九尾の狐 かつてインド、中国を壊滅的な混乱に陥れ、平安時代に日本に流れてきた妖怪といわれている。
が、どれよりも古き時代までは福を呼ぶ神獣ともいわれていたとはご存知だろうか。
安らかな休日を 第3話
「だぁ♪」
横島は休日ではあるが、美智恵の頼みで仕事とひのめの子守をしていた。
当然、小鳩も一緒である。(ちなみに貧乏神は家療養中の母の面倒を見ている)
そこには愛子もいた。
休日で暇をしていた彼女に横島が子守を手伝って欲しいと頼んだからである。
「「かわいい~」」
二人とも、ひのめをとてもかわいがっており、横島も美智恵も助かっていた。
「しかし、隊長もどうしたんだろうな?周りは自衛隊の人たちばかりだったし」
横島たちは、休日ながらも仕事をこなしていると美智恵があわててひのめを連れて車に乗ろうとしたため、好奇心でつれてきてもらったのだ。
「美智恵さんも、お仕事ですから」
「まぁ、仕事もまた青春よね~」
ついて来た先が山奥で、さっきから自衛隊のヘリなどの音がとてもうるさい。
「隊長も大変だよな・・・って、腹減ったな」
給料で買った安物の腕時計を見ると12時をとっくに過ぎている。
「ひのめちゃんもおなかがすいてるようですし・・・」
「でも、お湯はあるけど。何もないわよ?」
まぁ、テントの中だしいくらなんでも材料があるわけがない。
「あー待ってて、確かリュックにカップうどんがあった。」
リュックの中には昼間に食べようと思って買っていた、ちょっと値段が高めのカップうどんがあった。
しかも特売だったのでいくつか買ってあったのだ。
特売というのに反応するのは貧乏の時と変わらない。何気に母親の影響を受けているともいえるが・・・
「準備がいいわねぇ~」
愛子も妖怪ではあるが、人の食べ物も食べるし、結構人の食べ物が気に入っている。
「じゃあ。お湯、持ってきますね」
小鳩は隣のテントにある大きめのポットを持ってくると、横島は早速4つほどカップ麺を開けた。
「あ、これって新発売の奴ですね?お揚げが大きいっていうのが宣伝で言ってました。」
小鳩は前のアパートと比べてテレビがあるので、こういう新発売の情報もすぐに入るようになった。
テレビを見る時、常に感動しているのはどうかと思うが・・・
すぐにいい匂いが広がり始める。
パサッ
「ん?」
横島が音のある方向、どうやらテントを開く音みたいなので隊長が来たのかな?と思って顔を向けた。
「キューン・・・」
「あ、狐さんですよ?」
「だぁ?」
子狐は、少々警戒しているようだが、目線はカップうどんの方向に向かっている。
「ん?これか?」
横島はカップうどんの蓋を開けると、お揚げを目の前に出した。
キュルルルル
狐のお腹がなる音がし、何気に少しだけ涎がたれている。
「この子、妖狐よ」
愛子は同族の雰囲気に気づいたのかそういった。
「そうか、妖怪だから、お揚げが好きなんだな。」
横島は感心しながら、蓋にお揚げを乗せて出した。
「熱いから、気をつけて食べろよ」
少々もったいないなぁ・・・と思ったが、目の前にお腹がすいているのにうまうまと食べるのも少し気が引けた。
「・・・・フーフー・・・ハムハム」
さすがは妖怪、横島の言ったことがわかったのか冷ましてから食べ始めた。
が、すぐに食べ終わってしまう。何気にすごい速さだなと横島の頭には汗が落ちる。
「あら?もう食べ終わっちゃいましたね?・・・よかったら食べる?」
「あ~、私もあげるわ。みんな渡してるのに私だけ出さないのは青春じゃないもの」
「ひのめちゃんはお揚げは食べないから、あげるな」
3人とも、あ揚げを渡す。子狐は、今度は警戒もなく再び冷ましてから食べ始めた。
「しかし、俺って狐の妖怪って初めてだよ。尻尾も九本あるのな?」
横島とひのめは珍しげに子狐をみた。ふさふさした九本の尻尾は普通の狐と違って、とてもボリューム感があり、かわいいと思える。
「ん~尻尾が九本の狐の妖怪・・・どこかで聞いたような・・」
愛子はぶつぶつ言いながらもうどんを食べ続ける。
「この子、親がいないんでしょうか?」
「だぁ?」
小鳩はこんなに小さな子供なのに、側に親がいないのに不思議がった。
ひのめがいるから余計にそう思えるのだろう。
その光景を子狐はとても珍しい風に見つめている。
「だぅ」
「・・・触っても大丈夫かな?」
「犬なら・・・まずは鼻先に手を出すものですよ?」
横島はひのめを片手に抱いたまま、子狐の前に手を出してみた。それは、先ほど揚げをつまんだ方の手だった。子狐はすかさず、横島の指に噛み付いた。
「うわっ!?って、甘噛みか・・・」
手を引っ込めようかと思ったが、子狐は指にまだついていたお揚げの味を堪能するために少し指を噛んで、それ以上になめまわしている。
「まだ、腹減ってんのかな?小鳩ちゃん、まだリュックにカップうどんあったはずだから、作っといて。」
小鳩がカップうどんにお湯を入れた時になってようやく満足したのか、子狐は指を離した。当然、指は涎でべとべとになってる。
「あらら・・・」
「だぅ」
ひのめは涎だらけの指をなめた。子狐の真似のつもりみたいだ。
「横島さん、できたみたいですよ?」
「しかし、うどんはどうしよう?俺、ひのめちゃんのも食べたから、お腹いっぱいだし・・・」
その言葉に子狐は何かを決心したのか、立ち上がった。
「ん?山にかえるのかな?」
そう思ったが、子狐は一度、力むと体から煙を出した。それと同時に霊力も一緒に出しているみたいだある。
「だぅ?」
煙が晴れると、そこには中学生くらいの少女がいた。
9本のポニーテイル・・・ナインテールというべきだろうか。横島は似合ってるなぁ・・と少しだけ思っていた。・・・狐から少女に変わるといえば・・・
「へ、変身?」
少し間違ってるぞ、特撮ヒーローじゃないんだから
「横島君、それをいうなら変化でしょう?」
愛子は横島の間違いを訂正しながら、少々警戒して少女を見た。
しかし、少女はそれに対してはどうでもいいかのように、手を突き出した。
「?」
「う、うどん頂戴・・・」
よく見ると、少女の顔は少し赤くなっていた。
シーン
愛子は何のために警戒したのだろうか・・・と心の中で涙した。
「んで?追いかけられたと?」
少女はカップうどんを食べ終わり、話し始めた。
名前はタマモというらしい。
彼女のいう所によると、最近になって生まれて、普通に狐らしく生きていたらしい。
だが、お揚げを食べないと霊力が回復しないので。たまに人里に下りては、うどん屋のゴミ箱にあったお揚げを食べながら生活していたという。
「ええ、いきなり追いかけてきたのよ。もう、訳がわかんなくて・・・」
確かに、それはそうだろう。
「そりゃ、まぁそうだろうなぁ・・・」
「いきなりはひどいですね。」
「まったく、青春じゃないわ!」
「だぅ!」
おのおの、結構な憤りを感じている。タマモはそれを珍しそうにみる。
「貴方たち、変わっているわね。普通の人間三人に、あとの一人が妖怪だもん。町じゃ見たことないわ」
妖怪と人間が一緒にいるというのは町では見たことがない。タマモは興味がわく。
「そうかな?」
「そうですかね?」
「・・・まぁ、横島君達だしねぇ・・・」
愛子以外は不思議がる。小鳩は家族に貧乏神がいるし、そういうのにはなれている。横島の場合は元が元の環境のため当然だといえる。
「本当に変わってるわ・・・えーと」
そういえば、名前を言ってなかったと横島は気づいた。
「俺、横島忠夫。花も恥らう17歳だ」
なんか、それは違うと思う。
「私は、花戸小鳩といいます。よろしくね、タマモちゃん」
「私は愛子よ。」
タマモはさっきからこちらとジーとみているひのめに興味が向いた。
「その子は?貴方達の子供?」
・・・・・・・・・・シーン・・・・・・・・・・・・
「「「ぶー!!」」」
「だぅ?」
横島たちは驚いた。さすがにこういう言葉は来るとは誰も思わない
「「「ち、違う(います)(わよ)!」」」
「だぅ?」
横島たちはあわてて、否定した。だが、愛子と小鳩は顔を赤くして、何かつぶやいているが、横島には聞こえない。
「どうしたの?騒がしいけど?」
噂をすればなんとやら、美智恵はもどってきた。
「って、その子は!?」
美智恵はタマモをみて驚いた。まさか、こんなところに逃げているとは誰も思わなかったからだ。だがチャンスだと思う。彼女を保護するはなら今しかない。
「だ、誰?この人・・・」
タマモは横島の後ろに隠れる。まさか、彼女も自分を追いかけたやつらなのだろうか・・・?
美智恵を疑っても、横島たちは疑っていないところにどこか微笑ましい所が伺える。
「失礼しました。私の名前は美神 美智恵よ。・・・貴方を保護しに来たの」
「へ?」
ぽかんとした顔がかわいいと小鳩は思ってしまった。
その後は、彼女の代わりとして、式神ケント紙で作った身代わりを封印、消去させた。ちなみに、このケント紙の完成品は切る技量と、霊力に関係してくるため、切るのは横島、霊力を入れるのはタマモだった。
(ちなみに、おキヌちゃんにもそれを伝えたため、うまく事は運んだ)
「あの子に伝えるのは・・・最近稼ぎが少ないらしいから不安なの・・・」
少々、禁断症状が出掛かっていて、判断能力が乏しくなっているらしい。
美智恵は、自分の娘ながら頭が痛いと思った。
終わった後は普通に過ごしても大丈夫なため、美智恵は横島のマンションで過ごしたほうが都合がいい事を伝えた。
「じゃあ、タダオの部屋に住む」
どうやら、このメンバーの中で一番、気に入ったのが横島らしい。
何気に、全員が横島以外の全員が呼び捨てなのは信頼の証みたいだ。
「いいかしら?横島君?」
「ん~広すぎて困ってましたから、寂しくなくて逆にありがたいっすよ」
特に深くは考えないため、即答したのは言うまでもない。
おまけ
「た、タダオ・・・この箱の中に人間がいるわ!?」
「あーそれはテレビといって・・・」
その後、ゲームをやったり、ビデオを見たりした。そして、タマモは何かを決心したような顔をした。
「タダオ・・・私、がんばって勉強するわ!」
楽しむために!
・・・どうやら、もっと楽しむために勉強するらしい。よほど現代の娯楽が楽しかったのだろう。
横島は変に熱血しているタマモの姿を見て、妙神山の猿と蝶を思い出した。
「元気にしてるかな?・・・パピと老師達は・・・」
「?」
おまけのおまけ
「学生なのに・・・青春で、横島君がいいと言ったとはいっても・・・・こんな良い部屋に住んでいいのかしら?」
愛子もまた、学校で過ごすよりも登校するという学生らしさを楽しみたいということで横島のマンションに住まわせてもらった。
ちなみに、事務仕事要員その2である。
ますます、美智恵が楽になったらしい。
「あなた~♪」
仲がよろしくてよろしいようで。
あとがき
皇月です。
今回はタマモの話です。妖怪の愛子がいれば、タマモも警戒心を無くさないまでも、少しは和らぐと思ったので登場してもらいました。
今回は何とか1日更新できたことに少し安堵
レス返し
リーマンさん
ですよね?あの父親のキャラなら知ると僕も思います
柿の種さん
この、GSメンバー最弱?になった横島君をよろしくお願いします(笑
hanluckyさん
はい、トラブルにも巻き込まれていただきます。
九尾さん
はい、言ったら面白くないと思いますので。
僕は小鳩ちゃんも大好きですよ。というか脇役が好きです。
法師陰陽師さん
おキヌちゃんとの関係に関しては、これから書いていこうと思ってます。
MAGIふぁさん
はい、貧乏神です(笑
LINUSさん
少しづつ、美神事務所とも絡めていこうと思います。
音葛さん
早い更新・・・ありがとうございます。僕は基本的に遅筆なので時折遅くなると思いますがご了承ください。
柳野雫さん
苦労をしたら、その分幸せにならなきゃいかんと思うんです。
零紫迅悟さん
普通に住人増やしてもいいですけど・・・やはり、第一にGSキャラですね