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「GS的昔話〜三枚のお札〜(GS+昔話)」

斧 (2004-12-31 00:48/2004-12-31 01:14)


 とある所、とある時代に、妙神寺というお寺がありました。
 その寺には数人の坊主と、クソ強い猿神和尚が居りました。


 その、とある日のお話です。


「横島や、横島や」
 猿神和尚が坊主の一人を呼びました。
「なんスか、和尚」
 明らかにこの時代の言葉使いではない口調も人間(?)の出来た猿神和尚は気にしません。
 彼の名は横島忠夫。一応戦国時代を舞台としたお話の中で坊主の癖に苗字を持っているという謎少年です。
「実はのう、この寺にこの国のお姫様が視察のついでにいらっしゃるのじゃ。その時のおもてなしの為に、山向こうの村の名産ミカンを取ってきて貰いたいのじゃ」
「ええ、なんで俺が…雪之丞辺りにやらせればいいんじゃないスか?」
 猿神和尚は予期していた、という風に言いました。
「そう言えば、姫様はたいそう美人じゃったなぁ・・・もしも持ってきたのがお主となれば、覚えも良くなるじゃろうなぁ…」
「この横島にお任せください!」
 さすがは猿神和尚、坊主の扱いは手馴れています。横島坊主の目が爛々と輝き、今にも音速を超えた速度で駆けていきそうです。
「うむ。任せたぞ。念の為、これを持っていけ」
 猿神和尚は三つの玉を横島に渡しました。
 横島坊主はそれを受け取ると、全力で駆け出しました。


 しかし。この横島坊主が真っ直ぐ行くわけがありません。
 普段あまり寺から出られない彼は、見つけた美人に手当たり次第に声をかけていきます。


 横島坊主、褐色の肌の美人に言いました。
「俺と一緒に無限大の彼方へー!!」
「顔見て言うワケ」
 横島坊主、沈没。


 横島坊主、からくり仕掛けの美女に声かけました。(隣の爺は無視)
「俺と一緒に目くるめく官能の夜をっ!!」
 美女、横島を一瞥し、爺と一緒に無言で飛んで行きました。
 横島坊主、撃沈。


 横島坊主、ないすばでぃな蛇お姐さんに言いました。
「乳尻太股ー!!!」
 否、飛び掛りました。
 そこに待っていたのは刺又です。横島坊主、驚異的な体重移動でそれを避けます。
 が、しかし。次に襲い来たのは、光り輝く拳だったのです。あ、命中。
 横島坊主、轟沈。


 横島坊主も、夜になってようやく自分の役目を思い出しました。
 山を駆け上がるうちに、モノノケの鳴き声すら聞こえてくる時間になってしまいました。
 一応季節は春。旧暦ですのでまだ3月の終わりごろです。当然、夜は冷えました。
「ま、まずい…凍えてまう…」
 横島坊主の脳裏には、春になって雪の下から出てくる自分を想像してしまいました。
 今は春ですのでそんな事はありえませんが、それでも熊のエサくらいにはなるでしょう。
「いややーっ!せめて世界の美女をこの目で拝むまでっ!!」
 彼らしい言葉ですが、事態が好転するわけでもありません。
 しかし、神は横島坊主を見捨てませんでした。
「光・・・?灯りや焚き火や飯や美女やーっ!!」
 最後の言葉はともかく、飯と灯りにはありつけるでしょう。
 横島坊主、これまでの疲れなど吹っ飛び、全力で走りました。
 近づくにつれ、期待は膨らみ続けます。
 それは木で作られた小屋でした。
 もう夜も晩いというのに、まだ灯りがある所を見ると相当夜更かしさんのようでした。
 横島坊主は木の扉の前で叫びます。
「すんまへーん、麓の村の坊主なんスけど、晩くなったので泊めてもらえませんかー」
 はーい、と鈴の鳴るような声が聞こえます。
 横島坊主の煩悩機関<エンジン>が高速で動き始めます。
 当然、彼も声がイイだけでとんでもねーブスというモノには会った事があります。
 と言うわけで、期待はしないように、と予防線は張っていたのですが・・・!
 ガラ、と扉が開きました。
 そこに居たのは、黒髪の美少女、おキヌちゃんです。
 横島坊主の煩悩機関が火を吹きかけますが。
 理性停止機<ブレーキ>が、気休めというか先送り、正論を言いました。
 それ即ち『今襲ったら絶対放り出されて凍死やでー』。
 それには煩悩機関も押し黙るしかなかったのです。
 当然ながら、じゃ、あとで、と結論を出してきたのですが。


 おキヌちゃんの絶品料理を食したあと、横島坊主は与えられた部屋に行きました。
 そこで布団をかぶり、彼女が寝静まるのを待ちました。


 …さて、深夜。
 横島坊主、目に炎を浮かべて抜き足差し足忍び足。
 おキヌちゃんの眠る部屋の襖に手をかけ、音も無く開け…


シャーコ、シャーコ、シャーコ、シャーコ、シャーコ、シャーコ、シャーコ、シャーコ、シャーコ、シャーコ、シャーコ、シャーコ、シャーコ、シャーコ、シャーコ、シャーコ…


 …パタン。
 横島坊主、深呼吸です。
 今のは見間違い、今のは見間違い、今のは見間違い・・・よし!!
 意を決し、横島坊主はもう一度中を覗きました。
 そこに居たのは、おキヌちゃんではありませんでした。確かに美人でしたが。
 亜麻色の髪、凄まじい乳尻太股。横島坊主の煩悩回路はブレーキを壊してしまいます。

 その研がれている包丁さえなければ。あと、臓器は高く売れるなんて言ってなければ。

 冷や汗が、ぴちょ、と落ちました。
 耳聡い美神山姥、ギロリとこちらを睨みます。
「横島君?どうしたの?」
 ものすごく優しい声と口調と表情ですが、全く目が笑っていません。逆に恐ろしい。
「イエイエ、ソノ、アノ、別ニ、トイレ行カサセテ貰ッタラナァナンテアハハハハハハ」
 横島坊主とっさの言い訳です。トイレではなく厠というべきなのでしょうがその辺無視の方向で。
 美神山姥も騙されてくれたようで、 
「家出て左。ああ、この縄を腰に括り付けて行きなさい」
 慌てて縄を腰にくくりつけ、横島坊主トイレに走りました。


「ひぇー、危ない危ない…」
 横島坊主は何とかこの窮地を脱しようと無い知恵絞ります。
 その時閃いたのが和尚様から渡された三つの玉。
 助けてくれよ、と念じます。
 その1つに、ある文字が浮かびました――


 美神山姥、あまりにも遅いのでトイレに見に来ました。
 グイ、と引っ張りながら問いかけます。
「まだなの?」
「まだっス」
 苛ついたように、さらに引っ張ります。
「まだなの?」
「まだっス」
 今度は力いっぱい引っ張りました。
 ずぼっ、と言う音がして、柱が美神にぶち当たりました。
「あ・の・クソガキ・・・逃げやがったわねーっ!!!」
 美神山姥、包丁を引っつかみ駆け出しました。
 後に残されたのは、まだっスと言う、[返]と刻まれた玉だけでした。


「待ちなさ〜い!!!」
 横島坊主は、後ろから聞こえてきた声に振り返りました。
 げっ、と言うが早いか振り返るのが早かったか。美神山姥です。
 もうはや追って来たのかと呟きながら、横島坊主は全力で走ります。
 しかし横島坊主の足は100m14秒程度。速いほうですが、美神山姥の10秒台にはとても敵いません。
「足止め足止め・・・!」
 かっ、と手の中の玉が一つ光ります。
 横島坊主、それを美神山姥に投げつけました。美神山姥、当然の如くそれを包丁で払い落とします。
 しかし地面に当たったその玉が効果を発動しました。

つるっ

 美神山姥がすってんとばかりに転びました。
 立ち上がろうとしても、その腕が滑ってしまいます。
「こら〜!!!待て〜!!!」
 横島坊主も、待つはずは無く。
 立ち上がれないうちに、美神山姥の視界には[滑]と刻まれた玉しか無くなっていたのでした。


「待・ち・なさ〜〜い!!!!」
 橋を渡る横島坊主、その叫びに疲れた体に鞭打ちました。ぜぇ、ぜぇと息が切れるものの、あと少しで寺なのです。
 何とか橋を渡りきった横島坊主。天啓が頭に閃きました。豆電球の幻影が頭上に浮かびます。
 彼は最後の玉に念を込め、川に投げつけました。

ゴゴゴ…

 遠雷のような音が聞こえてきました。

ゴゴゴ…

 それは、どんどん大きくなり――

ごぉおおおおおお!!!!

 玉に刻まれていたのは[氾]。
 それは洪水を起こし、美神山姥の渡る橋をふっ飛ばしました。
 美神山姥が躊躇するうちに、横島坊主は走りました。


「おしょーさまーっ!!」
「なんじゃ、横島。」
 人間(?)が出来た和尚は、お茶を飲みながら聞きました。
「山姥がでたっスー!!」
 そう、慌てる横島坊主とは違います。
「そう慌てるでない」
 和尚はどっこらせとばかり立ち上がり、棍を持ちました。
「わしが相手をしてこよう」
 ああ、やっぱりゲームジャンキーとは言え神様です。横島坊主は感無量。一生ついてくぜー的なノリになってまいりました。その場だけでしょうが。


 美神山姥(研ぎたて包丁装備)が寺の門(鬼門付き)をこじ開けました。
 そして、その先に立っていたのは何故か人民服装備の猿神和尚です。
「退きなさい!」
 美神山姥が凄まじい怒気を発しながら言います。
 猿神和尚は悠々とそれを受け流し、文珠を投げつけました。それに刻まれているのは[幻]。
 哀れ美神は、幻影の金塊を追ってどこかへと歩いてゆくのでした…


「と、こんな感じの夢を見たんスよ」
 横島が言った。ここは所長室。他のメンバーはいない。ふーん、と美神は言ってから、立ち上がった。
 横島の体がひと睨みで硬直する。
「横島クン、私のこと山姥、と…」
 横島は戦慄した。なぜならば、某星の白銀がバックに見えていたから――


 事務所に、血の雨が降った。


<おまけ>

 横島坊主は興奮していました。和尚が山姥を退治した後、彼は叱られた上で昼までにミカンを持ってこさせられたものの、姫様が今日来るとの知らせがあったからです。
 彼と数人の小僧が地面に伏し、和尚も平伏しました。
 横島坊主は、輿の簾が上がったのを気配で確認します。降りる足音を聞いてから、
「おおっと足がすべったぁっ!?」
 と、言いました。
 凄まじくワザとらしい上にどうやったら滑られるのかが疑問ですが。
 とにかく横島坊主は、姫の顔を確認して――灰になりました。
 そこに居たのは――


アシュタロス。


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