサー!!」

 突如ヨコシマンの左手の表面から数センチの部分現れた六角形の皿。

 鈍い金属音とともに、ヨコシマンはその皿で全ての爪をはじいた。

「なになに、この程度の攻撃。 美女のためなら屁でもないわ」

 カンラカンラと笑うヨコシマン。

 今までヨコシマンを見くびっていた陰念も目を細め、彼を強敵とみなした。

「中々やるじゃねぇか。 いいぜ、俺も本気を出すぞ」

 雷獣が咆えると、纏っていた霊気が更に収束され、黄色い輝きを増していく。

 ヨコシマンもマフラーに隠れた口を歪め、微笑んだ。

「来い、相手になってやる」


 両者が跳ね、空中でぶつかり合う。

 技と技、力と力の衝突。

 技はヨコシマンの方が手数が多く、力は陰念の方に一日の長がある。

 見るものを圧巻させる凄まじい激闘。

 幼稚園生は泣き叫び、道を通った大人達は見て見ぬフリをし、戦闘員はお菓子を食べのんびりとくつろいでいる。

「うおおおっ。 俺にはみんなの声援が聞こえる。 だからッ、負けるわけにはいかない!! ヨコシマンエルボー!」

 きっと幻聴です。

「おおおおおっ、俺だってアシュロス総統の『大幹部に任命する』という声が聞こえる! だからッ、絶対に勝つ!! 体当たりクラーッシュ!」

 やっぱり幻聴です。


 ヨコシマンの肘打ちと陰念の体当たりは両者痛み分けとなり、地面に降り立つ二人。

 肩で息を切らし、すぐさま振り向いて両者見合う。

「せ、説明しよう。 ヨコシマンエルボーとはヨコシマンの108つの必殺技の一つ。 肩と肘に組み込まれたバネの力により粉砕力を高められた必殺技なのだ」

「……やるな、ヨコシマン。 だが、まだだッ、まだ勝負は決まってないぞ!」

 その瞬間、陰念に耳打ちする一人の戦闘員が。 

 何やらいぶかしげにうなずき、聞き終わった後、咳払いをしてヨコシマンにこう告げた。

「ヨコシマンとやら。 今回は引き分けだ。 俺の活動限界時間がきてしまったようだ。 俺に二つも技を出させるとは貴様はアシュロス最大の敵と成り得るだろう。 ここで抹殺できないのが心残りだが、ここは去らせてもらう」

「逃げるのか、この変態野郎」

 貴様もだ。

 人のこと言う前に自分のことを省みろ。

「逃げるのでも、戦術的撤退でもない。 ただ単に『活動限界時間』が来ただけ。 貴様もヒーローならばこの言葉の意味は知っているだろう」

「くっ、クソ……俺には活動限界時間がないから、今までの苦労を全くの無にして敵を一撃で倒す必殺技を出せない……そういうことならば、しょうがない」

「では、さらばだヨコシマン」


 陰念とその部下たちは再びマンホールの中に姿を消し、被害の爪あとを残す場所には静寂が訪れた。

 こうして、今日もヨコシマンのおかげで世界の平和が守られたのだった。

 ありがとう、ヨコシマン、いや横島忠夫。

 君のおかげで……あ、いや君は単に大騒ぎしただけだったが……とりあえず地球に平和が戻った。

 悪の結社アシュロスの怪人がまた現れるまで、『逃げてくれ』ヨコシマン!!


「……君、署まで来てくれないかね?」

「な、なぜ!? へ、ヘルプミー、マリアーーーーッ!!」

 

        待て、次回!!

 

 

 

 

 

 

 
    後書き

 どうも、zokutoです。

 現在、小ネタではヨコシマンネタを連載なさっている御大がいらっしゃるというのに同じネタを使用するという愚挙を犯しました。

 あ、いやいや、先方はこんなもん一緒にするな、と仰られるかもしれませんが、まぁそのときはそのときで(どういうときだ


 へたれなヨコシマン、それに相対する間抜けなアシュロス。

 実は秘密結社アシュロスは全員大間抜けで、ヨコシマンといい勝負だったりします。

 他のキャラクターも続々登場する予定ですが、まぁ、今後の展開次第です。

 ちなみにこの作品、原作と繋がりがなさそうで実は繋がってます。

 次回以降にその関連点がどんどん出てくるので、お楽しみを。


 では、『待て、次回!!』


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